超高齢社会のミカタ!持続可能な超高齢社会(介護)とITについて

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更新日:2024/04/15

紀元前3000年。人類が誕生して以来、人の寿命は伸び続けている。そこには食料自給・公衆衛生、そして医療介護の発展が大きく関与していることに間違いはない。私たちが住むここ日本。これまで人類が到達したことのない超高齢社会を迎え、「持続可能な超高齢社会」に真摯に向き合う時が来た。 本稿では超高齢社会の課題について整理を行い、マクロの視点で一緒に議論していきたい。

超高齢社会の到来

超高齢社会とIT
(出典) 内閣府(2015)「平成27年版高齢社会白書」

日本の高齢化は急速に進んでおり、1994年に高齢化率が14%を超え「高齢社会」に突入しました。そして団塊の世代が定年退職を迎えた2007年には21%を超え、諸外国に先駆け「超高齢社会」となりました。

現在の日本の高齢化率は総務省(2014)によると、2014年時点での高齢者数は3,300万人となり、国立社会保障・人口問題研究所(2012)の日本の将来推計人口によると、2040年に3900万人弱規模でピークアウトするまで増加基調は続くと見込まれています。

また,同研究所によると,高齢化は都市部で急速に進展するとされており,2005年から2025年までの20年間における高齢者の増加数のうち約60%は東京都,神奈川県,大阪府,埼玉県,愛知県,千葉県,北海道,兵庫県,福岡県の都市部(特に関東圏)で占めるようになると報告されています。

総人口に対して65歳以上の高齢者人口が占める割合を高齢化率という。世界保健機構(WHO)や国連の定義によると、高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」、21%を超えた社会を「超高齢社会」という。

健康とは何か

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高齢化問題について考える際に留意点として、健康とは何かについて考えてみましょう。
 

健康の定義についてWHO憲章(1946)

Health is a state of complete physical , mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity. 

日本WHO協会訳(1951)

「病気ではないとか,弱っていないということではなく,肉体的にも,精神的にも,そして社会的にも,すべてが満たされた状態にあること」

と前文の中で「健康」を定義しています。

国民の健康観については2014年厚生労働省の調査によると,健康観を判断する際に重視した事項として「病気がないこと」をあげた者が63.8%と最も多く,「病気」と「健康」をセットとして考える傾向にあることがわかります。次いで「美味しく飲食できること」、「体が丈夫なこと」をあげた者が多くなっています。

上位3つの選択肢は,主に身体機能に帰属するものであり、多くの方が健康観を判断するに際し、まずは身体機能面を重視していることが伺えます。

一方、上記憲章にもある通り健康とは「身体的側面だけでなく、精神的側面や社会的側面においても満たされていることが「健康」の必要十分条件」であり、欠くことのできない要素と考えられています。

超高齢社会における人口構造の変化

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超高齢社会における人口構造の変化のターニングポイントは2025年であり、戦後の象徴とされている1947~1949年生まれの「団塊の世代」が75歳以上となる時期があります。これがいわゆる「2025年問題」とされています。

東京都福祉保健局高齢対策本部(2011)よれば

「後期高齢者(75歳以上)は前期高齢者(65歳以上~75歳未満)の6.7倍の認定率になる」

秋山(2010)

「60代後半から70代前半に加齢による日常生活自立度に変化がみられる」

と報告し、元気な高齢者とそうでない高齢者のターニングポイントであることが伺えます。一方で厚生労働省(2013)の介護保険事業状況報告によると、

「第1号被保険者に占める要介護(要支援)認定者の割合は17.8%であり、それ以外の8割強は認定外で自立的な生活を送れる高齢者で構成されています。

と報告しています。

以上のことから、現在の日本の超高齢社会を考える場合には、日常生活で何らかの手助けが必要な要介護者(要支援者を含む)と介護不要で自立的に暮らせる高齢者を一括りにすることは賢明でないと考えています。

同時に、介護不要の高齢者であっても、加齢に伴う健康状態の変化や制約を受け、生活行動様式も変化するため、健康増進を継続的に促し、必要とされるサービスを効果的に提案できる体制作りが、2025年のターニングポイントまでの当面の課題と考えられます。

超高齢社会における行政の対策

地域包括ケア

健康増進活動の担い手について、これまでの日本の健康増進や介護予防の状況を鑑みると、保健所を起点とした保健師が地域住民の健康づくりを中心に担ってきました。しかし、近年では健康づくりを目的とした健康経営を企業と行政が一体となった新たな取り組みが見られています。

これは厚生労働省(2015)は第6期介護保険改正の「地域包括ケアシステム」を基本姿勢とする指針を示し、健康増進は自助としての市場サービス(民間企業によるサービス提案)や互助としての地域住民の活動(ボランティア)を意識した取り組みが必要であることを示しています。

高齢者の消費動向

健康増進におけるマーケットについて考えてみましょう。
総務省(2009)の「全国消費実態調査」によると、世帯主の年齢階級別の純貯蓄(貯蓄‐負債)は、子育て世代である30-40代が負債超過になっているのに対して、60歳以上では比較的多めに金融資産を保有している(10年前より減少)と報告しています。

また、内閣府(2011)の「高齢者の経済生活に関する意識調査」では、貯蓄の目的は「病気や介護が必要になった時など、万一の場合に備える」ためと回答した者の割合(62.3%)が最も多く、次いで「普段の生活を維持するため」と回答した者(20.0%)が多い事が分かっています。

さらに同調査によると、優先的にお金を使いたいと考えているものは「健康維持や医療介護のための支出」が42.8%と最も多く、次いで「旅行」が32.8%となっています。

これは既に「モノ」に充足されている高齢者が、健康維持・増進に役立てたり、スポーツ・レジャーを通して「コト」を重視する傾向にあることがわかります。

厚生労働省委託調査(2014)によると、「健康のために支出してもよいと考える額」と「実際に支出した額」は、高齢者の支出額が他年代よりも大きいことがわかります。支出金額としては5000円未満が60%程度を占めており,1万円未満と答える者の割合の合計は8割強となっています。

年齢別の健康行動

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健康に対する意識と行動については、内閣府委託調査(2014)によると高齢者は他年代よりも「定期健診」や「運動」を意識して行っていることがわかります。これは、時間的余裕の影響も関係しているとも考えられますが、平均寿命が向上した日本において、セカンドライフの価値に「健康であり続けること」を求めていると考えられます。

高齢者のICT利用の特徴と現状

情報化社会の中で、高齢者は健康情報をどのように取得し、どの程度信頼しているのでしょうか。NHK放送文化局(2009)の「健康に関する世論調査21」によると、テレビ・ラジオ媒体が80.7%と最も多く、次いで新聞が60%、友人・口コミ、かかりつけ医が50%前後でした。

一方、その5年後の厚生労働省委託調査(2014)によると、テレビ・ラジオ媒体は高く変化はみられませんが、インターネットの接触頻度が急速に上昇している事がわかります。同調査では、信頼度の評価も同時に行っており、かかりつけ医や医療機関、医学書の信頼度は高く、広告・チラシなどの媒体は信頼度が低くなっています。

健康増進活動における主要な担い手は誰だろうか。

第一は当事者である60代。
60代は「万一の場合に備える」ために貯蓄をし、栄養に気を使った食事や運動、定期健診など健康維持増進のため、優先的に支出を行っている方が多いのが特徴である。また、積極的に健康情報の収集や知識を増やす努力をしている者が他年齢よりも高い傾向にある。

第二は健康増進活動を促す「企業」。
企業は地域包括ケアシステムにおける「自助としての市場サービス」として位置づけられており、「医療」としてではなく、「QOLの向上」を目的に健康増進に取り組むことがニーズとしてあげられます。

しかし、国民が健康観を判断するに際し「病気がないこと」や「体が丈夫なこと」を重視する傾向にあり、求める情報は病気や身体についての医療情報や専門的知識であるが,健康増進をリードしていく企業は医療でない、QOLの向上が求められるというパラドックスの状態にもあると言えます。


他方、超高齢社会と同時進行している情報化社会にも目を向ける必要があります。近年のICTの普及により健康情報における取引コストが下がり、誰でも簡単に健康情報を取得することが可能となりました。

取得方法においても多様化がみられ,特にインターネットからの健康情報の取得は著しく伸びています。しかし、現状では60代がICTを利活用し、効果を実感するまでには至っていないのが現状と考えられます。

まとめ

これから私たちは人類未踏の高齢社会を迎える。長い歴史の中で、国単位として事例はなく、我々が住む「日本」が世界のモデルケースとなるだろう。医療機関の活動範囲を広げるのか、企業の活動範囲を広げるのか。何が良いかは誰にもわからないだろう。

ただ言えること。私たち若い世代が「持続可能な超高齢社会」の社会としてのシステムをどう作り上げていくこと。

仮説検証を繰り返しながら、取り組んでいきたいものである。
 

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この記事の著者

作業療法士  大久保 亮

リハビリ養成校を卒業後、作業療法士として、通所介護事業所や訪問看護ステーションにて在宅リハビリテーションに従事。働きながら法政大学大学院政策学修士を取得。その後、要介護者、介護現場で働く人、地域住民まで、介護に関わるすべての人が安心していきいきと活躍し続けられる世界の実現を目指して2016年6月株式会社Rehab for JAPANを創業。また、日本介護協会関東支部局副支部長を務める。

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