高齢者の口腔ケアの目的と効果【介護スタッフの基礎知識】

介助

更新日:2022/02/22

口腔ケアの目的は、口の中の粘膜や歯、舌などの汚れを取り除く「器質的な口腔ケア」と、舌や頬などの筋肉、飲み込みの力などの機能維持を目的とする「機能的な口腔ケア」の2つがあります。特に、ご高齢者への口腔ケアは2つのケアを行うことでその効果が高まります。今回は、口腔ケアの目的と効果についてかんたんに解説します。介護スタッフの基礎知識として理解しておきましょう。

口腔ケアの主な目的

口腔ケアの主な目的は、ご高齢者がいつまでも自分の口で食事を食べれることでQOL(生活の質)を高め、日常生活の満足感を得たり、口から栄養を摂取して体の健康を維持することにあります。

実際に論文を調べてみると、伊勢崎ら(1999)は以下のように報告しています。

生活満足感にはADLの食事動作が強く影響しており、各因子の影響を考慮したとき、食事動作ができるほど生活満足感が高かった。

さらに、家族や親戚、親しい友人と楽しく会話ができ、食事をとる場があることも充実した日常生活を送る上でとても重要となります。

そのため、私たちスタッフが口腔ケアに取り組むことで、お口のトラブルを防ぎ、いつまでもその人らしい生活が送れるようにお手伝いをすることができます。

口腔ケアの具体的な効果・目的について

口腔ケアの具体的な効果・目的には、主に「4つ」があります。

医療現場や介護現場で口腔ケアに取り組む場合は、この目的を明確にし。「看護計画」や「サービス計画」に記載しておかなければなりません。そのため口腔ケアの目的をしっかりと理解しておきましょう。

1)だ液の分泌を促進する2)誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を予防する3)口臭を予防する4)虫歯・歯周病の予防する

では次章より、口腔ケアの効果・目的別に詳しくご紹介していきます。


▼舌や頬などの筋肉、飲み込みの力などの機能維持を目的とする「機能的な口腔ケア」である「口腔体操」の方法について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

【関連記事】高齢者向け|口腔体操をしてリハビリの効果を最大化させよう!ご高齢者の誤嚥を予防する口腔体操のノウハウをまとめてご紹介します。

だ液の分泌を促進する

口腔ケアの効果・目的の1つに「だ液の分泌を促進」があります。

通常、食べ物を噛む動作を繰り返すことで、だ液の分泌を促してくれます。しかしながら、ご高齢者の多くは入れ歯になったり、柔らかい食事が中心となっているため噛む力が衰えてしまいます。こうなると噛む回数が少なくなり、唾液の分泌量が著しく低下してしまいます。また、口の中に食べ残しがあったり、細菌で覆われているとだ液が出にくくなり口腔内が乾燥します。

そこで、口腔ケアに取り組むことによってお口の中を清潔に保ったり、だ液腺を歯ブラシや刺激する、口腔体操に取り組むことでだ液の分泌を出やすくする効果が期待できます。ただし、糖尿病などの病気や降圧剤などの内服薬の副作用が原因で、だ液の分泌が低下し、口の中が乾いてしまうこともあります。このような場合はかかりつけ医に相談することをお勧めします。

▼だ液の分泌を促す方法に唾液腺マッサージがあります。唾液腺マッサージの方法については下記の記事をご覧ください。

【関連記事】
唾液腺マッサージの効果とマッサージ・ストレッチ方法の基礎知識
唾液の分泌を促し誤嚥予防や口腔内の洗浄作用、乾燥の予防に取り組んでいきましょう。

誤嚥性肺炎を予防する

口腔ケアの効果・目的の2つ目に「誤嚥性肺炎を予防」があります。

ご高齢者においては、食べ物が誤って気管に入ってしまったり、寝ている間に唾液を誤嚥してしまうことで誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こす可能性が高くなります。実際にご高齢者の死亡原因の第4位に「肺炎」があり、そのうち一番多いのが誤嚥性肺炎です。このような誤嚥性肺炎を予防する目的に行われるのが口腔ケアです。

口腔ケアは、口の中の細菌を減らすことで誤嚥性肺炎を引き起こす可能性を減らす効果が期待できます。また、日頃から歯磨きやうがいをすることで嚥下反射を促すことで誤嚥を予防することができます。

さらに、口腔体操や嚥下体操に取り組み、舌や頬の筋肉を鍛えることで飲み込む力を維持していくことも重要です。実際に食事を食べる際には、食事介助の方法や姿勢を注意することで誤嚥を予防することができます。


▼食事介助の方法について詳しく知りたい方はこちらの記事がお勧めです。

【関連記事】 
食事介助の基本的な姿勢・注意点・症例別の介助ポイント【基礎知識】
食事介助の基本である姿勢から注意点、症例別の介助ポイントをまとめてご紹介します。

口臭を予防する

口腔ケアの効果・目的の3つ目に「口臭の予防」があります。

口臭の原因は、口の中に歯周病菌などの細菌が大量に発生し、糖を分解する時に匂いが発生します。また、歯周病などの影響で出血がや膿がある場合に匂いが強くなります。口臭を予防する目的に行われるのが口腔ケアです。

口腔ケアを行い、口の中の歯周病やむし歯、舌の汚れ(舌苔)など綺麗にすることで歯周病菌を減らし、口臭を予防していくことができます。

虫歯・歯周病の予防する

口腔ケアの効果・目的の4つ目に「虫歯・歯周病の予防」があります。

口腔ケアの基本ですが、歯磨き・うがいを行うことで虫歯や歯周病を予防することができます。

ご自分では歯磨きができないご高齢者の場合、口腔ケアがしっかりとされていないと歯ぐきや舌に歯石が溜まってしまうことがあり、歯周病菌が多くなり炎症を引き起こします。また、歯周病は年齢とともに悪化しますが、痛みがないため気づいたときには症状がかなり進んでいて、歯を失う人も多くいます。

そのため、早期から正しい口腔ケアに取り組んでいくことで歯周病を予防し、ご高齢者がいつまでも自分の歯で食事を食べれるようにしていきましょう。

その他の口腔ケアの効果・目的とは

口腔ケアは、様々な研究でその効果が示唆されています。

▶︎ 認知症の予防歯が20本以上ある人、食べ物を噛める人は認知症の発症率が低いとされています。最近では、歯周病がアルツハイマー病の悪化の因子となるといった研究結果も出ています。高齢者の口腔ケアは、認知症の予防目的として自分の歯でしっかりと食べ物を噛めるようにしておきましょう。

▶︎ 心臓病の予防口の中の出血や粘膜に傷がつくと歯周病菌が血中に入り込み、動脈硬化の原因になるとされています。症状が悪化すると心筋梗塞や狭心症など心臓病を引き起こすリスクが高まります。心臓病の予防目的に口腔ケアに取り組み、歯周病菌を減らすように心がけましょう。

▶︎ 糖尿病の予防歯周病菌が血中に入り込むことで血糖値を下げるインスリンの障害になる、炎症が糖尿病を悪化させることが示唆されています。糖尿病の予防目的に口腔ケアを行い、歯周病菌を減らしていきましょう。

参照:九州大学広報室「歯周病菌のアルツハイマー様病態誘発に関与する原因酵素を特定〜歯周病によるアルツハイマー病悪化メカニズムの解明に期待〜」(平成29年11月7日アクセス)

口腔ケアのやり方(手順)

これまでご紹介したように口腔ケアは、虫歯や歯周病の予防の目的だけでなく、だ液の分泌を促し、誤嚥性肺炎を予防するためにもとても大切なケアになります。

しかしながら、歯科医師・歯科衛生士・言語聴覚士など専門家から口腔ケアを正しく指導されたことがある方は少ないのではないでしょうか?

  1. うがい
  2. 入れ歯や歯の清掃
  3. 粘膜の清掃
  4. 舌の清掃
  5. 歯磨き
  6. うがい

口腔ケアをこれらの手順に沿って行います。より具体的な口腔ケアの方法について知りたい方はこちらの記事がオススメです。

【関連記事】
口腔ケアの目的と手順・注意点【介護初心者の基礎知識】
高齢者の口腔ケアの目的とケアの手順や介助方法、注意点についてまとめてご紹介します。

まとめ

これまでご紹介したように、口腔ケアはむし歯や歯周病の予防だけでなく、唾液の分泌、口臭の予防、如いては誤嚥性肺炎の予防をする効果が期待できるご高齢者の健康を守るために大切なケアの1つです。

ご高齢者がいつまでもご自身の口で食事が食べれること、お友達やご家族とお話ができることは「その人らしい充実した生活=QOL」を送るために重要な生活の動作です。

そのため、私たちスタッフが正しい口腔ケアの手順や効果・目的を理解して、介護状態になる前から口腔ケアに取り組んで行けるようにして行きましょう!

【介助方法のまとめ記事】

介護現場で働く皆さまは、口腔ケア以外にもご高齢者に対してさまざまなケアを行います。そこでその他の介助方法について関連記事をまとめてご紹介します。

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【入浴の介助】
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【着替えの介助】
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【移乗の介助】
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【トイレの介助】
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【歩行の介助】
● 歩行介助の方法と注意点

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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