個別機能訓練加算ⅠとⅡの7つの違い

デイサービスで算定できる個別機能訓練加算には、個別機能訓練加算Ⅰと個別機能訓練加算Ⅱがあります。
この加算を算定する場合は、それぞれの加算に対して利用者様に適した目標を明確に立て、個別機能訓練計画書を作成、機能訓練メニューを提供する必要があります。
個別機能訓練加算ⅠとⅡの算定要件の違い
まずは算定要件をそれぞれ以下のようにまとめてみました。
個別機能訓練加算Ⅰの算定要件 |
1. 単位数 2. 人員配置 3. 実施者 4. 目的 5. 訓練の内容 6. 実施範囲 7. 実施環境 |
個別機能訓練加算Ⅱの算定要件 |
1. 単位数 2. 人員配置 3. 実施者 4.目的 5. 訓練の内容 6. 実施範囲 7. 実施環境 |
大きな違いは「単位数」と「実施範囲」
わかりやすい違いは単位数です。加算Ⅰの単位数に比べて加算Ⅱが10単位高く算定できるのは、加算Ⅱのほうが身体機能を伴う応用動作の獲得を目的としているため難易度が高く、機能訓練指導員が直接指導することが求められているからです。
実施範囲については、加算Ⅰでは人数の規定がないのに対して、加算Ⅱでは、5名程度以下という規定が設けられています。これは、同じような悩みを持つ利用者様同士が少人数の集団の中でお互いに励ましあったり、成功体験を共有したりしながら機能訓練に取り組むことで、日常生活の動作に自信をつけるきっかけを与えるほか、困ったときの相談相手や心の支えになるようにという意図があります。
ちなみに、加算Ⅰ・Ⅱとも、機能訓練指導員の配置が必要ですが、加算Ⅱでは、筋力や体力などの身体機能だけでなく、日常生活動作などの獲得を目指したより具体的な機能訓練を提供する必要があるため、機能訓練指導員は、日常生活訓練に必要な設備を整えるだけでなく、同じ目標を持つ仲間を集めて機能訓練を提供することも重要な役割となります。
【参考資料】 1.厚生労働省ホームページ,社保審-介護給付費分科会 第141回(H29.6.21) 参考資料3,通所介護及び療養通所介護 (参考資料) 2.厚生労働省老健局振興課長, 通所介護及び短期入所生活介護における個別機能訓練加算に関する事務処理手順例及び様式例の提示について |
個別機能訓練加算ⅠとⅡの機能内容の違い

個別機能訓練加算ⅠとⅡで混乱しやすいポイントの1つに訓練内容の違いがあります。
訓練内容は、個別機能訓練計画書のプログラムを立案する上で重要なポイントとなります。この訓練内容の違いは必ず理解しておきましょう。
個別機能訓練加算Ⅰの訓練内容
個別機能訓練加算Ⅰの訓練内容では主に「身体機能に直接的に働きかける訓練」や「疾患・疾病の維持と予防を行う訓練」を提供します。
身体機能に対するプログラム |
・筋力トレーニング ・ストレッチ(関節可動域) ・協調性訓練 ・バランス訓練 など |
疾病・疾患予防に対するプログラム |
・咀嚼・嚥下訓練 ・呼吸訓練 ・パーキンソン体操 ・関節症予防 など |
個別機能訓練加算Ⅱの訓練内容
個別機能訓練加算Ⅱの訓練内容は、「基本動作訓練」「日常生活動作訓練」「家事動作訓練」「趣味・余暇活動」「社会参加」といった5つの生活目標を達成するための訓練を段階的に提供します。
基本動作に対するプログラム |
・寝返り訓練 ・起き上がり訓練 ・立ち上がり訓練 ・床からの立ち上がり訓練など |
日常生活動作に対するプログラム |
・食事動作訓練:箸や自助具の使用、姿勢保持訓練など ・整容動作訓練:歯磨き、洗顔、髭剃りなど ・排泄動作訓練:ズボンの着脱、排尿コントロール、便座からの立ち上がりなど ・更衣動作訓練:上着・ズボンの着脱動作、衣服の準備など ・入浴動作訓練:洗体、洗髪、浴槽のまたぎ動作など |
家事動作に対するプログラム |
・掃除動作訓練:立位バランス、掃除機の操作など ・洗濯動作訓練:衣服の取り出し、洗濯物干し動作など ・調理動作訓練:買い物、包丁の使用、火の取り扱い、注意機能、記憶など |
趣味・余暇活動に対するプログラム |
・囲碁・将棋:長時間の座位保持、手指の巧緻性、認知機能や記憶など ・編み物・手工芸:物品の使用、手指の巧緻性、見当識など ・カラオケ:発声、肺活量、姿勢保持、記憶など ・パソコン:パウスの操作、キーボードの操作など ・園芸:不整地での歩行能力、スコップなどの道具操作、見当識など |
社会参加に対するプログラム |
・町内会の集まりに参加:歩行の耐久性やバランス能力、階段昇降等 ・食事会へ参加: 体力やバランス、嚥下など ・社交ダンスに参加:体力やバランス、記憶、反射神経など |
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個別機能訓練加算ⅠとⅡの3つの共通事項

次に、個別機能訓練加算ⅠとⅡの共通事項には、「目的」「計画書」「記載内容」があります。こちらでは、それぞれの共有事項についてご紹介していきます。
個別機能訓練加算の目的について
個別機能訓練加算ⅠまたはⅡでは、通所介護(デイサービス)において利用者様に住み慣れた地域で在宅生活を継続することができるように、機能訓練指導員(※1)が身体や生活機能の維持または向上を目指し訓練を提供します。
(※1)機能訓練指導員とは次の資格を持ち、業務に携わっている職員を指します。
● 理学療法士
● 作業療法士
● 言語聴覚士
● 看護師
● 柔道整復師
● あん摩マッサージ指圧師
● 鍼灸師(平成30年4月より規制緩和)
個別機能訓練計画書の作成について
個別機能訓練計画書を作成する場合は、ご利用者様の居宅訪問をした上(※2)で、家屋状況やご本人・ご家族の希望を聴取します。
また、ケアマネからのケアプランに則り計画を作成していきます。その後3月ごとに1回以上、ご利用者様の居宅を訪問した上で、利用者又はその家族に対して、機能訓練の内容と個別機能訓練計画の進捗状況等を説明し、訓練内容の見直し等を行うことが義務付けられています。
(※2)平成27年4月の介護報酬改定により、居宅への訪問が要件として追加されました。居宅訪問でのチェックポイントについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
個別機能訓練計画書の記載内容について
個別機能訓練加算ⅠとⅡは共に同じ個別機能訓練計画書用紙に訓練内容を記載して構いません。個別機能訓練を実施した際には、次の内容を必須として記録しておくようにしましょう。
● 実施時間
● 訓練内容
● 担当者
個別機能訓練加算ⅠとⅡに関するQ&A

厚生労働省のQ&Aをもとに個別機能訓練加算ⅠとⅡに関連する注意事項をご紹介します。
【質問1】
個別機能訓練加算ⅠとⅡは並行して行っていいのか。
【回答】
並行して行っても差し支えありません。個別機能訓練加算Ⅰについては、身体機能の向上を目指すことを中心として行われるものですが、個別機能訓練加算Ⅰのみを算定する場合であっても、並行して生活機能の向上を目的とした訓練を実施することを妨げるものではありません。個別機能訓練加算Ⅰを算定している者であっても、別途個別機能訓練加算Ⅱに係る訓練を実施した場合は、同一日であっても個別機能訓練加算Ⅱを算定できますが、この場合にあっては、個別機能訓練加算Ⅰに係る常勤専従の機能訓練指導員は、個別機能訓練加算Ⅱに係る機能訓練指導員として従事することはできず、別に個別機能訓練加算Ⅱに係る機能訓練指導員の配置が必要です。また、それぞれの加算の目的・趣旨が異なることから、それぞれの個別機能訓練計画に基づいた訓練を実施する必要があります。
【質問2】
個別機能訓練加算Ⅰと個別機能訓練加算Ⅱを併算定する場合、1回の居宅訪問でいずれの要件も満たすことになりますか。
【回答】
個別機能訓練加算Ⅰと個別機能訓練加算Ⅱを併算定する場合、それぞれの算定要件である居宅訪問による居宅での生活状況の確認は、それぞれの加算を算定するために別々に行う必要はありません。なお、それぞれの加算で行うべき機能訓練の内容は異なることから、両加算の目的、趣旨の違いを踏まえた上で、個別機能訓練計画を作成する必要があります。
まとめ

個別機能訓練加算Ⅰと個別機能訓練加算Ⅱの違いはご理解いただけましたか。
平成26年度の個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱのプログラムの提供内容を見ていると「関節可動域訓練」や「筋力増強訓練」「歩行練習」が多くを占めており、本来利用者様の生活機能の維持・向上を目的とする個別機能訓練加算Ⅱとの違いが定かではないことが分かります。
まだまだ通所介護の現場ではこの違いの理解が不十分となっており、市区町村からの実施指導でも指摘があっているようです。
今回の記事を参考に、今のうちから個別機能訓練加算Ⅰと個別機能訓練加算Ⅱの違いをしっかりと理解し、利用者様により良い機能訓練を提供できるように心がけていきましょう!
【参考資料】 1.厚生労働省ホームページ,社保審-介護給付費分科会 第128回(H28.3.30) 資料1-3,(3)リハビリテーションと機能訓練の機能分化と その在り方に関する調査研究 (結果概要) |