リハビリ特化型デイサービスの特徴と運営メリット、将来性について

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更新日:2022/02/21

今回は近年、高齢者のニーズとしても高いリハビリ特化型デイサービスの特徴とその運営メリット、将来性についてご紹介します。通所介護の基本報酬は減額傾向にある中で、デイサービスの強みとして急増しているリハビリ特化型デイサービスとしてコンセプトや運営方針の見直しを検討する場合にぜひご覧ください。

リハビリ特化型デイサービスの特徴について

日本の超高齢者社会の中で、身体機能の回復や維持を目的とした利用者様(高齢者)のニーズが高まり、デイサービスの特徴を明確にするため「リハビリ特化型デイサービス」や「機能訓練型デイサービス」と名称をつけてデイサービスを運営する事業所が増えてきました。

「通常のデイサービス」と「リハビリ特化型デイサービス」を特徴とサービス内容を比較してみてみましょう。

 一般的なデイサービスの特徴リハビリ特化型デイサービスの特徴
特徴・食事、入浴、機能訓練、レクリエーション等などのサービスを提供する
・利用者様の日常生活のケアや家族のレスパイト目的などが主となる
・日常生活のケアも行うが身体機能の向上を目的としてサービスを提供する
機能訓練指導員が中心となって、歩行訓練やマシントレーニングなどの訓練が主となる
提供時間7時間〜9時間で運営していることが多い・3時間〜5時間を午前午後の2回転で利用者様を分けて運営していることが多い

※そもそもリハビリ特化型デイサービスという名称は、正式なものではありません。また必ずしもリハビリの専門家である理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が在籍しているわけでもはありません。実際には、リハビリ特化型を標榜している事業所のうちリハビリスタッフ(PT、OT、ST)を配置している事業所は「23%」となっています。

参照:厚生労働省「第146回社会保障審議会介護給付費分科会資料」(平成29年9月21日アクセス)

リハビリ特化型デイサービスの運営メリットについて

リハビリ特化型デイサービスは、身体機能の衰えを感じることの多い利用者様やそのご家族が、「自分の身体の衰えを維持したい」「機能を回復したい」などのニーズに応えるために増えてきました。

実際にリハビリ特化型デイサービスを運営する場合のメリットについて解説します。


リハビリ特化型デイサービス運営のメリット

  1. 事業所の売りが明確になる(事業所ブランディング)
    身体機能の向上を目的としたリハビリに特化したデイサービスとして、その特徴を明確に示すことができます。地域の高齢者やその家族、ケアマネに事業所の特徴を売り出すことができるので集客を増やす上でメリットとなります。
  2. 機能訓練指導員による質の高い機能訓練プログラム(運動)が提供できる
    リハビリ特化型デイサービスは、リハビリスタッフが必ずしも在籍しているわけではありませんが、それに相当する機能訓練指導員が在籍していることがほどんどです。運動や体操に特化した専門家が在籍していることで質の高い機能訓練が提供でき、事業所にとっても利用者様にとってもメリットとなります。
  3. 個別機能訓練加算が算定できる
    通所介護の基本報酬が減額される中で加算の算定は必須となります。機能訓練指導員を配置している事業所では、個別機能訓練加算を算定することができます。デイサービスの運営する上で介護報酬が増えることは大きなメリットとなります。
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事業所のブランディング

デイサービスは、全国に約42,000事業所(厚生労働省2016)あり、コンビニの約53,000店舗(2016一般社団法人日本フランチャーズチェーン協会)に迫る勢いで増え続け、マーケットはレッドオーシャン化しています。

そのような状況下のデイサービス事業所において「リハビリ・機能訓練に特化したデイサービス」「成果にコミットするデイサービス」と示すことは、地域に住む高齢者やその家族、またケアマネージャーにもその特徴を覚えてもらうチャンスになります。つまりリハビリ特化型デイサービスとしてのブランディングができるのです。

ケアマネージャーは利用者様のご紹介も多く、安定的な運営を行って行く上ではその特徴を覚えてもらうことが重要になります。特に、小規模デイサービスを運営する場合は、利用者の稼働率が重要となるためリハビリ特化型デイサービスとしての売りと営業が重要となります。
 

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機能訓練指導員による質の高い機能訓練の提供

リハビリ特化型デイサービスは、リハビリスタッフが必ずしも在籍しているわけではありませんが、それに相当する機能訓練指導員が在籍していることがほどんどです。機能訓練指導員とは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師の6つの職種を合わせた職種を指します。

リハビリ特化型デイサービスの機能訓練指導員が提供する個別機能訓練には、筋力アップやストレッチなどの運動だけでなく、着替えやトイレなど日常生活訓練や手芸やカラオケ、囲碁などの趣味活動にもコミットしていきます。


日頃から身体の衰えを感じている高齢者は「生活の目標」や「今後したいこと」など目標を見失っていることもあります。その目標を上手に引き出したり、体を動かそうという気にさせる仕掛けづくりが上手いのも機能訓練指導員の魅力の1つです。この運動や体操に特化した機能訓練指導員が在籍していることで質の高い機能訓練が提供でき、利用者様も安心してデイサービスを利用することができます。

個別機能訓練加算が算定できる

平成27年度の介護保険改定にて通所介護の基本報酬が減額されました。特に、小規模デイサービスの基本報酬は単純計算で約8%程度の減額となっています。 

この減額は平成30年度介護報酬改定でも同様に基本報酬が減額されるのではないかと予想されています(実質的には提供時間が1時間あたりとなるので、これまでよりも基本報酬は下がる可能性が高いです)。そんな中でリハビリ特化型デイサービスとして機能訓練指導員を配置している事業所では、個別機能訓練加算の2種類を算定することができます。


個別機能訓練加算

  • 個別機能訓練加算Ⅰ:46単位/日
  • 個別機能訓練加算Ⅱ:56単位/日


これらの加算は、デイサービスの他の加算に比べても1日に算定できる単位数が高く設定されています。

実際に、24営業日の小規模デイサービス(18名定員)が個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱの両方を算定した場合、月に「44,064点」の加算を算定することができるので、月額で「44万円」ほどの収益につながります。同様に、24営業日の通常規模デイサービス(30名定員)の場合は「73,440点」、大規模デイサービス(40名定員)であれば「97,920点」が加算されます。

基本報酬が減額されるデイサービス業界の中でこの加算は、大きなメリットとなるのではないでしょうか。
 

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個別機能訓練加算を算定するための手順

では、実際にリハビリ特化型デイサービスとして個別機能訓練加算を算定していくにはどのようにすれば良いのでしょうか?


個別機能訓練加算の算定方法について簡単にご紹介します。

個別機能訓練加算を算定するためには、まず人員基準など算定要件がクリアしているか確認した上で、各市区町村に届出を申請します。申請がおりたらサービス利用者の居宅を訪問し、本人やその家族に情報収集を行なった上で個別機能訓練計画書を作成していきます。この計画書をもとに本人と家族への説明・同意をいただき、実際に機能訓練を提供します。これらの訓練を実施した結果を評価・モニタリングして計画書に反映する必要もあります。

個別機能訓練加算の算定までの流れ

1個別機能訓練加算の算定要件を確認する
2届出に必要な書類の準備
3利用者様の居宅への訪問(担当者会議)
4個別機能訓練計画書の作成
5本人・ご家族へ説明・同意
6個別機能訓練の実施
7モニタリング・評価の実施
8実施記録を記載・保管する

算定までの具体的な取り組みに関しては下記の記事がご紹介しています。詳しくはこちらをごらんください。

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リハビリ特化型デイサービスの将来性について

これまでデイサービスにおいて主流であった食事・入浴・排せつなどを提供する「1日型のお預かり型デイサービス」と身体機能の維持・改善や生活機能の回復を目指す「リハビリ特化型デイサービス」の事業の将来性について考察してみます。

デイサービスの介護保険報酬は、これまでの「介護をする支える介護への報酬」から「自分で生活できるように支援する介護への報酬」へと変わりつつあり、実際に、近年では「個別機能訓練加算」や「生活機能向上連携加算」「ADL維持等加算」などの高齢者のリハビリにおける加算や生活レベルを維持・改善したデイサービスにインセンティブとして報酬を付与する加算が増えてきています。

高齢化がまずます進む日本において要介護者を維持する、予防することこそ価値が高いので、自立支援をするデイサービスが求められます。

介護度の維持・改善を目的としてリハビリ特化型デイサービスは、まだ数えるほどしかありません。だからこそチャンスがあるのです。

まとめ

これまでのデイサービス事業所数の推移を見てみると、平成27年度の介護報酬のマイナス改定の影響により、平成28年度に初めてその事業所数が減ることになりました。平成30年度介護報酬改定では「自立支援」を基本方針としているため、流れと異なる事業所様においては加算算定は経営的に死活問題になりかねません。

自立支援とは利用者様に対し「元気になったら何をしたいか。そのためのストーリーをつくること」ための過程です。その過程を細かく分析し、本人に似合ったプランを立てるものが個別機能訓練加算です。皆さまの事業所にも、たくさんの高齢者が来ているでしょう。その利用者様お一人お一人の人生に合わせて、 サクセスストーリーを一緒につくっていくことが利用者様満足度を高めることにつながります。

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?

この記事の著者

作業療法士  大久保 亮

リハビリ養成校を卒業後、作業療法士として、通所介護事業所や訪問看護ステーションにて在宅リハビリテーションに従事。働きながら法政大学大学院政策学修士を取得。その後、要介護者、介護現場で働く人、地域住民まで、介護に関わるすべての人が安心していきいきと活躍し続けられる世界の実現を目指して2016年6月株式会社Rehab for JAPANを創業。また、日本介護協会関東支部局副支部長を務める。

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