個別機能訓練加算Ⅰの握力などの筋力アップを目指した実践プログラム|ペットボトル編

介護保険法

個別機能訓練加算

更新日:2022/10/26

個別機能訓練加算Ⅰの機能訓練プログラムをお探しの方はいませんか?個別機能訓練加算Ⅰのプログラムは、ご利用者様が自分で選択できる複数のメニューを準備しておく必要があります。そこで今回は、デイサービスでの個別機能訓練加算Ⅰとして取り組みやすいペットボトルを使った握力などの筋力トレーニングのプログラムをご紹介します。

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個別機能訓練加算とは

個別機能訓練加算とは、通所介護(デイサービス)や特養、ショートステイにおいて所定の算定要件を満たし、ご利用者様の状況に応じた個別の機能訓練を行った場合に算定できる加算のことをいいます。

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個別機能訓練加算Ⅰの単位数

46単位/日

個別機能訓練加算Ⅰは、当該基準に従い1日につき所定単位数に加算することができます。

個別機能訓練加算Ⅰの目的・趣旨

厚生労働省によると通所介護における個別機能訓練加算Ⅰの目的、趣旨等について以下のように報告されています。

個別機能訓練加算Ⅰは、常勤専従の機能訓練指導員を配置し、利用者の自立の支 援と日常生活の充実に資するよう複数メニューから選択できるプログラムの実施が求 められ、座る・立つ・歩く等ができるようになるといった身体機能の向上を目指すこ とを中心に行われるものである。

引用元:厚生労働省「通所介護及び短期入所生活介護における個別機能訓練加算に関する事務処理手順例及び様式例の提示について」

個別機能訓練加算Ⅰの算定要件

個別機能訓練加算Ⅰを算定するためには、次の基準にすべてに適合することが条件です。

  1. 「常勤専従」の理学療法士等を1名以上配置していること
  2. 利用者の自立の支援、日常生活の充実を目的とした機能訓練の項目を「複数」計画し、利用者の心身状況に応じた訓練を実施していること
  3. 機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種の者が共同し、機能訓練計画書を作成・実施していること
  4. 3ヶ月に1回以上、利用者やその家族の居宅を訪問した上で、その内容を説明し、見直しを行っていること

個別機能訓練加算Ⅰの訓練内容の注意点

個別機能訓練加算Ⅰの機能訓練では、利用者が主体的に選択でき、生活意欲を増進する「複数のグループ活動」を準備する必要があります。

また、機能訓練指導員が中心となり介護職員や生活相談員その他の職種の者が協働して利用者ごとに個別機能訓練計画書を作成した上で機能訓練を実施していれば、機能訓練の実施者は「介護職員」でも可能となっています。

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個別機能訓練加算Ⅰの機能訓練のポイント

個別機能訓練加算Ⅰの機能訓練プログラムを提案する場合は、スタッフから一方的に体操に誘うのではなく、その活動の目的や効果などを利用者に理解してもらい、ご本人が自分で選択することが重要です。

自分で選択することは、機能訓練を「継続的に取り組む」上でも大切になり、「運動の効果を増大」させることもできるようになります。

個別機能訓練加算Ⅰの機能訓練プログラムをご紹介

個別機能訓練加算Ⅰの訓練メニューは、主に「身体機能の維持・向上を目指したメニュー」と「疾患・疾病の予防を目指したメニュー」があります。

今回は、その中でも筋力トレーニングとして活用でき、デイサービスでも比較的準備が簡単な「ペットボトル」を利用したトレーニングをご紹介します。

筋力トレーニングの対象者・効果・注意点

個別機能訓練加算Ⅰの機能訓練プログラムとして、小集団または個別で「ペットボトル体操」を指導する場合のポイントをご紹介します。

ペットボトルはどこにでもあるので比較的準備が簡単で、水量を調整することでご利用者様に合わせて負荷量を調整できる便利な道具です。また、元々持ち手は人が握りやすいサイズに設計されているため持ちやすさも兼ね備えています。
 

【ペットボトル体操の対象者】

今回ご紹介するペットボトル体操の対象者は、移動手段が「独歩」または「杖歩行」レベルで介助が見守り以上の方が対象となります。両手にペットボトルを把持してエクササイズを行いますので歩行レベルは必ずチェックしておきましょう。

※立って行う体操をご紹介していますが、歩行能力やバランス能力の低下が気になる方は、椅子に座ってでも構いません。
 

【ペットボトル体操の効果】

  • 上半身の筋力向上
  • 握力の向上
  • 体幹の安定性の向上
  • 立位耐久性の向上

【ペットボトル体操の注意点】

運動時に呼吸を止めないように注意しましょう。またバランスが不安定になる場合があります。近くでスタッフが見守りを行いながら転倒に注意して取り組んでいきましょう。

ペットボトルを活用した腕の筋力トレーニング

 1種目

  2種目

個別機能訓練加算Ⅰの機能訓練プログラムとして、まずは肩甲骨・腕周囲のトレーニングをご紹介します。ペットボトルの重さは、対象者の筋力を見ながら0~500mlの間で水量を調整しながら行ってください。

【運動のポイント】

  1. まずはゆっくりと行います。
  2. ペットボトルの重さは利用者の方の体格や筋量に応じて変更しましょう。

ペットボトルを活用した肩の筋力トレーニング

 3種目

次に、個別機能訓練加算Ⅰのトレーニングとして肩のペットボトル体操をご紹介します。肩には三角筋と呼ばれる大きな筋肉がありますが、この筋肉は日常生活の中で鍋を持ち上げたりする家事動作に重要な部位ですのでしっかり鍛えておきましょう。

【運動のポイント】

  1. 肩をすくめないようにしましょう。
  2. 背中を反ったり曲げたりしないようにしましょう。

ペットボトルを活用した肩のインナーマッスルトレーニング

 4種目

次に、ペットボトルを活用した個別機能訓練加算Ⅰのトレーニングとして肩の捻りエクササイズをご紹介します。こちらの機能訓練では、肩周りの筋肉の中でもインナーマッスルといわれる棘上筋や棘下筋の筋力を鍛えることができます。このインナーマッスルはインピンジメント症候群や五十肩の予防にも効果が期待できます。

【期待する効果】

インピンジメントや五十肩やを予防する効果が期待できます。

【運動のポイント】

  1. 肩と肘を90度に固定するように意識しましょう。
  2. 肩をすくめないように意識しましょう。

ペットボトルを活用した首周りの筋力トレーニング

5種目 

こちらの機能訓練は、肩こりや首こりにも効果が期待できる肩すくめのトレーニングです。肩をすくめることで首の付け根に位置する僧帽筋や肩甲挙筋の筋肉を促通することができます。

【期待する効果】

肩こりや首こりを予防する効果が期待できます。

【運動のポイント】

  1. 胸を貼り、背筋を伸ばしたまま行いましょう。
  2. 両肩は耳につけるように行いましょう。

ペットボトルを活用した手首の筋力トレーニング

6種目

こちらの個別機能訓練は、手首の筋力トレーニングを目的としたペットボトル体操です。手首は、特に握力に関与する部位です。日常生活ではタンスを開ける場合や布団をもつ際などに活用されます。

【運動のポイント】

  1. 肘や肩の位置を固定したまま行うようにしましょう。
  2. できる限り、ゆっくり大きく動かすように意識しましょう。

ペットボトルを活用した二の腕の筋力トレーニング

7種目 

こちらのペットボトルを活用した個別機能訓練加Ⅰのプログラムは、二の腕の筋力トレーニングです。二の腕の中でも力コブが出る「上腕二頭筋」を中心にトレーニングすることができます。日常生活の中ではカバンを持つなど物を持ち上げる際に活躍します。

【運動のポイント】

胸を張り、姿勢を正すように意識しましょう。8種目

次に、二の腕の裏側にある上腕三頭筋の筋力トレーニングです。特に、女性の方は加齢に伴い筋力が低下することで垂れてしまう部分でもあります。

【期待する効果】

二の腕のたるみを予防する効果が期待できます。

【運動のポイント】

  1. 肘を固定するように意識しましょう。
  2. 肘を最後までしっかりと伸ばすことを意識しましょう。

ペットボトルを活用した背中の筋力トレーニング

9種目

続いてのペットボトルを活用した機能訓練プログラムは、背中のエクササイズです。前習えの姿勢から両肘を後方に引くことで広背筋や大円筋といわれる背中の筋肉を鍛えることができます。日常生活の中では、タンスやドアを開ける動きに活躍します。

【運動のポイント】

できる限り両肘を後方に引き寄せましょう。

ペットボトルを活用した体幹の筋力トレーニング

10種目 

最後に個別機能訓練加算Ⅰのプログラムとして、ペットボトルを使用した体幹の捻りのエクササイズをご紹介します。通常の上半身の捻りに加えて、上半身をやや前方に倒すことで特に背中への負荷が高まります。体幹の安定性の獲得目的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

【期待する効果】

体幹の筋力アップ、安定性を高める効果が期待できます。

【意識するポイント】

  1. 胸を張り、背筋を伸ばすように意識しましょう。
  2. 腕ではなく、上半身を捻るように意識しましょう。

まとめ

いかがでしたか。今回は、個別機能訓練加算Ⅰの機能訓練プログラムとして活用できる「立ってできるペットボトル体操」をご紹介しました。

握力などの筋力や立位バランスは高齢者にとって大切な身体機能のひとつです。

体力測定や健康チェックなども交えて、平均値と比較したり、定期的に変化を観察したり、アセスメント評価をしながら行うと、ご本人のモチベーションにもなり効果的だと思います。

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ご利用者様の運動がマンネリ化しないように、主体的に選択できる運動メニューを作成するには、多くの時間と運動の知識がないと難しいです。今回の運動メニューを参考に、個別の機能訓練の幅が少しでも広がると幸いです。

デイサービス運営では、個別機能訓練加算の算定は売上の貢献にも非常に重要な要素だと言えます。「個別機能訓練加算・個別機能訓練計画書」に関する記事を一挙にまとめた記事をご用意していますので、必要に応じて活用していただけたら嬉しいです。

→→ 【完全保存版】デイサービス経営者必見!個別機能訓練加算・計画書まとめ|随時更新

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?

この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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