デイサービスの送迎はどこまで?|送迎範囲や必要な免許・ルールについて

介護保険法

基本報酬

更新日:2024/04/09

送迎業務は通所介護施設において毎日必ず行う大切な業務です。送迎は、利用者を安全に移動させるだけでなく、介護報酬においても重要なポイントがあります。送迎業務のルールや範囲、送迎記録、必要な資格、居宅内介助の要件、送迎減算、介護報酬で改訂された点についてまとめましたので、ぜひご一読ください。   

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デイサービスの送迎業務とは

デイサービス の送迎業務は、利用者を自宅からデイサービスまで送迎する仕事を指します。交通手段のない方や身体の不自由な方でも安全に負担なく通えるように、一般的に車で利用者を送迎します。

デイサービスの送迎に関係する業務には以下の内容が含まれます。

  • 福祉車両の運転
  • 送迎ルートの立案と決定
  • 利用者の乗降介助
  • 利用者の家族とのコミュニケーション
  • 福祉車両の清掃や管理
  • 走行記録の作成
  • 緊急時の連絡対応

 車両の運転に関することだけではなく、利用者の乗降介助や利用者家族とのコミュニケーションをとり、スタッフと情報共有することも重要です。

また、デイサービスにおける送迎業務は介護報酬においても重要な側面があります。

デイサービスの送迎は業務として義務付けられていませんが、送迎を行わない際には送迎減算が発生し、事業所の収益にマイナスの影響を及ぼします。

送迎業務は利用者が安全に通うために必要なサービスで、報酬の面でも重要な業務です。

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デイサービスの送迎に関するルールや範囲

ここでは、送迎のルールと範囲について解説します。

送迎の範囲とは

デイサービスの送迎範囲は、利用者の自宅から施設までが原則です。

ただ、転倒のリスクが高い利用者を送迎する場合は、自室のベッドに座るところまで移動を介助することもあるでしょう。

デイサービスの送迎では基本的に、駅や病院など自宅以外の場所に送迎することはできません。しかし、利用者や家族にやむを得ない事情がある場合は、自宅以外への送迎が可能になることもあります。

介護報酬に係る解釈や判断については市町村へ相談する必要があるため、各自治体に確認してください。

また、デイサービスから病院までの送迎に関して、令和3年度の介護報酬改定により通院等乗降介助が見直されました。ただし、自宅から事業所というルートの送迎を行わない場合、送迎減算が適応されるので注意しましょう。

送迎業務(運転)に必要な資格・運転免許

デイサービスの送迎に必要な資格は、普通自動車第一種免許です。事業所の規模が大きく、バスで送迎する場合には中型や大型の自動車運転免許が必要になります。

デイサービスの送迎に関しては、厚生労働省と国土交通省によって道路運送法で規定されています。

平成18年に改訂された道路運送法の第40号によると、デイサービスの送迎は自家輸送扱いであることが認められています。そのため、デイサービスの送迎業務のみに使用する車両は、緑ナンバー(営業用自動車ナンバー)である必要はありません。

通常の白ナンバー(貨物運送事業や旅客運送事業に使用しない車両ナンバー)車両で、普通自動車第一種免許を取得していれば送迎が可能です。ただし、改正道路運送法の第40号では「安全確保や向上の観点から道路運送法の許可を受けた旅客自動車運送業者への送迎輸送の外部委託等を促進する」と記載があります。

デイサービスの送迎を自家輸送として認めていますが、今後は送迎業務を外部に委託する法改正の可能性も考えられるでしょう。

また、送迎業務では、普通自動車第一種免許の他に介護資格の所有が推奨されます。

送迎だけであれば介護資格は不要ですが、デイサービスの送迎では利用者の乗降介助が必要となるケースは少なくありません。必要な介護スキルを身につけていれば、乗降や自宅内での身体介助時に利用者のサポートが安全に行えるでしょう。

また、介護福祉士や介護職員初任者研修の修了など介護資格を保有している者であれば、送迎時に居宅内介助サービスも可能です。

参考:介護輸送に係る法的取扱いについて, 平成18年9月, 国土交通省自動車交通局旅客課、厚生労働省老健局振興課、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課

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送迎できる距離・時間

送迎できる距離や時間について、明確な決まりはなく、事務所ごとに異なります。事業所ごとに運営規定などで実施地域を定めています。

地区によっては介護施設が非常に少ない場合もあり、他地域まで長時間の送迎が必要になるケースもあるでしょう。

ただし、利用者の耐えられる乗車時間、交通事情、送迎職員の負担などから、片道30分程度の送迎が一般的です。

送迎記録について

送迎を行ったときには、通所介護の提供時間が適正かを確認するために、送迎記録が必要です。通所介護の運営指導(実地指導)の確認文書に「送迎記録」が入っています。

記録のない送迎は、そもそもサービス提供した証拠がないということになってしまうため、不備なく記録をすることが重要です。

送迎記録の記載内容の例として以下が挙げられます。

  • 送迎した利用者の氏名、住所、連絡先
  • 送迎した時間
  • 施設到着時間と施設出発時間
  • 送迎開始時と終了時の走行距離
  • 運転手の氏名
  • 使用した車両の車種やナンバー

送迎記録に限らず、介護保険において記録を残すことは、仕事を実施した証明として重要です。

送迎業務・運転にはマニュアルが重要

デイサービスやデイケアなどの通所サービスでは、多くの利用者の送迎を行うこととなっており、もしも送迎を行わない計画となっている利用者がいる場合には片道につき47単位を所定単位数から減算する送迎減算という形で扱うことになっています。

デイサービスの送迎業務は、巡回バスのようにただ運行を行うだけでなく、計画された時刻に利用者が安全に乗降できる場所に停車し、利用者に安全に乗車していただく介助を一人一人に合わせて行います。また、必要な持ち物や内服薬などの忘れ物がないか確認したり、家族から健康状態などの連絡事項を聞いたり、非常に複雑な業務となっています。

さらに、車椅子対応の福祉車両では、リフトやスロープ、車椅子のロック、車椅子用3点シートベルトなど、通常の車両にはない特殊な操作が必要になります。

これらの操作方法などは、新任者の研修などでささっと伝達するだけで覚えられるようなものではなく、送迎業務で繰り返し研修することで正しい操作方法を理解し、実践できる状態にしないといけません。

また、事故や家族の不在など例外的なことが起きることも多々あり、その際にどう対応するかなどをあらかじめ決めておくと役立ちます。

送迎を担当する職員は、施設の外で緊張して不安を感じながら運転を行なっているので、業務の内容やどこまで対応可能であるかなどのルールを可能な範囲で明確にして管理していくことが望ましいです。

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デイサービスの送迎業務で抑えておきたい点と注意したいこと

デイサービスの送迎業務を実施する際の注意点について解説します。

送迎時に居宅内介助を実施する場合の資格・要件

令和3年度の介護報酬改定により、送迎時に実施する着替えやベッドへの移乗など居宅内介護にかかる時間を、デイサービスの提供時間に含めて計算してよいと示されました。

条件は、以下の2つです。

  1. 居宅サービス計画及び通所介護計画に位置付けた上で実施する場合
  2. 送迎時に居宅内介護を行う者が、以下のスタッフである場合
  • 介護福祉士
  • 実務者研修修了者
  • 介護職員基礎研修課程修了者
  • 一級課程修了者
  • 介護職員初任者研修修了者(二級研修課程修了者を含む)
  • 看護職員
  • 機能訓練指導員又は当該事業所における勤続年数と同一法人の経営する他の介護サービス事業所、医療機関、社会福祉施設等においてサービスを利用者に直接提供する職員としての勤続年数の合計が3年以上の介護職員

居宅内介護の時間は1日30分以内を限度とされているため注意しましょう。

居宅内介護を提供することによって、送迎時に必ずしも家族が付き添わなくてもよくなり、デイサービスはより利用しやすくなりました。

参考:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について(平成12年3月1日老企第36号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)(抄)

出発時刻・到着時刻などの送迎の記録内容

デイサービスの送迎記録は事業所が適正にサービス提供を行っていることを証する証拠として扱われます。

介護保険の運営基準上は送迎時間の記録を残すことを要件として明示はしていませんが、送迎時間の記録を残すことには以下のようなメリットがあります。

  • 正確な時間を記録しておくことにより、計画していた介護報酬時間区分の要件を満たせているかを運営指導(実地指導)や監査の際に確認する材料になる
  • 利用者の家族などから滞在時間や出発時間などに問い合わせがあった際に具体的に提示することできる
  • 送迎ルートを考えるときに、各利用者の乗降にかかる時間や、移動にかかる時間を把握しやすくなる

このようなメリットがあるため、自治体により若干指導の異なる部分ではありますが、送迎時間についての記録は残しておいたほうが望ましいと思います。

送迎の時間の設定、到着予定時刻の連絡方法

そのため、利用者の送迎時間については交通渋滞や乗車に時間がかかってしまうことなどもある程度織り込んで、現実的に余裕をもって行える時間に設定をするようにしましょう。

利用者への送迎時刻の連絡方法については、主に以下の方法で行なっていることが多いです。

  • 翌日のお迎えの時間やお送りする時間を前日夕方に電話で連絡(管理者や責任者がルートを考える場合と、送迎支援ツールなどで自動ルート提案を受けて連絡しているケースがある)
  • およその到着時刻を利用者に伝えてあり、毎回同じ時刻に到着できるように送迎を組む
  • 1便、2便などに分けて、「9時から9時半の間に到着」など30分程のゆとりを持って利用者に伝えておきその範囲内で前日に送迎を組む

事業所の規模、サービス提供時間、車両大きさや車両数によって、自施設で最もよい送迎業務の運営方法を考えてみてください。

デイサービスの送迎記録の様式

送迎の記録方法に関して、厚生労働省などから推奨されている記録様式はありません。

そのため、各事業所の運営や送迎を担当するスタッフの状況を加味して、スタッフの負担が少なく継続しやすい記録様式にすることが大切です。

記録に残す内容についても介護保険の運営基準に規定はありませんが、送迎の出発時間や到着時間などの項目は送迎の管理や運営に役立つため、わかりやすく記録しておくと良いでしょう。

送迎業務の運行表、車両管理表の運用

デイサービスなどの通所サービスでは送迎が必須ですが、送迎に関する記録方法や車両の運転記録などについて特に指定された書式や様式はないということを紹介しました。しかし、実務上送迎を担当するドライバーなどが目安の時刻や順番を確認するために運行表を作成している事業所がほとんどです。

【運行表に記載されていると役立つ項目】

  • ご利用者の氏名
  • 到着予定時刻
  • 薬や入浴など確認するべき持ち物
  • 乗降車のときの留意点・注意点・家族に確認すること

【車両管理表の項目と運用】

デイサービスの送迎業務は、車両を適切で安全な状態で管理する必要があります。運行前の車両点検結果、発着時間、距離数、運転者のサインなどを表で管理すると良いでしょう。稀にあるトラブルとして、軽微な事故や車両の傷などがあっても報告がないケースが挙げられます。後日に気が付き、適切にトラブルの処理が行えないことがあるため、こまめなチェックが重要になります。

車両ごとに毎回乗降車時に車両を簡易点検し、みんなで車両を大切に使い、何か異変があった時は速やかに情報共有される雰囲気を作ることが大切になるでしょう。

デイサービスの送迎減算の対象とは

ここでは送迎減算について解説します。

送迎減算とは、利用者自身が事業所へ通うことや家族などが送迎を行うなどで事業所が送迎を行わない場合に減算される制度です。

送迎減算の内容は以下の通りです。

  • 単位数:片道「マイナス47単位/日」、往復「マイナス94単位/日」
  • 対象:事業所による送迎をされていない利用者
  • 算定要件:利用者の居宅と事業所間の送迎を実施していないとき

減算対象となる事業所は以下の通りです。

  • 通所介護
  • 通所リハビリテーション
  • 地域密着型通所介護
  • 認知症対応型通所介護

また「事業所と同一の建物に居住する利用者、または同一建物から通う利用者に通所介護を提供する場合」が減算対象となっている事業所は、送迎減算の適応はされないので注意しましょう。

デイサービスの送迎業務の管理上のQ&A

デイサービスなどの通所施設での送迎業務を実際に行うと、いろいろな疑問や例外が発生します。業務上心配なこと、添乗する介護職員は必要か、介護報酬上不適切な状態になっていないか、送迎減算の対象ではないかなど調べられる範囲で調べましたのでご参考にどうぞ。

運転手の他に添乗職員は必要?

現在のところ、デイサービスなどの通所サービスの送迎車両に添乗者を同乗させるかについての決まりや基準はありません。

各事業所で道路交通法での駐停車のルールの順守や、乗車しているご利用者の安全確保を考え、必要に応じて添乗する職員の配置を実施するということが望ましいと考えられ、指導が行われています。実状としては、添乗職員を絶対につけるという事業者もあれば、原則ドライバー1名で行なっている事業者もあり、様々です。

送迎時間は通所介護の提供時間に含めるか

デイサービスの送迎時間は通所介護の提供時間には含みません。自宅内介助については、この記事で紹介したような条件を満たせば提供時間に含められます。

送迎は利用者家族との信頼系づくりにとって重要な業務

今回の記事では、デイサービスにおける送迎業務について送迎のルールや範囲など介護報酬の改定を含め、網羅的にまとめました。これまでに述べた通り、デイサービスにおける送迎は利用者家族との信頼関係作りや介護報酬において、重要な業務といってよいでしょう。

また、令和3年度の介護報酬改定から乗降介助が見直されました。

送迎時に居宅内介護に要した時間も条件によっては通所介護の提供時間に含むことが可能な点に留意しておきましょう。

今回の内容を用いて、デイサービスにおける送迎業務の質の向上に役立てていただければ幸いです。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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