歩行介助の方法と注意点を杖・手引き・歩行器など目的やケースごとに解説!

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介助

更新日:2024/04/19

歩行介助の中でも歩くときにふらついて転倒してしまう危険性があるご高齢者に対して、私たちはどのような立ち位置で介助を行えばよいのでしょうか?歩行介助の方法にはいくつかの方法がありますが、今回は、ふらつきがあるご高齢者に対しての歩行介助の種類とそれぞれの介助方法、注意点についてまとめてご紹介します。介護スタッフや在宅で介護をされているご家族は、介助の基礎知識として参考にしてください。

歩行介助の種類について

歩行介助の種類について

屋内や屋外を移動する場合に、車いすを使うほどでもないけど歩くとフラついてしまい転倒が怖いご高齢者に対してどのような歩行介助を行なっていますか?

ご高齢者の歩行介助では、手引きや寄り添いでの歩行介助以外にも、杖や歩行器などの歩行補助具を使用している方の歩行介助、後ろからの歩行介助、片麻痺などで患側を支えるなどさまざまな介助方法があります。そこで今回は、介護初心者の方でも分かりやすいように「8種類の歩行介助の方法」をそれぞれご紹介します。

  1. 寄り添い歩行介助
  2. 手引き歩行介助
  3. 後ろからの歩行介助
  4. 杖の歩行介助
  5. 歩行器の歩行介助
  6. アーム付き歩行器の歩行介助
  7. シルバーカーの歩行介助階段の歩行介助
  8. 階段の歩行介助
  9. 片麻痺の患側側からの歩行介助の方法

あくまでも介助される方の安全を第一に考えられた基本的な歩行介助の方法です。介助の基本として覚えておきましょう!

(※1)歩行補助具とは、バランスの不安定さを軽減し、転倒リスクを減らす目的で使用される杖や歩行器などの道具のことです。歩行補助具である歩行器の種類と特徴については下記の記事をご覧ください。

【関連記事】
知っておきたい基礎知識!福祉用具の選び方「歩行器編」
歩行補助具である「歩行器の種類と特徴」についてご紹介します。

「寄り添い」の歩行介助の方法

ではまず、寄り添いでの歩行介助の方法をご紹介します。

寄り添い歩行の介助とは、介助者がご高齢者の横に立ち、ご利用者様の歩行を介助する方法です。この方法は、お互い前方を向けて歩くことができるので障害物を確認でき、ストレスなく長い距離を移動することができます。また、介護者は脇の下に手を入れて解除することでご高齢者がバランスを崩してもすぐに支える事ができるといったメリットがあります。

  1. 介助者はご高齢者の利き手と反対側に立ちます。※麻痺がある方の場合は、麻痺側に立ちます。
  2. ご高齢者の「脇の下」と「手」を下から支えるように軽く握ります。
  3. お互いに目線を進行方向に向けます。
  4. ご高齢者の歩調を合わせてゆっくりと歩きます。

歩行介助に慣れていない方、ふらつきや介助量が多いご高齢者の場合は、「脇の下」と「腰」をしっかり支えるように介助しましょう!

「手引き」の歩行介助の方法

次に、手引きでの歩行介助の方法をご紹介します。

手引き歩行の介助とは、介助者とご高齢者がお互いに向き合い、両手を取って歩行を介助する方法です。手引き歩行は、介助者がご高齢者の表情を観察しながら歩くことができることや両手をしっかりと支えているためご高齢者が安心して歩くことができるといったメリットがあります。しかしながら、介助者は後ろ向きで歩くため周囲の環境や足元が確認できないため注意が必要です。短い移動に向いた歩行介助の方法となります。

  1. 事前に移動する環境に障害物がないか確認します。
  2. 介助者はご高齢者と向き合う位置に立ちます。
  3. ご高齢者の「両脇」に手を置き、ご高齢者には介助者の「肘」を持ってもらいます。
  4. ご高齢者の「両腕」を介助者の「両腕の上」に乗せてもらいます。
  5. ご高齢者の表情を確認しながら歩き始めます。
  6. 周囲の状況を確認しながらご高齢者の歩調を合わせてゆっくりと歩きます。

進行方向の足元の確認が不十分となるため、事前の環境確認やご高齢者の歩く姿勢や表情を良く観察しながら本人のペースに合わせて歩くようにしましょう!

「後ろから」の歩行介助方法

頻度としては少ないかもしれませんが、後ろから両脇を支える歩行介助方法を行う場合もあります。歩行介助の目的は、ご本人が歩くときに足りない機能を補うという点であり、あくまでもご本人の歩行を補助するスタンスは必要です。人が歩行するときには重心を前方や左右に移動させる必要があるので、後ろから支える介助を行うと、介助に依存的になり本来の歩行とは異なる重心の移動を誘導してしまう可能性があります。例えば小脳失調などでふらつきが大きいときにバランスをとる目的に絞って後ろからサポートする介助することなどはありえます。後ろから支える介助は目的が明確でない限りは通常行われません。

「杖」の歩行介助の方法

続いて、歩行補助具の中でも杖を使用した歩行介助の方法についてご紹介します。

杖の歩行介助とは、足の筋力が衰えてしまい長い距離が歩けなくなってしまった方、ふらつきがある方に対して支える程度の介助を行います。比較的長い距離を移動する方にオススメの歩行介助です。

  1. 杖は、肘が30度程度曲った長さに調節します。
  2. 介助者はご高齢者が杖を持つ側と反対側、やや後方に立ちます。
  3. ご高齢者の「脇の下」と「肘」を支えるように軽く握ります。
  4. 介助量が多い方の場合は「杖→患側→健脚」の順で歩く。
  5. 介助者は、ご高齢者が踏み出す足と同側の足を後方から踏み出します。
  6. ご高齢者の歩幅、歩行ペースに合わせてゆっくりと歩きます。

杖以外にもロフストランド杖、松葉杖、4点杖などもあります。ご高齢者の状態や屋外・屋内などによって、最適な歩行補助具を選定すると良いでしょう!

▼4点杖を使用した歩行介助の方法については以下の動画が参考になります。詳しくはこちらを参考にしてみてください。

看護roo!「四点杖を使用する歩行介助|歩行介助(4) | 動画でわかる!看護技術」

「歩行器」の歩行介助の方法

続いて、歩行補助具の中でも歩行器を使用した歩行介助の方法についてご紹介します。

歩行器での歩行介助とは、歩行補助具である歩行器を使用して上半身を支持しながら移動する際に歩行を介助する方法です。この方法は、廊下などの床が平坦な場所を短距離移動する際に適しており、上半身が前や左右に倒れてしまう人や足に負担がかかる人にオススメです。

  1. 歩行器の高さを調節する。→ひじが軽く曲がり、少し前傾姿勢になるように調節する。
  2. 介助者は、ご高齢者の「斜め後ろ」に立ちます。
  3. ご高齢者の「脇の下」に軽く手を添えておきます。
  4. 歩行の手順は「歩行器」→「患脚」→「健脚」の順に出してもらいます。

歩行器を使用するときは、歩行器と体の距離が近すぎず、遠すぎないように適度な歩幅でゆっくり前に進むように指導しましょう。

▼歩行器の種類とその特徴については以下の記事でご紹介しています。詳しくはこちらをご覧ください。

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知っておきたい基礎知識!福祉用具の選び方【歩行器編】

「アーム付き歩行器」の歩行介助の方法

次に、アーム付き歩行器での歩行介助についてご紹介します。

アーム付き歩行器とは、肘掛けが付いている歩行器を使用して腕や上半身を支持しながら移動する歩行です。この方法は、段差がなく床が平坦で、廊下幅がある場合の長距離移動に適しており、病院などでの移動手段としてもよく活用されます。

  1. アーム付き歩行器の高さを調整する。→ヒジを約90度に曲げた高さになるように調節する。
  2. 介助者は、ご高齢者の「斜め後ろ」に立ちます。
  3. 必要であれば、ご高齢者の「脇の下」に軽く手を添えておきます。
  4. 止まる時は歩行器のブレーキをかける

歩行器の高さが低いと前傾姿勢になったり、高過ぎる支持することが難しくなります。必ずアーム付き歩行器の高さを調整しておくことをオススメします。

「シルバーカー」の歩行介助の方法

続いて、シルバーカー歩行での歩行介助についてご紹介します。

シルバーカーは、比較的歩が安定している方で、物を持って歩けない場合や膝や腰に疲れや痛みを生じやすいご高齢者の歩行を助ける手押し車です。シルバーカーによっては、荷物を収納するカゴがついているものがあったり、カゴの上に腰を掛けて休めるようになっているものもあります。この方法は、物を運びたい方、随時休憩が必要な方にオススメです。

  1. ハンドルの高さを調節する→ひじが軽く曲がり、少し前傾姿勢になるように調節する
  2. ブレーキが掛けれるか、操作を確認する
  3. カゴから荷物の出し入れができるか確認する
  4. 介助者は、ご高齢者の「斜め後ろ」に立つ
  5. 必要であれば、ご高齢者の「脇の下」に軽く手を添える
  6. シルバーカーに上半身の体重を乗せ過ぎないようにする

シルバーカーは、物を運びことができることが特徴で、歩行器に比べて歩行を安定させるための機能は低くなります。また、転倒を防止するためには必ず車輪にロックをかけるように指導しましょう。

「階段」の歩行介助の方法

歩行介助の中でも、階段を昇り降りする際の歩行介助の方法をご紹介します。

階段の歩行介助は、膝や腰が痛い、力が弱いご高齢に対して手すりまたは、杖を支持して階段を上り下りの歩行を介助する方法です。

  1. 事前に手順を確認します。
  2. 階段を昇るときは、介助者はご高齢者の斜め後ろ(階段の下側)に立ちます。
  3. 階段を降りつときは、介助者はご高齢者の斜め前(階段の下側)に立ちます。
  4. 手順に沿って階段の昇り降りをする

▶︎杖を利用している高齢者の場合

昇るとき:杖→健足→患足


降りるとき:杖→患足→健足

階段は転倒するリスクが高くなるため常に健足側に重心をかけることを意識してもらいましょう。杖を使わない場合は、片手で手すりをつかんでもらうようにしましょう!片麻痺の方の場合は、介助者は麻痺側に立って歩行を介助するようにしましょう!

「片麻痺の患側側から」の歩行介助の方法

脳梗塞・脳出血など、脳卒中の後遺症として片麻痺の障害がある場合、原則は患側(麻痺側)から歩行介助を行います。患側からの歩行介助のポイントは、患側の機能やご本人の歩行能力を活かすために、重心の移動や振り出しなどを補助します。

  1. 患側下肢の装具がある場合は装着をチェックする。患側の下肢の支持性(踏ん張りがきくか)を確かめる。→患側の足に体重をかけたときに耐えられる筋力がないと歩行は難しいです。
  2. 介助者は、患側に立ち、「脇の下」に軽く手を添えておきます。
  3. 歩行の手順は「患側」→「健側」の順に出してもらいます。

歩行介助で注意するポイントについて

ここまで様々なパターンの歩行介助の方法についてご紹介してきました。

ご高齢者が安全に移動するためには、介助方法だけでなく歩行介助での注意点についても把握しておきましょう。

  1. 足のサイズに合った靴を選ぶ高齢者施設では、屋内でも靴を使用することがほどんどです。一般の方のようにスリッパやサンダルなどのかかとの無いものを使用しているとと靴が脱げたり、滑ったりするため転倒しやすくなります。そのためご高齢者が本人にあった「足のサイズの靴」「脱げにくい靴」「滑りにくい靴」を使用してもらうように指導しましょう!
  2. 適切な歩行補助具を使用する多くのご高齢者が杖やシルバーカーなどの歩行補助具を使用していますが、それらが本人の歩行状態に適しているかを判断しておく必要があります。歩行補助具の選定については、理学療法士などのリハビリスタッフや福祉用具業者、義肢装具士などが得意としています。専門スタッフがいる場合はチェックしてもらうようにしましょう!
  3. 歩行補助具のメンテナンスをする長年使用している杖や歩行器などのメンテナンスがされていない場合は、杖が滑りやすくなったり、歩行器が動かしにくくなったりと歩行介助をする上でも危険になります。そのため、杖の先に付いている滑り止めのゴムや歩行器のタイヤ、ブレーキなどがしっかりかかるかなど適宜メンテナンスをするようにしましょう!
  4. ご高齢者の歩行のペースに合わせるご高齢者の場合は、それぞれの病気や身体能力によっても歩き方や歩くペースが異なります。前後・左右のどちらにふらつきやすいか、膝折れをしやすいかなどを把握した上で本人の歩行のペースに合わせて介助するようにしましょう!介助者主体にならずに、できる限り本人の力を引き出してあげるようにしましょう!
  5. 移動場所に休憩できる場所を用意しておくご高齢者の場合、いつもこれくらい歩けているから大丈夫だろうと思っていても体調によっていつもより歩けなくなってしまうことがあります。たとえ短い距離でもいつでも休憩できるような場所を確保しておくようにしましょう!椅子などの休憩場所を準備しておくことが難しい場合は、他のスタッフを呼べるように声かけをしておいたり、携帯を持参しておくのも良いでしょう!

まとめ

ご高齢者の歩行形態に合わせた8つの歩行介助の方法は、お分りいただけましたか?

ふらつきのあるご高齢者に対して歩行の介助を行う場合は、「安全第一」であることは言うまでもありません。しかしながら、過度に歩行の介助をしてしまうと本人の自立心を阻害してしまい、逆に身体機能が衰えてしまうことに繋がりかねません。

そのためには、ご高齢者の歩行状態を確認しながら適切な介助量で本人の動きに寄り添う介助を心掛けていくことが重要です!

このようにご高齢者の身体機能や生活能力に寄り添う介助のこと行うことを「生活リハビリ」と言います。生活リハビリとは、直接的に筋力アップや柔軟性アップを目指した機能訓練を実施するのではなく、歩行や着替えやトイレなどご高齢者が日常生活を送る上で必要な活動(ADL)をリハビリと捉え、日常生活動作をできるだけ本人の力でできるように支援することを指します。


ご高齢者の生活に寄り添う生活リハビリについて学んでみませんか?生活リハビリの具体例については下記の記事でご紹介しています。合わせてこちらもご覧ください。

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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