デイサービスの経営について売上や人件費率から損益分岐点などを交えて解説!

デイサービスの経営を理想的に行うためには介護報酬改定動向を意識しつつ、売上や人件費率(労務費率)などの経営指標や数値を意識しつつ目指すべき方向指針を定め、チームで取り組まなければなければなりません。デイサービスの経営は介護保険法の下で行われることから、平成30年介護報酬改定などの環境要因も捉えつつ、今後のデイサービス経営の戦略および経営課題について考えていきましょう。

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通所介護(デイサービス)の経営とは 

経営

通所介護(デイサービス)の経営を安定的に行っていくためには、経営指標(人件費率や稼働率)や正しく判断し、経営戦略経営改善を立てる必要があります。また、介護保険下での運営であることからも介護報酬改定を意識して運営をしていく必要がります。

大きな理由は2つで、1つ目は通所介護事業所は国から認められた公共性の高いものです。介護保険下での運営のため、売上のアッパーが決まり、制度に大きく左右されてしまいます。2つ目は社会保障費の財政難の影響があり、平成30年度介護報酬改定では改定率+0.54%と基本報酬の引き上げはほとんどありません。これらの状況を鑑み、まずはデイサービスについて改めて理解し、平成30年度介護報酬改定のまとめと経営状況について考えていきましょう。

デイサービスの経営と介護保険改定

デイサービスの経営は介護保険下で行われ、国から認められた介護保険サービスです。利用者様が日帰りで事業所に通いつつ(送迎車による送迎あり)食事や入浴などの日常生活上の介護や機能訓練などのサービスを行います。全国にも大小様々ではありますが43,000事業所以上があり、理想的な経営を行っていくためにはブランディングを意識し、特色のあるデイサービスを運営していく必要があります。

また、デイサービスの理想的な経営においては、稼働率アップと利用者様一人当たりの収益性を高めるための加算の算定が必要です。特に今回の平成30年度介護報酬改定では「自立支援・重度化防止」を軸とした経営が求められるようになりました。また、通常規模〜大規模通所介護事業所においては、サービス提供時間の見直しにより大幅な基本報酬の引き下げが行われました。かかる状況下で、通所介護では「個別機能訓練加算」や「認知症加算」「中重度者ケア体制加算」など様々な加算がありますので、自社において何を重視するべきかを推敲し、経営戦略を考える必要があります。

通所介護(デイサービス)における経営状況と実態

デイサービスの全国平均稼働率58.8%と赤字・黒字の関係

通所介護の稼働率と人件費率

デイサービスの経営を正しく見ていくために、平均稼働率(デイサービスの稼働率の平均が58.8%を示しています)を横軸、人件費を縦軸にしたグラフを見てみましょう。青丸が黒字施設で、オレンジ丸が赤字施設を示しています。

※バブルチャートの大きさは、サービス活動増減差額比率の数値(絶対値)を示す

通所介護(デイサービス)の稼働率が全国平均以下(60%を下回る)になると赤字となるケースが多く、デイサービスを安定的に経営するためには稼働率アップが絶対条件であることがわかるのではないでしょうか。また、稼働率が平均以上のエリアは黒字施設が多いものの、赤字施設も一定数分布していることがわかります。この調査では図の左上「A群」が小規模事業所、右上「B群」が通常規模以上の比較的大きい施設として分けられており、事業所規模別で売上アップのためには以下の対策をとる必要があることを示しています。

デイサービスの定員や規模による売上アップのための対策例

小規模デイサービス

提供時間を長くする

加算を算定する

通常規模〜大規模デイサービス

労働生産性を高め人員配置を適正化する

※過剰な人員ではなく少数精鋭で利用者様の満足度を高めていくことが重要です

【関連記事】

デイサービスの稼働率アップの戦略と対策

通所介護(デイサービス)の稼働率アップはデイサービスを黒字運営する上での絶対条件です。稼働率アップを前提に、個別機能訓練加算などの加算算定をし、競合他社に負けないデイサービスづくりが可能となります。平成30年度介護報酬改定に負けない安定したデイサービス経営について見ていきましょう。

通所介護(デイサービス)の経営指標と経営分析

通所介護(デイサービス)の経営を安定的に行っていくためには、介護報酬改定について正しくキャッチアップし、経営指標を見ながら経営戦略を立てる必要があります。

それらを前提に利用者様一人当たりの売上アップをするために、個別機能訓練加算などを含めた加算算定することが重要です。というのも、デイサービスの純利益を最終的に良好な状態にするためには、売上アップをし、最適な一般管理費にすることが重要だからです。詳しくデイサービス経営について見ていきましょう。

通所介護(デイサービス)の経営|稼働率

通所介護(デイサービス)の経営|稼働率

デイサービスの稼働率とは「事業所毎に利用できる最大人数に対して何%利用されているか」を示すものであり、売上高に大きく影響します。デイサービスの稼働率の計算式は上記で示すように「1ヶ月の延利用者数÷利用定員数×1ヶ月の営業日数」となっており、利用率が低い場合は、地域のニーズ、営業体制、競合他社の把握が必要になります。

全国の通所介護(デイサービス)の稼働率の平均は68.6%

【事例】

定員40名の事業所で1月(営業日数25日)の利用者数が900名だった場合

稼働率=900/(25×40)=0.9

となり、稼働率90%の超優良施設であることがわかります。

平成27年度老人デイサービスセンターの経営状況について

通所介護(デイサービス)の経営|人件費率

デイサービス(通所介護)の人件費率(人件費割合,労務費率)を見てみると、介護事業収益に対する人件費割合は平均55.8%となっています(介護事業経営実態調査、平成26年)が60%前後が最も良いとされています。

【計算方法】

スタッフの人件費×100/サービス活動収益(売上高)

通所介護(デイサービス)の経営|労働生産性

デイサービス経営において、労働生産性は極めて重要な経営指標の一つです。というのも、従事者1人がどれだけの付加価値を生み出すかを見る指標であり、労働生産性が高ければ、各々の従事者が効率よく価値を生み出し、円滑な運営管理が行われているといえます。

労働生産性=付加価値額/労働投入量

※付加価値額:営業利益+人件費+減価償却費
※労働投入量:労働者の人数×時間

※営業利益=「売上総利益」ー「販売費および一般管理費」

※販売費=販売手数料、広告宣伝費など

※一般管理費=人件費、減価償却費、租税公課、交際費、旅費交通費など

※「減価償却費」は、将来に対してどれほどの設備投資を行っているかの目安

なぜ労働生産性が重要なのか?

人を採用すれば、一人当たりの業務負担が減りスタッフの労働量は減ります(それが下記で示す利用者一人当たりの人件費です)。しかし、長期的な視点で見てみると一人当たりの労働生産性は落ちているので、長期的に見るとスタッフの給与が上がりづらくなる要因になりかねません。少数精鋭という言葉の通り、配置基準を満たす人員かつ労働生産性を高める事業所こそ、経営的にもスタッフのためにも、利用者様のためにも良いサービスが展開できると期待しています。

【関連記事】

通所介護におけるIT導入と労働生産性の向上

介護事業所において営業利益を意識しつつ、労働生産性を高める方法の一つとしてICT化を進めることは今後の生き残りに大きく影響します。本稿ではデイサービス事業所にとってICT化のメリットとデメリットについてまとめ、実際の介護現場にどのように落とし込む方法について検討していきます。

通所介護(デイサービス)の経営|平均要介護度

通所介護の経営において平均要介護度は売上高にも影響するため、適切に把握する必要があります。要介護度の平均値の把握をしっかりと行うことで、適切な人員配置およびサービス内容の計画を行いましょう。

他方、平均要介護度が高いということは、一人当たりの収益性が高くなる一方で、介助が必要な方も多くなるため、スタッフ配置も考慮しなければなりません

【計算方法】

(要支援等の人数×0)+(要介護度1の人数×1)+ (要介護度2の人数×2)+(要介護度3の人数×3)+ (要介護度4の人数×4)+(要介護度5の人数×5) /利用者合計

通所介護(デイサービス)の経営|利用者一人当たり人件費

利用者一人当たり人件費

デイサービスの経営において利用者様一人当たりの人件費の算出は、どの程度の人的資源が充てられているかを示す指標となります。値が著しく小さい場合、サービスに必要な人員に不足が生じている、または労働条件に課題が生じている可能性があります。

一方、著しく値が大きい場合 は、業務効率や職員構成に課題が生じている可能性があるでしょう。

【計算方法】

人件費÷平均利用者数

通所介護(デイサービス)の経営|利用者一人当たりサービス活動費用

利用者一人当たりサービス活動費用

利用者一人当たりに要したサービス活動費用は適切なサービスを提供する上で必要な資源配分がなされているか、それに見合う費用が発生しているか、費用が過大となって効率性に課題がないかを判断する際の基本となる指標となります。

【計算方法】

サービス活動費用計(売上高) ÷ 平均利用者数

通所介護(デイサービス)の経営|利用者1人当たりサービス活動収益

利用者1人当たりサービス活動収益

通所介護経営において収益性を把握する上で欠かせないのが、利用者一人当たりのサービス活動収益(売上高)です。この指標は、利用者様一人当たりの収益規模を示す指標である。前述の「利用者様一人当たり人件費」や「利用者様一人当たりのサービス活動費用」と比較することで、利用者一人当たりのサービス活動収益とサービス活動費用を対比して理解することができます。

【計算方法】

サービス活動収益計÷平均利用者数

通所介護(デイサービス)の経営|介護福祉士比率

通所介護経営において収益性を高める要因の一つ加算として「サービス提供体制加算」があります。同加算は介護福祉士の比率によって評価される加算であり、適正に配置することで事業所の質の担保を図り、かつ利用者一人当たりのサービス活動収益を高めることができます。

【計算方法】

介護福祉士の人数÷従業員人数

通所介護(デイサービス)の経営|水道光熱費比率

通所介護において入浴加算を算定している事業所であれば、水道光熱費のコスト管理を行う必要があります。

サービス活動収益(売上高)に対して5%程度以下が良いとされています。

補足:サービス活動収益(売上高)に対して賃借料比率は10%程度以下が良いとされています

通所介護(デイサービス)の経営|利益率

通所介護の経営において利益率(売上高純利益率)は、売上高に対する純利益の割合を示す税金を控除した後の指標で、会社の最終的な収益力、会社の実力を示す基本指標である。

サービス活動収益(売上高)に対して5-10%程度が良いとされています。これより大きく高ければ人件費率が適切かどうかのチェックを行い、大きく低ければ無駄がないかをチェックしていきましょう。

通所介護(デイサービス)の経営指標|損益分岐点

通所介護(デイサービス)の重要な経営指標としては損益分岐点(BEP)があります。損益分岐点とは収益の額と費用の額とが等しくなる売上高であり、投下した費用が回収できる売上高です。つまり、定期的に収益がコストを上回っている状態を確認するため経営指標と言えます。

開業したばかりであれば、キャッシュフローの状態もマイナスであることから、利益性を追求することは正しいことかもしれません。一方で、利用者様獲得のための経営指標にフォーカスしたいと思う経営者もいるかもしれません。ただ、通所介護というビジネスモデルにおいて収益と費用が均衡する損益分岐点について何も考えていないというのはあまりにも責任がなさすぎるように思われます。損益分岐にたどり着くことができなければ、お金と時間を無駄にすることもありますし、従業員にも迷惑をかけてしまうこともあります。経営指標として重要視しつつ、取り組んでいきましょう。

計算方法

損益分岐点売上高=固定費÷{(売上高−変動費)÷売上高}

変動費

売上高が0円の時、0円となる費用。
売上高が増えれば、増える費用。

例) 材料費、仕入、販売手数料など

固定費

売上高が0円の時、0円とならない費用。
売上高の増減に、関係しない費用。

例) 人件費、地代家賃、車やプリンターなどのリース料など

通所介護(デイサービス)の経営分析と経営改善

経営指標

通所介護の経営を安定的に行うためには、上図に示すような平均値との乖離について経営分析すること第1歩です。

その上でそれぞれの経営指標をもとにコスト管理を行いつつ、デイサービスの経営を行っていく必要があります。特に平成30年度介護報酬改定では、「自立支援・重度化防止」を合言葉として、国策として「利用者様の生活(個人)を支援するデイサービス」が求められるようになりました。今後デイサービスの経営を安定的に行うためには、①人件費率(機能訓練指導員の配置により個別機能訓練加算がとれることでより高まります)②利用者様一人当たりのサービス収益率③稼働率の3点が最も重要です。少数精鋭で行うための「人件費の最適化」「利用者様一人当たりの売上高を上げるための個別機能訓練加算中重度ケア加算認知症加算などの加算算定」、そして「稼働率向上を目指した営業」が重要です。

この数値を高めるための工夫とコスト管理を徹底して行うことで、デイサービスの経営指標は劇的に改善します。

画像出典

平成26年度老人デイサービスセンターの経営状況について

デイサービスの経営まとめ

デイサービスの経営を理想的に行っていくためには、取れる加算をしっかりと取ること、余剰な人員配置は減らし業務効率化をすること、稼働率を上げるための営業対策を行うことが重要です。現場の声を重視しすぎるあまりイノベーションを起こせないと本末転倒です。


経営者として「従業員には働く仕組みを、お客様には満足のいくサービスを」と事実論ベースに関わりたいものです。
あなたのデイサービスに関わると「ご利用者様は楽しい、笑顔になる」「スタッフは心も豊かになり、お金も貯まる」という活動が理想的なのではないでしょうか。

また、「現場の忙しい」という声ではなく、「忙しいけれども、働いていて楽しい」「自分がいる価値がここにある」このように従業員の方に思ってもらえる工夫こそ、オーナーシップを生み出し、より事業所は活性化します。
 

デイサービスの経営や運営は様々な視点から行っていくことが重要だといえます。これまでのやり方に加えて、稼働率アップさせるための営業戦略や、より業務効率化・生産性向上に貢献するITツールの導入などを検討していってもよろしいのではないでしょうか。

これら経営や運営に関する記事を一挙にまとめていますので、該当する記事を読んでいただき少しでも参考にしていただけたらと思います。

→→ 【完全保存版】デイサービス経営改善・運営・営業戦略・ITツール・実地指導・接遇に関する記事まとめ|随時更新

 

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著者プロフィール

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Rehab for JAPAN代表取締役社長。法政大学大学院(CSR専攻)卒業し、政策学修士を取得。作業療法士として、在宅介護(通所介護・訪問看護)や医療機関(救急)など現場経験をした後、株式会社Rehab for JAPANを創業した。主な書籍として『幸せな職場の作り方』ラグーナ出版、2014(共著)などがある。

~筆者の想い~
介護報酬マイナス改定や職員不足など介護経営は厳しい時代です。介護事業所を強くし、安定した介護経営をしていくためには業務効率化のためのIT導入や集客アップのための営業戦略、他社サービスとの差別化などが重要です。介護経営者様・管理者様向けに「介護経営のノウハウ」や「介護マネジメント」についてわかりやすく解説します。

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