初心者でもわかる! 機能訓練メニュー・プログラム内容【まとめ】

介護保険法

個別機能訓練加算

更新日:2023/02/01

高齢者に提供する機能訓練メニューがわからない、プログラムがマンネリ化している、などのお悩みはありませんか? 機能訓練プログラムには、様々な道具を活用した訓練プログラムや、認知症予防・誤嚥予防などの目的別の訓練メニュー、身体機能・生活機能の維持・改善を目的とした個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱなどがあります。今回は、高齢者が日常生活を営むために必要な機能訓練メニューやプログラム内容について事例を交え、まとめてご紹介します。

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機能訓練とは

機能訓練とは、高齢者の身体的機能の改善や減退を目的とした訓練のことで、通所介護(デイサービス)などの介護サービス提供者側が提供するものです。自宅や地域での生活ができるように個々の身体状況や目標に合わせてメニューを作成していきます。

機能訓練メニューには、「ご高齢者一人おひとりの身体機能や生活機能の維持・向上を目的とした個別のプログラム」「さまざまな道具や誤嚥予防などの疾病・疾患の予防を目的とした集団のプログラム」などがあります。

指定の算定要件をクリアし、この機能訓練を提供したデイサービスにおいては、個別機能訓練加算Ⅰ(46単位/日)や個別機能訓練加算Ⅱ(56単位/日)を加算として算定することができることができます。

個別機能訓練加算ⅠとⅡには、1. 単位数、2. 人員配置、3. 実施者、4. 目的、5. 訓練の内容、6. 実施範囲、7. 実施環境の大きく7つの違いがあるので興味がある方は覚えておきましょう。

個別機能訓練加算としての機能訓練メニューについて

まず最初に、身体機能の維持・改善を目的とする「個別機能訓練加算Ⅰ」と、生活機能の維持・改善を目的とする「個別機能訓練加算Ⅱ」の機能訓練メニューについて、加算の違いを踏まえて解説していきます。

個別機能訓練メニュー提供における課題について

厚生労働省の平成26年度のデータを見ると、個別機能訓練加算Ⅰと個別機能訓練加算Ⅱの機能訓練メニューの内容は、「関節可動域訓練」「筋力増強訓練」「歩行訓練」に偏っていることがわかります。

おそらくこれは、メニューを提供する機能訓練指導員や介護スタッフが、「個別機能訓練加算Ⅰと個別機能訓練加算Ⅱをどのように使い分ければよいかわからない」という悩みが現れているのではないかと思われます。

そこで、個別機能訓練加算Ⅰと個別機能訓練加算Ⅱのそれぞれの訓練メニューの違いについてご紹介していきます。

参照:1.厚生労働省ホームページ,社保審-介護給付費分科会 第128回(H28.3.30) 資料1-3,(3)リハビリテーションと機能訓練の機能分化と その在り方に関する調査研究 (結果概要)

個別機能訓練加算Ⅰの機能訓練メニューについて

高齢者の機能訓練イメージ

個別機能訓練加算Ⅰの個別機能訓練メニューでは、利用者様が主体的に選択でき、生活意欲を増進する訓練項目を複数準備する必要があります。

人数の規定はなく、複数の「グループ活動」に分かれて機能訓練を行うことができます。

身体機能の維持・向上の個別機能訓練メニュー

疾病・疾患の維持・予防の個別機能訓練メニュー

  • 咀嚼(せっしょく)訓練
  • 嚥下(えんげ)訓練
  • パーキンソン体操
  • 認知症予防訓練
    など

個別機能訓練加算Ⅱの機能訓練メニューについて

個別機能訓練メニュー

個別機能訓練加算Ⅱの個別機能訓練メニューでは、日常生活を営むために必要な次のの5つの生活目標に対して機能訓練メニューを提供します。


(1)基本動作

  • 寝返り訓練
  • 起き上がり訓練
  • 立ち上がり訓練など

(2)日常生活動作

  • 箸の訓練
  • 髭剃り訓練
  • ズボンの着脱訓練
  • ドアの開閉訓練
  • 洗体動作訓練
  • 浴槽のまたぎ動作訓練など

(3)家事動作

  • 掃除機の操作訓練
  • 洗濯物干し動作訓練
  • 配膳動作訓練
  • 金銭管理訓練
  • 調理訓練など

(4)趣味・余暇活動

  • パソコンの操作訓練
  • 園芸活動訓練
  • 屋外歩行訓練(散歩)
  • ゲートボール訓練
  • カラオケ訓練(発声訓練)
  • 編み物訓練(指先の練習)
    など

(5)社会的活動

  • 屋外の歩行訓練
  • 不整地の歩行訓練
  • 階段昇降訓練
  • 公共交通機関の利用訓練
    など

厚生労働省によると、個別機能訓練加算Ⅱの個別機能訓練メニューは、生活動作などの具体的な動作訓練やそれを模倣した反復動作訓練を提供するなどとしています。

また、類似の生活目標をもつ利用者様であれば「5名程度以下」の小集団に対して機能訓練を実施することができます。

いかがでしょうか? 何となく個別機能訓練加算ⅠとⅡの違いはわかってきたと思います。それでも、計画書作成に難しさを感じている方は、ぜひリハプランの活用をご検討ください。加算未経験のデイサービスでも、リハビリ専門職がいないデイサービスでも選ばれています!

さまざまな道具を活用した機能訓練メニューについて

ここからは、デイサービス内でもできるタオル・セラバンド・セラプラストという道具を活用した機能訓練メニューをそれぞれご紹介していきます。

タオルを活用した機能訓練メニュー

個別機能訓練メニュー

最初に家庭にも置いてあるタオルを活用した機能訓練メニューをご紹介します。

タオルは、テコの原理を活用できるので、力の弱いご高齢者でも目的の筋肉を簡単にストレッチすることができ、柔軟性アップの効果が期待できます。

高齢者は、若い頃と比べて体を動かす機会が減り、運動量が明らかに低下するため「足のむくみ」をはじめとして血行の循環が悪くなります。そのため、ストレッチを目的とした機能訓練メニューに定期的に取り組みことで「血行循環」や「筋肉の萎縮」を予防していきましょう!

セラバンドを活用した機能訓練メニュー

個別機能訓練メニュー

次に、セラバンドという道具を使用した個別機能訓練メニューをご紹介します。

セラバンドは、ゴム製でバンドの長さを調整できるので非常に低負荷の運動から開始でき、筋力アップの効果が期待できます。通所介護(デイサービス)を使用されている利用者様にも安心して使用していただくことができます。

高齢者の場合は、洗濯物を干したり、布団を収納したりと高いところに手を伸ばすことが苦手になりやすくなります。そこでセラバンドを活用して肩周辺の筋力を鍛えていきましょう。

セラプラストを活用した機能訓練メニュー

個別機能訓練メニュー

こちらの機能訓練は、セラプラストという道具を活用した機能訓練メニューです。

セラプラストは、適度の硬さがある粘土状の道具のため指の力が弱く、細かな作業が困難な方へ提供することをおすすめします。

こちらの訓練プログラムでは、器を作る際に指先で「伸ばす」「引っ張る」「整える」などの要素を鍛えることができます。

生活機能の改善を目的とした機能訓練メニューについて

ここからは、ご高齢者ごとの生活機能の維持・改善や疾病・疾患の予防を目的とした機能訓練メニューをそれぞれご紹介していきます。

誤嚥予防を目指した機能訓練メニュー

個別機能訓練メニュー

高齢者の介護予防として取り組みたい誤嚥予防を目的とした個別機能訓練メニューをご紹介します。

この訓練では口腔体操として、「あ・い・う・え・お」と大きく口や顎、唇、舌を動かし、発声することで誤嚥予防や表情が乏しい方の表情筋トレーニングとして効果が期待できます。また、大きな声を出すことで腹圧が高まり、誤嚥しかけた時に「咳き込む力」を発揮することができます。

 

厚生労働省によると、日本における死亡原因は、1位「悪性新生物」、2位「心疾患」、3位「肺炎」と報告しています。この肺炎が原因で亡くなる高齢者のうち、最も多いのが「誤嚥性肺炎」です。そのため、高齢者の健康維持や介護予防を担う介護事業所では、機能訓練メニューとして誤嚥予防を行うことも重要です。

高齢者においては、加齢によって舌や唇、頬の筋力が衰え、飲み込む力も弱くなっていきます。そのため、誤嚥予防を目的とした個別機能訓練メニューで、舌や唇、頬などの筋肉を鍛え、高齢者が食べ物を咀嚼(そしゃく)して飲み込む機能を維持しておきましょう。

立ち上がり動作の獲得を目指した機能訓練メニュー

個別機能訓練メニュー

続いて、高齢者の日常生活動作の中でもよく課題や目標として立案されることの多い「立ち上がり動作」の獲得を目指した個別機能訓練メニューをご紹介します。

立ち上がり動作は、筋肉量が低下する高齢者だけでなく、片麻痺や人工膝関節、人工股関節の手術をされた方でも日常生活の中で動作のしづらさを感じる部分です。正しい動作での運動方法を指導できるようにしていきましょう。

食事動作の獲得を目指した機能訓練メニュー

個別機能訓練メニュー

ここからは事例を通して個別機能訓練メニューをご紹介していきたいと思います。

まずは、食事の中でも「箸を使って食事ができるようになりたい」という希望があった場合の個別機能訓練Ⅱの機能訓練メニューをご紹介します。

食事動作の機能訓練では、自力で摂る事ができるという喜びや楽しみだけでなく、家族や親しい友人と生活を共有する場としてしても重要であり、生活の満足感に大きく影響します。そのため本人の希望に沿った訓練ができるように運動の幅を増やしておきましょう。

こちらの機能訓練メニューは、セラプラストと箸を使用して挟む・切る・掴む動作を複合的に行います。箸の訓練の場合は、セラプラスト以外にも食べ物を想定したビー玉やおはじき、スポンジなどを準備することもお勧めです。

プログラムの手引き

箸の機能は、食べ物を摘む、切る、挟む、刺すなど多岐にわたり、円滑な操作を行うためには高度な巧緻性が必要となります。そのため箸の操作を「刺す〉挟む〉切る〉掴む」の順番で段階的に取り組んでいきましょう。

カラオケができることを目指した機能訓練メニュー

個別機能訓練メニュー個別機能訓練メニュー

高齢者にとって趣味や余暇活動として楽しみでもある「カラオケ」の個別機能訓練メニューをご紹介します。

個別機能訓練加算Ⅱは、「トイレ」や「着替え」ができるようになるなどの日常生活と関連する活動だけではありません。趣味や余暇活動、仕事などのキャリア、地域社会との関わりなども個別機能訓練加算Ⅱに該当します。そこで取り組むのがご高齢者の趣味や余暇として馴染みのある「カラオケ」です。こちらの個別機能訓練メニューは、大きな声で歌えることを目標にした「腹筋エクササイズ」「発声トレーニング」の2種類です。

【腹筋エクササイズの手引き】
お腹を意識して腹式呼吸を行うことで、腹横筋や横隔膜という筋肉が主に刺激されます。この筋肉が活性化すると肺が膨らみやすくなり、肺活量と一回換気量(一回あたりの息を吸う量)の増加し、声量アップの効果が期待できます

【発声トレーニングの手引き】
口を大きく動かすことを意識し「あいうえお」と発声することで全ての言語に必要な母音を鍛え、発音が明瞭になる効果が期待できます。また、発生の持続時間にも課題がある場合は、それぞれ10秒ずつ発声を続けるようにすると良い。


ご高齢者がカラオケの機能訓練に取り組みことで「1.口腔機能を高める」「2.正しい姿勢を保つ」「3.心肺機能を高める」「4.脳の活性化」「5.社会的なコミュニケーションの獲得」「6.生活の質(QOL)の向上・生きがいづくり」などの効果も期待できます。ぜひ取り組んでみてください。

認知症の予防を目的とした機能訓練メニューについて

個別機能訓練メニュー

高齢者施設やデイサービスで必ずといっていいほど行われている「認知症予防」を目的とした機能訓練メニューをご紹介します。  現場で行われている脳トレは、紙面上のものをよく見かけますが、指さきを動かすことも脳のトレーニングとして有効とされています。

指さきは、体の中でも触覚が敏感でより細かい精緻な運動ができるように神経が密に分布しています。そのため、指さきを動かす個別機能訓練メニューは個別機能訓練加算Ⅰに該当し、ご高齢者の脳の活性化や認知症の予防だけでなく、運動機能を高める効果が期待できると考えられます。  指体操はすべての方がいつでもどこでも気軽に楽しめ、椅子に座って安全に体操ができるのもその魅力の1つです。 

まとめ

今回は、デイサービスに通っている高齢者に提供する機能訓練メニューについて、「様々な道具を活用した訓練プログラム」や「認知症予防・誤嚥予防などの目的に合わせたメニュー」「身体機能・生活機能の維持・改善を目的とした個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱのメニュー」など機能訓練プログラムをまとめてご紹介しました。

機能訓練サービスは、高齢者が住み慣れた地域や自宅で生活が送り続けれるようにデイサービスで提供する大切なサービスの1つであり、近年では、介護報酬改定では高齢者の自立支援につながる機能訓練を提供している事業所を積極的に評価していくインセンティブ制度(通所介護のADL維持等加算とは)もあります。

今回の記事を参考に、ご高齢者の自立支援を応援するサービスの提供と安定した通所介護事業所の経営をしていくために必要な条件となりつつある機能訓練を皆さんのデイサービスでも積極的に取り組んでいただければ幸いです。

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?

この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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