【2021年の介護報酬改定版】通所介護のCHASE対応について
介護保険法
2022/08/10
介護保険法
個別機能訓練加算
更新日:2022/08/03
今回は平成27年度の介護報酬改定で個別機能訓練加算を算定する上で必須となった居宅訪問について厚生労働省が示した居宅訪問チェックシートの書き方やチェックのポイントをご紹介します。関連する興味関心チェックシートの書き方もご紹介しているので合わせてご覧ください。
この記事の目次
令和3年に施行された介護報酬改定では、居宅訪問の評価方法として生活機能チェックシートを活用とされています。詳しい変更点は【2021年の介護報酬改定版】通所介護の個別機能訓練加算の見直しについてをご確認ください。
平成27年度の介護保険改定にて「3ヶ月に1回以上、居宅訪問の上で利用者の居宅での生活状況を確認すること」という要件が新たに追加されました。
これは、個別機能訓練加算を算定する上で、ご利用者が生活する環境を把握することでより効果的に機能訓練を実施することができるという観点から追加されました。
ご利用者の居宅訪問の評価用紙は「居宅訪問チェックシート」を活用し、ニーズ把握には「興味関心チェックシート」を活用することが推奨されました。
関連記事 個別機能訓練加算ⅠとⅡの違いとは?7つのポイントをご紹介 個別機能訓練加算の基礎知識として個別機能訓練加算Ⅰと個別機能訓練加算Ⅱの7つの違いをポイントを踏まえて分かりやすくご紹介します。 |
個別機能訓練加算とは、各種介護サービス(デイサービス、ショートステイ、特別養護老人ホーム、特定施設入居者生活介護)において、利用者に合わせた個別機能訓練を行った場合に介護事業所側で算定できる加算の一つです。
デイサービスの個別機能訓練加算には、個別機能訓練加算Ⅰと個別機能訓練加算Ⅱがあります。
個別機能訓練加算Ⅰ | 個別機能訓練加算Ⅱ | |
---|---|---|
1. 単位数 | 1日につき「46単位」を加算することができます。 | 1日につき「56単位」を加算することができます。 |
2. 人員配置 | 「常勤」の理学療法士等を1名以上配置していること。 | 「専従」の理学療法士等を1名以上配置していること。非常勤でも可能。 |
3. 実施者 | 機能訓練指導員の指導のもとであれば他職種のスタッフでも実施することが可能です。 | 機能訓練指導員が直接実施することが義務付けられています。 |
4. 目的 | 筋力・バランスなどの心身機能の維持・向上を目指すものとする。 | 排泄、更衣などの日常生活活動や調理、洗濯など家事動作の獲得、趣味活動社会参加を目指すものとする。 |
5. 訓練の内容 | 利用者が主体的に選択でき、生活意欲を増進する訓練項目を複数準備します。 | 目標にした内容の具体的な動作さやそれを模倣した動作を反復した訓練を提供する。 |
6. 実施範囲 | 人数の規定はなく、複数のグループ活動に分かれて実施することが可能です。 | 類似の生活目標をもつ利用者であれば5名程度以下の小集団に対して実施可能。概ね週1回以上実施することが目安。 |
7. 実施環境 | 特になし。 | 浴槽、脱衣所、階段、台所など日常生活に必要な設備を整え実用的な訓練も提供すること。 |
▼個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱの算定要件や計画書の作成方法などについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
関連記事 個別機能訓練加算とは? 個別機能訓練加算の算定要件からアセスメント、個別機能訓練計画書の作成、実践プログラムまで徹底解説します。 |
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居宅訪問の目的は、ご利用者様が「自宅の環境でどのように生活しているのか」「生活の課題や問題点はないか」を把握することにあります。利用者の居宅における生活状況を確認し、個別機能訓練計画に反映させることが居宅訪問の目的となっています。
従来の個別機能訓練計画書の作成では、ケアプランやご本人・ご家族からの情報収集にて計画書を作成していました。しかしながら、これだけの情報収集では、実際に利用者様の自宅にある段差や手すりなどの家屋状況や生活状況を把握することは困難です。
特に、ご自宅の中までは伺うことがないデイサービスなどの通所介護事業所では、これらの情報を得ることは難しいといえます。
そこで、実際にご利用者様のご自宅に訪問することで、どうすればご利用者様が住み慣れた環境で生活を続けていくことができるかを考え、適切な福祉用具のアドバイスやご利用者様の生活環境にあった機能訓練を実施していくことができるようになるのです。
ご自宅への居宅訪問は情報収集をするだけでなく、居宅訪問チェックシートで推奨されている項目をベースに少なくとも3ケ月ごとに1回以上の頻度でご利用者様やご家族に訓練内容や立案した目標の達成状況などを報告する場としても活用されます。
個別機能訓練加算で利用者の居宅を訪問をする場合には、どのようなことを確認すれば良いのか3つのポイントをご紹介します。
【居宅訪問の3つのポイント】 |
---|
(1)現在している生活の状況 |
(2)主な生活の動線 |
(3)課題となっている自宅の環境 |
この3点を把握することで、住み慣れた環境で生活ができるように適切な福祉用具を提案したり、自宅環境を想定した日常生活の訓練を提供することができるようになります。機能訓練に活かすためのポイントとしては上記3点を中心に観察することですが、加算の算定要件として記録に残すときは少しく工夫した方がよいかもしれません。
居宅訪問した記録については、利用者の居宅での生活を確認した上で個別機能訓練計画を作成するという目的に沿えるように実施したことを残しましょう。
具体的に居宅訪問の記録として残し、他職種と共有しておきたい情報としては居宅訪問チェックシートで示されている内容が主となります。もし、指定の居宅訪問チェックシートの書式と異なる書式や、カルテや介護記録のような形で文章で書き込む場合には、以下の内容を含む形にすることが望ましいと思います。
これらの記録があり、ケアプランや個別機能訓練計画との整合性が取れていれば加算算定のための居宅訪問の記録として足りると思います。
個別機能訓練計画書を作成する場合は、ご家族やご本人の生活目標などを掘り起こしていかなければなりません。しかしながら、ご利用者様によっては「生活の目標」や「今後したいこと」など目標を見失っていることもあります。急に「どんなことに興味がありますか?」「自宅で生活しにくい場所は?」と聞かれても具体的な目標が出てきません。
そこで役立つのが「居宅訪問チェックシート」です!
居宅訪問チェックシートとは、日常生活の自立度(自立、見守り、一部介助、全介助)や生活状況の課題、環境の問題を効率よく見つけることができます。
通所介護事業所の中では、実際のご利用者様の生活課題は見えません。そこで居宅訪問チェックシートを活用することで生活状況や環境を把握することができます。
居宅訪問チェックシートでは、ご利用者様が自宅でお困りの「食事・排泄・入浴・更衣などのADL(※1)」、「調理・洗濯・掃除・階段昇降などのIADL(※2)」、「立ち上がり・起き上がりなどの基本動作」といった項目を確認することができます。
居宅訪問チェックシートはこちらからダウンロードできるようになっていますので、ご自由にご活用ください。▶︎PDFのダウンロードはこちらからどうぞ
居宅訪問チェックシートを活用する場合は、ADL・IADL・基本動作の項目を[自立][見守り][一部介助][全介助]の4つで評価し、この項目に課題が[有る][無し]を付けることで評価することができます。
居宅訪問チェックシートで重要なポイントは、「今現在している生活」や「環境の問題点」を把握することです。そのため、ご利用者様が「自力でどこまで生活できるのか?」「どの程度の介助が必要なのか?」を把握するだけでなく、生活環境においての問題点なども随時記入しておくと良いでしょう。
さらに、問題となる環境においては、高さを計測したり、写真を撮影させていただくと、通所介護事業所に持ち帰ってから他職種のスタッフと情報を共有して、自宅を想定した段差の調整や調理道具の準備など、より実践的な訓練を提供することができます。
※尚、個別機能訓練計画書作成に関わる職員であれば機能訓練指導員以外のスタッフが居宅訪問を行っても構いません。また、生活状況を確認する者は毎回必ずしも同一人物で行う必要はありません。
(※1)ADLとは、自宅で日々行っている食事、更衣、移動、排泄、整容、入浴といった日常生活動作のことです。
(※2)IADLとは、洗濯、掃除や調理といった家事や買い物、金銭管理、公共交通機関の利用といった手段的日常生活動作を指します。
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興味・関心チェックシートの項目には、日常生活や家事動作、趣味、スポーツ、社会参加に対してご利用者様が実際に「している」「してみたい」「興味がある」の3つで評価していくだけです。
趣味や社会参加への目標は、なかなか聞き出せない情報です。ご利用者様の趣味嗜好や社会参加への意欲などを新たに探り、介護現場での機能訓練に活用していきましょう!
ご本人からお聞きできない場合は、ご家族に元々好んでいた趣味などをお聞きするのも良いでしょう!
関連記事 興味関心チェックシートの評価方法とは? 個別機能訓練計画書の情報収集として役に立つ興味関心チェックシートの活用方法について簡単に解説します。 |
【質問1】
通所介護の個別機能訓練加算について、利用者の居宅を訪問し、利用者の在宅生活の状況を確認した上で、多職種共同で個別機能訓練計画を作成し機能訓練を実施することとなるが、利用者の中には自宅に人を入れることを極端に拒否する場合もある。入れてもらえたとしても、玄関先のみであったり、集合住宅の共用部分のみであったりということもある。このような場合に、個別機能訓練加算を取るためにはどのような対応が必要となるのか。
【回答】
利用者の居宅を訪問する新たな要件の追加については、利用者の居宅における生活状況を確認し、個別機能訓練計画に反映させることを目的としている。このため、利用者やその家族等との間の信頼関係、協働関係の構築が重要であり、通所介護事業所の従業者におかれては、居宅訪問の趣旨を利用者及びその家族等に対して十分に説明し、趣旨をご理解していただく必要がある。
【質問2】
利用契約を結んではいないが、利用見込みがある者について、利用契約前に居宅訪問を行い利用者の在宅生活の状況確認を行い、利用契約に至った場合、個別機能訓練加算の算定要件を満たすことになるか。
【回答】
利用契約前に居宅訪問を行った場合についても、個別機能訓練加算の居宅訪問の要件を満たすこととなる。
【質問3】
居宅を訪問するのは、利用者宅へ送迎をした後そのまま職員が残り、生活状況を確認することでも認められるか。
【回答】
認められる。
今回は、厚生労働省から推奨されている「居宅訪問チェックシート」を踏まえた居宅訪問のチェックポイントをご紹介しました。
居宅訪問は、自宅を想定した具体的な機能訓練を提供するためにとても大切な役割があります。
個別機能訓練加算は、ご利用者様一人ひとりの身体能力や生活環境に合わせた機能訓練を提供することで算定できる加算です。そのため、デイサービスを利用されるご利用者様が、住み慣れた自宅でいつまでも元気に生活をしていただくためにも居宅訪問を行った上で個別機能訓練計画書を作成し、機能訓練を提供していく必要があるのではないでしょうか?
今回の記事を参考に私たちスタッフがご利用者様に寄り添い、自宅の状況や本人の気持ちを把握できればすることができれば幸いです。
2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。
このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?
その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。
業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?