介護保険とは?知っておきたい介護保険制度の基礎知識

介護保険法

基本報酬

更新日:2023/07/12

介護保険とは、介護が必要になった場合に必要な治療や介護サービスの利用にかかる費用を、援助してくれる保険です。「介護保険」という言葉は知っていても、実際に利用するとなるとわからないことが多い、という人は少なくありません。今回は、介護利用の際に困らないように、介護保険の仕組みや介護保険申請、介護サービスにかかる費用とサービスの種類などをまとめて紹介しています。   

介護保険とは

介護保険とは、2000年4月より施行された社会保障制度です。

高齢者の介護による家族の負担を軽減し、社会全体でサポートすることを目的に創設されました。

介護保険の導入の背景には、高齢者の割合の増加や、介護による離職などの社会問題があり、高齢者の自立を支える役割も担っています。

参考:介護保険制度について(2023年6月29日確認)
参考:第4章 高齢者の自立を支える新しい介護制度(2023年6月29日確認)

3つの基本的な仕組み

介護保険には以下の3つの仕組みがあります。

  • 介護保険料
  • 介護保険サービス費用
  • 保険加入者

ここではそれぞれの仕組みについて詳しく解説します。

介護保険料

介護保険によるサービスを受けるには、介護保険料の支払いが必要です。

介護保険料は、40歳になった月から徴収が始まり、65歳未満の方まで医療保険料と一体的に徴収されます。また、65歳になった月からは原則、年金からの天引きという形で徴収されます。

介護保険サービス費用

介護保険サービスにかかる費用は、利用者の収入によって変動しますが、負担額は1割・2割・3割です。

介護保険制度の財源は50%が介護保険料、50%が公費(国・都道府県・市区町村など)で賄われています。

介護保険加入者

介護保険の加入者は、年齢によって以下の2種類に分かれます。

  • 第1号被保険者
  • 第2号被保険者

第1号被保険者は65歳以上の方で、要介護あるいは要支援の認定を受けていることが条件です。

第2号被保険者は40歳以上65歳未満の方で、特定疾病に該当しており、かつ要介護・要支援の認定を受けていることが条件です。

詳細は以下の表の通りです。

第1号被保険者(65歳以上の方)満65歳になる誕生前月に「介護保険証」が交付されます。介護保険証は、要介護認定を申請するときに必要となり、それぞれの介護度に合わせた介護保険サービスを使用することができます。
第2号被保険者(40歳~64歳の方)40歳以上65歳未満の方で対象となる特定疾患(16種類)が原因で要介護認定を受けた場合に、介護保険サービスを利用することができます。

特定疾病の16種類

  • 末期がん
  • 関節リウマチ
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靱帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗鬆症
  • 初老期における認知症
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 多系統萎縮症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 変形性関節症(両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う)

参考:介護保険制度について(2023年6月29日確認)
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説(2023年6月29日確認)

加入者数の変化

厚生労働省のデータによると、介護保険の被保険者数は以下のような変化が見られています。

【平成25年度】

第1号被保険者(65歳以上の者):3,202万人

第2号被保険者(40歳〜64歳までの医療保険加入者):4,247万人

平成25年度では、第1号被保険者の要介護・要支援認定者数は「569万人」です。

第1号被保険者全体の割合としては「17.8%」です。

【平成27年度】

  • 第1号被保険者(65歳以上の方):3,382万人
  • 第2号被保険者(40〜64歳までの医療保険加入者):4,204万人

平成27年度の時点では、第1号被保険者の要介護・要支援認定者数は「607万人」です。

この人数の割合は、第1号被保険者全体に対して「17.9%」となっています。

このように、65歳以上の第1号被保険者の加入者やその割合は増加傾向にあることがわかります。

参照:公的介護保険制度の現状と今後の役割 平成30年度(2023年6月30日確認)
参照:公的介護保険制度の現状と今後の役割 平成27年度(2023年6月30日確認)

介護保険サービスを使用する手順

介護保険サービスを使用する際は、介護認定の手続きが必要となります。

ここでは介護保険サービスの手続き・申請の流れについて説明します。

要介護認定の申請

介護保険を使用する場合は、要介護認定を受ける必要があります。

要介護認定は、お住まいの市区町村の窓口に書類を提出して申請します。

申請から認定までは、原則30日以内に行われます。

要介護認定の流れ

申請後は職員からの聞き取り調査(認定調査)があり、主治医に意見書の作成を依頼します。

依頼後は認定調査と意見書の情報をもとに1次判定が行われ、さらにその後は2次判定(介護認定審査会)によって要介護度を検討する、という流れで進んでいきます。

要介護は「要支援1〜2」から「要介護1〜5」の7段階で判定され、利用者の介護状態にあわせて認定されます。

要介護認定が受給されることで、必要な介護保険サービスの利用が可能となります。

要支援・要介護度の7つの認定区分

要介護認定の結果に応じて、1ヵ月間で利用できるサービスの量(支給限度額)と利用できるサービスの種類が変わります。

要介護認定の各区分の目安は以下の表を参考にしてください。

要支援1基本的な日常生活を送る能力はあるものの身の回りのことに対して一部支援が必要となる状態。
要支援2今後、要介助状態になることを予防する必要がある状態。具体的には、椅子からの立ち上がりや歩行などに若干の安定感があるため入浴などに配慮が必要。日常生活には支障がない程度の物忘れがある。
要介護1日常生活に若干の介助が必要となる状態。具体的には椅子からの立ち上がり時や歩行などに不安定感があるため入浴、排泄に一部介助が必要となる。また、高次のIADL(手段的日常生活動作)の能力が低下している状態。認知機能面で物忘れなどがあり、理解力の低下がある。
要介護2要介護1より介護が必要となる状態。具体的には立ち上がりだけでなく、起き上がり、歩行に部分的な介助が必要となる。排泄、入浴、着替え、または料理、洗濯などに部分的な介助が必要となる。認知機能の低下があり、記憶があいまいだったり、他者との円滑な会話が困難となる。
要介護3要介護2の状態からさらに立ち上がりや歩行において自分では行うことができず、ADL(日常生活動作)およびIADL(手段的日常生活動作)が著しく低下しているため全般的に介助が必要となる状態。認知機能の低下があり、自分の生年月日や名前が分からなくなる。
要介護4要介護3より著しく身体能力の低下があり、日常生活のほとんどのことを介助なしに行うことができない状態。意思疎通が取れないことが頻繁にあり、日常生活に支障をきたすことが多い状態。
要介護5要介護4よりさらに基本的な動作が困難になり、いわゆる寝たきり状態。すべての日常生活に全面的な介助が必要となる状態。言葉や物の理解も著しく低下し、意思の疎通が完全に困難な状態。

参考:サービス利用までの流れ | 介護保険の解説(2023年6月30日確認)
参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説(2023年6月30日確認)


以下の記事では、要介護認定の基礎知識として認定区分から認定期間、申請・更新の方法まで徹底解説しています。さらに詳しい解説を知りたい方はぜひ参考にしてください。
▶︎要介護認定における認定区分から有効期間、申請方法について

介護保険サービスを利用する際の費用とは

介護保険サービスを利用する場合、要支援1〜2・要介護1〜5の7段階ごとに1ヵ月で利用できる支給限度額が決められています。

基本的にサービスの費用の自己負担額は「1割」ですが、一定の所得がある場合は「2割、または3割」となるケースもあります。

支給限度額自己負担1割自己負担2割自己負担3割
要支援150,320円5,032円10,064円15,096円
要支援2105,310円10,531円21,062円31,593円
要介護1167,650円16,765円33,530円50,295円
要介護2197,050円19,705円39,410円59,115円
要介護3270,480円27,048円54,096円81,144円
要介護4309,380円30,938円61,876円92,814円
要介護5362,170円 36,217円72,434円108,651円

※支給限度額は全国一律ですが、実際の支給限度額は金額ではなく「単位」で決められており、サービスの種類や利用する地域によって1単位あたりの単価が異なります。

※1単位=10円で計算しています。

参考:サービスにかかる利用料 | 介護保険の解説(2023年6月30日確認)

受けられるサービスの種類

介護保険で受けられるサービスは、大きく分けると以下の通りです。

居宅介護サービス訪問サービス
訪問介護・訪問看護・訪問入浴介護・居宅介護支援など利用者が住んでいる居宅にホームヘルパーや看護師が身体介護、ケアを行います。
通所サービス 
通所介護・通所リハビリテーションなど、ご利用者に介護事業所に通っていただき介護サービスを提供します。
短期入所サービス 
短期入所生活介護等など、ご家族が不在の間、短期間だけ施設に入居することができます。
居宅介護支援利用者やそのご家族が望む介護保険サービスが利用できるようにケアマネジャーや保健師などがケアプラン(居宅サービス計画)を立て、各サービス提供者に連絡調整してくれます。
施設サービス利用者が施設入所を希望した場合、「指定介護老人福祉施設」「介護老人保健施設」「指定介護療養型医療施設」の3種類のいずれかに入所することができます。
地域密着型介護サービス看護小規模多機能型居宅介護・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)夜間対応型訪問介護など、利用者が住み慣れた地域・在宅で生活ができるように訪問・通所・居宅のサービスを利用することができます。
福祉用具の貸与・購入利用者が可能な限り自立して日常生活を送れるように、福祉用具の貸与あるいは購入ができます。

参考:公表されている介護サービスについて(2023年6月30日確認)

上記のような介護保険サービスに対し、民間企業が行うインフォーマルな「介護保険外サービス」も存在しています。最近では介護保険外サービスも利用されることも増えているようです。介護保険外サービスにはどのようなサービスがあるのか知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
介護保険外サービスの種類と地域包括ケアでの重要性をご紹介

介護保険と医療保険の併用はできる?基本的に、介護保険と医療保険の併用は認められていないため、どちらか一方の保険を利用することになります。要介護認定を受けており、両方の保険が適用される場合は、介護保険が優先されます。また、介護保険は年齢が若くとも第2号保険者である40歳以上の方が対象です。そのため、40歳未満の方は医療保険の利用となります。

参考:訪問看護(2023年6月30日確認)

正しく利用するためにまずは必要な知識を得よう

介護保険は家族の介護負担の軽減につながるだけでなく、利用する本人の自立をサポートする制度です。

介護保険の基本的な知識を知ることで、利用の際に悩まずスムーズに手続きを進められるでしょう。

介護保険でわからないことがある場合は、市区町村の窓口に問い合わせることをおすすめします。

また、介護保険でどのサービスを利用すべきかを検討する際は、ケアマネジャーに相談してみましょう。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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