個別機能訓練加算Ⅱで使えるプログラム【棒体操編】

介護保険法

個別機能訓練加算

更新日:2022/10/26

個別機能訓練加算Ⅱでは、着替えやトイレ、洗濯などの日常生活の機能向上を目的とした機能訓練プログラムを考えなければなりません。そのため、目的にあった機能訓練メニューの提案に悩んでいる方も多いのではないでしょうか?そこで今回は、個別機能訓練加算Ⅱで使える実践プログラムとして「棒体操」をご紹介します。目標設定からプログラム立案の参考になれば幸いです。

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個別機能訓練加算Ⅱのプログラム内容について

個別機能訓練加算Ⅱとは

個別機能訓練加算Ⅱとは

個別機能訓練加算Ⅱとは、食事、排泄、入浴などの「日常生活活動(ADL)」や調理、洗濯、掃除などの「家事動作(IADL)」、趣味などの「社会参加」の生活機能の維持・向上を目標として、それに伴う機能訓練を実施した場合に算定できるデイサービスの加算です。

この加算は、利用者様の「自立支援」を促すことが本質としてあるので、身体機能を良くするだけでなく、住み慣れた地域で安全に生活できるようになるために機能訓練をすることでご高齢者の充実した生活を支援します。

個別機能訓練加算Ⅱの目的について

個別機能訓練加算Ⅱの目的は、専従の機能訓練指導員を配置し、利用者が居宅や住み慣れた地域において可能な限り自立して暮らし続けることができるよう、身体機能の向上を目的として実施するのではなく、体の働きや精神の働きである「心身機能」、ADL・家事・職業能力や屋外歩行といった生活行為全般である「活動」、 家庭や社会生活で役割を果たすことである「参加」といった生活機能の維持・向上を図るために、機能訓練指導員が訓練を利用者に対して直接実施するものである。

個別機能訓練加算Ⅱのプログラム内容について

個別機能訓練加算Ⅱの機能訓練プログラム内容は、安全に日常生活を送るために必要な生活目標に対しての機能訓練メニューを提供します。具体的には、寝返り・起き上がりなどの「基本動作」やトイレ・着替えなどの「日常生活活動」や洗濯、掃除などの「家事動作」、囲碁・手工芸などの「趣味活動」、町内会への参加などの「社会的活動」の5つとなっています。

▶︎基本動作の獲得を目指したプログラム

  • 寝返り訓練
  • 起き上がり訓練
  • 立ち上がり訓練など

▶︎日常生活動作の獲得を目指したプログラム

  • 箸の訓練
  • 髭剃り訓練
  • ズボンの着脱訓練
  • ドアの開閉訓練
  • 洗体動作訓練
  • 浴槽のまたぎ動作訓練など

▶︎家事動作の獲得を目指したプログラム

  • 掃除機の操作訓練
  • 洗濯物干し動作訓練
  • 配膳動作訓練
  • 金銭管理訓練
  • 調理訓練など

▶︎趣味・余暇活動の獲得を目指したプログラム

  • パソコンの操作訓練
  • 園芸活動訓練
  • 屋外歩行訓練(散歩)
  • ゲートボール訓練
  • カラオケ訓練(発声訓練)
  • 編み物訓練(指先の練習)など

▶︎社会的活動の獲得を目指したプログラム

  • 屋外の歩行訓練
  • 不整地の歩行訓練
  • 階段昇降訓練
  • 公共交通機関の利用訓練など

機能訓練のやり方について(厚生労働省より)

厚生労働省によると、個別機能訓練加算Ⅱの機能訓練のやり方としては、「生活動作などの具体的な動作訓練」や「それを模倣した反復動作訓練」を提供するとしています。

また、類似する生活目標を持つ利用者様であれば「5名程度以下」の小集団にて、機能訓練を実施することができます。

個別機能訓練加算Ⅱとしての棒体操の効果・目的について

個別機能訓練加算Ⅱとして棒体操を行う場合は、ADLやIADLを想定して行うことが必要になります。日常生活の中で身体を動かさない、使わないことによって体が減弱してしまう廃用症候群を予防し、より健康的な生活を送れるように機能訓練を行っていきます。

【棒体操の効果・目的】

  1. 立位バランスの維持と向上
  2. 着替えに必要な肩・体幹の柔軟性(関節可動域)の獲得
  3. 家事動作に必要な肩・体幹の柔軟性(関節可動域)の獲得

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個別機能訓練加算Ⅱの長期目標・短期目標・プログラムの事例

長期目標・短期目標・プログラム

個別機能訓練加算Ⅱでは、日常生活動作や家事動作、趣味活動、社会参加などの多くの視点や活動の手順を理解して段階的に関わることが求められます。棒体操を活用した場合の個別機能訓練計画書の長期目標・短期目標・プログラムの事例をご紹介します。

【事例1】

  • 長期目標:食事が自分で食べれるようになる
  • 短期目標:箸やスプーンを使用して食事を摂取することができるようになる
  • プログラム:食事動作が自立するために、棒体操で手首の筋力トレーニングをする

【事例2】

  • 長期目標:着替えが自分でできるようになる
  • 短期目標:上着をスムーズに着替えることができるようになる
  • プログラム:上着を着替えれるようになるために、棒体操で肩の可動域訓練をする

【事例3】

  • 長期目標:入浴動作が見守りでできるようになる
  • 短期目標:洗体が見守りでできるようになる
  • プログラム:洗体動作ができるようになるために、棒体操で肩の可動域訓練をする

このように個別機能訓練加算Ⅱの目標・プログラムは、「長期目標」とする日常生活動作を達成するために必要な工程を「短期目標」として立案します。次に、その短期目標を獲得するために必要な「機能訓練プログラム」を立案していきます。

個別機能訓練加算Ⅱの実践プログラム【棒体操編】

ここからは、個別機能訓練加算Ⅱとして活用できる棒体操の実践プログラムをご紹介していきます。

手首の棒体操

まずは「腕の棒体操」をご紹介します。

この運動では、手首、前腕、上腕、肩、肩甲骨の関節可動域訓練や筋力増強訓練としての効果があります。主に、食事・整容・洗体・更衣などを目標として立案した場合のプログラムとして活用いただけます。

【運動のポイント】

  1. まずはゆっくりと行います
  2. 棒の長さはご利用者様の身長や上肢長に合わせて選択しましょう

着替え(上着)のための棒体操

次に、個別機能訓練加算Ⅱの中でも「着替え(上着の着脱)」の獲得を目指した、棒体操プログラムをご紹介します。

こちらの棒体操では、肩を回転させる運動を行うことで肩の柔軟性を向上される関節可動域訓練プログラムとして活用できます。日常生活の中でも「着替え」は毎日行う行為です。生活の課題を想定し、日常生活に必要な基礎トレーニングとして取り組んでみてください。

【運動のポイント】

  1. 棒の両端を持ちます
  2. 棒を水平にするように意識しながら棒を回します

着替え(ズボンの着脱)のための棒体操

次は「ズボンの着脱動作」の獲得を目指した棒体操プログラムをご紹介します。

高齢者のズボンの着脱の際に問題になるのが、肩が回らないことです。そのため、こちらの棒体操を行い肩の柔軟性(関節可動域)を保っておくようにしましょう。

【運動のポイント】

  1. お尻の後ろで棒を持ちます
  2. 棒を逆手で保つように意識しましょう
  3. 棒を水平にするように意識しながら棒を持ち上げます

洗濯物干しのための棒体操

続いては「洗濯物干し」の獲得を目指した棒体操です。

家事動作の中でも、洗濯物を干すためには腕を120°程度あげる能力が必要と言われています。そのため、こちらの棒体操を行うことで胸や肩の柔軟性(関節可動域)をアップを行っておく必要があります。手を高くあげるために、棒体操を活用して上半身の柔軟性を保っておきましょう。

【運動のポイント】

  1. 背中と肘の間に棒を挟みます
  2. 棒を中心に、できる限り上半身を後方に倒します

入浴(洗体動作)のための棒体操


続いては「洗体動作」の獲得を目指した棒体操です。

体を洗う際、肩が回らず背中が洗えない方も多いのではないでしょうか? 棒体操を活用して肩の柔軟性を保つことで制限なくスムーズに日常生活を送っていただけるように支援していきましょう。

【運動のポイント】

  1. 背中の後ろで棒を縦に持ちます
  2. 棒を大きく前後に動かします

家事動作のための棒体操

最後にご紹介するのは、「家事動作」の獲得を目指した棒体操です。

料理や掃除を行う家事動作では、立った姿勢で振り向いたり上半身を捻ったりする動きが多くあります。こちらの棒体操を行うことで体幹を捻る筋肉の強化と立位でのバランス能力を鍛えることができます。

【運動のポイント】

  1. 両手または背中に棒を挟みます
  2. 棒を水平に意識したまま、上半身を捻ります

まとめ

今回は、個別機能機能訓練加算Ⅱとして活用できる棒体操のプログラムをご紹介しました。個別機能訓練加算Ⅱの要件となる、利用者様の生活を目標とするための機能訓練プログラムを考えるのは一苦労です。そのため今回の記事を参考に棒体操を使用した訓練も取り組んでいただけるようになると幸いです。

デイサービス運営では、個別機能訓練加算の算定は売上の貢献にも非常に重要な要素だと言えます。「個別機能訓練加算・個別機能訓練計画書」に関する内容を一挙にまとめた記事もご用意していますので、必要に応じて活用していただけたら幸いです。

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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