認知症対応型通所介護とは|デイサービスの特徴とサービス内容について

コラム

介護スタッフの基礎知識

更新日:2022/02/18

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)は、認知症の方を中心に入浴や排泄、食事などの身体介護を受けるだけでなく、一人ひとりの状態に合わせたレクリエーションや機能訓練、家事、買い物、散歩などの認知症に特化したサービスを受けることができる地域密着型デイサービスです。本稿では認知症対応型通所介護の特徴とサービス内容について解説します。

認知症対応型通所介護と通所介護の違いとは

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)と通所介護の違いは、認知機能が低下した利用者様が、住み慣れた地域で生活を送れるように専門的な認知症ケアを手厚く受けられることです。介護保険法について見てみましょう。

「認知症対応型通所介護」とは、居宅要介護者であって、脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態(以下「認知症」という。)であるものについて、老人福祉法第五条の二第三項の厚生労働省令で定める施設又は同法第二十条の二の二に規定する老人デイサービスセンターに通わせ、当該施設において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって厚生労働省令で定めるもの及び機能訓練を行うことをいう。

介護保険法8条16項

「認知症対応型通所介護は認知症の利用者を対象にした専門的なケアを提供するサービスで、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、認知症の利用者が通所介護の施設(デイサービスセンターやグループホームなど)に通い、施設では、食事や入浴などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービスなどを日帰りで提供することにより、自宅にこもりきりの利用者の社会的孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介護の負担軽減などを目的として実施します。」

厚生労働省

つまり、認知症の方々への理解が深いスタッフが在籍しており、一人ひとりの認知機能に合わせたサービスが受けられる通所介護となります。もちろん、通常のデイサービスと同じく入浴や排泄、食事などの生活援助を受けることが可能となっています。また心身面やメンタル面だけでなく、家族の介護負担を軽減することも目的としています。

 通所介護認知症対応型通所介護
機能訓練指導員の配置機能訓練指導員 1以上【指定居宅サービス等の事業の人員、設 備及び運営に関する基準第93条第6項】機能訓練指導員は、日常生活を営むの に必要な機能の減退を防止するための 訓練を行う能力を有する者。この「訓練を 行う能力を有する者」とは、理学療法士・ 作業療法士・言語聴覚士、看護職員、柔 道整復師又はあん摩マッサージ指圧師の資格を有する者とする。機能訓練指導員 1以上【指定地域密着型サービス等の事業の人 員、設備及び運営に関する基準第42条 第5項】
基本方針【指定居宅サービス等の事業の人員、設 備及び運営に関する基準第92条】要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活 を営むことができるよう生活機能の維持 又は向上を目指し、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、①利用者の社会的孤立感の解消及び②心身の機能の維持並びに③利用者の家族の 身体的及び精神的負担の軽減を図るも のでなければならない。【指定地域密着型サービス等の事業の人 員、設備及び運営に関する基準第41条】要介護状態となった場合においても、その認知症である利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自 立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、①利用者の社会的孤立感の解 消及び②心身の機能の維持並びに③利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない。
事業所数43,440事業所(H28.3)3,719事業所(H28.3)

認知症対応型通所介護の対象者は

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)の対象者は、医師による「認知症」の診断を受けた要介護1~5及び要支援1・2の方です。また、認知症対応型通所介護の利用定員は「12名以下」とされ、一般的な通所介護より少人数で一人ひとりに合わせた認知症ケアが行われます。

認知症対応型通所介護の人員基準

管理者常勤専従
生活相談員常勤1名以上
看護職員(看護師または准看護師)または介護職員専従で2名以上
※生活相談員または看護職員、介護職員のうち1名以上は常勤
機能訓練指導員1名以上
※必ず有資格者の機能訓練指導員の配置が必要です

認知症対応型通所介護のサービスの内容とは

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)のサービス内容は以下の通りです。

食事、入浴、トイレなどの日常生活のケア
生活等に関する助言
身体機能の維持、清潔保持
機能訓練(リハビリテーション)


「あれ?通常の通所介護とサービスが変わらないの?」と思った方も多いと思いますが、認知症対応型と通常の通所介護との違いは、「少人数」で「専門的な認知症ケアを手厚く受けられる」ことにあります。

認知症対応型通所介護の利用定員は「12名以下」と少人数で規定されているため、スタッフが利用者様一人ひとりの状態やペースでサービスを提供することができます。人や環境の変化が苦手である認知症の方々にとって、顔見知りが集まる少人数での通所介護は、心を落ち着かせてサービスを受けることができます。

また、認知症対応型通所介護のスタッフの人員基準においては機能訓練指導員が「1名以上」配置することが求められています。機能訓練指導員は、利用者様が日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者としており、「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師もしくは准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ師の資格を有する者」と定めています。特に認知症に関する知識の高い看護師や作業療法士がその専門的な認知症のケアを行っています。

認知症対応型通所介護の利用料金

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)は配置基準の制度上、認知症に特化してサービスが受けられるため、通常の通所介護よりも1日あたりのご利用料金が若干高くなります。

認知症対応型通所介護の利用料金
単独型の事業所の場合(社会福祉施設等に併設されていない場合)

3時間以上5時間未満要介護1:564円
要介護2:620円
要介護3:678円
要介護4:735円
要介護5:792円
5時間以上7時間未満要介護1:865円
要介護2:958円
要介護3:1,050円
要介護4:1,143円
要介護5:1,236円
7時間以上9時間未満要介護1:985円
要介護2:1,092円
要介護3:1,199円
要介護4:1,307円
要介護5:1,414円

※1割負担の場合の自己負担額となります。一定以上所得者の場合は2割負担となります。

※お住まいの地域によって、地域区分が設定されており利用料金はその地域によっても異なります。詳しくは市区町村の窓口や地域包括支援センター、担当のケアマネジャーにお問い合わせ下さい。

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認知症対応型通所介護のご利用料金

認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)の利用料金は、通所介護の各種加算の算定状況によって異なります。認知症対応型通所介護では以下のような加算を算定することができます。そのため、各事業所の算定状況を確認しておくと良いでしょう。

個別機能訓練加算・個別機能訓練加算Ⅰ|46単位/日
・個別機能訓練加算Ⅱ|56単位/日
入浴介助加算50単位/日
栄養改善加算150単位/回
口腔機能向上加算150単位/回
認知症加算60単位/日
若年性認知症利用者受入加算要介護者|60単位/日
要支援者|240単位/月
サービス時間延長加算・9時間以上10時間未満の場合 +50単位/日
・10時間以上11時間未満の場合 +100単位/日
・11時間以上12時間未満の場合 +150単位/日
・12時間以上13時間未満の場合 +200単位/日
・13時間以上14時間未満の場合 +250単位/日
※上記はあくまでも目安の金額で、費用は時間帯(早朝・深夜)や地域(市区町村)の区分などによって異なります。
サービス提供体制強化加算※要介護者の場合(通所介護・通所リハビリ)
・サービス提供体制強化加算 I|イ:18単位/日 
・サービス提供体制強化加算 I|ロ:12単位/日
・サービス提供体制強化加算 Ⅱ| 6単位/日
中重度者ケア体制加算45単位/日
介護職員処遇改善加算・
加算Ⅰ:介護職員1人当たり月額37,000円相当の加算

・加算Ⅱ:介護職員1人当たり月額27,000円相当の加算

・加算Ⅲ:介護職員1人当たり月額15,000円相当の加算

・加算Ⅳ:介護職員1人当たり月額13,500円相当の加算

・加算Ⅴ:介護職員1人当たり月額12,000円相当の加算

※別途、食費、おむつ代やその他の日常生活費が必要になります。

※1単位あたり約10円ですので、各加算に10を乗じたものが実際の支払い金額になります。

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認知症対応型通所介護の平成30年度介護報酬改定のポイント 

認知症対応型通所介護における平成30年度介護報酬改定では、「自立支援・重度化防止」に資する介護を推進するため、通所介護事業所同様に「機能訓練指導員の資格要件緩和」「生活機能向上連携加算」「栄養スクリーニング加算の創設」などが行われます。しかしながら、今回の介護報酬改定では、認知症の方に適切なサービスが提供されるように、認知症高齢者へ の専門的なケアを評価する「認知症専門ケア加算」が認知症対応型通所介護に入っていないことが気になります。認知症対応型通所介護は認知症の方々に対し専門的にケアを行う事業所です。社会ニーズも強く、きめ細かい質の高いケアが求められます。その点を評価してもらえる制度を強化してまいりましょう。

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ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?

この記事の著者

作業療法士  藤本 卓

作業療法士として大手救急病院に入職。救急医療や訪問リハビリ、回復期リハビリテーション病院の管理職として従事後、株式会社Rehab for JAPANに参画。作業療法士、呼吸療法認定士、住環境福祉コーディネーター1級、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種、生活習慣病アドバイザーの資格を有し、専門的な知識と現場での知見を元に、事業所の支援を行う。機能特化型デイサービスでは、2ヶ月で「稼働率72%から95%に」アップさせるなどの実績をもつ。

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