小規模多機能型居宅介護(通い・訪問介護・宿泊)とは

コラム

介護スタッフの基礎知識

更新日:2022/02/18

小規模多機能型居宅介護とは、地域密着型サービスの1つで、現在の高齢社会においてニーズの高いサービスです。多くの長所を持つ小規模多機能型居宅介護ですが、問題点や課題もありますので、本稿で一緒に学んでいきましょう。今後、政府は地域包括ケアシステムを強力に推進することを目標に「小規模多機能型居宅介護施設」の普及促進を打ち出していますので、しっかりと流れを掴んでいきましょう。

小規模多機能型居宅介護とは

小規模多機能型居宅介護とは、「利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、利用者の選択に応じて、施設への「通い」を中心として、短期間の「宿泊」や利用者の自宅への「訪問」を組合せ、家庭的な環境と地域住民との交流の下で日常生活上の支援や機能訓練を行います。」としています。

介護保険における地域密着型サービス(市区町村が指定)の1つで、主に認知症高齢者の方々のために住み慣れた地域で生活を支援するサービスです。具体的なサービス内容は上述の通り①訪問(ヘルパー)②通い③宿泊の3つのサービスを1つの事業所で受けることができる複合型のサービスとなっています。

参照:出典|厚生労働省ホームページより

小規模多機能型居宅介護の人員基準とは

小規模多機能型居宅介護の利用定員は1事業所あたり「29名以下」の登録制となっています。通いサービスの定員は概ね「15名以下」、宿泊は「9名以下」と決まっています。要支援者1、2または要介護認定を受けているご高齢者の方がご利用の対象となります。

小規模多機能型居宅介護の料金の目安とは

小規模多機能型居宅介護の料金設定は、要介護度の差はあるもが、基本的には定額の料金体系となっており、必要があれば週何回でも「通い」や「訪問」サービスを利用することができる。基本的な料金は以下の通りです。

要支援13,403円/月
要支援26,877円/月
要介護110,320円/月
要介護215,167円/月
要介護322,062円/月
要介護424,350円/月
要介護526,849円/月

これらに宿泊料金と食費を足した額が利用料金となります。例えば、1食あたり500円、宿泊が4000円と仮定し、週3回の「通い」と「4日間の宿泊」したと仮定すると、月に44,320円の支払いが必要になります。尚、施設側には14万円程度の収益が入ることになります。

小規模多機能型居宅介護の良い点とは

ご利用者様にとって①利用料が定額性のため、費用が大きくなりすぎず②顔なじみのスタッフが対応してくれるため、認知症の方でも安心してご利用になれます③また、その他の介護施設とは異なり、利用者同士のコミュニケーションが深まることも良い点となります。

小規模多機能型居宅介護の問題点とは

小規模多機能型居宅介護を使用する際の問題点としては、定額制の料金のため、サービスを使っても使わなくても、利用料は徴収されてしまいます。また、小規模多機能型居宅介護を利用すると、他の介護保険サービスは利用できなくなってしまいます。特に以下のような5つのサービスはご利用者のニーズも高く、小規模多機能型居宅介護を活用しない高齢者の方も多いのが実態です。

  1. 居宅介護支援(ケアマネジャー)
  2. 訪問介護
  3. 訪問入浴介護
  4. 通所介護(デイサービス)
  5. 通所リハビリテーション(デイケア)
  6. ショートステイ

実際の現場では、特別養護老人ホームの入居待ちでご利用される方もおり、長期間のお泊りを利用されている場合もあります。

小規模多機能の運営基準の課題と今後とは

小規模多機能型居宅介護の展開や効率的な運営、機能の強化につなげるため、厚生労働省は運営基準を緩和することの是非を検討しています。
主に地域の事業所と連携した看護職員の配置を認めたり、外部のケアマネジャーがプランを作れるようにしたりすることを2017年5月の社保審・介護給付費分科会 で方向性を示しています。
特に居宅のケアマネが小多機の利用者も担当できるようにすることについて「利用者や家族の立場からみると、ケアマネが変わってしまうことは大きな問題。それがなくなればサービスの移行がもっとスムーズにいくはず。外部から確認の目が入るというメリットもある」という積極的な意見もある一方で、既存のメリットを損なうおそれもあるとして、建設的な意見が交わされています。

今後、併用できるサービスの種類をさらに増やすことも含まれる見通しとなっており、発展していく可能性が高いと言われています。

参照:第138回社会保障審議会介護給付費分科会資料

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?

この記事の著者

作業療法士  藤本 卓

作業療法士として大手救急病院に入職。救急医療や訪問リハビリ、回復期リハビリテーション病院の管理職として従事後、株式会社Rehab for JAPANに参画。作業療法士、呼吸療法認定士、住環境福祉コーディネーター1級、メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種、生活習慣病アドバイザーの資格を有し、専門的な知識と現場での知見を元に、事業所の支援を行う。機能特化型デイサービスでは、2ヶ月で「稼働率72%から95%に」アップさせるなどの実績をもつ。

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