平成30年度(2018年)介護報酬改定 介護サービス別のまとめ

介護報酬改定

更新日:2023/10/12

平成30年度(2018年)の介護報酬改定ではどのような改定が行われたのでしょうか?今回は、通所介護・訪問などの介護サービスごとに介護報酬改定のポイントや厚生労働省Q&Aを各介護サービス別にわかりやすくまとめてご紹介します。2018年の介護報酬改定では、介護業界全体として「改定率+0.54%」となり「自立支援」「重度化防止」を軸に機能訓練の対応が重要視されています。

介護保険制度のしくみ 

介護保険制度のしくみ 

平成30年度(2018年)の介護報酬改定の内容についてご紹介する前に、まずは介護保険制度における介護報酬の仕組みについて、かんたんにご紹介します。

介護報酬制度のしくみ

介護報酬とは、要支援または要介護の方に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者側に支払われる報酬のことです。 介護報酬には、「基本報酬」と「加算・減算」の2種類があります。

基本報酬とは

基本報酬とは、訪問系サービスや通所系サービス、入所系サービスといった事業所形態ごとに決められた報酬単位です。また基本報酬は、ご利用者様の要介護度によっても定められています。

加算・減算とは

加算・減算とは、各事業所の人員配置や算定要件、ご利用者の状況などに応じて介護サービスの単位に「加算」または「減算」される制度です。

参照:厚生労働省「介護保険制度の概要」

介護報酬改定とは

介護報酬とは、介護保険サービスを提供する事業者が、要介護や要支援のご利用者に介護サービスを提供した場合にその対価として事業者に支払われるサービス費用のことです。
この介護報酬については、介護保険法上、厚生労働大臣が社会保障審議会の介護給付分科会の意見などを聞いて定めることとなっています。介護報酬は国家的なニーズ、地域ごとの成功例、財政状況などを総合的に考え、3年ごとに大きく見直しがあります。

2018年、2015年、2012年と3年おきに介護報酬・介護保険に大きな変化がありますが、3年の間にも介護報酬や算定要件・加算内容など必要に応じて変化があり、このことを介護報酬改定と言います。

平成30年度の介護報酬改定について3つの注目ポイント

平成30年度の介護報酬改定について3つの注目ポイント

平成30年度(2018年)の介護報酬改定に向けた議論は、平成29年4月26日から社会保障審議会の介護給付費分科会で、本格的にスタートし、最終的な改定は平成30年度4月に行われました。

2015年の介護報酬改定では、介護サービス全体で「マイナス2.27%」となっており、すでに痛手をおっている事業所も多いなか、平成30年度の介護報酬改定では、「改定率+0.54%の引き上げ」となりました。

ではまず、平成30年度の介護報酬改定について、3つの注目ポイントをご紹介します。

参照:厚生労働省「平成30年度介護報酬改定について」

医療・介護のダブル報酬改定

平成30年度の介護報酬改定では、「医療」と「介護」の連携がテーマとなり、双方の連携に重きをおき「居宅系サービスを中心に医療連携にかかる加算・基準が充実」「医療リハの算定制限により介護リハへのスムーズな移行」「介護医療院の誕生により介護保険で提供される医療の範囲が拡大」を行う。

重度化防止に向けた科学的介護

平成30年度の介護報酬改定では自立支援介護に向けた「心身機能の維持に関するアウトカム評価」を創設しました。自立促進や重度化防止の効果が実証されたケアを提供し「ADLの改善」や「褥瘡の予防」「排泄にかかる機能の向上」が実現できた場合に加算を行う。

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介護ロボット・ICT活用による評価

2018年の介護報酬改定では、介護業務の効率化および介護負担軽減を目的として、介護ロボットやICTを活用している事業者に対して「介護報酬や人員基準の緩和」を行う。

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介護報酬改定のマイナス改定は、通所介護と訪問介護

平成30年度の介護報酬改定は通所介護と訪問介護でマイナス改定
(出典) 厚生労働省 「資料1 平成28年度介護事業経営概況調査結果のポイント」

平成30年度(2018年)の介護報酬改定では、介護事業所全体としては「改定率+0.54%の引き上げ」となりました。これは「2015年のマイナス改定による事業所の経営悪化」「介護スタッフの人手不足」「関係団体による署名活動」の影響により、介護サービス全体の報酬は引き上げとなりますた。

その中でも介護報酬のマイナス改定となったのが「通所介護」と「訪問介護」です。

平成27年度の介護報酬改定では、介護サービス事業全体の平均収支差率は「約4%」で合ったのに対して、訪問介護は「5.5%」、通所介護は「6.3%」と収支率が高いのが現状でした。平成27年度の介護報酬改定では小規模デイサービスの大幅なマイナス改定が行われましたが、全体からみると依然として高い収支率を維持しているため、2018年(平成30年度)の介護報酬改定では、大規模デイサービスを主としてマイナス改定が行われました。

▼これまでの「介護報酬改定の経緯」と「平成30年度の介護報酬改定の動向」についてはこちらに記事がオススメです!

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通所介護の基本報酬の見直し

平成30年度の介護報酬改定では、通所介護のサービス提供時間区分を1時間ごとに細分化されました。また、通所介護の基本報酬について大規模型の事業所はスケールメリットが働き、事業規模が大きいほど経営状況は安定していると指摘があり「通所規模デイサービスは一部引き下げ」「大規模デイサービスは大幅な引き下げ」が決定しています。

 現在所要時間7時間以上9時間未満改定後所要時間7時間以上8時間未満改定後所要時間8時間以上9時間未満
地域密着型事業所要介護1 735単位要介護2 868単位要介護3 1,006単位要介護4 1,144単位要介護5 1,281単位要介護1 735単位要介護2 868単位要介護3 1,006単位要介護4 1,144単位要介護5 1,281単位要介護1 764単位要介護2 903単位要介護3 1,046単位要介護4 1,190単位要介護5 1,332単位
通常規模型事業所要介護1 656単位要介護2 775単位要介護3 898単位要介護4 1,021単位要介護5 1,144単位要介護1 645単位要介護2 761単位要介護3 883単位要介護4 1,003単位要介護5 1,124単位要介護1 656単位要介護2 775単位要介護3 898単位要介護4 1,021単位要介護5 1,144単位
大規模型事業所(Ⅰ)要介護1645単位要介護2 762単位要介護3 883単位要介護4 1,004単位要介護5 1,125単位要介護1 617単位要介護2 729単位要介護3 844単位要介護4 960単位要介護5 1,076単位要介護1 634単位要介護2 749単位要介護3 868単位要介護4 987単位要介護5 1,106単位
大規模型事業所(Ⅱ)要介護1 628単位要介護2 742単位要介護3 859単位要介護4 977単位要介護5 1,095単位要介護1 595単位要介護2 703単位要介護3 814単位要介護4 926単位要介護5 1,038単位要介護1 611単位要介護2 722単位要介護3 835単位要介護4 950単位要介護5 1,065単位

各介護サービスの介護報酬改定の総まとめ

では、ここからは各介護サービスにおける平成30年度の介護報酬改定のポイントについてまとめてご紹介していきます。ご自身が勤務する事業所では、どのような改定が行われたのか確認していきましょう。

参照:厚生労働省「平成30年度介護報酬改定における 各サービス毎の改定事項について」

通所介護(デイサービス)の2018年介護報酬改定について

通所介護における平成30年度の介護報酬改定のポイントは、「自立支援介護を重視する機能訓練」と「アウトカム評価の創設」です!

デイサービスの規模が小さい事業所ほど個別機能訓練加算の取得率が低くなるため、機能訓練指導員の規制緩和として研修を受けた「鍼灸師」も対象となりました。

また、小規模デイサービスの7割弱が機能訓練指導員を採用することが難しい現状のため、平成30年度の介護報酬改定では、通所介護の職員と外部のリハビリ専門職が連携し、機能訓練のマネジメントを行うことを評価する「生活機能向上連携加算」が新設されました。

さらに、要介護度やADLを改善させた通所介護事業所の報酬を引き上げる「ADL維持等加算を設け、バーセルインデックス(Barthel Index)を活用したアウトカム評価をしたデイサービスを評価するようになりました。

参照:厚生労働省「ADL維持等加算に関する事務処理手順及び様式例について」

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平成30年度の介護報酬改定の論点|通所介護の機能訓練に着目して
平成30年度の通所介護の介護報酬改定について、厚生労働省や各団体が現在どのように考えているか詳しく見てみませんか?議論の内容については以下の記事で詳しく解説しています。興味がある方はぜひご覧ください。

通所・訪問リハビリの2018年介護報酬改定について

通所リハビリ・訪問リハビリにおいては、平成30年度の介護報酬改定での医療・介護報酬のダブル改定の影響を大きく受けています。

「医療機関が介護保険によるリハビリを提供する場合はさらに基準を緩和」「医療職との情報共有や早期の介入に対応できるだけのリハビリ専門職の配置・時間区分の見直し」「リハビリテーションマネジメント加算の見直し」などの方針が打ち出されました。また、厚生労働省(平成29年11月8日)審議会において、2015年(平成27年度)の介護報酬の目玉となった通所リハビリ・訪問リハビリのリハビリテーションマネジメント加算を見直し、「一部要件を緩和」「評価を細分化」することを提案しています。

具体的には、リハビリテーションマネジメント加算(II)において「医師の会議の参加はICTを活用しても構わない」「医師の指示を受けたPT、OT、STが、計画の内容などを利用者・家族へ説明することを認めるが、単価を引き下げる」などが議論されています。
 
また、国が推奨している科学的介護の実現に向けてデータ収集システム(VISIT)を通じて、データ入力に協力すれば、より高い対価を支払います。
 

2018年(平成30年度)の介護報酬改定では、介護報酬の適正化の対象となった場合は、リハビリテーションマネジメント加算を算定することで通所リハビリ・訪問リハビリの経営状態を良くすることができます。

参照:厚生労働省「リハビリテーションマネジメント加算等に関する基本的な考え方並びにリハビリテーション計画書等の事務処理手順及び様式例の提示について」

訪問介護・訪問看護の2018年介護報酬改定について

訪問介護における平成30年度の介護報酬改定のポイントは「基本報酬の引き上げ」と「資格要件の緩和」です!

財務省は、介護サービス全体からみると訪問介護の収支差率は「5.5%」と高い割合にあると指摘し、引き続き適正化・効率化を指摘しています。さらに、生活援助における資格要件を緩和することが議論されました。

訪問看護の介護報酬改定では、2015年(平成27年度)に新設された看護体制強化加算を算定できている事業所が「10%程度」のため、この加算を多様化して取得しやすい区分あるいは、より高い加算区分を設けることが決まっています。

さらに、注目されているのが訪問看護からのリハビリの提供が制限がかかる可能性があるという点です。訪問看護ステーションにおいては、中重度者対応の強化を図る国の重点化策を考えると、2018年(平成30年度)の介護報酬改定においても基本報酬は現状を維持できる可能性が高いと思われます。

参照: 厚生労働省「第150回社会保障審議会介護給付費分科会資料」

短期入所生活介護の2018年介護報酬改定について

短期入所生活介護における平成30年度の介護報酬改定のポイントは「個別機能訓練の提供」と「医療連携強化加算」です!

短期入所生活介護では、2015年(平成27年度)の介護報酬改定で基本報酬が引き下げられた上、長期間の利用者へのサービス提供が「マイナス30単位」となりました。

一方で、個別機能訓練加算(56単位)と医療連携強化加算(58単位)が新設されました。

短期入所生活介護における介護報酬改定では、短期入所生活介護の加算・減算をさらに拡充して国の政策に沿った自立支援の強化や重い療養ニーズの受け入れなど、質の高いサービスの促進を図ることが重要になります。

参照: 厚生労働省「第151回社会保障審議会介護給付費分科会資料」

特別養護老人ホームの2018年介護報酬改定について

特養の介護報酬改定

特養における2018年の介護報酬改定のポイントは「看取りの体制づくり」と「褥瘡予防や排泄介助でのインセンティブ制度の設立」です。

特養の看取りの体制づくりにおいては、重度化した入居者様のフォローできる配置医師の積極的な関わりや外部の医師、歯科医師、薬剤師、看護師が関わりやすい報酬体系になりました。これは、2015年(平成27年度)の改定で「新規の入所要件が原則要介護3以上」となり、「看取り体制にかかる加算が手厚く」なったものの、今後入居者が重度化してしまうことが予想されるための施策です。

次に、特養において「褥瘡の予防」と「排泄」に関わる機能の向上を目的として多職種で計画を作り、それに沿って適切なサービス提供をしている事業所に高い対価を支払う「インセンティブ制度」を設けられます。具体的には、3ヵ月に1度以上モニタリング指標を用いて個々のリスクをチェックすることなどを評価要件としています。

参照: 第153回社会保障審議会介護給付費分科会資料

有料老人ホーム・サ高住の2018年介護報酬改定について

有料の介護報酬改定

有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)における平成30年度の介護報酬改定のポイントは「過剰サービスの規制」です。

有料老人ロームやサ高住では、財務省から「建物の設置者と同じ法人のサービスを入居者に強要している」「支援限度額ギリギリまでの過剰なサービス提供がされている」などの指摘があっています。

そのため、今回の改定では、居宅サービスなどの報酬・運営基準改定でも「入居者に対するケアプランの点検を強化する」などの規制が定められました。

【関連記事】
有料老人ホームにおける平成30年度介護報酬改定のポイント
指定を受けた介護付き有料老人ホームや軽費老人ホームなどの特定施設入居者生活介護における平成30年度介護報酬改定では、入居者様の医療ニーズにより的確に対応できるように「退院時連携加算の創設」や「医療的ケア提供加算の創設」「機能訓練指導員の資格要件の緩和」などが行われます。

福祉用具貸与の2018年介護報酬改定について

福祉用具の介護報酬改定

福祉用具貸与における2018年(平成30年度)の介護報酬改定のポイントは、以下の4つです。これらは、相場より高額なレンタル価格の取引ができない仕組みをつくるために設けられました。

  1. 平均貸与をホームページで公表する国が商品ごとに全国平均貸与価格を把握し、ホームページなどを通じて公表する
  2. 福祉用具専門相談員が機能や価格帯の異なる複数の商品を提示する利用者の1つのニーズに対して福祉用具専門相談員が機能や価格帯の異なる複数の商品を提示する
  3. 福祉用具専門相談員が商品の特徴、価格などを利用者に説明する
  4. 平均貸与価格をもとに上限額を設置

平成30年度の介護報酬改定に関する厚生労働省Q&A

ここまで各介護サービスにおける平成30年度の介護報酬改定のポイントをご紹介しました。平成30年度介護報酬改定に関する算定要件など具体的なQ&Aについては、厚生労働省(平成30年度6月時点)から4つの参考資料が出ています。

介護報酬改定の疑問点については、こちらの資料をご覧ください。

まとめ

今回は、各介護サービスごとに平成30年度の介護報酬改定についてご紹介しました。

日本の社会保障給付費は、2016年度の時点で「約118兆円」を上回っており、国民医療費は「約40兆円超」、介護保険給付費は「約10兆円」となっています。団塊の世代が75歳以上を迎え、超高齢化率が急速に高まる2025年には、国民医療費「約60兆円」、介護保険給付費は「約21兆円」に膨らむ予測です。

このような中、2015年の介護報酬改定では9年ぶりの介護報酬のマイナス改定となり、介護事業所の倒産件数は、2015年は「76件」、2016年は「108件」と過去最多数となっています。

平成30年度の介護報酬改定では、全体としてはプラス改定ではありましたが、通所介護や訪問介護においては厳しい改定となり、ますます結果を求められるようになります。介護経営も厳しくなる時代だからこそ、ご高齢者の自立支援を応援する介護現場の仕組みづくりをしていく必要があるのではないでしょうか!?

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この記事の著者

作業療法士  藤本 卓

作業療法士として大手救急病院に入職。救急医療や訪問リハビリ、回復期リハビリテーション病院の管理職として従事後、株式会社Rehab for JAPANに参画。作業療法士、呼吸療法認定士、住環境福祉コーディネーター1級、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種、生活習慣病アドバイザーの資格を有し、専門的な知識と現場での知見を元に、事業所の支援を行う。機能特化型デイサービスでは、2ヶ月で「稼働率72%から95%に」アップさせるなどの実績をもつ。

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