ファンクショナルリーチテストとは|どんな検査?

ファンクショナルリーチテストとは
ファンクショナルリーチテスト(Functional Reach Test)は、Duncanらにより開発されたバランス測定のための評価方法です。医療や介護現場などでは、その頭文字から「FRT」と呼ばれることもあります。
FRT(ファンクショナルリーチテスト)の評価方法は、腕を90°上げた状態でできるだけ前方に手を伸ばしていくだけです。
測定者は、その時の最大移動距離を測定します。この評価によって、その場でバランスを崩さないように姿勢の調整ができるのかというバランス能力を評価することができます。
ファンクショナルリーチテストの活用場所
FRT(ファンクショナルリーチテスト)は、バランス検査として日本理学療法士協会の診療ガイドラインから「推奨グレードA」として指定されており、信頼性・妥当性も高く評価されています。
評価の簡単さや信頼性・妥当性の高さからデイサービスやデイケアなどの介護の現場、介護予防分野においても、高齢者の体力測定や機能訓練のためのアセスメント項目などにこのFRT評価が活用されることも多くなっています。
ファンクショナルリーチテストの平均値・転倒リスクの評価基準
ファンクショナルリーチテストは、立位のバランスを測定するもので、自らバランスを崩す動きをしてどこまで対応できるかという機能的なバランスを評価しています。
ファンクショナルリーチテストの測定値の目安としては、20cm未満だと非常にバランスを崩しやすく危険な状態、20〜25cmで転倒リスクあり、測定値の平均値としては25〜30cm、30cm以上リーチできていると転倒リスクが低いという値が目安となります。
項目 | 転倒しやすさ | |||
非常に危険 | 転倒リスクあり | 平均 | 転倒リスク低い | |
距離 (FRT:cm) |
~20 | 20~25 | 25~30 | 30~ |
FRTの評価基準と合わせて、バランス能力と転倒リスクの関連性などを研究した先行文献により、年齢や疾患に応じたカットオフ値が算出されていますので参考にしてください。
ファンクショナルリーチテストのカットオフ値|何が分かるの?

FRT(ファンクショナルリーチテスト)は、転倒リスクやバランス能力を測定するための評価方法ですが、これらを判断するための指標となるカットオフ値はご存知でしょうか。以下にいくつかのカットオフ値をご紹介します。
【FRT評価のカットオフ値】
⑴虚弱高齢者の場合は、「18.5cm未満」は転倒リスクが高い ⑵脳卒中片麻痺患者の場合は、「15cm未満」で転倒リスクが高い ⑶パーキンソン病患者の場合は、「31.75cm未満」で転倒リスクが高い |
▼転倒リスクを評価する方法をもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がオススメです。
【関連記事】 ご高齢者の転倒の危険性を判断する5つのバランス評価ご紹介します。 |
ファンクショナルリーチテストの測定方法|どうやって検査するの?

では、実際にFRT(ファンクショナルリーチテスト)の測定方法をご紹介します。
【FRT評価の測定方法】
(1) 両足が触れない程度に足を広げ立ちます。 (2) 壁側の腕を90度上げます。 (3) 手指は伸ばし、中指の位置を記録します。 (4) できるだけ前方に手を伸ばす。 (5) 最大限に手を伸ばした場所で、中指の位置を記録します。 (6) 開始位置と終了位置の差を測定します。 (7) 測定は3回実施し、最後の2回の平均値を計算します。 |
【測定時間】
約5分程度 |
▼ファンクショナルリーチテストの測定方法について動画でチェックしたい方はこちらをご覧ください。
【関連動画】 |
ファンクショナルリーチテストで準備するもの|何を準備すればいいの?

FRT(ファンクショナルリーチテスト)を実施する場合は、以下の物品を準備することですぐに検査を始めることができます。
【FRT評価で準備するもの】
(1) 物差し (2) テープまたはシール (3) 壁に面した環境 |
椅子座位で行うのファンクショナルリーチテスト|安全に検査できる方法はないの?

FRT(ファンクショナルリーチテスト)は、その場に立って測定する評価方法ですが、もっと安全に測定する方法はあるのでしょうか?
その1つに、森尾ら(2004)が考案したModified Functional Reach Test (MFRT) があります。この評価は、ファンクショナルリーチテストの測定方法を改良したもので椅子に座って座位で測定するため立位が不安定な方や重度の障害の方にも適応できるリーチテストです。MFRTでは、歩行が安定して可能な方を以下のカットオフ値として示しています。
【MFRTのカットオフ値】
歩行自立:26.0cm |
【参考資料】 |
その他のバランス評価の方法| 他に転倒リスクの評価はあるの?

FRT(ファンクショナルリーチテスト)やMFRT以外に、高齢者の転倒リスクを判断する方法は知っていますか?以下に、転倒リスクやバランス能力を評価する方法をご紹介します。
【転倒リスク・バランスの評価】
(1)片足立位 【カットオフ値】
⑴開眼片脚立位では「15秒未満」で運動器不安定症のリスクが高まる |
(2)Functional Reachテスト 【カットオフ値】
⑴虚弱高齢者の場合は、18.5cm未満は転倒リスクが高い |
(3)継ぎ足歩行テスト 【カットオフ値】
3(正常):ふらつきなしに10歩可能
|
(4)TUGテスト(timed up&go test) 【カットオフ値】
▶︎13.5秒以上:転倒リスクが予測される |
▼転倒リスクを判断するバランス評価について詳しく知りたい方はこちらの記事がオススメです。
【関連記事】 転倒予防に必要なバランス評価の基礎知識をご紹介します。 |
まとめ
ファンクショナルリーチテスト (FRT) は、立って立位の状態で測定するため重度の機能障害を持たれた方には用いにくいのかもしれませんが、他のバランス評価方法に比べても特別な準備品も少なく簡易にバランスを評価することができます。
特に高齢者に対しての評価としては、日本理学療法士協会の診療ガイドラインでも身体的虚弱の高齢者様への評価として推奨グレードAと指定されており、信頼性・妥当性も高く評価されています。
そのため、介護現場の皆さんもファンクショナルリーチテスト(FRT)の評価方法を覚えてぜひ定期的な評価測定として活用していくことをお勧めします。
【参考資料】 |
デイサービス運営において必要な「評価・測定」について、一挙にまとめていますので、必要に応じて活用していただければと思います。
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