生き残るデイサービスとは | 通所介護におけるIT活用法

運営ノウハウ

経営

更新日:2022/08/03

デイサービスなどの介護事業所において営業利益を意識しつつ、労働生産性を高める方法の一つとしてIT化を進めることは今後の生き残りに大きく影響します。本稿ではデイサービス事業所にとってIT化のメリットとデメリットについてまとめ、実際の介護現場にどのように落とし込む方法について検討していきます。

デイサービスの業務効率化の手引き」がわかる資料(PDF)を無料プレゼント中!

介護現場でIT化を進めるメリットとは

介護とIT

介護現場におけるICT化は業務効率化を意識しつつ「労働生産性」を高める有効な手段として注目されつつあります。ここでいう労働生産性とは、

労働生産性=付加価値額/労働投入量
※付加価値額:営業利益+人件費+減価償却費
※労働投入量:労働者の人数×時間
※営業利益=「売上総利益」ー「販売費および一般管理費」
※販売費=販売手数料、広告宣伝費など
※一般管理費=人件費、減価償却費、租税公課、交際費、旅費交通費など
※「減価償却費」は、将来に対してどれほどの設備投資を行っているかの目安

という計算式で求められます。つまり、「人件費を高くする」または「従業員一人当たりの業務効率化」により「労働生産性」は高くなることがわかります。

他方、デイサービスセンターの経営状況について調査を行っている独立行政法人福祉医療機構(2015)の資料によると、

赤字施設は、利用率および利用者 1 人 1 日当たりサービス活動収益が低く、従事者 1 人当たり人件費は若干高いため、人件費に見合ったサービス活動収益を得られていない傾向がみられ、事業規模別にみると小規模型の施設の赤字割合が高かった。 さらに、小規模型の施設について収益と費用の主要構成要素とサービス活動収益対サービス活動増減差額比率との関係を分析すると、利用率を一定水準以上に保ち、人員配置・人件費に見合った適切なサービス活動収益を確保していくことが黒字経営におけるポイントであることがわかった。

と報告しています。

このように内閣府や厚生労働省を中心とした「国」は社会保障費の財政難と介護人材難に対応すべく、IT化により持続可能性な超高齢社会の構築を進めているのです。

介護現場におけるITとは

介護とIT

介護現場でITをうまく使いこなせば、残業費の減少につながり、少ない人数で営業利益が高まる可能性を十分に秘めています。経営視点で介護事業所を見てみると、バラツキは見られるものの介護事業所全体の約3割は赤字経営となっており(介護事業経営実態調査、平成26年)、費用面を見てみると介護事業収益に対する人件費の割合は55.8%となっています。

他方、月間の延利用者数が600人を超えると利益率は10%を上回り、900人以上の事業所では17.4%であるというデータからも平成30年度の介護報酬改定では大規模事業所のデイサービスの基本報酬の値下げ方向であるとされています。

このことからも、大規模事業所においては、人員配置の適正化を見直しつつ、一人当たりの労働生産性を高めるためのツールとしてITを有効活用し、経営的視点にたった介護運営が問われる時代となってきております。

【関連記事】
平成30年度の介護報酬改定の論点|通所介護の機能訓練に着目して
来年2018年(平成30年)に介護報酬改定の論点について詳しく知りたい方はこちら。

介護現場でITを導入するデメリットとは

介護とIT

介護現場でITを導入するデメリットはやはり「費用面」になります。IT導入においても安価で使えるITサービスもあれば、高価格帯の便利なサービスも世の中にはたくさんあります。

経営視点で見てみると、設備投資費や通信費に分類されるわけですが、大規模事業所と比較すると利益率の低い小規模事業所では導入障壁があるのも事実です。

そこで「国」は「IT導入補助金」として費用の一部を負担し、事業所のIT導入障壁を下げる動きも近年では生まれていますので、事業所様もこちらについては随時確認することをお勧めいたします。

介護現場でのITとの向き合い方とは

介護とIT

介護における業務負担割合で最も多いものが、圧倒的に大きいものが送迎。次いでレクリエーション・リハビリの準備、記録業務、直接介護業務です。これらの業務についてIT化を検討し、少数精鋭で生き残りができる事業所を目指していきましょう。

送迎業務のIT化

送迎業務の業務効率化のポイントは「配車管理表」です。どういった道順で、どのご利用者様宅から伺うか。このような事務作業は早期にIT化し、効率化していきましょう。

リハビリ・レクリエーションのIT化

レクリエーションやリハビリ(個別機能訓練)のマンネリ化は、ご利用者様満足度の低下につながります。ご利用者様の満足度の低下はキャンセル率を高め、稼働率の低下につながります。稼働率が低下すると、営業利益も低下するため改善が必要です。

計画書や管理業務が大変という点は管理者のポジショントークであり、現場のスタッフからすると、レクリエーション素材を集める方が大変なのです。なぜなら、単発ではなく、毎日のことですから。

【関連記事】
デイサービス稼働率アップの対策について
デイサービスの稼働率アップはデイサービスを黒字運営する上での絶対条件です。平成30年度介護報酬改定に負けない安定したデイサービス経営について一緒に考えていきましょう

記録業務のIT化

デイサービスではご利用者様のバイタル管理や入浴管理、機能訓練メニューの管理などを紙に記録していることが多いのではないでしょうか。

しかし、その記録をタブレットに変更することで、業務効率が格段に上がります。業務日誌、介護記録、連絡帳に同期し、無駄な転記作業を効率化していきましょう。スタッフにご高齢の方が多いので、できないと思っている管理者や経営者の方も多いのですが、今は簡単に誰でもできるデザインなので、昔と比べて使いやすくなっていますので、まずは試しにIT化を検討していくべきでしょう。
 

デイサービスの経営や運営は様々な視点から行っていくことが重要だといえます。これまでのやり方に加えて、稼働率アップさせるための営業戦略や、より業務効率化・生産性向上に貢献するITツールの導入などを検討していってもよろしいのではないでしょうか。

これら経営や運営に関する記事を一挙にまとめていますので、該当する記事を読んでいただき少しでも参考にしていただけたらと思います。


→→ 【完全保存版】デイサービス経営改善・運営・営業戦略・ITツール・実地指導・接遇に関する記事まとめ|随時更新

Rehab Cloudに待望の「レセプト」が新登場

リハビリ・LIFE加算支援の決定版「リハプラン」と記録、請求業務がスムーズにつながり、今までにない、ほんとうの一元管理を実現します。

日々お仕事をするなかで、「介護ソフトと紙やExcelで同じ情報を何度も転記している」「介護ソフトの操作が難しく、業務が属人化している」「自立支援や科学的介護に取り組みたいが余裕がない」といったことはありませんか?

科学的介護ソフト「Rehab Cloud(リハブクラウド) 」』なら、そういった状況を変えることができます!

ぜひ、これまでの介護ソフトとの違いをご覧頂ければと思います。



リハブクラウドでは、デイサービスの方向けに無料のメールマガジンを配信しております。日々のお仕事に役立つ情報や研修会のお知らせなどを配信します。ぜひメルマガ購読フォームよりご登録ください。

この記事の著者

作業療法士  大久保 亮

リハビリ養成校を卒業後、作業療法士として、通所介護事業所や訪問看護ステーションにて在宅リハビリテーションに従事。働きながら法政大学大学院政策学修士を取得。その後、要介護者、介護現場で働く人、地域住民まで、介護に関わるすべての人が安心していきいきと活躍し続けられる世界の実現を目指して2016年6月株式会社Rehab for JAPANを創業。また、日本介護協会関東支部局副支部長を務める。

関連記事