平成30年度の介護報酬改定の論点|通所介護の機能訓練に着目して

介護報酬改定

更新日:2024/04/07

平成30年度(2018年)の介護報酬改定では、改定率0.54%と若干の引き上げ改定になります。その中でも通所介護では、インセンティブ制度や生活機能向上連携加算など自立支援を本軸に据えた改定となります。一方、大規模通所介護事業所だけでなく地域密着型通所介護事業所の基本報酬の引き下げやサービス提供時間の区分見直しなどによる引き下げも行われます。本稿では、そんな平成30年度の介護報酬改定についてポイントを絞ってご紹介します。

この記事の目次

平成30年度介護報酬改定と通所介護(デイサービス)について

人口変化

平成30年度の介護報酬改定では「自立支援・重度化防止」を本軸に、改定率プラス0.54%の介護報酬引き上げが行われます。通所介護(デイサービス)においてはアウトカム評価生活機能向上連携加算機能訓練指導員の対象資格緩和などの自立支援に向けた取り組みが行われます。一方、サービス提供時間区分(これまで3-5時間,5-7時間,7-9時間で行っていた提供時間が一時間区切りになります)の見直しによる実質的な基本報酬引き下げが行われます。

参照:厚生労働省「平成30年度介護報酬改定について」

介護報酬改定の背景

2000年に介護保険法が制定してから、「3年に1度」を目安に介護保険制度の改定(介護報酬改定)が行われてきました。この介護保険法が制定した経緯として、諸外国と比較し我が国の高齢化が急速であることにあります。1994年に高齢化率は14%を超え「高齢社会」に突入し、団塊の世代が定年退職を迎えた2007年には21%を超え、諸外国に先駆け「超高齢社会」になりました。総務省(2014)によると、2014年時点での高齢者数は3,300万人であり、国立社会保障・人口問題研究所(2012)の日本の将来推計人口によると、今後年々増加し2040年に3900万人弱規模でピークアウトするまで増加基調は続くと見込まれています。

また、同研究所によると、高齢化は都市部で急速に進展するとされており、2005年から2025年までの20年間における高齢者の増加数のうち約60%は東京都、神奈川県、大阪府、埼玉県、愛知県、千葉県、北海道、兵庫県、福岡県の都市部(特に関東圏)で占めるようになると報告してます。

他方、人口構造変化のターニングポイントは2025年であり、金の卵として戦後の象徴とされている1947~1949年生まれの「団塊の世代」が75歳以上となる時期とされています。東京都福祉保健局高齢対策本部(2011)によると、後期高齢者(75歳以上)は前期高齢者(65歳以上~75歳未満)の6.7倍の認定率になると報告し、秋山(2010)は“60代後半から70代前半に加齢による日常生活自立度に変化がみられる”と報告しています。

これらの要因もあり、厚生労働省は地域包括ケアシステムを段階的に構築しつつ、介護現場に「自立支援」「重度化防止」の取り組みを推進しています。

通所介護(デイサービス)と高齢者

現在、日本の高齢者人口は3,449万人(平成28年9月15日現在推計)で、うち要介護認定を受けている高齢者(65歳以上)は634.3万人で18%の方が受給しています。そのうち3人に1人、約200万人の高齢者が通所介護(デイサービス)を利用しています。かかる状況下で、全国に約43,000事業所(平成27年度)ある通所介護(デイサービス)施設における利用者の約7割は要介護1・2の方であり、日常生活や心身機能の維持向上を図るための機能訓練が求められているのです。通所介護施設(デイサービス)は介護保険下での運営であり、国民の税金から報酬が支払われています。つまり国から認められた施設であり、全世代を超えて納得感のあるサービスを行わなければなりません。

これらの考えを前提に平成30年度介護報酬改定では通所介護の「自立支援」に対する考え方やあり方について、専門家および国(厚生労働省)とで分科会を開催し、介護保険法として制度化に至ります。

参照:秋山弘子(2010)「長寿時代の科学と社会の構想,科学」

通所介護(デイサービス)における介護報酬改定のポイント

通所介護における平成30年度の介護報酬改定まで残り3ヶ月(平成29年1月時点)となりました。これまでの審議会(厚生労働省)で決まった介護報酬改定のポイントについて整理してお伝えします

 生活機能向上連携加算の創設

小規模通所介護事業所でも個別機能訓練加算を算定することができるようになるためにも、国の方針である「自立支援」を推進するためにも、「生活機能向上連携加算」を創設する方針を固めた。

算定要件○ 訪問リハビリテーション若しくは通所リハビリテーションを実施している事業所又はリハビリテーションを実施している医療提供施設(原則として許可病床数200床未満のものに限る。)の理学療法士・作業療法士・言語聴 覚士、医師が、通所介護事業所を訪問し、通所介護事業所の職員と共同で、アセスメントを行い、個別機能訓練計画を作成すること
○ リハビリテーション専門職と連携して、個別機能訓練計画の進捗状況を3月ごとに1回以上評価し、必要に応じて計画・訓練内容等の見直しを行うこと。
単位200単位/月※個別機能訓練加算を算定している場合は100単位/月
業務内容通所介護の職員と協働でアセスメントを行い、個別機能訓練計画を作成する

 ADL維持等加算

利用者のADLを維持・改善させた度合いが一定のレベルを超えている通所介護事業所が、その後の一定期間にわたって高い対価を得られるようになります。自立支援・重度化防止の観点から、一定期間内に当該事業所を利用した者のうち、ADL(日常生活動作)の維持又は改善の度合いが 一定の水準を超えた場合を新たに評価する。

算定要件○ 以下の要件を満たす通所介護事業所の利用者全員について、評価期間(前々年度の1月から12月までの1年間)終了後の4月から3月 までの1年間、新たな加算の算定を認める。

○ 評価期間に連続して6月以上利用した期間(注1)(以下、評価対象利用期間)のある要介護者(注2)の集団について、以下の要件を 満たすこと。

① 総数が20名以上であること

② ①について、以下の要件を満たすこと。

a 評価対象利用期間の最初の月において要介護度が3、4または5である利用者が15%以上含まれること

b 評価対象利用期間の最初の月の時点で、初回の要介護・要支援認定があった月から起算して12月以内であった者が15%以下であること。

c 評価対象利用期間の最初の月と、当該最初の月から起算して6月目に、事業所の機能訓練指導員がBarthel Index(注3)を測定しており、その結果がそれぞれの月に報告されている者が90%以上であること

d cの要件を満たす者のうちBI利得(注4)が上位85%(注5)の者について、各々のBI利得が0より大きければ1、0より小さけれ ば-1、0ならば0として合計したものが、0以上であること。 

注1 複数ある場合には最初の月が最も早いもの。

注2 評価対象利用期間中、5時間以上の通所介護費の算定回数が5時間未満の通所介護費の算定回数を上回るものに限る。

注3 ADLの評価にあたり、食事、車椅子からベッドへの移動、整容、トイレ動作、入浴、歩行、階段昇降、着替え、排便コントロール、排尿コントロール の計10項目を5点刻みで点数化し、その合計点を100点満点として評価するもの。

注4 最初の月のBarthel Indexを「事前BI」、6月目のBarthel Indexを「事後BI」、事後BIから事前BIを控除したものを「BI利得」という。

注5 端数切り上げ○ また上記の要件を満たした通所介護事業所において評価期間の終了後にもBarthel Indexを測定、報告した場合、より高い評価を行う ((Ⅰ)(Ⅱ)は各月でいずれか一方のみ算定可。) 。
単位ADL維持等加算(Ⅰ)3単位/月

ADL維持等加算(Ⅱ) 6単位/月

 機能訓練指導員の確保の促進

機能訓練指導員の確保を促進し、利用者様の心身機能の維持を促進するためにこれまでの機能訓練指導員(PT、OT、ST、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師)に、6ヵ月以上の実務経験を持つ鍼灸師(はり師・きゅう師)を追加となりました。

算定要件一定の実務経験を有するはり師、きゅう師とは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師の資格を有する機能訓練指導員を配置した事業所で6月以上勤務し、機能訓練指導に従事した経験を有する者とする。

 栄養スクリーニング加算と栄養改善加算

栄養改善加算については管理栄養士1名以上の配置が要件から、外部の管理栄養士の実施でも算定を認めることとなりました。管理栄養士以外の介護職員などでも実施可能な栄養スクリーニングを行い、ケアマネジャーに栄養状態に関する情報を文書で共有した場合の評価を創設となります。

単位数150単位/回(変更なし)

栄養スクリーニング加算 5単位/回

※6月に1回を限度とする
算定要件 栄養改善加算

当該事業所の職員として、又は外部(他の介護事業所・医療機関・栄養ケア・ステーション)との連携によ り管理栄養士を1名以上配置していること。

栄養スクリーニング加算

サービス利用者に対し、利用開始時及び利用中6か月ごとに栄養状態について確認を行い、当該利用者の栄養状態に係る情報(医師・歯科医師・管理栄養士等への相談提言を含む。)を介護支援専門員に文書で共有した場合に算定する。

 基本報酬のサービス提供時間区分の見直し

サービス提供時間の見直し

通所介護の基本報酬は2時間ごとの設定としているが、事業所のサービス提供時間の実態を踏まえ、サービス提供時間区分を1時間ごとに細分化します。

参照:厚生労働省(2018)平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について

 規模別の基本報酬の見直し

通所介護の基本報酬は大規模型の通所介護事業所はスケールメリットが働き、事業規模が大きいほど経営状況は安定しているとされ、大規模型通所介護事業所は大幅な引き下げ、通常規模型は一部引き下げ、小規模型は引き上げとなります。

 現在所要時間7時間以上9時間未満改定後所要時間7時間以上8時間未満改定後所要時間8時間以上9時間未満
地域密着型通所介護要介護1 735単位
要介護2 868単位
要介護3 1,006単位
要介護4 1,144単位
要介護5 1,281単位
要介護1 735単位
要介護2 868単位
要介護3 1,006単位
要介護4 1,144単位
要介護5 1,281単位
要介護1 764単位
要介護2 903単位
要介護3 1,046単位
要介護4 1,190単位
要介護5 1,332単位
通常規模型通所介護要介護1 656単位
要介護2 775単位
要介護3 898単位
要介護4 1,021単位
要介護5 1,144単位
要介護1 645単位
要介護2 761単位
要介護3 883単位
要介護4 1,003単位
要介護5 1,124単位
要介護1 656単位
要介護2 775単位
要介護3 898単位
要介護4 1,021単位
要介護5 1,144単位
大規模型通所介護(Ⅰ)要介護1645単位
要介護2 762単位
要介護3 883単位
要介護4 1,004単位
要介護5 1,125単位
要介護1 617単位
要介護2 729単位
要介護3 844単位
要介護4 960単位
要介護5 1,076単位
要介護1 634単位
要介護2 749単位
要介護3 868単位
要介護4 987単位
要介護5 1,106単位
大規模型通所介護(Ⅱ)要介護1 628単位
要介護2 742単位
要介護3 859単位
要介護4 977単位
要介護5 1,095単位
要介護1 595単位
要介護2 703単位
要介護3 814単位
要介護4 926単位
要介護5 1,038単位
要介護1 611単位
要介護2 722単位
要介護3 835単位
要介護4 950単位
要介護5 1,065

規模別の基本報酬の見直し(追加資料)

さらに、平成30年度介護報酬改定での介護報酬見直し案として「所要時間3時間以上5時間未満の場合」「所要時間5時間以上7時間未満の場合」についても発表されており、大規模型通所介護は5〜6%の大幅な引き下げ、通常規模型通所介護は5%程度、地域密着型通所介護は5%程度の引き下げとなります。

 現在所要時間3時間以上5時間未満改定後所要時間3時間以上4時間未満改定後所要時間4時間以上5時間未満
地域密着型通所介護要介護1 426単位
要介護2 488単位
要介護3 552単位
要介護4 614単位
要介護5 678単位
要介護1 407単位
要介護2 466単位
要介護3 527単位
要介護4 586単位
要介護5 647単位
要介護1 426単位
要介護2 488単位
要介護3 552単位
要介護4 614単位
要介護5 678単位
通常規模型通所介護要介護1 380単位
要介護2 436単位
要介護3 493単位
要介護4 548単位
要介護5 605単位
要介護1 362単位
要介護2 415単位
要介護3 470単位
要介護4 522単位
要介護5 576単位
要介護1 380単位
要介護2 436単位
要介護3 493単位
要介護4 548単位
要介護5 605単位
大規模型通所介護(Ⅰ)要介護1 374単位
要介護2 429単位
要介護3 485単位
要介護4 539単位
要介護5 595単位
要介護1 350単位
要介護2 401単位
要介護3 453単位
要介護4 504単位
要介護5 556単位
要介護1 368単位
要介護2 422単位
要介護3 477単位
要介護4 530単位
要介護5 585単位
大規模型通所介護(Ⅱ)要介護1 364単位
要介護2 417単位
要介護3 472単位
要介護4 524単位
要介護5 579単位
要介護1 338単位
要介護2 387単位
要介護3 438単位
要介護4 486単位
要介護5 537単位
要介護1 354単位
要介護2 406単位
要介護3 459単位
要介護4 510単位
要介護5 563単位
 現在所要時間5時間以上7時間未満改定後所要時間5時間以上6時間未満改定後所要時間6時間以上7時間未満
地域密着型通所介護要介護1 641単位
要介護2 757単位
要介護3 874単位
要介護4 990単位
要介護5 1107単位
要介護1 641単位
要介護2 757単位
要介護3 874単位
要介護4 990単位
要介護5 1107単位
要介護1 662単位
要介護2 782単位
要介護3 903単位
要介護4 1023単位
要介護5 1144単位
通常規模型通所介護要介護1 572単位
要介護2 676単位
要介護3 780単位
要介護4 884単位
要介護5 988単位
要介護1 558単位
要介護2 660単位
要介護3 761単位
要介護4 863単位
要介護5 964単位
要介護1 572単位
要介護2 676単位
要介護3 780単位
要介護4 884単位
要介護5 988単位
大規模型通所介護(Ⅰ)要介護1 562単位
要介護2 665単位
要介護3 767単位
要介護4 869単位
要介護5 971単位
要介護1 533単位
要介護2 631単位
要介護3 728単位
要介護4 824単位
要介護5 921単位
要介護1 552単位
要介護2 654単位
要介護3 754単位
要介護4 854単位
要介護5 954単位
大規模型通所介護(Ⅱ)要介護1 547単位
要介護2 647単位
要介護3 746単位
要介護4 846単位
要介護5 946単位
要介護1 514単位
要介護1 514単位
要介護3 702単位
要介護4 796単位
要介護5 890単位
要介護1 532単位
要介護2 629単位
要介護3 725単位
要介護4 823単位
要介護5 920単位

運営推進会議の開催方法の緩和(小規模通所のみ)

現在認められていない複数の通所介護事業所の合同開催について、以下の要件を満たす場合に認める。

利用者・家族は匿名とするなど個人情報やプライバシーを保護すること。
同一の日常生活圏域内に所在する事業所であること。

 設備に係る共用の明確化

通所介護と訪問介護が併設されている場合に、利用者へのサービス提供に支障がないようであれば、基準上両方のサービスに規定がある事務室または基準上規定がない玄関、廊下、階段などの設備についても共用が可能としました。その際、併設サービスが訪問介護である場合に限らず、共用が可能であることを明確にし、認知症対応型通所介護では通所介護と同じ時間帯・場所で実施することが禁止されているサービスのみ例外とする。

 共生型通所介護_生活相談員配置等加算

介護保険と障害福祉、どちらかの制度のもとでデイサービスを提供している事業所が希望すれば、基本的に全て共生型サービスの指定を受けられるようになります。介護保険の基準のみを満たす事業所の障害報酬は、現行の基準該当サービスを参考にします。一方で、障害福祉の基準のみを満たす事業所の介護報酬は、65歳を迎えた障害者の介護保険への移行に支障をきたさないように、おおむね障害報酬の水準を担保する。また、生活相談員やサービス管理責任者を配置し、かつ、地域交流や認知症カフェなどを実施している場合に評価する加算を設定するようになります。また、通所介護事業所に係る加算は、各加算の算定要件を満たした場合に算定できるようになります。

単位数障害福祉制度の生活介護事業所が、要介護者へのデイサービスを行う場合基本報酬 所定単位数に93/100を乗じた単位数(新設) 生活相談員配置等加算 13単位/日(新設)
算定要件共生型通所介護事業所について、生活相談員社会福祉士等)を配置し、かつ、地域に貢献する活動(地域交流の場の提供、認知症カフェ等)を実施していること。 

介護職員処遇改善加算

平成30年度介護報酬改定では介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)については廃止となります。理由は要件の一部を満たさない事業者に対し、減算された単位数での加算の取得を認める区分であることや、当該区分の取得率や報酬体系の簡素化を行うためとされています。ただし、一定の経過措置期間を設けることされています。

算定要件介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)については、別に厚生労働大臣が定める期日(までの間に限り算定することとする。※ 平成30年度予算案に盛り込まれた「介護職員処遇改善加算の取得促進支援事業」により、加算の新規の取得や、より上位の区分 の取得に向けて、事業所への専門的な相談員(社会保険労務士など)の派遣をし、個別の助言・指導等の支援を行うとともに、本事業の実施状況等を踏まえ、今後決定。

「介護離職ゼロ」を掲げる政府方針として、介護福祉士を確保することは1億総活躍社会の理念にとされています。過去に「処遇改善加算」として介護士の給与を実質1~2万円アップなどの改定が行われてきましたが、高齢者数の延伸による介護士不足の打開に向け、今後は8万円相当の賃上げを行う方針で調整が進んでいます。具体的には、介護サービス事業所における勤続年数10年以上介護福祉士について、月額平均8万円相当の処遇改善を行うとされています。ただし、実施時期については平成30年度介護報酬改定4月ではなく、2019年10月で調整中です。

参照:厚生労働省(2018)介護報酬改定について

療養通所介護における平成30年度介護報酬改定のポイント

 平成30年度介護報酬改定に向け、政府は「自立支援・重度化防止」を軸に改定を行います。上述した通所介護の改定の内容については「機能訓練指導員確保の推進」や「アウトカム評価の推進」、そして「サービス提供時間の見直し」により通常規模・大規模事業所においては実質引的に引き下げ方向で決定しています。療養通所介護についての方針は大きく分けて以下の4つであり、基本方針は現状とほとんど変化はしていません。その内容について確認して参りましょう。

療養通所介護の定員数の見直し

療養通所介護において、障害福祉サービス等である重症心身障害児・者の方々の児童発達支援等を実施している事業所が多いことを踏まえ、更に地域共生社会の実現に向けた取組を推進する観点から、利用定員数を9名以下から18名以下へと引き上げが行われます。

療養通所介護の栄養スクリーニング加算の創設

管理栄養士以外の介護職員等でも実施可能な栄養スクリーニングを行い、介護支援専門員に栄養状態に係る情報を文書で共有した場合の評価を創設することになりました。

単位数栄養スクリーニング加算 5単位/回※6月に1回を限度とする
算定要件サービス利用者に対し、利用開始時及び利用中6か月ごとに栄養状態について確認を行い、当該利用者の栄養状態に係る情報(医師・歯科医師・管理栄養士等への相談提言を含む。)を介護支援専門員に文書で共有した場合に算定する。

療養通所介護における運営推進会議の緩和 

地域密着型通所介護と同様に療養通所介護においても、運営推進会議の効率化および事業所間ネットワーク形成の促進を目的に、現在認められていない複数の事業所の合同開催について、以下の要件を満たす場合に認められました。

  1. 利用者及び利用者家族については匿名とするなど、個人情報・プライバシーを保護すること。
  2. 同一の日常生活圏域内に所在する事業所であること。

療養通所介護における介護職員処遇改善加算の見直し

平成30年度介護報酬改定における療養通所介護の介護職員処遇改善加算については通所介護事業所と同様に平成30年度介護報酬改定では介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)については廃止となります。詳細は上述している「処遇改善加算の見直し」を参考にされたい。

認知症対応型通所介護における平成30年度介護報酬改定のポイント

認知症対応型通所介護における平成30年度介護報酬改定では地域密着型通所介護および通所介護と同様に介護報酬の改定が行われます。主なポイントは以下の通りとなっております。

生活機能向上連携加算の創設
機能訓練指導員確保の促進
栄養スクリーニング加算の創設
サービス提供時間の見直し
共用型認知症対応通所介護の利用定員の見直し
運営推進会議の開催方法の緩和
設備に関わる共用部分の明確化
処遇改善加算の見直し

基本的な改定事項については上述する通所介護と同様となっており、認知症対応型通所介護の特徴的な部分について抜粋しご説明します。

認知症対応型通所介護におけるサービス提供時間の見直し 

認知症対応型通所介護の基本報酬は、これまで2時間ごとのサービス提供時間での設定となっていましたが、1時間ごとに見直されます。認知症対応型通所介護においては、基本報酬の若干の引き上げとなっております。

 現在7時間以上9時間未満改定後7時間以上8時間未満改定後8時間以上9時間未満
単独型事業所要介護1 985単位
要介護2 1,092単位
要介護3 1,199単位
要介護4 1,307単位
要介護5 1,414単位
要介護1 985単位
要介護2 1,092単位
要介護3 1,199単位
要介護4 1,307単位
要介護5 1,414単位
要介護1 1,017単位
要介護2 1,127単位
要介護3 1,237単位
要介護4 1,349単位
要介護5 1,459単位
併設型事業所要介護1 885単位
要介護2 980単位
要介護3 1,076単位
要介護4 1,172単位
要介護5 1,267単位
要介護1 885単位
要介護2 980単位
要介護3 1,076単位
要介護4 1,172単位
要介護5 1,267単位
要介護1 913単位
要介護2 1,011単位
要介護3 1,110単位
要介護4 1,210単位
要介護5 1,308単位
共用型事業所要介護1 506単位
要介護2 524単位
要介護3 542単位
要介護4 560単位
要介護5 579単位
要介護1 518単位
要介護2 537単位
要介護3 555単位
要介護4 573単位
要介護5 593単位
要介護1 535単位
要介護2 554単位
要介護3 573単位
要介護4 592単位
要介護5 612単位

共用型認知症対応型通所介護の利用定員の見直し

認知症対応型通所介護における平成30年度の介護報酬改定では、共用型認知症対応型通所介護の普及促進を図るため、ユニットケアを行っている地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護における利用定員数を、「1施設当たり3人以下」から「1ユニット当たりユニットの入居者と合わせて12人以下」に見直しが行われました。

平成30年度介護報酬改定に向けたスケジュール

スケジュール

平成30年度の介護報酬改定のスケジュールをご紹介します。それぞれの時期に厚生労働省より議論の内容や案について開示がありますのでみさなんもアンテナを立てて、今後の動向をチェックしておきましょう。

2017年(平成29年)4月~夏頃各介護サービス等の主な論点について議論、事業者団体ヒアリング
秋頃~12月各介護サービス等の具体的な方向性について議論
12月中旬報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・取りまとめ
2018年(平成30年度)政府予算編成1~2月頃介護報酬改定案 諮問・答申
3月上旬単位や要件など公表(官報告示) 
3月下旬厚労省改定Q&A 
4月平成30年度介護報酬改定
【関連記事】
これまでの介護保険制度改定の経緯と今後の介護報酬改定の動向
合わせて介護報酬改定に至るまでの経緯について振り返ってみませんか?

平成30年度の介護報酬改定に関するQ&A

ここで、厚生労働省が公表している平成30年度の介護報酬改定に関する通所介護のQ&Aをまとめてご紹介します。

個別機能訓練加算について

(問32) はり師・きゅう師を機能訓練指導員とする際に求められる要件となる、「理学療 法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師 の資格を有する機能訓練指導員を配置した事業所で六月以上機能訓練指導に従事した経験」について、その実務時間・日数や実務内容に規定はあるのか。
(答)要件にある以上の内容については細かく規定しないが、当然ながら、当該はり師・きゅう師が機能訓練指導員として実際に行う業務の頻度・内容を鑑みて、十分な経験を得たと当該施設の管理者が判断できることは必要となる。
(問 33) はり師・きゅう師を機能訓練指導員として雇う際に、実際に、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師の資格を有する機能訓練指導員を配置した事業所で六月以上機能訓練指導に従事した経験を 有することをどのように確認するのか。
(答)例えば、当該はり師・きゅう師が機能訓練指導に従事した事業所の管理者が書面で それを証していることを確認すれば、確認として十分である。
【関連記事】
個別機能訓練加算とは?算定要件から実践プログラムまで徹底解説します

栄養改善加算について

(問34)通所サ―ビスにおいて栄養改善加算を算定している者に対して管理栄養士によ る居宅療養管理指導を行うことは可能か。
(答) 管理栄養士による居宅療養管理指導は通院又は通所が困難な者が対象となるため、 栄養改善加算の算定者等、通所サービス利用者に対して当該指導を行うことは想定さ れない。

生活機能向上連携加算について

(問35)指定通所介護事業所は、生活機能向上連携加算に係る業務について指定訪問リ ハビリテーション事業所、指定通所リハビリテーション事業所又は医療提供施設と委 託契約を締結し、業務に必要な費用を指定訪問リハビリテーション事業所等に支払う ことになると考えてよいか。
(答) 貴見のとおりである。なお、委託料についてはそれぞれの合議により適切に設定す る必要がある。
(問36)生活機能向上連携加算は、同一法人の指定訪問リハビリテーション事業所若し くは指定通所リハビリテーション事業所又はリハビリテーションを実施している医 療提供施設(原則として許可病床数 200 床未満のものに限る。)と連携する場合も算 定できるものと考えてよいか。
(答) 貴見のとおりである。なお、連携先について、地域包括ケアシステムの推進に向けた在宅医療の主たる担 い手として想定されている 200 床未満の医療提供施設に原則として限っている趣旨 や、リハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の有効活用、 地域との連携の促進の観点から、別法人からの連携の求めがあった場合には、積極的 に応じるべきである。

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生活機能向上連携加算とは|算定要件と平成30年度の新設要件について

ADL維持等加算について

(問37) 平成30年度の ADL 維持等加算の算定の可否を判断する場合、平成29年1月 から12月が評価対象期間となるが、この時期に、加算を算定しようとする指定通所 介護事業所が指定介護予防通所介護事業所と一体的に運営されていた場合、指定居宅 サービス基準第 16 条の2イ(1)の「利用者」には、当該指定介護予防通所介護事 業所の利用者も含まれるか。
(答) 含まれない。本件加算は、指定通所介護及び指定地域密着型通所介護が対象である。 なお、指定居宅サービス基準第 16 条の2イ(3)に「要支援認定」とあるのは、「利 用者」に要支援者を含むとの意味ではなく、初回の要支援認定の後、評価対象利用開 始月までの間に要介護認定を受ける場合を想定したものである。
(問38)ADL 維持等加算について、評価対象利用期間は指定通所介護事業所又は指定地域 密着型通所介護事業所を連続して6月以上利用した期間とされているが、1)この「連 19 続して利用」とは、毎月1度以上利用していることを指すのか。2)この「連続して 6月以上利用」は評価対象期間内である必要があるのか。3)6月より多く連続して 利用している場合、当該連続しているすべての月を評価対象利用期間とするのか。
(答)1)貴見のとおりである。 2)貴見のとおりである。評価対象利用期間は、評価対象期間の一部であることを想 定している。つまり、その最初の月から最後の月まで、評価対象期間に含まれてい る必要がある。3)連続しているすべての月ではなく、その中に最初の月が最も早い6月の期間を評 価対象利用期間とする。例えば、2月から11月まで連続利用がある場合は、2月 から11月までではなく、2月から7月までを評価対象利用期間とする。 
(問39)ADL 維持等加算(Ⅰ)及び(Ⅱ)は、算定しようとする月の5時間未満の通所介 護の算定回数が5時間以上の通所介護の算定回数以上の利用者でも算定できるのか。
(答) できる。

参照:平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1) (平成30年3月23日) 

まとめ

2018

介護保険が創立して18年目に突入することになりますが、2025年に向け高齢化率が進む日本において、社会保障費をどのようにしたら削減できるかが課題となっています。そのような中で、平成27年度から通所介護の介護報酬もマイナス改定、そして国は超高齢社会の持続可能性を考慮し「自立支援・重度化防止」を軸に平成30年度介護報酬改定を行います。利用者様の身体機能や生活などを「より良く」するため、通所介護事業所もこれまでの方針や経営戦略を精査し、進めていかなければなりません。

現場で活躍される介護事業所様においても「人材不足の問題を解決する介護ロボットの活用」「適切な加算算定」「労働生産性の向上および業務効率化」など、時代のニーズに合わせて「変化」をすることは生き残りをかけた戦いとなります。

平成30年度介護報酬改定まで残り数ヶ月。「従業員には働く仕組みを、利用者様には満足のいくサービスを」改めて考えて行きましょう!

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この記事の著者

作業療法士  藤本 卓

作業療法士として大手救急病院に入職。救急医療や訪問リハビリ、回復期リハビリテーション病院の管理職として従事後、株式会社Rehab for JAPANに参画。作業療法士、呼吸療法認定士、住環境福祉コーディネーター1級、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種、生活習慣病アドバイザーの資格を有し、専門的な知識と現場での知見を元に、事業所の支援を行う。機能特化型デイサービスでは、2ヶ月で「稼働率72%から95%に」アップさせるなどの実績をもつ。

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