敬語の使い方 や 言葉遣いの問題 介護の社会人接遇マナー

コラム

介護スタッフの基礎知識

更新日:2022/02/25

介護の仕事や病院などの医療機関での仕事では、接遇マナーとして敬語の使い方や、正しい言葉遣いで向き合っていくことが重要視されています。患者様やご利用者などの相手の自尊心や優越感を少しでも尊重していけるように、正しい言葉遣いで注意したい 二重敬語・過剰敬語、丁寧語・尊敬語・謙譲語の具体例、高齢者へのタメ口や子ども扱いの言葉遣いの倫理や態度の問題なども交え、介護の接遇マナー向上について大切なことを紹介します。

介護や病院の接遇マナーで重要視される 正しい言葉遣いとは

介護や病院の接遇マナーで重要視される 正しい言葉遣いとは

介護の仕事や病院などの医療機関での仕事では、敬語や正しい言葉遣いをすることが重要視されています。患者様やご利用者は、加齢や病気などで弱っており、特に医療従事者は立場上強い存在になりやすいです。患者様やご利用者は、スタッフの方から身の回りの世話や治療などをしてもらう立場であるため、劣等感や申し訳ない気持ちを感じています

そのような関係性がある業界であるため、相手の自尊心や優越感を少しでも尊重していけるように、接遇・マナーとしてしっかりと敬語を使い、正しい言葉遣いや態度で向き合っていくことが重要視されています
 

敬語や正しい言葉遣いができないと社会人として失格?

敬語や正しい言葉遣いができないと社会人として失格?

「敬語が使えないと社会人として失格」と言われることがあります。正しい言葉づかいは職場の同僚や、患者様・ご利用者・お客様などとのコミュニケーションを円滑にして、よりよい人間関係を作るために役立ちます。

特に敬語を使うことには、相手の自尊心や優越感を守る意味があります

敬語だけで相手のことを立てることはできませんが、職業として相手に向き合っている以上は、相手を尊重し、相手を思いやるために敬語を使えるように心がけましょう。また、「介護の接遇マナー向上 挨拶の仕方やお辞儀で好印象を与える方法」の記事では、挨拶やお辞儀の仕方について社会人として身につけておきたい接遇マナーを紹介していますのでご参考にどうぞ。

接遇マナー向上のための 敬語の使い方

接遇マナー向上のための 敬語の使い方

敬語には、丁寧語、尊敬語、謙譲語の3種類があります。

接遇マナーを意識していくためには、この3種類の違いを知り、相手に合わせて使い分けをしていきましょう。敬語の種類と敬語の正しい使い方を例を挙げて説明します。

介護や医療でよく使う丁寧語の例

丁寧語とは、敬語の一種で相手に対して丁寧な態度を表す言葉遣いです。
「〜です」「〜ます」や、単語の頭文字に「お」や「ご」をつけるなどの使い方をします。

丁寧語の使い方の例

普通の言い方:わかりました

丁寧な言い方:かしこまりました、承知しました

普通の言い方:できません

丁寧な言い方:私にはできかねます

普通の言い方:だれですか

丁寧な言い方:失礼ですがどなた様でいらっしゃいますか
 

介護や医療で覚えておきたい尊敬語と謙譲語の例

尊敬語とは、敬語の中でも相手への尊敬を表す言葉遣いです。

「〜られる」「お〜なる」などの使い方をします。

謙譲語とは、敬語の中でも最上級の表現で、相手に対して自分が謙る(へりくだる)言葉遣いをします。

「いただく」「頂戴する」などの使い方をします。
 

尊敬語と謙譲語の使い方の例

普通の言い方:見る

尊敬語の場合:ご覧になる

普通の言い方:言う

尊敬語の場合:おっしゃる

普通の言い方:食べる

尊敬語の場合:召し上がる

正しい言葉遣いで注意したい 二重敬語・過剰敬語

正しい言葉遣いで注意したい 二重敬語・過剰敬語

二重敬語とは、尊敬表現を重ねて使ってしまう言葉遣いのことです。例えば、目上の人が「話す」ということ丁寧に伝えようとした時に、「お話になられる」と表現したとすると、「お」と「なられる」の2つの尊敬表現が入ってしまっています。

丁寧に表現しようとしすぎてしまっても、二重敬語や多重敬語になってしまい正しい言葉遣いではなくくどい印象を与えてしまうため気をつけましょう。

二重敬語の例

二重敬語は丁寧ではありますが、敬語の正しい使い方ではありません。正しい言葉遣いに気を配ってる方からは注意を受けることもあります。気づかずに二重敬語や多重敬語を使ってしまっていることもあるため、二重敬語や多重敬語のよくある具体例を紹介します。

来ました の例

→ 誤った表現:おいでになられました

→ 正しい表現:みえました、おいでになりました、いらっしゃいました

食べますか? の例

→ 誤った表現:お召し上がられますか?

→ 正しい表現:召し上がりますか?

見ました の例

→ 誤った表現:ご覧になられました

→ 正しい表現:ご覧になりました

患者様やご利用者に対して敬語を使わないでタメ語で話すのはどうか

患者様やご利用者に対して敬語を使わないでタメ語で話すのはどうか

介護や医療の業界では、認知症ケアの手法の一つとして、敬語を使わないでまるで孫かのようにタメ語で話をすることがあります。ご高齢の方の中には堅苦しい敬語の言葉遣いをされるよりも、親近感のある言葉遣いをされた方が嬉しいという方もいます。難しい話が通じにくくなっていて、理解しやすい単純な言葉で伝えなければならないこともあります。しかし、利用者との距離感を縮めるために敬語を使わずにタメ口をするという方法は安易に取り入れるべきではないと考えます。これは単に接遇マナーの問題でなく、倫理観や就業態度など、複雑な問題です。
 

接遇で問題になる高齢者へのタメ口や子ども扱いの言葉遣い

接遇で問題になる高齢者へのタメ口や子ども扱いの言葉遣い

もしも、施設や職場全体で、特定のご利用者に対して敬語を使わないケアを実践しているということを打ち出しているならばその方針に沿って取り組んで見みても良いと思いますが、接遇マナーという点で考えれば、年下から敬語を使われずタメ口で話されることで不快な思いをする方は多くいます

介護や医療の場面ではどんなケースでも絶対に敬語を使うべきということは言えませんが、敬語や丁寧語でない話し方は基本として実践していく必要はあると思います。

また、ご高齢の患者様やご利用者を「〇〇ちゃん」と馴れ馴れしく呼ぶケースも見かけますが、マナーとしてはふさわしくありません。接遇マナーにはいろいろなマニュアルがありますが、その職業・職種の誇り、プライド、理想像の表れを形式化したという面もあります。冒頭でもお伝えしましたが、支援される側として弱い立場である患者様やご利用者に対して敬語を使うことには、相手の自尊心や優越感を守る意味があります。

介護職員、看護職員の方がいろいろなアセスメントの元、根拠を持って敬語を使わない接し方をしている場合もあるため全てを否定するわけではありませんが、管理者の方や上司の方が全体を見て適切に判断していくべき問題であると思います。
 

まとめ

まとめ

いかがでしたか?

敬語を使うということを強制することはふさわしくないという意見もあり、この記事でも強制まではできないということを述べて来ましたが、介護や医療の分野では原則敬語を使うことを推奨します。敬語という言葉の使い分けをするのは世界中でも日本だけかもしれませんが、一期一会と言う言葉があるように、相手との繋がりを大切にし、相手を思いやる気持ちや、社会人・職業として人に接するけじめとして敬語や正しい言葉遣いは必要なことです。

丁寧語・尊敬語・謙譲語などの研修を行うと、若い世代では「そんな言葉遣いするなんて面白い」と面白おかしくふざけてしまうようなこともあるかもしれません。正しい言葉遣いという国語的な部分と合わせて、接遇とは相手の自尊心や優越感を守る意味があるということを認識してもらえると自然と相手を思いやる態度が引き出せるかもしれません。介護でも看護でも、患者様やご利用者が心地よく自分の体や生活などについて向き合っていけるように、よい状態を提供することが職業としての努めです。

【関連記事】
介護の接遇マナー向上 挨拶の仕方やお辞儀で好印象を与える方法
接遇マナーの向上について考える時、ご利用者や患者様への挨拶の仕方は一番最初の声かけとなるため重要な役割を持っています。接遇マナーで意識したい3種類のお辞儀(目礼・会釈、普通礼、敬礼)の角度と使い分け、介護・医療施設でよく使う挨拶の言葉、気持ちの良い接遇のための「語先後礼」、接遇向上のための挨拶の指導方法などについて詳しく紹介します。

介護の接遇マナー向上 身だしなみ(外見)で第一印象をアップさせる方法
身だしなみを整えることは、その仕事に対するプライドであり、介護の仕事に対する責任感です。清潔感、健康的、安全で機能的、TPOなどの接遇向上のチェック表を参考に接遇マニュアルを作成したり研修したりしてみてください。

介護職員の接遇とは おもてなしの心を表現する4つのポイント【基礎知識】
ご利用者様が快適に過ごしていただけるように、おもてなしの心を表現するための介護職員の接遇・マナーのポイントをまとめたチェックリストをご紹介します。

介護施設でのクレーム・苦情対応の7つのテクニックと対応事例 介護の接遇マナー
クレーム・苦情とはどんな意味があり、どのような違いがあるかについてお伝えし、クレーム・苦情の種類に合わせて話しの進め方テクニックや聴き方などの具体的対応方法を使って円滑なクレーム処理をする流れをお伝えします。デイサービス、介護老人保健施設などの介護施設、訪問介護などの訪問サービスでの対応事例なども紹介しながら研修やマニュアルに使えそうな内容を掲載しました。

ホスピタリティとは 接遇マナーとの違いから事例まで
ホスピタリティとは、「思いやり」や「心からのおもてなし」の意味を表す言葉です。マナーはTPO(時と所と場合)に応じて形式が決まっているのに対し、ホスピタリティは自分と相手の「心」の要素が加わります。

デイサービスなどの介護施設、看護師、病院などで、接遇マナーについて研修したりマニュアルを作成していくときにご参考にしていただけますと幸いです。

デイサービスの経営や運営は様々な視点から行っていくことが重要だといえます。これまでのやり方に加えて、稼働率アップさせるための営業戦略や、より業務効率化・生産性向上に貢献するITツールの導入などを検討していってもよろしいのではないでしょうか。

これら経営や運営に関する記事を一挙にまとめていますので、該当する記事を読んでいただき少しでも参考にしていただけたらと思います。

→→ 【完全保存版】デイサービス経営改善・運営・営業戦略・ITツール・実地指導・接遇に関する記事まとめ|随時更新

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?

この記事の著者

作業療法士  大久保 亮

リハビリ養成校を卒業後、作業療法士として、通所介護事業所や訪問看護ステーションにて在宅リハビリテーションに従事。働きながら法政大学大学院政策学修士を取得。その後、要介護者、介護現場で働く人、地域住民まで、介護に関わるすべての人が安心していきいきと活躍し続けられる世界の実現を目指して2016年6月株式会社Rehab for JAPANを創業。また、日本介護協会関東支部局副支部長を務める。

関連記事

他のテーマの記事をみる