個別機能訓練加算Ⅱの目的とは
個別機能訓練加算Ⅱとは、高齢者が望む豊かな生活が送れるように、日常生活活動(ADL)や家事動作(IADL)、趣味・余暇活動、社会参加といった目標を立案し、その目標達成に必要な機能訓練を提供する高齢者の自立支援のための加算です。
個別機能訓練加算Ⅱの目的とは
個別機能訓練加算Ⅱの目的は、高齢者が望む豊かな生活が送れるように、「基本動作」「日常生活動作」「家事動作」「趣味・余暇活動」「社会参加」の5つの分野の維持・向上があります。
1)基本動作の維持・向上 2)日常生活動作の維持・向上 3)家事動作の維持・向上 4)趣味・余暇活動の維持・向上 5)社会参加の維持・向上 |
個別機能訓練加算Ⅱに類似する加算
個別機能訓練加算には、個別機能訓練加算Ⅰと個別機能訓練加算Ⅱの2種類があります。これから初めて個別機能訓練加算Ⅱを算定しようとお考えの方は、個別機能訓練加算ⅠとⅡの違いについても理解しておきましょう。
個別機能訓練加算Ⅱの単位数について
個別機能訓練加算Ⅱの単位数は、当該基準に従いサービス提供したご利用者に対して1日につき「56単位」を所定単位数に加算することができます。
デイサービスにおける加算・減算の中でも非常に高い単位数となっています。
個別機能訓練加算Ⅱの算定要件について
ここからは、個別機能訓練加算Ⅱを算定するため算定要件についてまとめてご紹介します。特に初めて個別機能訓練加算Ⅱを算定していく場合、以下の算定要件が自社のデイサービスで整っているかどうかを確認しておきましょう。
個別機能訓練加算Ⅱの算定要件 |
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1. 単位数 2. 人員配置 3. 実施者 4.目的 5. 訓練の内容 6. 実施範囲 7. 実施環境 |
人員基準について
個別機能訓練加算Ⅱでは、専従の機能訓練指導員(理学療法士等)を「1名」以上配置していることが必要になります。
※ただし、非常勤の機能訓練指導員の配置でも算定可。なお看護職員が当該加算に係る機能訓練指導員の職務に従事する場合は、当該職務の時間帯は看護職員としての人員基準の算定に含めないこと。
・理学療法士(PT) ・作業療法士(OT) ・言語聴覚士(ST) ・看護師(准看護師含む) ・柔道整復師 ・あん摩マッサージ指圧師 ・鍼灸師(はり師・きゅう師) ※平成30年度の介護報酬改定より、6ヵ月以上の実務経験を持つ「鍼灸師(はり師・きゅう師)」も機能訓練指導員として働くことが可能 |
個別機能訓練計画書の作成について
個別機能訓練加算Ⅱを算定するためには、高齢者の生活機能の維持・向上し、利用者ごとの心身の状況を重視した個別機能訓練計画を作成していることが必要になります。
機能訓練の内容について
個別機能訓練加算Ⅱを算定するためには、個別機能訓練計画に基づき、理学療法士等が高齢者の心身の状況、生活の状況に応じた機能訓練を実施していることが必要になります。
■基本動作に対するプログラム
・寝返り訓練
・起き上がり訓練
・立ち上がり訓練
・床からの立ち上がり訓練など
■日常生活動作に対するプログラム
・食事動作訓練:箸や自助具の使用、姿勢保持訓練など
・整容動作訓練:歯磨き、洗顔、髭剃りなど
・排泄動作訓練:ズボンの着脱、排尿コントロール、便座からの立ち上がりなど
・更衣動作訓練:上着・ズボンの着脱動作、衣服の準備など
・入浴動作訓練:洗体、洗髪、浴槽のまたぎ動作など
■家事動作に対するプログラム
・掃除動作訓練:立位バランス、掃除機の操作など
・洗濯動作訓練:衣服の取り出し、洗濯物干し動作など
・調理動作訓練:買い物、包丁の使用、火の取り扱い、注意機能、記憶など
■趣味・余暇活動に対するプログラム
・囲碁・将棋:長時間の座位保持、手指の巧緻性、認知機能や記憶など
・編み物・手工芸:物品の使用、手指の巧緻性、見当識など
・カラオケ:発声、肺活量、姿勢保持、記憶など
・パソコン:パウスの操作、キーボードの操作など
・園芸:不整地での歩行能力、スコップなどの道具操作、見当識など
■社会参加に対するプログラム
・町内会の集まりに参加:歩行の耐久性やバランス能力、階段昇降等
・食事会へ参加:
体力やバランス、嚥下など
・社交ダンスに参加:体力やバランス、記憶、反射神経など
居宅訪問などの評価について
個別機能訓練加算Ⅱを算定するためには、3ヶ月に1回以上、高齢者やその家族の居宅訪問した上で、その内容を説明し、見直しを行っていることが必要になります。
個別機能訓練加算Ⅱのサービス提供の流れについて
個別機能訓練加算Ⅱのサービス提供の流れには、大きく5つの手順があります。
1)情報収集(評価) 2)計画書作成(問題点の抽出・個別機能訓練計画書の作成) 3)利用者または家族への説明・同意 4)個別機能訓練の提供・実施 5)3か月ごとに1回以上、評価・計画・訓練内容の見直しを行う |
1)情報収集(評価)について
高齢者ごとに合わせて目標を設定していくためには、情報収集(評価)が重要です。評価方法には、大きく「生活機能の評価」と「身体機能の評価」があります。
■生活機能の評価

高齢者の生活状況の把握には、上記のアセスメントシートを参考に「ADL」「IADL」「興味関心(してみたいこと)」「課題」「転倒歴(過去1年間)」「本人・家族の希望」を確認する方法があります。さらに、厚生労働省から推奨されている「居宅訪問チェックシート」も活用しやすいアセスメントシートです。
■身体機能の評価

個別機能訓練加算では3ヶ月に1回以上のアセスメント・評価が義務づけられていますが、身体機能の評価として何を指標とするかは義務づけられていません。そこでご紹介するのが身体機能の評価です。
こちらの評価は、日本理学療法士協会ガイドラインでも高齢者の身体機能の評価として信頼性、妥当性がある(推奨グレード分類A)とされています。
理学療法士や作業療法士が中心に評価する内容となりますが、看護師や柔道整復師などの機能訓練指導員でも評価することができます。
2)計画書作成(問題点の抽出・個別機能訓練計画書の作成)

問題点の抽出ができたら、次に個別機能訓練計画書の目標設定を行います。個別機能訓練加算Ⅱの目標設定には「長期目標」と「短期目標」があります。
長期目標 | 短期目標 |
個別機能訓練加算Ⅱの長期目標は、基本的にケアプラン(サービス利用計画書)の目標に則り立案します。また、利用者とその家族の希望は、ケアプラン(サービス利用計画書)の目標とされていますが、「アセスメントシート」や「興味関心チェックシート」から情報収集した内容と相違がある場合は、ケアマネに事前に報告し、変更の依頼をすると良いでしょう。
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短期目標は、長期目標を達成するために段階的に必要となる目標を記載します。アセスメントシートや身体機能評価から抽出した問題点をそのまま記載しないように注意しましょう。
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3)利用者または家族への説明・同意
個別機能訓練計画書の作成が完了したら、次に利用者またはその家族への説明と同意を行います。説明と同意ができたらサインをいただき、個別機能訓練計画の写しを交付します。
4)個別機能訓練の提供・実施
個別機能訓練加算Ⅱでは、個別機能訓練計画書に定めた目標を達成するために必要な機能訓練プログラムを提供する必要があります。ここでは、個別機能訓練加算Ⅱの目標に合わせた機能訓練メニューについてご紹介します。
【基本動作に対する目標と機能訓練メニュー】
①目標:寝返り動作の獲得
訓練:寝返り動作訓練
②目標:立ち上がり動作の獲得
訓練:椅子からの立ち上がり訓練
③目標:床からの立ち上がり動作の獲得
訓練:床上動作訓練
など
【日常生活動作に対するプログラム】
①目標:一人で食事が食べれるようになる
訓練:箸の使用訓練、姿勢保持訓練
②目標:トイレが一人でできるようになる
訓練:ズボンの着脱訓練、立位保持訓練
③目標:手すりを使用して入浴が出来るようになる
訓練:浴槽またぎ動作訓練、立ち上がり訓練、座り込み訓練
など
【家事動作に対するプログラム】
①目標:掃除機を使用した掃除ができるようになる
訓練:立位バランス訓練、掃除機の操作訓練
②目標:洗濯物が干せるようになる
訓練:立位バランス訓練、洗濯物干し訓練
など
【趣味・余暇活動に対するプログラム】
①目標:パソコンを使用して孫と会話ができるようになる
訓練:パソコンの操作訓練、キーボードの操作訓練
②目標:自宅で園芸活動ができるようになる
訓練:不整地歩行訓練、耐久性訓練、スコップの操作訓練
③目標:カラオケで1曲歌えるようになる
訓練:座位耐久性訓練、体幹トレーニング
など
【社会参加に対するプログラム】
①目標:地域のゲートボール大会に参加できるようになる
訓練:立位バランス訓練、歩行耐久性訓練
②目標:友人と食事会に参加できるようになる
訓練:公共交通機関の利用訓練、屋外歩行訓練
など
5)3か月ごとに1回以上、評価・計画・訓練内容の見直しを行う
個別機能訓練加算のサービス提供の1~4までの流れは、3か月ごとに1回以上、見直しを行い、個別機能訓練計画を利用者またはその家族に説明・同意を得なければなりません。
その際に、利用者の心身や生活状況に変化がある場合は、計画の見直しが必要となるので理解しておきましょう。
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まとめ
今回は、これから初めて個別機能訓練加算Ⅱを算定するデイサービスの方向けに、算定要件やサービス提供の流れについてまとめてご紹介しました。
個別機能訓練加算は、高齢者の自立を支援するための加算であり、近年の介護報酬改定でも高齢者の自立支援につながる機能訓練を提供している事業所を積極的に評価していくインセンティブ制度(ADL維持等加算)を設けています。
安定したデイサービス経営をするための必要条件となりつつある個別機能訓練加算について、今回の記事がみなさまの参考になれば幸いです。