初心者でもわかる運動器機能向上加算【総論】

介護保険法

個別機能訓練加算

更新日:2024/04/01

【令和3年報酬改定対応】運動器機能向上加算とは、通所介護や通所リハビリテーションにおいて所定の算定要件を満たし、要支援者を対象に介護予防サービスを提供した事業所が算定できる加算です。今回は、これから初めて運動器機能向上加算を算定するデイサービスの方向けに、算定要件や単位数と算定の流れをご紹介します。

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運動器機能向上加算とは、要支援者・事業対象者を対象とした介護予防サービスを提供した事業所が算定できる加算のことです。

高齢者が住み慣れた地域で日常生活を維持・改善することを目的としています。その目的のために必要なプログラムを提供し、ご自身による改善方法の習得や運動方法の定着を図ります。

算定対象となる事業所

運動器機能向上加算の算定対象となる事業所は、「総合事業の通所型サービス」と「通所リハビリテーション」の2種類です。

算定対象者

運動器機能向上加算の算定対象者は、以下の通りです。

  • 要支援1・2の利用者
  • 事業対象者
  • 介護予防ケアマネジメントの結果、運動機能向上サービスの継続が必要と判断された利用者

一方で、要介護の認定を受けている方は運動器機能向上加算ではなく、「個別機能訓練加算」の算定対象となります。

個別機能訓練加算については以下の記事からチェックできますので、ぜひご一読ください。

▶︎初心者でもわかる個別機能訓練加算【総論】算定要件や人員配置を解説

単位数

運動器機能向上加算の単位数は、1人あたり「225単位/月」の算定が可能です。

運動器機能向上加算 225単位
注 次に掲げるいずれの基準にも適合しているものとして市町村長に届け出て、利用者の運動器の機能向上を目的として個別的に実施される機能訓練であって、利用者の心身の状態の維持又は向上に資すると認められるもの(以下「運動器機能向上サービス」という。)を行った場合は、1月につき所定単位数を加算する。

引用:介護保険法施行規則第百四十条の六十三の二第一項第一号に規定する厚生労働大臣が定める基準(令和3年厚生労働省告示第72号)

運動器機能向上加算の算定要件

ここでは運動器機能向上加算の算定要件について解説します。

通所型サービスの算定要件について、以下の表にまとめました。

配置基準

・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサ ージ指圧師、はり師又はきゅう師(はり師及びきゅう師については、理学療法 士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧 師の資格を有する機能訓練指導員を配置した事業所で6月以上機能訓練指導に従 事した経験を有する者に限る。)(以下「理学療法士等」という。)を1名以上配 置して行うものであること。・利用者ごとに看護職員等の医療従事者による運動器機能向上サービスの実施に当たってのリスク評価、体力測定等を実施し、サービスの提供に際して考慮すべきリスク、利用者のニーズ及び運動器の機能の状況を、利用開始時に把握すること。

計画書

  理学療法士等が、暫定的に、利用者ごとのニーズを実現するためのおおむね 3月程度で達成可能な目標(以下「長期目標」という。)及び長期目標を達成 するためのおおむね1月程度で達成可能な目標(以下「短期目標」という。) を設定すること。長期目標及び短期目標については、地域包括支援センター等 において作成された当該利用者に係るケアプラン等と整合が図れたものとする こと。利用者に係る長期目標及び短期目標を踏まえ、理学療法士等、看護職員、介 護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して、当該利用者ごとに、実施す る運動の種類、実施期間、実施頻度、1回当たりの実施時間、実施形態等を記 載した運動器機能向上計画を作成すること。その際、実施期間については、運 動の種類によって異なるものの、おおむね3月間程度とすること。また、作成 した運動器機能向上計画については、運動器機能向上サービスの提供による効果、リスク、緊急時の対応等と併せて、当該運動器機能向上計画の対象となる 利用者に分かりやすい形で説明し、その同意を得ること。なお、通所型サービ スにおいては、運動器機能向上計画に相当する内容を通所型サービス計画の中 に記載する場合は、その記載をもって運動器機能向上計画の作成に代えること ができるものとすること。

  機能訓練

  運動器機能向上計画に基づき、利用者ごとに運動器機能向上サービスを提供 すること。その際、提供する運動器機能向上サービスについては、国内外の文献等において介護予防の観点からの有効性が確認されている等の適切なものと すること。また、運動器機能向上計画に実施上の問題点(運動の種類の変更の 必要性、実施頻度の変更の必要性等)があれば直ちに当該計画を修正するこ と。

記録 

利用者の短期目標に応じて、おおむね1月間ごとに、利用者の当該短期目標 の達成度と客観的な運動器の機能の状況についてモニタリングを行うととも に、必要に応じて、運動器機能向上計画の修正を行うこと。

  事後アセスメント

  カ  ​​運動器機能向上計画に定める実施期間終了後に、利用者ごとに、長期目標の 達成度及び運動器の機能の状況について、事後アセスメントを実施し、その結 果を当該利用者に係る地域包括支援センター等に報告すること。地域包括支援 センター等による当該報告も踏まえた介護予防ケアマネジメントの結果、運動 器機能向上サービスの継続が必要であるとの判断がなされる場合については、 前記アからカまでの流れにより、継続的に運動器機能向上サービスを提供す る。(ア〜カは以下)事前アセスメント(リスク評価、体力測定等)、長期目標・短期目標の設定、運動器機能向上計画の策定、説明・同意、モニタリング・事後アセスメントなどの手続き

配置基準

機能訓練指導員の対象者を1名以上配置する必要があります。
はり師・きゅう師を配置する際は、6ヵ月以上の実務経験が必要となる点に注意しましょう。

計画書

運動器機能向上計画では長期目標と短期目標を設定したうえで、そのゴールに向けた運動を提供します。
運動器機能向上計画書の代わりに、介護予防通所介護計画書の中に同じ内容を記載して代用することも可能です。

機能訓練

1度に複数の利用者にサービスを提供すると、運動器機能向上加算の算定ができません。
集団の利用者に対して加算を算定するには、一人ひとり個別に訓練する必要があります。

記録

利用者の短期目標に応じて、おおむね1月間ごとに、利用者の当該短期目標の達成度と客観的な運動器の機能の状況についてモニタリングを行うと良いでしょう。

事後アセスメント

アセスメントで実施する体力測定の内容については、具体的な項目は示されていません。
体力測定の内容としては、例えば以下などを実施すると良いでしょう。

  • 握力
  • 開眼状態での片足立ち時間
  • TUG
  • 5m歩行時間

これらの体力測定の結果や目標の進捗状況などをもとに、提供している訓練内容を見直します。

運動器機能向上加算の算定の流れ

ここでは運動器機能向上加算を算定する流れについて解説します。
算定を始める際はあらかじめ自治体の窓口に届出る必要があるので、忘れないようにしましょう。

リスク評価、体力測定、利用者のニーズ等の把握

運動機能向上サービスを提供するには、まず医療従事者が以下の利用者の情報を収集します。

  • リスク評価
  • 体力測定
  • ニーズの把握

リスク評価では利用者の既往歴や服薬状況、自覚症状などの情報をおさえておきましょう。
体力測定では、身体機能の程度を把握するために握力や歩行能力などをチェックします。
また、利用者の悩みや希望も聴取したうえで、生活場面での課題を抽出します。

計画作成、説明、同意

利用者の聴取内容や評価結果をもとに、運動器機能向上計画書を作成します。
運動器機能向上計画書で重要な項目は「目標設定」と「運動の設定」です。

目標設定は機能訓練指導員を中心に、長期・短期的に達成可能なゴールを記載しましょう。
長期目標は3ヵ月程度、短期目標は1ヵ月程度を目安に達成できる内容を設定します。

運動の設定では多職種との協力のもと、以下の内容を決めていきましょう。

  • 運動の種類
  • 運動負荷の強度
  • 運動の頻度
  • 1回あたりの運動時間
  • 運動の実施形態

運動器機能向上計画書の作成後は利用者とそのご家族に説明し、同意を得たうえで署名をもらいます。

サービスの実施

運動器機能向上計画書の同意・署名をいただいたら、その内容に沿ってサービスを実施します。
サービス実施後は、アプローチ内容や運動器の状態を把握するために記録を残しておきましょう。
サービスを行うにあたって計画内容に問題が生じていると感じた場合は、適宜内容を修正することが大切です。

1ヵ月ごとにモニタリングの実施

サービスの継続後は、1ヵ月ごとを目安にモニタリングをしましょう。
短期目標の達成具合、運動器の機能などをモニタリングして、計画の見直しが必要かどうかを検討します。

3ヵ月ごとに計画の見直し

サービスを実施して3ヵ月が経過したら運動器機能向上計画の期間が終了するため、内容の見直しを行います。
まずは事後評価として体力測定を行い、3ヵ月で運動器の機能にどの程度変化があったのかを把握しましょう。

利用者ごとの長期目標の達成具合、運動器の機能についてアセスメントし、その内容をもとに「モニタリング報告書」を作成します。

事後アセスメント結果を介護予防支援事業者に報告し、その後も運動機能向上サービスが必要であれば、引き続きアプローチを継続します。

運動器機能向上加算のQ&A

(問25)介護予防通所介護における運動器機能向上加算の人員配置は、人員基準に定める看護職員以外に利用時間を通じて1名以上の配置が必要か。また、1名の看護職員で、運動器機能向上加算、口腔機能向上加算の両方の加算を算定してもかまわないか。
(答)
運動器機能向上加算を算定するための前提となる人員配置は、PT、OT、ST、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師のいずれかである。看護職員については、提供時間帯を通じて専従することまでは求めていないことから、本来の業務である健康管理や必要に応じて行う利用者の観察、静養といったサービス提供にとって支障がない範囲内で、運動器機能向上サービス、口腔機能向上サービスの提供を行うことができる。ただし、都道府県等においては、看護職員1名で、基本サービスのほか、それぞれの加算の要件を満たすような業務をなし得るのかどうかについて、業務の実態を十分に確認することが必要である。

引用 :平成18年4月改定関係 Q&A (Vol.1)

(問26)運動器の機能向上について、個別の計画を作成していることを前提に、サービスは集団的に提供してもよいか。
(答)
個別にサービス提供することが必要であり、集団的な提供のみでは算定できない。なお、加算の算定に当たっては、個別の提供を必須とするが、加えて集団的なサービス提供を行うことを妨げるものではない。

引用 :平成18年4月改定関係 Q&A (Vol.1)

(問27)運動器の機能向上加算は1月間に何回か。また、1日当たりの実施時間に目安はあるのか。利用者の運動器の機能把握を行うため、利用者の自己負担により医師の診断書等の提出を求めることは認められるか。
(答)
利用回数、時間の目安を示すことは予定していないが、適宜、介護予防マニュアルを参照して実施されたい。また、運動器の機能については、地域包括支援センターのケアマネジメントにおいて把握されるものと考えている。

引用 :平成18年4月改定関係 Q&A (Vol.1)

(問28)介護予防通所介護における運動器機能向上加算の「経験のある介護職員」とは何か。
(答)
特に定める予定はないが、これまで機能訓練等において事業実施に携わった経験があり、安全かつ適切に運動器機能向上サービスが提供できると認められる介護職員を想定している。

引用 :平成18年4月改定関係 Q&A (Vol.1)

(問29)介護予防通所リハビリテーションにおける運動器機能向上加算を算定するための人員の配置は、PT,OT,STではなく、看護職員ではいけないのか。
(答)
介護予防通所リハビリテーションにおいては、リハビリテーションとしての運動器機能向上サービスを提供することとしており、より効果的なリハビリテーションを提供する観点から、リハビリの専門職種であるPT、OT又はSTの配置を算定要件上求めているところであり、看護職員のみの配置では算定することはできない。なお、サービス提供に当たっては、医師又は医師の指示を受けたこれらの3職種若しくは看護職員が実施することは可能である。

引用 :平成18年4月改定関係 Q&A (Vol.1)

運動器機能向上加算と個別機能訓練加算との違い

ここでは運動器機能向上加算と個別機能訓練加算の違いについて、以下の項目に分けながらご紹介します。

  • 対象者
  • 対象介護サービス
  • 単位数

対象者の違い

それぞれの対象者の違いを以下の表にまとめました。

加算 対象者

運動器機能向上加算

要支援1・2の方
事業対象者運動機能向上サービスの継続が必要な利用者

個別機能訓練加算

要介護1〜5の方

対象介護サービスの違い

対象介護サービスの違いは、以下の表の通りです。

加算 対象介護サービス

運動器機能向上加算

総合事業の通所型サービス通所リハビリテーション

個別機能訓練加算

通所介護(デイサービス)特定施設入居者生活介護(特定施設)特別養護老人ホーム(特養)短期入所生活介護(ショートステイ)など

単位数の違い

個別機能訓練加算の単位数は、加算の種類や介護サービスの種別によって異なる点に注意しましょう。

加算 単位数

運動器機能向上加算

225単位/月

個別機能訓練加算(デイサービス)

加算(Ⅰ)イ:56単位/日加算(Ⅰ)ロ:85単位/日 
加算(Ⅱ):20単位/月

運動器機能向上加算で介護予防を実現

運動器機能向上加算は、利用者の身体機能や運動器の状態を維持・改善するために必要なサービスです。

それぞれにあわせたアプローチをすることで利用者の介護予防につながり、日常生活を安全に過ごせるためのきっかけとなるでしょう。

そのためには、加算に必要な内容をよく理解したうえで、算定の準備をすることが大切です。
運動器機能向上加算をうまく活用して、利用者の介護予防に努められるように取り組んでいきましょう。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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