デイサービスの看護職員の仕事内容とは(看護師・准看護師)

コラム

介護スタッフの基礎知識

更新日:2022/02/25

デイサービス(通所介護)で働く看護職員の1日の流れや仕事内容、看護職員として医療行為や医療的ケアがどの程度まで行うのか、平均的な給料(年収)の目安などを紹介します。デイサービスでは看護師・准看護師は機能訓練指導員を兼務していることもあり、その場合の例なども交えて現実に近い内容をお届けします。

デイサービスには、介護保険サービスのひとつであり、運営基準の中の人員配置要件において通常規模以上の通所介護施設では看護師・准看護師(以下、看護師)の配置が必要となっています。デイサービスによっていろいろな特徴がありますが、看護師の必要な仕事内容や役割はある程度決まってきます。この記事では、1日の流れや仕事内容、役割、医療行為や医療的ケアがどの程度まで行うのかなどを紹介します。

デイサービスでの看護職員の配置基準

高齢者のデイサービスのことを、介護保険法上は「通所介護」と言います。通所介護施設では、営業日に1名以上の看護職員の配置が必要になっています。看護職員という言い方をする場合には「看護師もしくは准看護師」を指します。

デイサービスの看護師・准看護師配置についての法律根拠

通所介護事業にかかる人員、設備および運営に関する基準で、看護職員について以下のように定められています。

通所介護事業に係る人員、設備及び運営に関する基準

第2節 人員に関する基準

(従業者の員数)

第93条 指定通所介護の事業を行う者(以下「指定通所介護事業者」という。)が当該事業を行う事業所(以下「指定通所介護事業所」という )ごとに置くべき従業者(以下この節から第4節までにおいて「通所介護従業者」という )の員数は、次のとおりとする。

三 介護職員 指定通所介護の単位ごとに、提供時間帯を通じて専ら当該指定通所介護の提供に当たる介護職員が利用者の数が15人までは1以上、それ以上5又はその端数を増すごとに1を加えた数以上確保されるために必要と認められる数

デイサービスの看護師・准看護師配置についての解釈通知

提供時間帯を通じて専ら当該指定通所介護の提供に当たる従業者を確保するとは、指定通所介護の単位ごとに生活相談員 看護職員 介護職員について 、提供時間帯に当該職種の従業者が常に確保されるよう必要な配置を行うよう定めたものである(例えば、提供時間帯を通じて専従する生活相談員の場合、その員数は1人となるが、提供時間帯の二分の一ずつの時間専従する生活相談員の場合は、その員数としては2人が必要となる 。看護職員については、提供時間帯を通じて専従する必要はないですが、当該看護職員は提供時間帯を通じて指定通所介護事業所と密接かつ適切な連携を図るものとされています。

平成27年介護保険法改正でのデイサービスの看護職員の配置緩和

さらに、平成27年度介護保険法改定では通所介護での配置基準緩和があり、病院、診療所、訪問看護ステーションとの連携により、看護職員が営業日ごとに健康状態の確認を行い、密接かつ適切な連携を図れていれば看護職員が確保されているものとみなされるということになりました。

健康状態の確認が必要という点では、実際にデイサービスでバイタルチェックや記録、処置などの業務を行うことが必要ですが、そのあと一定の業務を済ませたらいつでも連絡可能な状態などを確保できれば必ずしも施設内に留まっていなくてもよいということです。

デイサービスでの看護師の仕事内容

看護師・准看護師などの看護職員は、1日を通してどんな仕事をしているのでしょうか?デイサービスでの看護職員の仕事の主な役割はご用者の健康管理業務です。

もう一つ、あまり意識されていませんが、デイサービスでの看護師の重大な役割は「医療的な行為が必要なご利用者に対して、デイサービスで提供できる範囲や内容を考えること」です。一定の研修を受けた介護職員がいて、事業所としても胃ろうや吸引など一部医療的ケアを行う手続きをしていればできるものもありますが、そのほかにも介護の現場にはグレーゾーンがいろいろ存在しています。

デイサービスの看護師の重要な役割

デイサービスの経営を考えると、介護度が重度の方や医療依存度が高い方も受け入れていく方針のことが多いですが、デイサービスで介護職員が医療行為を行なっていたり、管理者が医療行為などの危険行為についての意識が低かったりすることなどに対して、看護師がストッパーの役割になる必要もあります

こう考えるとデイサービスで働く看護師の責任が重大なような気がしてしまうかもしれませんが、提供していることや、ご利用者の状態について疑問に思ったことに対して、医療的な根拠を持って助言することが看護師の仕事として大切です。また、法律に触れたり、過失などにも繋がる危険な医療的なケアなどを未然に防ぐことや啓発を行なっていくことは、結果としてそこで働く職員にとって精神衛生上良いことで、働きやすい職場づくりにも繋がります。

さてそれでは、デイサービスでの看護師の1日のお仕事や役割を見て見ましょう。

1日通し型のデイサービスでの看護師の仕事内容

1日通しで営業するデイサービスを通称1日型デイサービスと呼びます。

例えば、9時から16時の営業時間で、レスパイトケアや独居の方の孤立を兼ねて、1日を通してデイサービスでサービス提供する形です。

1日型デイサービスでの看護師の仕事内容のメインは利用者の健康管理業務介護職員のフォローです。

具体的には1日の流れの中で以下のような業務内容があります。

  • ご利用者のバイタルチェック(体温・血圧・脈拍などの測定や管理)
  • 服薬管理(服薬内容の確認や配薬)
  • 塗り薬や貼り薬、包帯での保護、インシュリン注射や胃ろうなどの補助および医療的ケア
  • 入浴時の様子観察
  • 食事や栄養病態の観察や口腔ケア
  • 介護看護記録(サービス提供の記録)、連絡帳など
  • 家族への健康管理のアドバイス
  • 応急処置、急変時の対応(医師や医療機関などへの確認、救急車を呼ぶ判断)

デイサービスで行われる主な医療行為としては、インシュリン注射、バルーンカテーテルの管理、胃ろう管理、褥瘡や創部の処置などがあります。バイタルチェック後に入浴の可否決定や病院受診の要否の判断、ご家族への報告も看護師の役割です。
ここまででわかるように、デイサービスの看護師には、病院やクリニックの看護師のような、患者に対して点滴や採血、怪我の処置などの治療行為を行うことはありません。そのため、仕事量が少ないと思われがちですが、実際の仕事では介護士のサポートを行うことがほとんどです。食事介助・入浴介助・排泄介助の他、機能訓練・レクリエーション・施設の掃除や利用者の送迎を行うケースもあります。

半日型デイサービスの看護師の仕事内容

昼食なしで午前だけ、午後だけなどのサービス提供を行なっているデイサービスを半日型デイサービスと呼んでいます。半日型の場合には、滞在時間は3時間〜4時間程度が多いので、昼食や入浴を提供しないことが多いです。その代わりにマシンなどを使った運動や機能訓練などの介護予防に力を入れている機能訓練特化型デイサービスなどが多いです。

  • ご利用者のバイタルチェック(体温・血圧・脈拍などの測定や管理)
  • 服薬管理(服薬内容の確認や配薬)
  • 塗り薬や貼り薬、包帯での保護などの補助および医療的ケア
  • 機能訓練の補助、運動負荷の調整
  • 介護看護記録(サービス提供の記録)、連絡帳など
  • 家族への健康管理のアドバイス
  • 応急処置、急変時の対応(医師や医療機関などへの確認、救急車を呼ぶ判断)

デイサービスの看護師が行う医療行為や医療的ケア

デイサービスの看護師は医療行為を行うことができるかと言われると、基本的には医療行為を行えるのは医師のみです。

医療行為は法律上は「医行為」といい、医師資格がある人しか行うことができない絶対的医行為と、医師以外の人でも行うことができる相対的医行為があります。相対的医行為については、医師が管理・指導の上ならば看護師などでも行うことができます。
絶対的医行為は、例えば手術などのように医師が医学的管理の判断のもとで行わないと、危険が大きい行為で行おうと考える人はいないと思いますが、注意しなければならないのは、相対的医行為です。
実際、デイサービスではインシュリン注射や胃ろうの操作などの医療行為があり、業務的には経験があればできるものなので自己判断で行えると思ってしまうことがあります。しかし、病院では看護師が自由に動いて処置等を行なっているように錯覚しますが、あくまでも医師が管理して指導を行える環境なのでそれができているというものなのです。

しかし、これらも相対的医行為であり、本人や家族が行うわけでなく職員として提供する場合には医師の管理指導が必要ということです。看護師でも医療行為を自己判断で不特定多数に提供することはできないという点は注意が必要です。
胃ろうについては研修を受けた介護職員でも可能となりましたが、この場合もデイサービス事業所として介護職員が胃ろうを行うことについて申請を行なった上で、手順などを医師等から指導を受け実施します。
相対的医療行為についても、「これは相対的医行為です」というラインが明確ではありませんが、ご利用者・看護師ともに安全を第一に、ケアマネージャーや医師と連携するように心がけましょう

看護師が機能訓練指導員を兼務している場合の仕事内容

看護師/看護職員が機能訓練指導員を兼務している場合

デイサービスでは、定員や事業所規模に関わらず、機能訓練指導員を配置しなければならないことになっています。機能訓練指導員になれる資格は、看護師や理学療法士などですが、

機能訓練指導員の要件については、「デイサービスで働く機能訓練指導員とは|資格要件や仕事内容を徹底解説!」、「デイサービスの機能訓練指導員の仕事内容とは?特徴・給料・求人について」で紹介しています。

看護師が機能訓練指導員を兼務している場合の仕事と役割

デイサービスの機能訓練指導員は、どんなデイサービスでも必要ということをお伝えしましたが、リハビリ専門職などがいない場合には看護師が兼務するケースが多いです。個別機能訓練加算を算定する場合には、書類を作成することや、個別的に機能訓練を提供するなどの必要ありますが、加算の算定がないならば自立支援的な介助の推進や、体操やレクリエーションを通した機能訓練などを指導するようなことが役割となります。

看護師が機能訓練指導員を兼務して個別機能訓練加算を算定している場合の仕事内容

デイサービスでは、個別に機能訓練計画を立てて、機能訓練指導員がプログラムを提供する場合には「個別機能訓練加算」というプラスアルファの料金をいただきます。昨今、デイサービスでもご自宅での生活を想定した機能訓練の実施が期待されており、個別機能訓練加算の要件を満たす形でリハビリを提供する施設も増えてきました。

看護師の業務と兼務してしているケースでは、要介護の方には個別機能訓練加算(Ⅱ)要支援や総合事業対象者の方には運動器機能向上加算という加算を算定することが多く、計画書の作成や、ご利用者のご自宅での生活状況や課題の把握、プログラムの提供などを行う仕事があります。

詳しくは、こちらの記事で業務内容を紹介しています。

デイサービスの看護師の仕事のやりがい

デイサービスの看護師は、在宅で生活する高齢者が安心して生活できるように支援することであり、病院で働くのとは違い、在宅生活がそばにあります。時には体調が悪い状態で通所してきて、早退していただくか、受診や救急対応する手続きをするかなどの判断をしたりもあります。

ご利用者はデイサービスを楽しみに通ってくる方が多いです。朝お出迎えをしたり、血圧を測定したり、レクリエーションや機能訓練、一緒に何かを作ったり、食事をしたり、イベントをしたり・・・そんな生活に密着でき、一緒に楽しめるのがデイサービスで働くやりがいになります。お孫さんの話をしたり、どこかに出かける話をしたり、そんな話もデイサービスではできます。中には介護度の高い方もいますが、家族が丁寧に物品を準備してくれていたり、心配なことを相談してくれたり、そのような交流の中で看護師として自分の知識や経験が相手の役に立ったり、相手の支えになったりすることも多々あります。このようなことがデイサービスで看護師が働くときのやりがいとしてよく聞かれます。

デイサービスの看護師の資格手当、年収や給料、時給

デイサービスの看護師は正社員の場合、介護職の一般的な給料に資格手当や職務手当で月1〜5万円くらいがプラスされた給料が多いようです。年収としては介護職と比べるとそれらの手当相当分、高くなっています。個別機能訓練加算を算定して機能訓練指導員も兼務している場合には手当が出ているケースもあります。

看護師の職場別で見ると、夜勤がないため、夜勤手当や深夜手当がある仕事と比較すると低くなりますが、時短勤務なども融通が効くことが多いので相談の上でいろいろな働き方ができます。

デイサービスの看護師の時給は1,200円〜1,800円くらいが多いようです。また派遣として勤務することや、人員配置要件の緩和を受け、訪問看護ステーションや病院に所属しながら、デイサービスの健康管理などの業務を行い、所属先の給料の範囲内で勤めることもあります。

看護師以外にデイサービスに配置する職種

デイサービスには、管理者・生活相談員・看護職員・機能訓練指導員・介護職員を配置する基準があります。人員基準やその他の職種については以下の記事でも紹介しています。

まとめ

いかがでしたか?デイサービスの看護師の仕事は健康管理を通してご利用者の安心した在宅生活を支えることです。

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?

この記事の著者

作業療法士  大久保 亮

リハビリ養成校を卒業後、作業療法士として、通所介護事業所や訪問看護ステーションにて在宅リハビリテーションに従事。働きながら法政大学大学院政策学修士を取得。その後、要介護者、介護現場で働く人、地域住民まで、介護に関わるすべての人が安心していきいきと活躍し続けられる世界の実現を目指して2016年6月株式会社Rehab for JAPANを創業。また、日本介護協会関東支部局副支部長を務める。

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