実地指導(運営指導)とは|監査との違いを理解しよう

介護保険法

基本報酬

更新日:2023/07/07

この記事ではデイサービスの実地指導(運営指導)と監査の違いや運営体制指導・報酬請求指導について、また実地指導当日のスケジュールや準備しておく書類などを詳しくご紹介します。デイサービス運営では介護保険法制度の運営基準に沿って法令を遵守することが求められているため、実地指導の流れや注意するポイントを理解していきましょう。     

実地指導(運営指導)とは

運営(実地)指導とは、行政の実地指導監督が介護事業所を直接訪問し、用意された書類やヒヤリングによって介護保険法に則った運営ができるようにアドバイスを行うことです。

もともと運営指導は実地指導と呼ばれていましたが、令和4年度より名称が「運営指導」へ変更されています。この記事ではまだまだ一般的な実地指導という言葉を使用します。

指導を管理する地方自治体は、実地指導を通じて介護保険施設等が適切なサービスを提供できるように支援し、介護給付等対象サービスの取り扱いや介護報酬の請求に関する情報の周知を図ります。

実地指導の実施通知は、突然行われるものではありません。実施日の1月前までに対象の介護保険施設等に対して行われるとされています。

実地指導で人員配置など不正を行なっている可能性が高い場合は、後日、監査に移行します。

参照:介護保険施設等運営指導マニュアル 第3章 運営指導の実施 第1節 実施通知

実地指導の目的

実地指導の目的とは

実地指導は、地方自治体が担当する「行政指導」という立場から、介護事業所が適正にサービスを提供しているかを確認・支援することを目的としています。

介護保険法は3年に1度の頻度で改定がありますが、その制度は年々細分化され、複雑さを増しました。また、平成24年度の改定以降は、実地指導の権限が「都道府県」から「市町村」へと譲渡されており、実地指導の開催頻度も市町村ごとに異なります。

ただし、確認項目については介護保険施設等運営指導マニュアルが厚生労働省老健局総務課介護保険指導室から発表されており、事前に準備できるように内容が統一されています。

厚生労働省から運営に関する基本的な制度や算定要件については通達されていますが、行政スタッフと直接やりとりができる実地指導の機会を通して、日常的に疑問を感じていることや地方自治体による認識の違いなどについても質問をするのも良いでしょう。

実地指導で、介護事業所に求められる主な要件は、「サービスの質の確保」と「保険給付の適正化」です。­­

実地指導においては、行政との積極的なコミュニケーションを図り、最適な運営を目指すために有意義な意見交換を行うことが重要です。

行政指導には実地指導と集団指導がある

行政指導の「実地指導」と「集団指導」

出典:厚生労働省 都道府県・市町村が実施する指導及び監査の流れ

都道府県・市区町村が実施する、介護事業所を対象とした行政指導には「実地指導」と「集団指導」の2種類があります。

実地指導の内容について

実地指導では、行政の実地指導監督が介護保険事業所に直接出向いて行われ、主に関係書類を基に「運営体制指導」や「報酬請求指導」を行います。

集団指導の内容について

集団指導は、制度管理の最適化をするために各介護事業者を集めて開催させる説明会です。集団指導では、指定事務の制度説明や改正介護保険法の趣旨・目的の周知及び理解の促進、介護報酬請求に係る過誤・不正防止などの説明を行います。

実地指導には運営体制指導と報酬請求指導がある

実地指導の「運営指導」と「報酬請求指導」

地指導の内容は、実施方法により「運営体制指導」「介護サービスの実施状況指導」「報酬請求指導」の3つに分けられます。

3つの指導はヒアリングや書類の確認など、それぞれが異なった方法で実施され、事前に準備する書類も変わります。

介護保険施設等 運営指導マニュアルに明記されている指導内容について以下に記載しましたのでご参考ください。

運営体制指導

事業所の運営体制が基準を満たしているかの確認を行う指導であり、主に人員や運営に関する確認項目及び確認文書に基づき実態を確認します。

個別サービスの質を確保するための体制について、以下の運営に関する確認項目をもとに必要な指導や助言を行います。厚生労働省が定める運営指導の内容は、以下の通りです。

  • 従業員の員数及び勤務体制の確保
  • 非常災害対策
  • 事故発生の防止及び発生時の対応
  • 地域との連携

介護サービスの実施状況指導

介護サービスの質を確認するための指導です。

実際のサービスが法令通知に基づき適正に行われ、利用者の尊厳が守られ、自立支援に貢献するサービスが提供されているかを確認します。

現地でしか確認できない施設や設備の点検や、各種サービスにおける「個別サービスの質に関する事項」に基づく確認項目や文書を基準に、複数の指導員が実際の状況を目で見て確認します。

厚生労働省が定めた項目を以下にまとめましたのでご参照ください。

  • 利用者の生活実態の把握
  • 確認項目及び確認文書
  • ケアマネジメント・プロセス
  • 高齢者虐待の防止
  • 身体拘束等の禁止

報酬請求指導

介護保険の給付に関わる事務手続きが正確かつ適正に行われ、必要な要件に適合したサービスが提供されているかを確認します。

介護報酬や各種加算について、算定基準に適した体制が確保されているかという点がチェックされるでしょう。

介護報酬請求に関する文書の取扱いが不十分な場合は、正しい取扱いをするよう改善指導が行われます。必要に応じて監査を実施し、事実関係を把握した上での判断が行われます。

厚生労働省が定める項目を以下にまとめましたのでご参照ください。

  • 基本報酬
  • 加算及び減算

厚生労働省が定める通所介護の人員基準・設備基準・運営基準について以下でまとめて紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

▶︎通所介護(デイサービス)の人員基準と設備基準・運営基準

監査とは

監査とは、人員基準や設備基準及び運営基準等の指定基準違反であると認められる場合、又はその疑いがあると認められる場合に保険給付の適正化、事業所体制の適正な整備・運用が行われる運用行われるように適切な措置を行います。

その結果として、報告等、改善勧告、改善命令、指定の効力、指定の取消しなどの行政処分が行われます。

参照:厚生労働省  都道府県・市町村が実施する指導及び監査の流れ

実地指導と監査の違いとは

実地指導と監査の違いとは

出典:厚生労働省 都道府県・市町村が実施する指導及び監査の流れ

実地指導と監査は、大きく異なります。

実地指導と監査の大きな違いは、監査は問題があった場合に行われるということです。

実地指導は「事前通知」がありますが、監査は「事前通知」はありません。

監査の対象となる問題には、以下のようなものがあります。

  • 実地指導での情報
  • 通報、苦情、相談などに基づく情報
  • 国保連、地域包括支援センターなどへ寄せられる苦情
  • 国保連、保険者からの通報情報介護サービス情報の公表の拒否などの情報

また、実地指導から監査へと変更となる契機についても、に明記されていましたのでご参考ください。

  1.  人員、施設設備、運営基準に従っていない状況が著しいと認められる場合又はその疑いがある場合
  2. 介護報酬請求について不正又は不正の疑いがある場合
  3. 不正の手段による指定等又はその疑いがある場合
  4. 高齢者虐待等がある又はその疑いがある場合

上記のように、実地指導の過程で法令違反や不正等が明らかである場合はもとより、その「疑い」がある場合にでも、事業所への立ち入り権限を持つ監査へと移行されることになります。

介護保険施設等運営指導マニュアルの運営指導の実施通知によると「疑い」があると認められる場合、事前に通告を行うことなく速やかに監査が行われるとされています。

実地指導までの流れ

実地指導までの流れをご紹介

急に実地指導があっても書類の準備もできていないし困る」という方のために、実地指導が行われるまでの手順をご紹介します。

1. 通知文(1ヶ月前前後:日程や事前提出資料の依頼などの文書が送付される)
2. 指定日(直接担当課へ届けるか、郵送する)
3. 実地指導前日(地域によって異なりますが、前日に日程を確認する連絡が入る)
4. 実地指導当日を迎える

実地指導当日のスケジュール

実地指導当日のスケジュールをご紹介

出典:厚生労働省老健局総務課介護保険指導室 介護保険施設等運営指導マニュアル

次に、実地指導当日の標準的なスケジュールをご紹介します。

介護事業所の実地指導では、管理者を「1名以上」余裕をもって配置しておくことをオススメします。

書類の確認などでは、3名程度の利用者が選出され、確認項目・確認文書を用いて確認が行われます。

また、実地での指導では、利用者の生活実態に関する巡視や施設設備の確認も併せて行われることもあります。


【運営指導】

サービスの質に関する確認(介護サービスの実施状況指導)

  • 個別の利用者を通じた確認、利用者の生活実態の把握
  • 施設設備の確認
  • サービスの質を確保する体制に関する確認

【最低基準等運営体制指導】

報酬請求に関する確認(報酬請求指導)

  1. 加算及び減算に係る考え方:加算時の請求に当たっての基本的な考え方を確認する。
  2. 加算及び減算の実施状況:加算時の請求の種類等の状況を確認する。
  3. 加算及び減算の請求の内容:各種加算時の請求を行っているものについて関係書類等により施設・事業所側から説明を受ける。
  4. 効果:加算を実施したことによる効果について説明を受ける。
  5. 基本報酬について確認を受ける。

結果の伝達

  1. 施設・事業所の取組の良い点を伝える。
  2. 指導・指摘事項や過誤調整がある場合は、その報告と今後の流れについて伝達する。

実地指導までに事前に準備しておく書類とは

実地指導までに事前に準備しておく書類とは?

ここまで「実地指導までの流れ」や「当日のスケジュール」について解説しました。

ここでは、実施指導で事前に準備しておく書類、提出する書類についてご紹介します。

実地指導では、主に「事前に指定された提出書類」「当日に提示する書類」を指定書類として準備しておかなければなりません。

用意するべき書類は、自治体や実地指導対象の施設の種類によって異なります。実地指導が実施されるまでの間に、対象地域の発信している情報をしっかりと確認するようにしましょう。

介護保険施設等運営指導マニュアル別添1確認項目及び確認文書から、デイサービスにおいて必要な資料を以下にまとめましたのでご参考ください。

個別サービスの質に関する事項

設備及び備品等(第 95 条)

  • 平面図

内容及び手続きの説明及び同意(第 8 条)

  • 重要事項説明書(利用申込者又は家族の同意があったことがわかるもの)
  • 利用契約書

心身の状況等の把握(第 13 条)

  • サービス担当者会議の記録

居宅介護支援事業者等との連携(第 14 条)

  • サービス担当者会議の記録

居宅サービス計画に沿ったサービスの提供(第 16 条)

  • 居宅サービス計画
  • 通所介護計画(利用者及び家族の同意があったことがわかるもの)

サービス提供の記録(第 19 条)

  • サービス提供記録
  • 業務日誌
  • 送迎記録

通所介護計画の作成(第 99 条)

  • 居宅サービス計画
  • 通所介護計画(利用者又は家族の同意があったことがわかるもの)
  • アセスメントシート
  • モニタリングシート

個別サービスの質を確保するための体制に関する事項

従業者の員数(第 93 条)

  • 勤務実績表/タイムカード
  • 勤務体制一覧表
  • 従業者の資格証

管理者(第 94 条)

  • 管理者の雇用形態が分かる文書
  • 管理者の勤務実績表/タイムカード

受給資格等の確認(第 11 条)

  • 介護保険番号、有効期限等を確認している記録等

利用料等の受領(第 96 条)

  • 請求書
  • 領収書

緊急時等の対応(第 27 条)

  • 緊急時対応マニュアル
  • サービス提供記録

運営規程(第 100 条)

  • 運営規程

勤務体制の確保等(第 101 条)

  • 雇用の形態(常勤・非常勤)がわかる文書
  • 研修計画、実施記録
  • 勤務実績表(勤務実績が確認できるもの)
  • 方針、相談記録

個別サービスの質を確保するための体制に関する事項

業務継続計画の策定等(第 30 条の2)

  • 業務継続計画
  • 研修及び訓練計画、実施記録

定員の遵守(第 102 条)

  • 業務日誌
  • 国保連への請求書控え

非常災害対策(第 103 条)

  • 非常災害時対応マニュアル(対応計画)
  • 運営規程
  • 避難・救出等訓練の記録
  • 通報、連絡体制
  • 消防署への届出

衛生管理等(第 104 条)

  • 感染症及び食中毒の予防及びまん延防止のための対策を検討する委員会名簿、委員会の記録
  • 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針
  • 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための研修の記録及び訓練の記録

秘密保持等(第 33 条)

  • 個人情報同意書
  • 従業者の秘密保持誓約書

広告(第 34 条)

  • パンフレット/チラシ

苦情処理(第 36 条)

  • 苦情の受付簿
  • 苦情者への対応記録
  • 苦情対応マニュアル

事故発生時の対応(第 104 条の 3)

  • 事故対応マニュアル
  • 市町村、家族、居宅介護支援事業者等への報告記録
  • 再発防止策の検討の記録
  • ヒヤリハットの記録

虐待の防止(第 37 条の 2)

  • 委員会の開催記録
  • 虐待の発生・再発防止の指針
  • 研修及び訓練計画、実施記録
  • 担当者を設置したことが分かる文書

参照:介護保険施設等運営指導マニュアル別添1 確認項目及び確認文書(2022年3月、厚生労働省老健局総務課介護保険指導室)

ただし、必要書類は全てのサービスに共通するものではありません。自治体によっても必要書類は異なりますので必ず各自治体に確認してください。

書類以外にも実地指導前に介護事業所が取り組むべき備えがいくつかあります。実地指導がいつ来ても慌てない体制を作るために必要な備えについて詳しく知りたい方は下記の記事をチェックしておきましょう!

▶︎デイサービスの運営(実地)指導の傾向と9つの対策について

抑えておこう!行政による指導は実地指導と集団指導の2つのみ

地方自治体による指導は、開催場所や対象とする事業所により「実地指導」と「集団指導」の2つに分けられます。

事業所の数が年々増えている中で、指導を効果的に行うためには実地指導と集団指導の組み合わせと効率化が求められています。

以下に、実地指導と集団指導のそれぞれの内容について記載しましたのでご参考ください。

実地指導の内容

実地指導は、都道府県や市町村の担当者が介護事業所を訪れ、適切な事業運用がなされているか確認を行います。

実地指導の実施日前には、事前に予定や必要書類の要項などが通知されます。また、当日前までにいくつか必要な書類を提出する必要もあり、十分な確認が必要でしょう。

実地指導中に著しい運営基準違反や明らかに不正な請求が確認された場合は、指導が中止されて監査が行われます。

令和4年度­­­より実地指導は運営指導へと名称変更されており、実地で行わずに指導することが可能になりました。オンライン形式での面談にて指導が行われることも増えています。

以下に実地指導の詳細を記載しますのでご参考ください。

  • 頻度:事業所指定有効期間内、数年に1回の実施(一般的には6年に1度)
  • 実施方法:各事業所に実地指導者が出向き、面接形式により実施。(オンライン形式も含む)
  • 内容:運営基準や報酬請求等の確認など

集団指導の内容

集団指導とは、介護事業所における制度の理解や不正の防止を目的とし、介護サービスの適切な運営のために行われます。

都道府県や市町村単位で開催されることが多く、1ヶ所の会場に介護事業者を招集し、実施されます。

令和4年度以降は、集団指導においてもオンラインなどの活用が推奨され、ホームページへの資料の掲載や説明動画の配信などで実施されることが可能になりました。

以下に集団指導の詳細を記載しますのでご参考ください。

  • 頻度:年1〜2回の実施
  • 実施方法:指定対象となるサービス種別の事業所を招集し、必要な指導内容を講習等の方法により実施。(オンライン形式も含む)
  • 内容:制度改正内容や介護報酬請求内容等の説明及び注意喚起が必要な事例の紹介など

実地指導に引っかかると監査に移行するので注意!

実地指導・監査・違い まとめ

本記事では、介護事業所の運営に大きく関与する「実地指導(運営指導)の内容と監査との違い」や「実地指導(運営指導)の流れや事前準備」についてご紹介しました。

行政による指導は、適切な介護事業の運営を促すために行われます。もし、この指導において適正な運営が行われていないと判断された場合は、監査や行政処分に進展することになるため注意する必要があるでしょう。

実地指導や監査の対策としては、日々の業務の中で適切な書類の作成や管理、定期的な見直しが重要です。

実地指導は介護保険法に則り、利用者のニーズや権利を尊重し、適切な運営が実践されていることが最も重要視されます。

実地指導に対して心に余裕を持って臨むことができるよう、日頃から適切なサービスの提供や必要書類の整理を意識しましょう。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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