QOLとADLとの違いと関係性について解説!

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更新日:2022/12/06

ADLとQOLの関係性を知っていますか?ADLとQOLの関係についての先行研究から、食事動作ができるほど生活満足感があがることなどがわかっています。ADLとは、日常生活を送るために必要な基本的な動作。QOLとは、人間らしく満足した生活を送れているかなどの生活の質。ADLとQOLの違いについて理解しておく必要があります。そこで今回は、ご利用者の満足度を高めるために必要なADLとQOLの考え方と関係性について解説します。  

ADLとQOLの違い・意味とは?

ADLとQOLの違い

医療用語や介護用語として活用されるADLとQOLとはどのような意味があるのでしょうか?

ADLとは

ADL(Activities of Daily Living)とは、日常生活動作と呼ばれ、食事やトイレ、入浴や整容、着替え、移動などといった日常生活を送るために必要な基本的な動作、日常的・習慣的に行なっている行動のことを指します。

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QOLとは

QOL(クオリティ・オブ・ライフQuality of life)とは、「生活の質「または「人生の質」と呼ばれ、その人自身の生活の価値観や幸福感、満足な生活をしているかどうかのことを指す概念です。

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ADLは日常生活に必要な動作をどの程度自分で行えるかを表し、QOLは人間らしく満足した生活を送れているか表します。

介護の現場では、その人の望む生活を考えて支援を行うため基本的な動作であるADLの能力を把握する必要があります。

しかしながら、その人が満足する生活には基本的な動作(ADL)ができるだけでなく、ADLの能力が低くてもその人なりの生きがいを見つけて社会参加や自己実現を叶えることで生活の満足感を得る(QOLを高める)ことができます。

このような考え方は、利用者様がが望む生活を支える介護では非常に重要になります。利用者様の満足度を高めるADLとQOLについて考えていきましょう!

ADLとQOLにはどのような関係性があるのか?

ADL QOL 違い

高齢者にとって、ADLが自分でできるようになると生活の質(QOL)も高まります。逆に、寝たきりでADL能力が低い場合でも、ベッドで映画を見たり、親友や孫と話ができたりと「生きがい」や「やりがい」を見つけ、それに取り組むことで生活の質(QOL)が高まります。

このようにADLとQOLには深い関係があり、どちらも極めて重要であるといえます。

QOLの向上を目指すためには、まずADL能力を高めることが大切です。

特に、病気や怪我によって何かしらの障害を負った人は、同時に日常生活に制限を感じるようになります。そのため、どのようなことに不便さを感じているのかADLを評価することがQOLを考える上での第一歩となります。

ADLとQOLの関係についての先行研究

ADLとQOLの関係性について、伊勢崎らは以下のように報告しています。

生活満足感にはADLの食事動作が強く影響しており、各因子の影響を考慮したとき、食事動作ができるほど生活満足感が高かった。

このことからもADLは、日々の楽しみや家族や親しい友人などと関わりを保つ場としてQOLと密接な関係性があるといえます。

  • 参照:石原一成「老人保健施設入所女性のADLとQOL および身体機能との関連性」
  • 参照:伊勢崎 美和「高齢患者のQOLとADL(日常生活動作)との関係―主観的幸福感に焦点をあてて―

ADLとQOLの評価方法にはどんなものがあるのか?

ADL QOL 評価

ご利用者様のADLやQOLを把握する方法としてどのような評価方法があるか知っていますか?ここでは、ADLとQOLの評価方法についてご紹介します。

ADLの評価方法・評価スケール

FIMFIMは、実際にどれくらいの介助量が必要なのか本人が「しているADL」を評価します。運動項目と認知項目の2つに分類され、126点満点で採点します。この点数が高いほどADLが高い(=介護の必要性が低い)という結果になります。
BIBI(バーセルインデックス)は、FIMとは異なり本人が「できるADL」を評価します。BIの評価項目は全10項目で、各項目が自立度(自立・部分介助・全介助など)に応じて0~15点(2~4段階)で評価され、100点満点で採点します。
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できるADLの評価方法であるBIについては下記の記事で詳しく解説しています。通所介護のアウトカム評価指標としても活用されるバーセルインデックスについて、評価の特徴から評価項目、採点方法までかんたんに解説します。

QOLの評価方法・評価スケール

SF-36QOLの評価方法の代表に、SF-36があります。SF-36は、8つの健康概念を測定するために36問から構成されています。特徴として、健康関連QOLを測定する包括的尺度で、様々な疾患の健康関連QOLを測定することができ、疾病の異なる患者さん間のQOLの比較が可能です。さらに、SF-36v2は国民標準値(2007年)が公開されていますので、それを基準にして対象群の健康状態を検討することができます。 SF-36v2日本語版マニュアルに性別・年代別の国民標準値データ(2007年)が掲載されているほか、スコアリングプログラムを使用するとより簡単に比較ができるようになります。

詳しくは「QOL(生活の質)とは QOLの意味とQOL評価法の基礎知識」で紹介しています。

まとめ

ADL QOL 違い まとめ

今回はご利用者様の満足度を高めるために重要なADLとQOLの関係性についてご紹介しました。

ご利用者様により良い日常を送ってもらうためには、ADL(日常生活活動)とQOL(生活の質)の考え方が重要視されます。どちらの方が優先的に重要なのかは問えませんが、ADLの向上においても本人が望む生活を送る(QOLの向上)という概念が念頭にあってこそです。

そのため私たちスタッフが、ADLとQOLの関係性を学びご利用者様が満足できるサービスを提供していけるようにしましょう!

▼ADLとQOLについて学んだあとは、IADLについても学んでみませんか?IADLについてこちらの記事がオススメです!

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ADLに類似する言葉にIADLがあります。手段的日常生活動作を指すIADLもADLと同様にご利用者様の生活の質(QOL)を高めるために重要な要素となります。

デイサービス運営において必要な「評価・測定」について、一挙にまとめていますので、必要に応じて活用していただければと思います。

→→ 【完全保存版】デイサービスで活用できる評価・測定に関する記事まとめ|随時更新

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?

この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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