【2021年の介護報酬改定版】通所介護のCHASE対応について
介護保険法
2022/08/10
介護保険法
運動器機能向上加算
更新日:2022/02/24
通所介護の運動器機能向上加算とは、要支援者・総合事業対象者を対象とした介護予防通所介護・総合事業の通所型サービスの一部で算定できる加算です。算定要件、単位数、体力測定の内容、計画書の内容や目標期間、何ヵ月で再作成するかなどについてまとめてご紹介します。目標例や事後アセスメントまでを詳しく解説。これから運動器機能向上加算を算定したい方、機能訓練指導員や管理者などで算定内容を見直しする方におすすめです。
この記事の目次
運動器機能向上加算について算定要件の概要をお伝えします。
次に掲げるいずれの基準にも適合しているものとして都道府県知事に届け出て、利用者の運動器の機能向上を目的として個別的に実施される機能訓練であって、利用 者の心身の状態の維持又は向上に資すると認められるもの(以下「運動器機能向上サービス」という。)を行った場合は、1月につき所定単位数「225単位」を加算するという内容になっています。
この記事では、算定要件の概要を紹介し、そのあとに各要件について詳細な解釈を補足していきます。
運動器の機能向上という言葉がなぜ使われているのかその意味を考えてみます。
高齢者の課題となりやすい「移動」は人の日常生活の基礎をなすものですが、下肢や体幹の筋力低下、膝や腰の痛みなどの運動器の機能低下や機能障害は、高齢者の移動能力の低下を引き起こす最も大きな要因となっています。
運動器の機能向上プログラムは、 高齢期の生活機能を維持・改善するために大変重要です。
専ら機能訓練指導員の職務に従事する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師(以下この注において「理学療法士等」という。)を1名以上配置していること。
利用者の運動器の機能を利用開始時に把握し、理学療法士等、介護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して、運動器機能向上計画を作成していること。
利用者ごとの運動器機能向上計画に従い理学療法士等、経験のある介護職員その他の職種の者が運動器機能向上サービスを行っているとともに、利用者の運動器の機能を定期的に記録していること。
利用者ごとの運動器機能向上計画の進捗状況を定期的に評価すること。
厚生労働大臣の定める基準、各区市町村が定めている指定介護予防通所介護事業所に適合している状態であること。
運動器機能向上加算の概要はご理解いただけましたか?
ここから先は算定基準について詳しく要件を紹介していきます。
介護予防通所介護・日常生活総合事業通所型サービス・介護予防通所リハビリテーションにおいて運動機器向上サービスを提供する目的は、当該サービスを通じて要支援者ができる限り要介護状態にならず自立した日常生活を営むこと ができるよう支援することが目的となっています。
運動器機能向上加算の算定に当たっては、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、 柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師(以下「理学療法士等」という。)を1名以上配置して行うものとされています。
1名以上という表現から、必ずしも常勤専従でなければならないというわけではなく、業務に支障がない範囲での非常勤や非専従(兼務)も認められる余地はあります。
例えば、看護職員が看護業務に従事する時間と機能訓練指導員として従事する時間を明確に区分して兼務するなどが想定されますが、この場合の取り扱いについては都道府県により若干の違いがあるようですので確認が必要です。
運動器機能向上加算の算定に当たっては、利用者ごとに看護職員等の医療従事者による運動器機能向上サービスの実施に当たってのリスク評価、体力測定等を実施し、サービスの提供に際して考慮すべきリスク、利用者のニーズ及び運動器の機能の状況を、利用開始時に把握することとされています。
実施担当者は事前アセスメントを行う上で、参加者の健康状態・生活習慣、体力水準などの個別の状況を把握する。体力水準を把握するために体力測定を実施する場合は、握力測定・開眼片足立ち時間・Timed Up & Go Test・5m歩行時間(通常・最大)等を測定することが望ましいとされています。
ただし、 利用者が体力測定に不安を訴える場合は実施できるものなどにとどめましょう。事業実施前と実施後のアセスメントの結果については、地域包括支援センターへの報告を行う事とされています。(地域包括支援センターから居宅介護支援事業所のケアマネージャーに予防ケアプラン作成が委託されているケースもあります)
理学療法士等が、暫定的に、利用者ごとのニーズを実現するためのおおむね3月程度で達成可能な目標(以下「長期目標」という。)と、長期目標を達成するためのおおむね1月程度で達成可能な目標(以下「短期目標」という。)を設定します。
長期目標及び短期目標については、介護予防支援事業者(地域包括支援センターなど)において作成された当該利用者に係る介護予防サービス計画と整合が図られたものにします。
運動器機能向上加算では、介護予防サービス計画との整合が図れている目標を設定します。「暫定的に」という表現が入っていることから、まずは利用者のニーズに合わせて利用者の運動器の機能向上に関連ある長期目標・短期目標を設定し、その後に多職種で共同で実施する運動の種類、実施期間、実施頻度、 1回当たりの実施時間、実施形態等を考えて計画書を立てるという手続きです。
地域包括支援センターなどで作成される介護予防サービス計画とは以下のような書式です。
改善すべき生活機能を参加者から具体的に聞き出すことが難しい場合もあります。この場合、生活機能を把握するための基本チェックリストや生活機能評価を参考に、利用者の日常生活で必要とされる生活機能を列挙し、それがどの程度難しいのか、また改善可能であるのかを判断し、課題となる生活機能をいくつかの項目列挙します。
この列挙された生活機能について、参加者とともに楽にできるか、一人で何とかできるか、一人では難しいかを判断し、一人では難しい項目であれば、それを何とかひとりでできるようにするという実現可能な目標設定をします。ひとりで何とかできる項目であれば、楽にできるようにするといった目標設定を行います。 個別サービス計画では、決定された生活機能の向上目標を達成するための、下位の目標を1ヶ月毎に設定します。
目標とする生活課題をより明確にすることで、運動器の機能向上サービスの効果を高めることが出来るとされています。
利用者に係る長期目標及び短期目標を踏まえ、 理学療法士等、看護職員、介護職員、生活相談員 その他の職種の者が共同して、当該利用者ごとに、実施する運動の種類、実施期間、実施頻度、 1回当たりの実施時間、実施形態等を記載した運動器機能向上計画を作成します。その際、実施期間については、運動の種類によって異なるものの、おおむね3月間程度とすることとされています。
一つの計画に対して、プログラムは3 ヶ月間を目安として実施します。これより長期の実施も可能ですが、3ヶ月毎にアセスメントし、個別サービス計画を作成するルールが存在します。長期のプログラム実施を選択する場合には、よりケアマネジメントの連携を強化し、目標とする生活課題の改善状況を把握しながら実施する必要があります。
3ヶ月間はおおむね、コンディショニング期間(第1期)・筋力向上期間(第2期)・機能的運動期間(第3期)にわけて実施していきます。
学習時間 | 自宅等での実施状況を確認する | 運動習慣の定着 | 10 分 |
ウォーミングアップ | ストレッチングバランス運動 | 柔軟性平衡性 | 20 分 |
主運動(時期によって選択) | コンディショニング運動筋力向上運動 | 筋力・筋持久力生活機能 | 40 分 |
クーリングダウン | ストレッチングリラクゼーション | 10 分 | |
学習時間 | 自宅でいつ・どのように実施するのか | 運動習慣の定着 | 10 分 |
生活機能の向上を図るためには、立つ・座る・歩く・階段を昇降するといった日常生活活動に 必要な抗重力筋群を中心に運動します。このほか転倒を予防するためには、前脛骨筋などの抗重 力筋と拮抗する筋群や体幹を安定させる腹筋群も対象に加えます。 また、尿失禁の予防を目的とする場合には、骨盤底筋群も対象とすることもあります。
その他の運動プログラム事例については、厚生労働省作成の介護予防マニュアル(改訂版:平成24年3月)「資料3-3 運動プログラム事例 プログラム事例(例:機能的運動期)」などをご参考にどうぞ。
また、リハプランのサイト内では、もっとたくさんの運動バリエーションを紹介しています。
→ 「【完全保存版】デイサービス・機能訓練指導員が活用できる高齢者のためのリハビリ体操・運動まとめ」
作成した運動器機能向上計画については、運動器機能向上サービスの提供による効果、リスク、緊急時の対応等と併せて、当該運動器機能向上計画の対象となる利用者に分かりやすい形で説明し、その同意を得ます。
なお、介護予防通所介護または介護予防通所リハビリテーションにおいては、運動器機能向上計画に相当する内容を介護予防通所介護計画の中や介護予防通所リハビリテーション計画の中にそれぞれ記載する場合は、その記載をもって運動器機能向上計画の作成に代えることができるとされています。
運動器機能向上加算を算定のために必要な計画書に記載する実施期間は、運動の種類などによって異なるものの、概ね3ヵ月程度とされています。
運動器機能向上計画に相当する内容とは、利用者ごとの長期目標・短期目標を踏まえ、 理学療法士等、看護職員、介護職員、生活相談員 その他の職種の者が共同して、当該利用者ごとに考えた、実施する運動の種類、実施期間、実施頻度、 1回当たりの実施時間、実施形態等の内容が含まれていることを指します。
介護予防通所介護計画や介護予防通所リハビリテーション計画に運動器機能向上計画に相当する内容に含めることで、事業者・利用者双方にとって書類の作成管理の効率化や、通所目的・サービス内容について把握しやすいなどのメリットがあります。
運動器機能向上計画に基づき、利用者ごとに運動器機能向上サービスを提供します。その際、 提供する運動器機能向上サービスについては、国内外の文献等において介護予防の観点からの有効性が確認されている等の適切なものとします。また、運動器機能向上計画に実施上の問題点(運動の種類の変更の必要性、実施頻度の変更の必要性等)があれば直ちに当該計画を修正することとされています。
また、実施後には計画に基づいて、提供日、提供した具体的なサービスの内容、利用者の心身の状況その他泌要な事項を記録します。(内容の条件を満たせば介護予防通所介護の記録に含めることも可能)
利用者の短期目標に応じて、おおむね1月間毎に、利用者の当該短期目標の達成度と客観的な運動器の機能の状況についてモニタリングを行うとともに、必要に応じて、運動器機能向上計画の修正を行います。
運動器機能向上計画に定める実施期間終了後(おおむね3ヵ月後) に、利用者毎に、長期目標の達成度及び運動器の機能の状況について、事後アセスメントを実施 し、その結果を当該利用者に係る介護予防支援事業者に報告します。
介護予防支援事業者による当該報告も踏まえ、ケアマネージャーが介護予防ケアマネジメントの結果、運動器機能向上サービスの継続が必要であるとの判断がなされる場合については、ここまでと同じ流れにより、継続的に運動器機能向上サービスを提供します。
介護予防通所介護と、要介護者への通所介護を同時に提供している事業所などもあると思います。その場合に必要な書類の様式や作成・報告の頻度が異なります。
運動器機能向上加算と個別機能訓練加算など、内容的には似ているため混同してしまうこともあります。双方の加算算定要件を確認して、漏れの内容にしていきましょう。
参照:運動器機能向上加算とは?個別機能訓練加算との違いや、計画書の記入例を交えて解説!
目標
安全管理
評価
方法
フォローアップ
個別機能訓練加算(Ⅰ)や(Ⅱ)、運動器機能向上加算を算定している場合には、計画書の作成やモニタリングなどをシステム化して、作成状況などを一元管理すると便利です。
加算算定の支援ツールの「リハプラン」を使うと、機能訓練に関わる適切な目標設定が自動で提案され、それに応じた訓練プログラムも自立度に合わせて自動提案されます。(個々の運動の方法なども画像と説明付きで出力でき、介護予防分野で重要視されている自主トレーニング指導にも対応しています)
2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。
このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?
その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。
業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?