セラプラストを使用した手指のリハビリプログラム 【全14種】

機能訓練

上肢

更新日:2022/02/16

指の力が弱く、細かな作業が困難な方へ取り組んでいただきたいのがセラプラストを使用した手指の体操(エクササイズ)です。手は最も複雑な動きをすることができる巧緻性に長けた部位です。その中でもつまみ・掴み・握り・鉤型握り・圧排の5つの機能に着目したリハビリで活用できる運動プログラムを中心にご紹介します。 →忙しすぎるデイサービス業務は、機能訓練ソフト「リハプラン」が解決。

セラプラストとは?

セラプラストは、商品名「セラピーパテ」として1,500円前後で市販販売されています。

介護現場では手体操の一環として、病院では指先、手の平、手首を鍛えるためのトレーニング道具として使用されることの多い道具の1つです。

セラプラストは、6段階に色分けされているので自分にあった硬さでトレーニングすることができます。また、素材はシリコンでできているため滅多に乾燥したり硬くなったりせず、指先の訓練道具として準備しておくと便利です。

  • 商品名:セラピーパテ
  • 容量:85g
  • 素材:シリコン
  • 注意点:シリコンでできているため無害ですが、食べることはできません

▼こちらの記事で道具を使用しない指体操をご紹介しています。セラプラストが準備できない方はこちらの記事をご覧ください。

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セラプラストの種類(硬さ)には

セラプラストは、色の種類で硬さ(負荷)の変更ができます。私も医療・介護の現場で活用していましたがその経験の上では、赤・緑・青のセラプラストが比較的訓練として活用しやすい硬さです。


【硬さ6種類】※低負荷順

  • ベージュ (スーパーソフト)
  • 黄色 (ソフト)
  • 赤 (ミディアムソフト)
  • 緑 (ミディアム)
  • 青 (ファーム)
  • 黒 (スーパーファーム)

手・手指の役割と運動機能には

セラプラストを活用した指体操・手指のエクササイズをご紹介する前に、手・手指の役割について整理しておきましょう。


手の働きは、物の識別など多くの役割を担っていますが主な「役割」と「運動機能」は以下の通りです。人間の手は、これらの機能を無意識的に活用することで身の周りの物を操作したり、探索したり、自分の身体を支えたりすることができるのです。


【手・手指の役割】

  1. 固定・把持・操作する
  2. 押す
  3. 引っ掛ける
  4. 引き寄せる
  5. 接触する
  6. 合図する
  7. 容器とする
  8. 識別する

【手・手指の運動機能(把持と圧排)】

  1. つまみ:指先を使用した精巧な動作
    例)指尖つまみ、指腹つまみ、側腹つまみ、3指つまみ
  2. つかみ:対象物を指先全体で正確に把握する
  3. 握り:強くしっかりした固定を得る握り
    例)球状握り、筒状握り、鍵握り、力握り
  4. 鉤型握り:親指を行なわない把握
  5. 圧排動作:押す、お盆を持つ

参照:犬丸 敏康「人類学的な解釈に基づくこねる行為の起源とその価値」(平成29年3月20日アクセス)

セラプラスト使用方法【1.指腹つまみ】

それではセラプラストを活用したエクササイズをご紹介していきます。

まず、こちらの運動は「指腹つまみ」のトレーニングです。つまみ動作の中でも指腹つまみは、親指と人差し指の指先を合わせてつまむ運動です。日常生活の中では、紙をつまむ際に活用する指先の機能です。

【運動のポイント】
指の腹でセラプラストをしっかりと押しつぶします。指先を立てないように注意しましょう。

【使用する主な筋肉名】
母指対立筋・長母指屈筋・短母指屈筋・深指屈筋・浅指屈筋・骨間筋

セラプラスト使用方法【2.横つまみ】

次にご紹介するのは「横つまみ」のトレーニングです。

横つまみは、人差し指から小指をグーにしたまま親指でつまむ運動です。日常生活では、主にスプーンを持つ際に活用する指先の機能となります。

【運動のポイント】
親指の腹でしっかりと潰すように意識します。

【使用する主な筋肉名】
母指内転筋・長母指屈筋・短母指屈筋

セラプラスト使用方法【3.三指つまみ】

こちらの運動は「3指つまみ」のトレーニングです。

3指つまみは、親指と人差し指、中指の3本の指を使用したつまみ運動です。日常生活では、主に鉛筆を持つときや、靴紐を結ぶ際に活用する指先の機能になります。

【運動のポイント】
親指と人差し指、中指の3本の指先を合わせるようにつまみましょう。

【使用する主な筋肉名】
母指対立筋・長母指屈筋・短母指屈筋・虫様筋・骨間筋・深指屈筋・浅指屈筋

セラプラスト使用方法【4.対立運動】

こちらの運動は「対立運動」のトレーニングです。

対立運動は、親指とその他の指先を合わせるような運動です。日常生活では、パソコンのマウスを握る際に活用する手の機能になります。

【運動のポイント】
手のひらのアーチを意識して押し潰しましょう。

【使用する主な筋肉名】
母指対立筋・小指対立筋

セラプラスト使用方法【5.つかみ】

こちらの運動は「掴み」のトレーニングです。

つかみは、対象物を正確に把握する指の腹全体を使用した動作です。日常生活では、ドアノブを握ったりボールを持ったりする際に活用する手の機能になります。

【運動のポイント】
指先、指の腹を使用して転がすように丸めていきます。

セラプラスト使用方法【6.握り(グリップ)】

こちらの運動は「握り(グリップ)」のトレーニングです。

グリップでは、握り動作だけでなく手首ひねりの力を要します。日常生活では、雑巾絞りの際に活用する手首の機能になります。

【運動のポイント】
雑巾を絞るように最大限絞ります。

【使用する主な筋肉名】
長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・尺側手根伸筋・総指伸筋・橈側手根屈筋・尺側手根屈筋

セラプラスト使用方法【7.鉤型にぎり】

こちらの運動は「かぎ型握り」のトレーニングです。

鉤型にぎりでは親指以外の指を使用し握り込みます。特に中指・小指の力が必要になります。日常生活では、フライパンを握る際に活用する手の機能になります。

【運動のポイント】
親指以外の指の腹を使用し握り込みます。

セラプラスト使用方法【8.親指の圧迫】

こちらの運動は「親指の圧排」のトレーニングです。

圧排動作は、手で押したりお盆を持ったりという手を広げて行う動作のことを示します。こちらの運動は、その中でも親指で押す力を鍛えることができます。日常生活では、押しピンを刺す際に活躍する親指の機能になります。

【運動のポイント】
親指の腹で押し伸ばすように行います。

【使用する主な筋肉名】
母指内転筋・短母指屈筋・長母指屈筋

セラプラスト使用方法【9.手のひらの圧迫】

こちらの運動は「手のひらの圧迫」のトレーニングです。

圧排動作の中でも手首を鍛えることができます。日常生活では、小麦粉をこねる作業に活用する手首の機能になります。

【運動のポイント】
手の甲を使用して押し伸ばすように意識します。

【使用する筋肉名】
長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・尺側手根伸筋

セラプラスト使用方法【10.応用編 | 器を作る】

こちらの運動はレクリエーション活動にも取り組める「器を作る」のトレーニングです。

器を作る際は伸ばす・引っ張る・整えるなどの要素が含まれるため、指先の応用動作練習としても活用できます。

【運動のポイント】
食器やコップなどイメージする器を準備して作成していきましょう。

セラプラスト使用方法【11.応用編 | 餃子を作る】

こちらの運動もレクリエーション活動として取り組める「餃子を作る」のトレーニングです。

餃子を作る際は、皮を伸ばす・引っ張る・包む・ツネるなどの要素が含まれます。女性の方なら調理活動の前段階として簡単に取り組める応用動作ですので是非活用してみてください。

【準備するもの】
セラプラストの他に具材となるビー玉などを準備しておくと良いでしょう。

セラプラスト使用方法【12.応用編 | 棒で伸ばす】

こちらの運動は調理動作訓練として取り組める「棒で伸ばす」のトレーニングです。

セラプラストを伸ばす際は、棒を使用して皮を伸ばす・棒を転がす・圧を調整するなどの要素が含まれます。

綺麗な円形になるように伸ばすなどの課題を与えるとさらに難易度が高くなります。

【準備するもの】
セラプラストの他に棒を準備しておく必要性があります。

セラプラスト使用方法【13.応用編 | 包丁で切る】

こちらの運動も調理動作訓練として取り組める「包丁」を使用したトレーニングです。

包丁を使用する際は、道具をコントロールする・手を添える・厚さを調整する・包丁への圧を調整するなどの要素が含まれます。調理動作訓練としてセラプラストの活用から取り組んでみてはいかがでしょうか。

【運動のポイント】
プラスティックの包丁を準備することで安全に取り組むことができます。

セラプラスト使用方法【14.応用編 | 箸で切る】

こちらの運動は日常生活活動のエクササイズとして取り組める「箸」のトレーニングです。

箸を使用する場合は、切る・刺す・つまむ・持ち上げるなどの要素が含まれます。日常生活活動でも食事動作訓練として取り組める応用動作です。セラプラストは粘土製があり比較的箸でつかみやすい物品です。食事動作の前段階としてセラプラストと箸で食事のトレーニングをしてみてはいかがでしょうか。

【運動のポイント】
切るが難しい方には事前に丸めたセラプラストを準備しておくと良いでしょう。

運動指導のQ&A|運動を継続してもらうにはどうしたらいいの?

運動を継続してもらうためには、行動科学に基づく理論を適用することが有効で、さらに自己効力感が高いと運動の継続につながりやすいことが明らかになっています。しかしながら、老化を感じたり意欲が減退しているご高齢者の方々に「自宅でも運動しましょう」と提案してもなかなか継続できません。

ではどのように提案すると運動を継続していただくことができるのでしょうか?そのポイントをご紹介します。

  1. パンフレットを準備しましょう
    ご高齢になると目が見えにくくなったり、物忘れが多くなってしまいます。そこでパンフレットを作成し、患者様の運動を支援しましょう。
  2. 目標を立てましょう
    何のために運動をするのかが不明確だとなかなか継続することができません。「外に散歩に行けるようになりたい」などご本人が望んでいる目標(内発的欲求)に沿って運動を提案しましょう。
  3. 適度な難易度を設定しましょう
    勉強もそうですが、いつも同じ課題や難易度が高すぎたり、低すぎるとやる気を無くしてしまいます。一人ひとりに合った難易度(フロー理論)の運動プログラムを設定しましょう。また、余裕が出てきた運動については少し難易度をあげるなどステップアップすることも大切です。
  4. 効果を実感してもらいましょう
    運動を実施したことにより身体能力の変化を感じると自宅での運動の継続性を高める効果があると言われています。入院中に効果を実感してもらえるような運動プログラムを提案しておきましょう。

[参考文献]http://www.ipu.ac.jp/pdf/arita2.pdf

いかがでしたか。今回は、セラプラストを使った「つまみ・掴み・握り・鉤型握り・圧排動作」と「応用編」のエクササイズ12種類をご紹介しました。セラプラストは、日常生活に必要な様々な手の機能を鍛えることができる万能な道具です。皆さんも機能訓練としてセラプラストを活用してみませんか。

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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