バーセルインデックス(BI)は自宅内の生活環境と事業所内のどちらで評価するか

運営ノウハウ

評価

更新日:2022/12/06

在宅生活を重要視する介護保険制度の中で、ADLを評価する「バーセルインデックス」で自宅内の生活環境を考慮して実際に行なっている生活動作を評価すべきか悩むと思います。できるADLとしているADLの乖離を埋めることが個別機能訓練などの携わっているハビリ専門職の仕事の一部ですが、通所介護のADL維持等加算の評価の実施環境については、バーセルインデックスの主旨からすれば通所介護の事業所内で評価できる範囲の「できるADL」の評価で差し支えないと考えられます。

バーセルインデックス(Barthel Index,BI)はADLの評価方法の一つで、主に病院などで簡易的にご利用の状態を把握するために用いられています。

平成30年の介護報酬改定で通所介護ではバーセルインデックスを使ってADL値を算出するということが要件になりました。加算の算定要件にBI利得という形で集計することになっていますが、そのバーセルインデックスの評価方法や考慮する環境設定など詳しい測定方法は介護報酬の算定要件などに明記されていません。

通所介護事業所で機能訓練指導員が実務としてバーセルインデックスを使ってご利用者のADLの状態を評価するときに、デイサービスの事業所内でできるADLを評価すべきなのか、自宅・居宅でしているADLを評価すべきなのかに迷いますが、一般的な考え方を紹介します。

通所介護でバーセルインデックスを評価バッテリーとして用いた経緯

通所介護でバーセルインデックスを評価バッテリーとして用いた経緯

通所介護施設においては、自宅内での生活状況や生活環境などを加味して機能訓練などを行うことが推奨されています。
実際に自宅で行なっている移動、排泄、入浴、食事などのADLのことを「しているADL」と言います。
介護保険は、利用者が自分の持ってる能力に応じて、自宅でできるだけ自立した生活を送ることにあるため、介護業界のトレンドとしても「自宅での生活」をしっかり考慮する方向性で進んできたように思います。
というのも、しているADLは椅子やベッドの高さ、段差、手すりの有無、家族が介護するスタンスなどの影響で、大きく変化するためです。
「しているADL」を評価する方法としては、「FIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価法)」を使い、細かく状況を見ていくことが一般的になってきています。

利用者のADLや自立支援について深く考えて取り組んでいくためにはFIMによる評価と、その介助点などへのアプローチが効果的ですが、FIMでADLを採点してくためには、ADLの各項目に対しての採点基準を理解しておくことや、環境や補助具の設定など準備と時間がかかってしまい、忙しい介護施設の中でこれらを継続的に観察してことは現実的に難しくなっています。

ADLについて詳しくは「ADL とは 介護・看護・医療での日常生活動作の評価の意味と目的」で紹介しています。

厚生労働省の調査で、通所リハビリテーションなどで最も用いられているADLの評価表はバーセルインデックスとなっており、優れていてもFIMの普及がなかなか進んでいない現状があるようです。

平成30年の介護報酬改定では、通所介護のアウトカム評価の評価指標としては、議論の結果、バーセルインデックスが採用されました。通所介護のADL維持等加算については以下の記事で詳しく紹介しています。

【関連記事】
ADL維持等加算とは

できるADLのバーセルインデックスを簡略化した評価方法

リハビリテーションの専門的知識がない看護職員などでもADLの評価が可能なことから、ADL維持等加算に関わる要件にはバーセルインデックスによるADLの評価が採用されたそうです。

「しているADL」は自宅での実生活を反映させるのに対して、通所介護事業所の中などで「歩いてみてください」「トイレ行ってみてください」「食事は自分で摂取できているかな?」というように特に環境要因を考慮しないで、その場でできているADLのことを「できるADL」と言います。採点の要件はあるため、ポイントをおさえるための評価方法は「バーセルインデックスの評価と採点方法で知っておきたい基礎知識」で紹介しています。

ただし、評価として採点をするからには、一定期間が経過した後に再評価するときにも同じ条件で実施する必要があるため、場所や評価方法は統一することがルールになります。

【関連記事】
バーセルインデックスの評価と採点方法で知っておきたい基礎知識

バーセルインデックスによるADLの評価方法の基本

バーセルインデックスによるADLの評価方法の基本

バーセルインデックスの評価項目は、食事・移乗・整容・トイレ・入浴・歩行(移動)・階段昇降・更衣・排便・排尿の全10項目で構成され、各項目を自立度に応じて15点・10点・5点・0点で採点します。
採点方法は簡単で、100点満点で採点できるので見た目にも分かりやすい評価方法です。基本的には、「自立」「部分介助」「全介助」という3段階の評価となっています。バーセルインデックスには特に環境設定や実際行なっているかなどの概念はなく、病院の病室やリハビリ室などでもできるかできないかで判定します。

バーセルインデックスと生活環境でしているADLのFIMの乖離

バーセルインデックスは、病院に入院中の患者に対して看護師が行うアセスメントなどでも用いられるADLの評価スケールです。

バーセルインデックスの評価では、FIMのように詳細な評価方法は採用しておらず、補助具の使用や自宅での生活環境についても厳密には考えず利用者のADLの全体像をつかむための評価となっています。

バーセルインデックスは「できるADL」を簡単に評価するものなので、実際に自宅で行なっているADLやFIMでのADL評価結果とは乖離することも多いです。

ADLの評価方法であるFIMの違いについては、「FIMとは|FIMの評価方法と点数付けで知っておきたい基礎知識【総論】」で解説しています。

バーセルインデックスを評価は自宅での生活環境でのADLか事業所内でのADLか

バーセルインデックスの評価は自宅でのADLか、事業所内でのADLか

できるADLとしているADLの乖離を埋めることが個別機能訓練などの携わっている理学療法士作業療法士などのリハビリ専門職の仕事の一部でもあるため、自宅での生活を基本として評価する方向で考えるかもしれません。

しかし、バーセルインデックスの評価の実施環境については、主旨からすれば通所介護の事業所内で評価できる範囲の「できるADL」の評価で差し支えないと考えられます。

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?

この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

関連記事

他のテーマの記事をみる