3分でわかる!運動器機能向上加算のチェックポイント

介護保険法

運動器機能向上加算

更新日:2022/02/25

運動器機能向上加算の算定要件を、かんたんにわかるようにポイントをまとめました。運動器機能向上加算は、総合事業通所型サービス(介護予防通所介護)を提供するデイサービスの要支援・事業対象者のご利用者に対して、それぞれのご利用者の意向や心身機能・リスク等を把握した上で、3ヶ月間の段階的な目標を設定し、個別に運動器の機能向上のためのプログラムを提供することで算定できる加算です。

介護予防通所介護(区市町村の総合事業通所型サービス)で、要支援者・総合事業対象者に提供される「運動器機能向上加算」の内容はわかりにくいですが、デイサービスなどの場でご高齢者の歩行能力や生活機能を維持向上して、活動量を保っていくことは大切なことです。

理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職がいない施設などでも運動器機能向上加算について知ってもらい、サービスの提供に向けて検討していただけるよう、弊社では電話やメールでの無料相談も行なっていますので、お気軽にお問い合わせください。

加算を算定するメリット

運動器機能向上加算は、介護予防を目的としてデイサービスを利用している要支援・事業対象者のニーズが高いサービスで、国家的にもフレイル対策や健康寿命の延伸という路線に沿っているこれからますます注力される分野です。

介護保険サービスとして要介護者に対して提供される「個別機能訓練加算」との違いや、総合事業の通所型サービス(介護予防通所介護)の仕組みも理解していきましょう!

算定要件や、業務の効率化を事前に整理しないと業務負担が大きく残業が増えてしまいますが、この記事では上手な業務管理方法なども紹介します!

運動器機能向上加算とは

運動器機能向上加算とは、今後中重度の要介護状態になる恐れがある「事業対象者・要支援1・要支援2」の方を対象に、地域包括支援センターのケアマネージャーが必要性を認める場合に、算定される加算です。

デイサービスのご利用者が、住み慣れたおうちで安心して生活するために、機能訓練を提供するスタッフを明示して、それぞれのご利用者の意向や課題を把握した上で、心身状況や生活課題に合わせて計画的に機能訓練を提供することに対して算定できる加算です。

運動器機能向上加算で算定できる単位数は?

・ 運動器機能向上加算 1月あたり 225単位 (約2500円相当)

例えば、20名の要支援・事業対象者が利用しているデイサービスでは、加算の算定開始により 1月あたり 5万円程度 の 売上アップ が見込めます。

要支援者が通所型サービスを利用する場合の月額基本利用料金

事業対象者・要支援1・要支援2の方を対象としている「通所型サービス(従来の介護予防通所介護の予防給付事業)」では、以下のような月額固定報酬を基本としています。

  1. 週1回利用(要支援1・事業対象者など
    →  1月あたり 2,115単位(約21,150円相当)
  2. ②週2回利用(要支援2など)
    →  1月あたり 4,236単位(約42,360円相当)

このように、事業対象者・要支援1・要支援2の方がデイサービスを利用する場合の基本料金は月額固定となっています。

運動器機能向上加算の算定により225単位を加算すると、1ヶ月利用単価は

  1. 2,115単位→2,340単位  
  2. 4,236単位→4,461単位 に増えます。

総合事業の通所型サービス(介護予防通所介護の予防給付相当)の加算について

総合事業の通所型サービスの加算はいくつかありますが、利用者の状態等に応じたサービス提供に対する加算としては以下のようなものがあります。

運動器機能向上加算と合わせて、以下の加算も検討されることが多いです。

  1. 栄養改善加算(栄養状態の改善のみだと +150単位/月)
  2. 口腔機能向上加算(口腔機能の向上のみだと +150単位/月)

運動器機能向上加算と、①、②をあわせて提供すると選択的サービス複数実施の加算を算定できます。

選択的サービス複数実施 (2種類:+480単位/月、3種類:+700単位/月)

※ 要支援・事業対象者向けサービスでは、入浴による加算はありません。

運動機能向上加算の人員配置って?

機能訓練指導員って

機能訓練指導員は、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)以外にも、看護師・准看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・一部の鍼灸師も認められています。

以下のように通常配置されている看護職員でも、業務に支障がなければ兼務で算定することも可能です。また、個別機能訓練加算を算定するために配置されている機能訓練指導員が運動器機能向上加算の機能訓練指導員を兼務することも可能です。

申請時には配置について確認が必要ですが、以下のように非常勤・兼務の配置で算定するケースもあります

個別機能訓練加算の算定の兼務・非常勤の人員配置

※保険者・自治体により、兼務の可否については指導が異なる場合があります。

運動器機能向上加算の算定前の手続き

個別機能訓練加算の算定を始める準備

運動器機能向上加算を算定するときには、事前に区市町村への申請と確認が必要です。(総合事業では、要支援・事業対象者への給付については区市町村に移管されています)

また、地域包括支援センターや、ケアプラン作成を委託されているケアマネージャーやご利用者・ご家族にも、加算内容やサービスの提供についてご理解・同意をいただきます。

算定にあたっては、地域包括支援センター等の担当ケアマネージャーが運動器機能向上サービスの提供の必要性を判断していただく必要があります。

運動器機能向上加算で必要なこと

運動器機能向上加算では、具体的な生活上の希望を踏まえ、対象者の自己実現の達成を目標にして計画的に支援を行っていきます。この加算の中で課せられている重要なポイントをまとめて紹介します。

1.事前アセスメント

運動器機能向上加算で求められる事前アセスメントでは、健康状態・生活習慣、体力水準などの個別の状況を把握します。事前アセスメントでは、個別の運動機能向上計画を立案するにあたり、以下の点が把握されて記録されている必要があります。

体力測定

体力水準を把握するための体力測定では、握力測定開眼片足立ち時間Timed Up & Go Test(TUGテスト)5m歩行時間(通常・最大)等を測定することが望ましいとされています。

考慮すべきリスク

看護師等医療従事者によるリスクの評価として、既往歴、家族歴、服薬、生活習慣病等の状況、自覚症状の有無、脈拍、血圧等を評価します。

利用者のニーズ

ニーズは、買い物ができるようになりたい、炊事が楽にできるようになりたい、物干しが楽にできるようになりたいなど、生活上必要なそのご利用者のニーズについて、ご本人や介護予防ケアプランなどから把握します。

運動器の機能の状況

運動器とは、狭い意味では筋肉・骨・神経など運動に関わる器官を指しますが、運動器機能向上加算でいう運動器とは、体を動かす仕組み全体を意味します。客観的に見たときのその方の歩行などの動きの特徴や関節可動域(ROM)、筋力など、その方の動きのポイントになる運動器の機能の状況を把握します。

2.目標設定・運動器機能向上計画を作成

事前アセスメントを元に、運動器の機能向上のための計画を立案します。

個別の目標を設定

ニーズの実現のために、概ね 3 ヶ月程度で到達できる長期目標の例

例 1 買い物ができるようになるために、歩行能力の向上を図る。

例 2 炊事が楽にできるようになるために、機能的なバランス能力の向上を図る。

例 3 物干しが楽にできるようになるために、立位での機能的な動作能力の向上を図る。

目標達成のために、概ね1ヶ月程度で到着できる短期目標の例

1 ヶ月目 歩行能力を高めるための運動に必要な基本動作が自立して行える。

2 ヶ月目 家の近所の散歩が楽にできる。

3 ヶ月目 30 分間程度の散歩ができる。階段1階分を楽に昇降できる。

長期目標・短期目標を踏まえ、 理学療法士等、看護職員、介護職員、生活相談員 その他の職種の者が共同して、利用者ごとに、実施する運動の種類、負荷強度、実施期間、実施頻度、 1回当たりの実施時間、実施形態等を記載した運動器機能向上計画を作成します。体力の諸要素を包括的に運動することができるように、ストレッチング・バランス運動・機能的運動・筋力向上運動等を組み合わせた形が良いとされています。

3.運動器機能向上計画の説明と同意

運動器機能向上サービスの提供による効果、リスク、緊急時の対応等と併せて、当該運動機能向上計画の対象となる利用者に分かりやすい形で説明し、その同意を得ます。

運動の実施

運動器機能向上計画に基づき、利用者ごとに直接、運動器機能向上サービスを提供します。

モニタリングの実施と計画の修正

ご利用者の短期目標に応じて、おおむね1月間毎に、利用者の当該短期目標の達成度客観的な運動器の機能の状況についてモニタリングを行うとともに、必要に応じて、運動器機能向上計画の修正を行います。運動器機能向上加算で必要なモニタリングとは、体力測定の実施で運動器の機能の状況を確認する方法も可能ですが、立ち上がり・歩行などの基本動作の状況についてどんな状況であるか把握することも大切です。

事後アセスメント

長期目標の達成度運動器の機能の状況について、事後アセスメントを実施します。

ケアマネージャーへの報告と運動器機能向上サービスの継続の確認

事後アセスメントの結果を、利用者を担当する介護予防支援事業者のケアマネージャーに報告します。事後アセスメントの報告も踏まえて、ケアマネージャーが介護予防ケアマネジメントの結果、運動器機能向上サービスの継続が必要であるとの判断がなされる場合については、ここまでと同じ流れにより、継続的に運動器機能向上サービスを提供できます。なお、運動器機能向上サービスの継続が必要であることを確認したことについて、記録に残す必要があります

(運動器機能向上加算の内容は一見わかりにくく、ポイントをしっかりと押さえていないと実地指導で指摘されることも多いです。リハプランのシステムでは、算定要件として求められている計画書の作成や業務について、効率的に一括管理できるため、リハプランを導入する施設が増えています。)

継続の場合3ヶ月ごとに 1〜7 を繰り返します

運動器機能向上加算の算定では、これらの業務を繰り返し行っていきます。

このようにして、ご利用者の課題を把握して、機能訓練を提供して、振り返りを行い、ご利用者や他の職員とともに新しい計画を立てるということを繰り返すことで、ご利用者にとってよりよい機能訓練が提供できます。その流れが個別機能訓練加算の算定要件となっています。

(リハプランでは、必要な業務を自動チェックして、漏れなく効率的に管理することができます。たくさんの施設で、運動器機能向上加算の算定でリハプランをご活用いただいており、ご意見も参考にしながら使いやすさや安心をアップさせています!)

はじめての加算算定でも、リハプランなら安心して取り組めます。詳しくはこちらから

運動器機能向上加算の実地指導対策

いかがでしたか?
フレイルの状態に対して効果的に介入することの必要性や、介護予防の重要性はわかっていても、加算の算定要件や、実際にどんなプログラムをして良いかわからないなど、踏み切れない事業所も多いと思います。

加算の算定要件も難しく実地指導で指摘されないか心配だということで、加算の算定は諦めがちになっている現状があります。そこで支援ツールを導入して初めてでも安心して算定を開始するデイサービスが増えています。

\ いろいろな規模・体制で「リハプラン」をご活用いただいています! /

リハプランのご活用事例

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リハビリデイサービス銀齢 様

はじめての加算算定で、導入1ヶ月で60万円の収益アップ〜実地指導もクリアし、安心して個別機能訓練加算を算定〜

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トータルリハセンター高根台 様

稼働率アップのための仕組みづくりに〜平均稼働率68%から90%へ大幅アップ〜

機能訓練を通してご利用者も働くスタッフの方も元気に

一人一人に合った機能訓練を提供するためには、ご利用者を知り、計画を考え、実際に体を動かし、振り返りをして・・・という流れが必要になります。この流れが運動器機能向上加算の算定要件であり、成果が出やすいプロセスであるため加算という形で国で推奨しています。

手探りでこれらの業務を調べながら、ご利用者にも良いサービスを届けるということはとても大変です。

やるべき業務を迷わずできる環境をつくることと、計画書やプログラムがかんたんにできれば、ご利用者にもご事業所にも良いことです。

私たち株式会社Rehab for JAPANは、「介護に関わる全ての人に夢と感動を」という理念のもと、職種を超えたリハビリ介護を実現すべく、デイサービスの機能訓練支援ツール「リハプラン」のシステムの開発・提供を行なっています。

この記事では、運動機能向上加算の算定のことをかんたんに紹介しましたが、わからないことなどあればお気軽にご相談ください。一緒にデイサービスの元気を応援させてください。

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?

この記事の著者

作業療法士  大久保 亮

リハビリ養成校を卒業後、作業療法士として、通所介護事業所や訪問看護ステーションにて在宅リハビリテーションに従事。働きながら法政大学大学院政策学修士を取得。その後、要介護者、介護現場で働く人、地域住民まで、介護に関わるすべての人が安心していきいきと活躍し続けられる世界の実現を目指して2016年6月株式会社Rehab for JAPANを創業。また、日本介護協会関東支部局副支部長を務める。

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