平成30年の介護保険改定では何がどう変わる?改定の経緯と今後の動向

平成12年に介護保険法が施行して以来、介護保険制度の改定が行われており、平成27年度の改定では大幅なマイナス改定の年となりました。今後、平成30年の介護保険改定では、介護保険サービス利用者の負担が増加したり介護事業所だけでなく利用者への影響も大きくなる予想です。そこで今回は、今までの介護保険法の改定の流れと平成30年度の介護保険改定について何がどのように変わるのかを具体的に解説します。

介護保険改定のあらすじ

これまでの介護保険制度は、平成12年度(2000年)に施行して以来「6年に1度」を目安にその制度の改定が行われてきました。

しかしながら、平成27年度(2015年)には3年に1度という異例の改正を行い、通所介護の中心に基本報酬の減算改定、高額所得者の自己負担2割の実施、特別養護老人ホームの長期入所対象者の変更などを行いました。
 

これまでの介護保険改定の推移

平成12年度(2000年)の改定 介護保険法施行
平成18年度(2006年)の改定 介護予防・地域密着型という概念を提唱

平成24年度(2012年)の改定 地域包括ケアという概念を提唱
平成27年度(2015年)の改定 介護報酬の大幅な減額改正
高額所得者の自己負担2割の実施
特別養護老人ホームの長期入所対象者の変更


これらの介護保険の改定では、2025年に団塊の世代が75歳以上を迎えることによって超高齢化率が急速に高まるため社会保障費が増え続け、財政を圧迫することを懸念しての措置です。

それではまず、今までに見直された介護保険の改定内容について振り返っていきましょう!

平成27年度 厚生労働省 老健局 総務課「公的介護保険制度の現状と今後の役割」平成29年10月9日アクセス

平成18年度の介護保険制度の改正点

平成12年度(2000年)に介護保険制度の施行後、平成18年度(2006年)に初めての介護保険制度の改定が行われました。主に見直された内容は以下の通りです。

 

介護予防の重視への転換

要支援者への給付を「介護予防給付」として新たに創設しました。その介護予防ケアマネジメントは、地域包括支援センター(介護予防支援事業所)が実施。そしてそれぞれの市区町村が介護予防事業や包括的支援事業などの「地域支援事業」の実施するようになりました。

施設給付の見直し

施設などの食費・居住費を保険給付の対象外(全額自己負担)にしました。一方で、低所得の利用者様への補足給付を新たに設けました。

地域密着型サービスの創設

地域密着型サービスの創設や介護サービス情報の公表、負担能力を細かく反映した「第1号被保険者の保険料」の設定などを設けました。

平成24年度の介護保険制度の改正点

介護保険法が施行されて12年が経過した平成24年度(2012年)には、サービスの利用者数が、創設当初の約3倍になり「重度の要介護者の増加」「介護力のない単身世帯や高齢者のみ世帯の増加」「介護人材の確保」などが課題となりました。そこで、厚生労働省は、高齢者が地域で自立した生活を営むことができるように「地域包括ケアシステム」という概念を提唱しました。
 

地域包括ケアシステムを提唱

医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが連携した要介護者等への包括的な支援「地域包括ケアシステム」を提唱しました。その上で日常生活圏域ごとに地域ニーズや課題の把握を踏まえた介護保険事業計画を策定、単身者や重度の要介護者に対応できるように24時間対応の定期巡回・随時対応サービスや複合型サービスを創設しました。

介護人材の確保とサービスの質の向上

介護人材の確保とサービスの質の向上を目的に介護福祉士や一定の教育を受けた介護職員などによる「痰の吸引」を可能としました。また、介護事業所における労働遵守を徹底し、介護サービス情報公表制度の見直しを実施しました。

高齢者の住まいの整備

有料老人ホーム等における前払金の返還に関する利用者保護規定を追加。 厚生労働省と国土交通省の連携によるサービス付き高齢者向け住宅の供給を促進しました。

認知症対策の推進

市民後見人の育成及び活用など、市町村における高齢者の権利擁護を推進しました。

平成27年度の介護保険制度の改正点

原則、6年に1度の介護保険制度の改定でしたが、平成27年度(2015年)に異例の改正を行いました。この改正により、大幅な介護報酬の減額改正が行われたため「マイナス改定の年」と呼ばれています。

地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業の充実

在宅医療・介護連携の推進などの地域支援事業の充実とあわせ、予防給付(訪問介護・通所介護)を地域支援事業に移行しました。

費用負担の公平化(介護保険法関係)

低所得者の保険料軽減を拡充し、低所得の施設利用者様の食費・居住費を補填する「補足給付」の要件に資産などを追加しました。一方で一定以上の所得のある利用者の自己負担を2割へ引上げが行われました。

新たな基金の創設と医療・介護の連携強化

都道府県の事業計画に記載した医療・介護の事業(病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進等)のため、消費税増収分を活用した新たな基金を都道府県に設置しました。

平成30年度の介護保険改正は何がどう変わるの?

では、今後平成30年度の介護保険制度改正では、どのような改定が行われるのでしょうか?


 

平成30年度の介護保険改定のポイント

(1) 高額所得者の自己負担3割の導入

(2) 訪問介護・通所介護の基本報酬の減額

(3) 通所介護にインセンティブ制度の導入
(4) 地域密着型デイサービスの指定拒否が可能

(5) 新しく介護医療院が誕生
(6) 介護保険・障害福祉の共生型サービスが開始

(7) 新しい地域支援事業が開始
(8) 特養の看取り体制に対する報酬体系の導入
(9) 有料老人ホームの開設・運営の規制強化


では、次章より平成30年度の介護保険改定についてそれぞれ詳しく解説していきます。

高額所得者の自己負担3割の導入

平成27年度の介護保険法改定により、利用者様の年収によって介護保険サービス負担額が2割となりました。
平成30年度の介護保険改定では、より所得が高い人の負担割合が3割負担となります。

現時点での議論では、3割負担の対象となるのは「1.合計所得金額が220万円以上の人」「2.単身世帯で年金収入とその他の所得金額が340万円以上の人(夫婦世帯の場合は463万円以上の人)」としています。

厚生労働省の試算によると、この対象条件の場合、3割負担の対象となるのは全体の「約3%」としており、多くの事業所や利用者には大きな変化はないでしょう。
 

訪問介護・通所介護の基本報酬の減額

平成27年度介護保険法の改定では、介護サービス事業全体の平均収支差率は「約4〜5%」まで抑えられています。

そんな中、訪問介護の平均収支差率は「5.5%」、通所介護は「6.3%」と他の介護サービスに比べて、まだまだ収支率が高いことになります。

これらのことから平成30年度の介護保険制度の改定では、訪問介護通所介護基本報酬のさらなる減額が検討されています。

 

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通所介護にインセンティブ制度の導入

首相官邸から「未来投資戦略2017―Society 5.0 の実現に向けた改革―」が発表され、介護事業所において「次期介護報酬改定で、効果のある自立支援について評価する」と言われています。

厚生労働省(平成29年11月29日)においても審議会にて、高齢者の自立支援や重度化防止につながる取り組み「アウトカムの導入」を来年度から通所介護の報酬の多寡に反映させる方針を報告しています。

この報告によると、 アウトカム指標には「バーセルインデックス(Barthel Index)」を活用し、評価期間の中で利用者様のADLを維持・改善させた事業所においては、その後の一定期間にわたって高い対価を得られるようにするインセンティブ制度を設ける予定です。自治体に促す財政的なインセンティブについて、当面は介護保険の調整交付金を使わないことに決めた12月19日に政府は発表しています。

詳細の決定は年度内に通知する予定となっていますので動向については今後も要チェックしておきましょう。

—参考資料—
厚生労働省 第153回社会保障審議会介護給付費分科会資料
「介護サービスの質の評価・ 自立支援に向けた事業者へのインセンティブ について」

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バーセルインデックスの評価と採点方法で知っておきたい基礎知識

地域密着型デイサービスの指定拒否が可能

平成27年度の介護保険法の改定により、定員数が18名以下の小規模デイサービスは、大規模・通常規模のサテライト型を除き、地域密着型デイサービスへと分類されることになりました。

平成30年度の介護保険法の改定では、この地域密着型デイサービスの指定拒否市区町村によって可能になります。

指定拒否の要件としては、「1.市区町村の見込み数がオーバーする場合(介護保険事業計画で定める地域密着型サービスの見込み量をオーバーする場合)、または介護保険事業計画の達成に支障をきたす恐れがある場合」「2.市区町村の区域内に定期巡回・随時対応型サービスや小規模多機能型サービスがある場合」があります。

新しく介護医療院が誕生

平成30年度の介護保険法の改定で、介護保険施設に新たに加わるのが「介護医療院」です。
介護医療院では、主に長期的に療養が必要な要介護者に対して、療養上の管理のもとで介護や機能訓練を行うことを目的として誕生します。

医療と介護の一体的な提供が前提となるため、平成30年度に同時に改定される医療保険法にも位置付けられています。

平成27年3月時点で、約1400施設ある介護療養病床が介護医療インへとスムーズに移行できるかについては、今後設定される具体的な設備基準・人員基準・運営基準および報酬が大きなポイントとなります。

詳しい基準や報酬については、社会保障審議会・介護給付費分科会で議論されています。今後も動向を要チェックです。

介護保険・障害福祉の共生型サービスが開始

平成30年度の介護保険法の改定では、介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法にまたがって共生型サービスが開始されます。
共生型サービスでは、介護保険サービスと障害福祉サービスを一体的に利用できるようになります。

現時点では、共存型デイサービスの対象となるのは、訪問介護(ホームヘルパー)や通所介護(デイサービス)、ショートステイなどが検討されています。
これらの介護保険サービスを運営する事業者がいずれかの法律に基づく基準を満たしてサービス指定を受けることで、他の法律による指定を受けやすくする特例を設けます。

具体的な基準については、現在議論の真っ只中です。今後は、各都道府県や市区町村が条例で定める予定ですので動向をチェックしておきましょう。

新しい地域支援事業が開始

介護保険制度の地域支援事業は、大きく「1.総合事業」「2.包括的支援事業」「3.任意事業」に分かれています。その中でも「2.包括的支援事業」に関しては、以下の3つの事業が措置期間を終え、平成30年4月から完全実施されます。

 

平成30年4月から開始する包括的支援事業

1.認知症総合支援事業

2.在宅医療・介護連携推進事業

3.生活支援体制整備事業

特養の看取り体制に対する報酬体系の導入

特養の医師配置の現状をみると、常勤医師がいる割合は未だ「1%程度」です。

平成27年度の介護保険法の改定では、特養の早期からの看取り体制に関わる加算がて暑くなりましたが、今後の問題はそれをフォローできる体制です。

そのため、平成30年度の介護保険法の改定では、特養の配置医師の積極的な関わりや外部の医師、歯科医師、薬剤師、看護師が関わりやすい報酬体系へと議論を進めています。

 

有料老人ホームの開設・運営の規制強化

平成30年度の介護保険制度の改定により、有料老人ホームから都道府県への提出事項として「入居者が適切なホームを洗濯するために必要となる情報」を含めることが決まりました。

具体的には、施設概要や利用料金の他に、提供される介護内容などが想定されています。さらに、これらの情報は、都道府県によって一般公開するように求められています。

また、運営に問題がある有料老人ホームに対しては、立ち入り調査業務改善命令に加えて、事業の制限や停止を命令する権限も可能となります。ただし、入居者保護に必要である場合のみとなっています。

この場合は、都道府県が入居者に対して介護支援を継続的に受けられるように必要な助言などを行うこととしています。

 

まとめ

今回は、「介護保険法の改定の経緯」と「平成30年の介護保険改定のポイント」についてご紹介しました。

2025年には、団塊の世代が75歳以上を迎え社会保障費が増え続けることにより、加速的に財政を圧迫していきます。そんな中、平成30年度(2018年)の介護保険法の改定ではどのような変化が起こるのでしょうか?

改定まで残り数ヶ月となり、現在は厚生労働省では、議論の整理・取りまとめの情報が公開されています。

厚生労働省 社会保障審議会 (介護給付費分科会)

平成30年度介護報酬改定に関する審議報告

2017年12月18日(平成29年12月18日)

 

平成30年度の介護報酬改定の改定スケジュール

今後は、以下のように法改正についての報告がある予定です。

1~2月 介護報酬改定案 諮問・答申
3月上旬 単位や要件など公表(官報告示) 
3月下旬 厚労省改定Q&A
4月 介護報酬改定


平成30年度の介護保険法の制度では、介護経営がより厳しさを増していきます。そのため、介護報酬改定の動向とともに安定した介護経営に必要な加算・減算の知識も学んでおくことをオススメします!

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最後に筆者より

介護経営者のための情報サイト「リハプラン」では、今回ご紹介した「介護保険法改定の経緯と動向」以外にも安定的な介護経営を実現するために必要な「介護報酬改定」などもご紹介します。

法改正に左右される介護現場ですが、皆様が安定した介護経営ができるようにこれからも情報をお届けして参ります

著者プロフィール

author

藤本 卓

作業療法士として大手救急病院に入職。救急医療や訪問リハビリ、回復期リハビリテーション病院の管理職として従事。現在は、通所介護事業所(デイサービス)を中心に介護の経営および現場指導に取り組んでいる。作業療法士、呼吸療法認定士、住環境福祉コーディネーター1級、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種、生活習慣病アドバイザーの専門的な資格を生かし、高い技術を介護現場に普及している。機能特化型デイサービスでは、2ヶ月で「稼働率72%から95%に」アップさせた実績の持ち主。

〜筆者の想い〜
平成27年度の介護報酬マイナス改定から介護保険制度は大きく変化しようとしています。特に、平成30年度の介護報酬改定後は、行政の実地指導・監査が厳しくなることが予想されます。そこで、介護経営の基本となる「介護保険法」と「介護サービスの種類」「介護報酬改定の動向」について解説します。

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