生活機能向上連携加算とは?目的や算定要件、対象施設について
介護保険法
2023/03/24
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基本報酬
更新日:2022/10/27
介護サービス全般の取り組みとして「自立支援」が着目されています。首相官邸の発表においても、介護保険制度としても「自立支援・重度化防止に向けた科学的介護の実現」を進めていく方針です。具体的な課題や方針の議論内容や科学的介護のロードマップをふまえてご紹介します。
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この記事の目次
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自立支援介護とは、介護を必要としているご高齢者が、その方らしく生活できるように介護サービス事業所が支援を行うことです。
自立支援の内容には、人が生活するために必要となる食事(水分摂取・食事摂取)、トイレだけでなく、褥瘡予防(じょくそう)や機能訓練などがあります。
そして平成30年は医療・介護報酬同時改定の年。
政府は、この改定で「効果のある自立支援について評価を行なう」ことを決定しました。これは、団塊の世代が65歳以上になる2025年に向けて自立支援に取り組むことで、要介護状態の方の生活能力向上や社会参加を促すとともに、介護保険の費用抑制につなげる狙いがあります。
▼デイサービスの自立支援と関係がある加算に「個別機能訓練加算」というものがあります。詳しくは「初心者でもわかる個別機能訓練加算【総論】」をご参考ください。
参照:内閣官房日本経済再生総合事務局(2017)未来投資戦略2017
「要介護高齢者の自立支援で成果を上げた介護サービス事業所へより多くの報酬を支払うインセンティブ制度」は、平成30年度の介護報酬改定に反映させる方針です。
なぜ、このような時代に変わろうとしているのでしょうか?
安倍首相は、成長戦略を議論する「未来投資会議(2016年11月)(※1)」において「パラダイムシフトを起こす。介護が要らない状態までの回復を目指す」として「自立支援」を中心とした介護に軸足を移す方針を宣言しました。
また、2017年6月には、首相官邸から「未来投資戦略2017―Society 5.0 の実現に向けた改革―」が発表され、私たちが働く介護事業所においては「次期介護報酬改定で、効果のある自立支援について評価する」とされています。
このように国は要介護者の減少を目指し、平成30年度改定では要介護者の状態を改善した事業者を評価する仕組みに向けた議論が始まりました。
一方で、厚生労働省は「要介護度」のみを改善の指標とすることについては懸念を示しており、どのように制度転換していくかは議論真っ只中といえるでしょう。
(※1)未来投資会議…安倍総理を議長とし、成長戦略と構造改革についての議論を行う会議
関連記事:2018年介護報酬改定は何が変わる?改定の経緯と今後の動向
「未来投資会議」において政府はなぜ、平成30年度の介護報酬改定で「自立支援」に力を入れようとしているのでしょうか?ここからは、要介護者の生活能力向上や社会参加を促し、介護保険の費用抑制につなげる狙いがある「自立支援介護」に力をいれる理由についてご紹介します。
海外に目を向けてみると、ドイツは2050年に高齢者化率が「32.7%」になると予想されており、公的介護保険制度を本年(2017年1月)から改正しました。要介護認定を軽度まで拡大し、認知機能低下者の等級のランクアップ・保険料率の「0.2%」引き上げを行っています。これにともない要介護等級が従来の3等級から5等級に細分化されました。
このようにドイツは日本の介護保険制度をなぞるように、仕組みが変わってきているのです。
一方、日本の高齢者(65歳以上)の人口は、3,449万人(平成28年9月15日現在推計)で、うち要介護認定を受けている高齢者は634.3万人(平成29年5月現在)で高齢者数の約18%となっています。
要介護者の介護度を区分別に見ていくと以下の通りとなっており、要支援1~要介護2の方で66%となっていることがわかります。
要介護認定を受けている高齢者の3人に1人、約200万人の高齢者が通所介護(デイサービス)を利用しており、全国に約43,000事業所(平成27年度)ある通所介護(デイサービス)施設における利用者の約7割は要介護1・2の方となっています。
これらの事実から、国を中心に厚生労働省や各団体が介護保険利用者の中でも要支援や要介護1・2の方を中心に日常生活や心身機能の維持・向上を図るための「機能訓練」及び「自立支援」を推進しており、要介護状態の方々を増やさないことで財政の圧迫を軽減することを見込んでいるのです。
「未来投資戦略」における、平成30年度の介護報酬改定に向けた「自立支援介護」の具体的な課題と今後の方針についてご紹介します。
介護予防や、要介護状態からの悪化を防止・改善させるための先進的な取組が一部に広まっているものの、国として目指すべき形として、自立支援等の効果が科学的に裏付けられた介護を具体的に示すには至っておらず、また、要介護度が改善すると報酬が減ることもあり、自立支援に向けたインセンティブの充実等を求める声がある。
このように国は自立支援を促進する事業所への評価を行っていく方針を示していますが、効果のある自立支援をどのように評価するのか、評価指標は決まっていません。
また、要介護度の改善だけを評価指標にしてしまうと、事業所が意図的に改善が見込まれる高齢者を選別する「クリームスキミング」への対応が懸念されるなど、反対意見があることも理解しておく必要があります。
では、「自立支援に資する介護に関する意見」について各団体の意見を具体的に見ていきましょう。
自然の摂理をありのままに受け入れ、社会で支え合うなかで「いま出来ることを、出来るだけの間、出来るままいてもらう」ことにも、「次第に出来ることが限られていくなかにも、そのひとらしく暮らしていける環境をつくる」ことにも、大いに価値があります。それらを実現するための入浴や排泄等日常生活の支援を評価せず、要介護度が軽度になることだけを尺度とすることは、自然の摂理を無視し、生活の質を軽んずるものであり、介護保険制度の歴史に逆行するものです。(中略)
仮にいわゆる「自立支援介護」が敷かれた場合、特養において利用者の意に反して栄養を投与し、リハビリを重ね、歩行器で歩かせることを強いるような「QOLの向上を伴わないADL回復の目的化」が促進されるリスクが強く危惧されます。
引用:平成28年12月5日 全国老人福祉施設協議会 「いわゆる『自立支援介護』について(意見)」
加齢に伴う身体的機能の低下は誰もが避けることができない現象であるにも関わらず、要介護度の改善や要介護認定率を評価尺度としたインセンティブあるいはディスインセンティブ措置は、要介護状態を悪とする偏見を助長するとともに、適正なサービス利用を阻害し、安心して介護サービスを利用できなくなる恐れがあります。
また、高齢者本人の意志に基づかない身体的自立に偏重した自立支援は、介護保険法の目的である高齢者の「尊厳の保持」に反することになり、制度の根幹を揺るがすことになりかねません。
引用:平成29年4月7日 日本社会福祉士会「高齢者の自立支援・重度化防止に向けた取組の推進に対する声明」
介護保険制度は「疾患」の重さを見る指標ではなく、その方の日常生活自立度を見ており、一人で歩ける、料理ができる、更衣ができるなどを見ています。しかし、高次脳機能障害や認知症、メンタル面、環境要因など総合的な解釈や判定など「自立」の定義が難しいことはまちがいないでしょう。
まだまだ問題は山積であり、問題解決に向け、私たち介護現場からも発信していけるようにしていかなければなりません。
参照: 厚生労働省 社保審-介護給付費分科会 第145回(H29.8.23)「介護サービスの質の評価・ 自立支援に向けた事業者へのインセンティブ」
平成30年度の介護報酬改定に向けて、まだまだ議論し尽くされていない部分も多いです。ここで改めて、首相官邸の「未来投資戦略2017」における「自立支援・重度化防止のための科学的介護のロードマップ」を確認しておきましょう。
【官邸方針】
どのような状態に対してどのような支援をすれば自立につながるか明らかにし、自立支援等の効果が科学的に裏付けられた介護を実現するため、必要なデータを収集・分析するためのデータベースを構築する。
本年度中にケアの分類法等のデータ収集様式を作成し、来年度中にデータベースの構築を開始し、2019 年度に試行運用を行い、2020 年度の本格運用開始を目指す。
データ分析による科学的な効果が裏付けられた介護サービスについては、2021 年度以降の介護報酬改定で評価するとともに、そうしたサービスが受けられる事業所を厚生労働省のウェブサイト等で公表し、国民に対する「見える化」を進める。
介護職員の負担軽減のため、行政が求める帳票等の文書量の半減に向けて取り組むとともに、介護記録のICT 化について普及を促す取組を強化する。加えて、これまでの処遇改善の着実な実施や、返済免除付きの貸付制度の活用等の多様な介護人材の確保策等に総合的に取り組む。また、AI を活用したケアプランの作成支援についても、実用化に向けた課題の整理などの取組を支援する。
このように「ビッグデータのデータベース化」及び「自立支援を促す介護事業所の情報公開」、「介護の書類業務負担の軽減」が主な方針となっています。
参照:塩崎厚生労働大臣 配布資料 (2017)「データヘルス改革 -ICT・AI等を活用した健康・医療・介護のパラダイムシフトの実現-」 資料5
今回は、平成30年度の介護報酬改定のポイントとなる自立支援介護について、「具体的な課題」や「今後の方針」についてまとめてご紹介しました。
自立支援とは、介護を必要としている方が、その方らしく生活できるように支援することです。そのためには、ご利用者様ができる活動はできるだけ自分で行っていただけるように筋力トレーニングや歩行訓練、生活リハビリテーションなどで機能訓練を提供していく必要があります。
リハプランでは、介護サービスの「自立支援」の取り組みの主軸となる個別機能訓練加算を徹底サポートごしています。
介護現場で取り組む「自立支援の方法」について困ったらご気軽にご相談ください。
2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。
このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?
その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。
業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?