リハビリにおけるバランス評価の種類と測定方法の基礎知識

デイサービスなどの高齢者は加齢や筋力低下など様々な原因で立位でのバランス能力が低下しており、高齢者の転倒予防は多くのスタッフが意識しています。転倒の危険性があるご高齢者を発見することができるバランス評価は、安全で効率的な転倒予防体操やリハビリを行う上で重要です。転倒予防に取り組む前の最初のステップとして、立位バランス評価の種類や測定方法を理解し、高齢者の転倒予防を推進していきましょう。

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リハビリにおけるバランス評価の目的と方法について

リハビリにおけるバランス評価の目的と方法について

ご高齢者の転倒予防のためのバランス評価は、ご利用者の転倒の危険性を判断するためのテストであり、転倒の要因を発見する重要な評価といえます。

様々な立位バランス評価がある中で、今回はご高齢者の転倒の危険性を判断する5つのバランス評価ご紹介します。

バランス評価の種類

(1)Time UP&Goテスト
(2)Functional Reachテスト
(3)継ぎ足歩行テスト(タンデム歩行)
(4)片脚立位テスト
(5)ボルグバランススケール

 

立位バランス評価では、転倒の危険性の高い郡と危険性の低い郡を別ける「カットオフ値」があります。バランス評価から転倒の危険性を判断するためには、このカットオフ値を参考にしましょう。但し、カットオフ値は文献により値が異なる場合があるので、あくまで参考程度にしておきましょう。

参考文献

Horak FB. Clinical assessment of balance disorders. Gait Posture 6: 76-84, 1997


▼ご高齢者は、年を重ねるにつれて全身的な運動機能の低下が起こり転倒する危険性が高まります。そんな高齢者のバランスを評価するポイントとバランス訓練について下記の記事でご紹介しています。詳しくはこちらをご覧ください。

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ご高齢者のバランス評価のポイントと訓練方法とは

高齢者のバランスを評価するポイントとバランス訓練についてご紹介します。

バランス評価のポイントとは

バランス評価のポイントとは

ご高齢者の転倒の危険性を判断する立位バランス評価には、5つのポイントが要求されます。

【バランス評価のポイント】

1)テストの判別性が高い
2)判断基準が明確である
3)テストが簡易に実施できる
4)短時間で測定出来る
5)安全性が高く、負担が少ない

バランス評価の方法について

ご高齢者を対象とした介護施設や地域の教室教室では、バランス評価をする時間をたっぷり取れるわけではありません。そのため、数多くの評価の中で、デイサービスなどの介護現場でも取り組みやすいバランス評価をご紹介します。

(1)Time UP&Goテスト(TUG)

 
立位バランスも測定 Time UP&Goテスト

まず1つ目のバランス評価は、「Time UP&Goテスト」をご紹介します。

こちらの評価は、信頼性が高く、筋力、バランス、歩行といった日常生活能力との関連性が高いことが示唆されており、高齢者の身体機能評価として広く用いられています。 

【測定方法】

測定方法は、背もたれに軽くもたれた状態で開始し、椅子から立ち上がり、無理のない早さで歩き、3m先の目標物を回って椅子に座るまでに要する時間を測定します。椅子は、肘かけに手をおいた状態から開始しますが、肘かけがない場合は、手を膝の上においた状態から開始します。

【測定時間】


1分以内で測定可能



【カットオフ値】


11秒以上で運動器不安定症のリスクあり
※要支援の高齢者の平均値が12.2秒(2005年本邦)


▼TUGテストの方法やカットオフ値についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がオススメです。

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TUG評価のカットオフ値とは|評価初心者でも分かる測定方法

TUGの評価で知っておきたい評価方法とカットオフ値(基準値)をご紹介します。

(2)ファンクショナルリーチテスト(FRT)とは

立位静的バランス評価 ファンクショナルリーチテスト
画像出典:セルフボックス
 




続いてのバランス評価は「ファンクショナルリーチテスト」をご紹介します。

【測定方法】

測定方法は、足を肩幅に揃えて腕を肩関節90度挙げます。足を前に出すことなく、中指を目安に最大限にリーチした距離を測定します。3回テストを行い、最後の2回の平均値を求めます。転倒の危険性の判断は、高齢者・脳卒中・パーキンソンによっても異なりますので、それぞれのカットオフ値を参考にしてください。

【測定時間】

5分程度

【カットオフ値】

⑴虚弱高齢者の場合は、18.5cm未満は転倒リスクが高い 
(参考論文:Thomas et al., Arch Phys Med Rehabil. 2005)
⑵脳卒中片麻痺患者の場合は、15cm未満で転倒リスクが高い
(参考論文:Acar & Karats, Gait Posture 2010)
⑶パーキンソン病患者の場合は、31.75cm未満で転倒リスクが高い
(参考論文:Dibble & Lange, J Neurol Phys There 2006)などと報告されています。


▼ファンクショナルリーチテストの測定方法についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

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(3)継ぎ足歩行テスト(タンデム歩行)とは

バランス評価 継ぎ足歩行テスト(タンデム歩行)
画像出典:セルフボックス


続いて3つ目のバランス評価は、「継ぎ足歩行テスト(タンデム歩行)」をご紹介します。
継ぎ足歩行の細かい手順や、どうなったときに「バランスが悪い」と判断するか、対象者などの具体的な判断方法などは記載されていませんのでご了承ください。

よってBBS(Berg balance Scale)等で総合的に評価することをお勧めします。

(4)片脚立位テストとは

 
バランス評価 片脚立位テスト
画像出典:セルフボックス

 

続いて4つ目のバランス評価は、「片脚立位テスト」のご紹介です。

【測定方法】


測定方法は、両手を腰にあて、片脚を5cm程度あげている時間を測定します。左右2回測定し、最も良い記録を測定します。



【測定時間】


約1分程度



【カットオフ値】


⑴ 開眼立位では、15秒未満で運動器不安定症のリスクが高まる

⑵ 閉眼立位では5秒以下、開眼立位は20秒以下で転倒リスクが高まる

(参考文献:PTジャーナル 2009,9 高齢者の運動機能と理学療法)

【年齢別の基準値】

・40歳以上:180秒 
・60歳代 :70秒
・80歳代 :10秒


▼バランス評価の1つ「片脚立位」の測定方法について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

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測定方法から評価の指標となるカットオフ値まで紹介します。

(5)バーグバランススケール(BBS)

バーグバランススケールの評価項目

ご高齢者の転倒の危険性を判断する場合は、バランス能力や協調性、筋力、持久力、柔軟性、感覚など複合的な要素を確認しなければなりません。

複合的な要素が確認でき、より信頼性が高いバランス評価に「バーグバランススケール(Berg Balance Scale)」があります。バーグバランススケールは、これまでご紹介した(2)(3)(4)のバランス評価が含まれた方法です。一方で、評価項目が14項目、評価時間に10〜15分かかる為、専門家の理学療法士などに評価していただく必要があります。


【カットオフ値】

0-20点:バランス障害あり
21-40点:許容範囲のバランス能力
41-56点:良好なバランス能力



※最大スコアは56点

 

転倒の因子は、「身体的なもの」「認知・心理・行動的なもの」「環境的なもの」「課題や動作によるもの」など様々あり、高い精度で転倒を予測していくことは非常に難しいといえます。そのため、運動の専門家である理学療法士や作業療法士と共にいくつかのテストを組み合わせることで転倒の予測精度を高めていきましょう!

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Berg Balance Scale(バーグバランススケール)の評価方法とカットオフ値

バーグバランススケールの測定方法について詳しく知りたい方は下記をご覧ください。

転倒予防には注意機能の評価も重要!?

転倒予防には注意機能の評価も重要

高齢者の転倒の危険性を判断するためには注意機能を評価し、トレーニングを実行することが重要といわれています。

介護現場で働くスタッフに、高齢者の転倒の原因を聞くと「カーペットにつまずいた」「溝に気がつかずに滑って転倒した」など、不注意が原因で転倒したと言われることが多くあります。

この転倒は、バランスの能力が低下しているからではなく、体と脳の働きが衰えて注意機能が低下している可能性があります。



ご高齢者の転倒の危険性の評価には、バランス能力だけでなく、注意機能を評価することが重要となります。


注意機能の評価方法として「Trail Making Test」や「かな拾い検査」が代表的です。簡易的に実施することができるので、ぜひチャレンジしてみてください!

山田実. "注意機能トレーニングによる転倒予防効果の検証." 理学療法科学 24.1 (2009): 71-76.(平成29年4月14日アクセス)

まとめ

介護現場でも取り組める立位バランス評価のまとめ

本稿では、介護現場でも取り組める立位バランス評価についてご紹介しました。

ご高齢者の転倒の危険性を1つのバランス評価だけ判断すること困難です。より高い精度のバランス能力を評価するためには、理学療法士や作業療法士と共に複数のテストが必要となります。可能であればみなさんで協力して取り組んでみてください。

ご高齢者の転倒予防には、転倒の原因や転倒しやすい場所などを把握することも重要です。ご高齢者の転倒予防についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をオススメします!

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高齢者の転倒予防の基礎知識|原因から体操方法まで徹底解説!

ご高齢者の転倒の現状や原因、転倒予防体操まで徹底解説します。

 

デイサービス運営において必要な「評価・測定」について、一挙にまとめていますので、必要に応じて活用していただければと思います。

→→ 【完全保存版】デイサービスで活用できる評価・測定に関する記事まとめ|随時更新

 

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著者プロフィール

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リハビリ専門職(作業療法士)として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーションを技術を高めるため研修会を立ち上げ、これまでに100名規模の研修会も開催された。現在は、「職種を越えたリハビリ介護を実現する」をテーマに、リハプランの専属ブロガーとして活躍中。作業療法士の専門性を活かして、介護事業所で算定できる加算・減算の中でも「個別機能訓練加算」について算定要件や計画書の書き方、機能訓練プログラムについて執筆している。

〜筆者の想い〜
通所介護事業所(デイサービス)の約8割は、リハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が不在のため、看護師や柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師が機能訓練を実施しているのが現状です。機能訓練指導員が、高齢者にあった最適な運動を提供するために必要なノウハウをわかりやすく解説します。

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