認知症の介護・ケアの悩みについて|認知症の症状・対応方法の基礎知識

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更新日:2024/04/07

厚生労働省(2015年)によると、日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人、65歳以上の約1/7人と推計されています。医療や介護で働くケアスタッフは、認知症の方々と接する機会も多いのではないでしょうか?そこで今回は、認知症の方の対応をするスタッフのために認知症の症状や行動、心理状態を学び、認知症の介護の対応方法についてご紹介します。  

認知症の方の介護・介助をされる皆様へ

病院や介護事業所などで初めて認知症の方のケアされるスタッフの方は、どんな話をしていいのか?認知症の対応方法などに戸惑うのではないでしょうか?また、認知症の方のご家族は24時間悩みながら介護をされているのではないでしょうか?

そんな認知症の方の介護をされている皆様が少しでも認知症という病気と対応方法を考えるキッカケになっていただければ幸いです。

認知症とは

認知症とは、様々な原因で脳細胞の働きが鈍くなったり、死滅してしまったりするため起こるもので生活する上で支障をきたす状態を指します。

認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのは脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく「アルツハイマー病」「前頭・側頭型認知症」「レビー型小体病」などの「変性疾患」という病気です。

次いで、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまう「脳梗塞」「脳出血」「脳動脈硬化」などの「脳血管性認知症」です。

具体的には生活する上での支障をきたす内容とはどのようなもでしょうか?以下にまとめました。

・さっきしたことを覚えていない
・人、時間、場所がわからない
・判断力が落ちる
・不安になり落ち着かない
・妄想、幻覚がみえる
・徘徊をする

参照:厚生労働省 政策レポート「認知症を理解する」(平成29年4月15日アクセス)

認知症の疑いや認知機能の低下を早期に発見することができるスクリーニングテストについて知りたい方は、ぜひこちらの記事もご一読ください。
▶︎長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは|MMSEとの違い・評価方法・診断基準

認知症の症状とは

認知症の症状には、中核症状と周辺症状(行動・心理状態)といわれる症状があります。

中核症状とは

中核症状は、主に事象が覚えられないなどの記憶障害が起こります。その他にも筋道を立てた思考ができなくなる「判断力の低下」、時間や場所など自分が置かれている状況を正しく認識できなくなる「見当識障害」なども起こります。

周辺症状とは

周辺症状(行動・心理症状またはBPSD)は、中核症状に本人の性格や環境の変化などが加わって起こる症状で、妄想を抱く、幻覚を見る、暴力をふるう、徘徊をするといった症状を指します。また、鬱(うつ)や不安感、無気力といった感情障害が起こるケースもあります。

認知症の対応方法について

では早速、認知症を理解していく方法(対応方法)についてご紹介していきます。
 

言動を観察して認知症を理解しよう!

認知症の方を理解していくためのポイントは、日頃の「行動や反応を観察」していくことです!暴力や徘徊などの症状が見られる場合には何かきっかけがあるはずです。そのきっかけを見つけていくようにしましょう。以下に推察ポイントを5つ示します。

1)何時頃に
2)どこの場所で
3)誰と接している時
4)どんなことを話している
5)どんな症状が出現したか

これらを踏まえた上で、日頃より記録などしておくと、何時に?どこで?何が原因で?など特徴が見え易くなります。発見したキーワードを用いて症状が誘発されないようにしたり、会話をしながら行動を修正したりすることができます!事前にコミュニケーションを図っていきましょう!

馴染みのあるもので不安を軽減しよう!

デイサービスに行くなどの環境の変化は、その環境に慣れるまで妄想を抱いたり、幻覚を見る、暴力をふるう、徘徊をするといった症状が出現しやすくなります。その為、認知症の方の馴染みのある物を準備したり、知り合いが近くにいる環境を作りましょう!

例えば、昔好きだった編み物などの作業活動を提供することで「作業に集中」してもらうことができます。そうなると不安感や混乱を防ぐことができます。また、水やり当番など日々の日課を行って頂くことも「環境や記憶の定着」が図れるため良いでしょう。

レクリエーションを実践しよう!

認知症の方とのレクリエーションでは「ルールをシンプルにする」「馴染みのある作業を選択する」「工程を1つに区切る」など心がけましょう。また、レクリエーションを選択する場合は、大きく以下の4つの分類から選定すると良いでしょう。

1)遊び・ゲームのレクリエーション輪投げやけん玉などの昔なじみの遊びを選択しましょう。
2)クイズ・脳トレのレクリエーション季節にまつわるクイズ、計算問題などを選択しましょう。
3)運動のレクリエーションラジオ体操や道具を使った運動を選択しましょう。
4)歌・音楽のレクリエーション美空ひばりなど昔なじみの歌を歌ったり、音楽を選定しましょう。

運動のレクリエーションを実践しよう!

認知症の方への運動のレクリエーションを実施する場合は、「ラジオ体操」「棒体操」「タオル体操」「ペットボトル体操」といったように、より具体的なテーマを決めて運動を行ってみましょう。

具体的にテーマを決めることで、事前にどんな運動を行うのかイメージしやすく、運動に対する恐怖心や不安も軽減しやすくなります。

1日のスケジュールを張り出したり、同じ内容の運動を定時に開催するなども不安なく運動に取り組める方法の1つです。

認知症の対応のポイントについて

私達スタッフが認知症の症状を理解するだけでなく、対応のポイントを知ることで、症状の維持・予防にも繋がります。

認知症の方は「不安と苛立ち」や「日常生活で疲れやすい」「自己中心的・感情的」などの気持ちをもたれることが多くあります。それぞれの気持ちや場面でどのような対応を行うことが良いのでしょうか?

▼対応方法のポイントについてはこちらをご覧ください。

【関連記事】認知症の対応のコツとは|介護スタッフが知っておきたい基礎知識

認知症のQ&A|軽度認知症の予防

フィンランドのカロリンスカ研究所による「認知症は多くの因子が関係する多因子疾患であり、多因子への介入を同時に行うべきである」という仮説に基づき、フィンガー研究では、軽度認知症と診断された1260名に2年間の認知症予防調査を行いました。

まず介入群(631名)と対照群(629名)をランダムに分け、介入群は、食事指導、運動指導、認知トレーニング、血管リスクの管理の4つの介入が行われ、対照群は一般的な健康アドバイスが行われました。

1)軽い筋力トレーニング週1〜3回の筋力トレーニングとバランストレーニングが行われました。筋力トレーニングは、主な8つの筋肉グループ(膝伸展・屈曲、腹筋、背筋、腹部回旋筋、上部背筋、上肢)に分けて行う。有酸素運動は個人の好みにより、生活に取り入れやすいプログラムを週2〜5回に実施しています(参考:早歩き|週3回1日30分程度など)。
2)食生活の改善動物性脂肪や塩分を減らし、抗酸化物質が多い野菜や魚を積極的に取り神経細胞や血管を守ります。ここではフルーツや野菜、全粒穀物製品や低脂肪乳、肉製品などを消費すること、少なくとも週に2日は魚を消費することが推奨されました。また、糖の摂取を1日50gに制限すること、野菜マーガリンやナタネ油の代わりにバターを使用することなどが指導されました。
3)認知訓練神経衰弱のような記憶力のゲーム週3回10分程度行う
ワーキングメモリー、エピソード記憶、メンタルスピードを含むものを取り入れています。
4)毎日の血圧管理血圧、体重、BMI、臀部・ウエストの周径、身体機能が測定され、生活スタイルの確認、是正が行われました
取り組みをしなかった人に比べ、25%の認知機能改善を認めました。

これらの結果をふまえ、通所介護事業所やデイケア事業所などで行う認知症予防では、個別機能訓練や血圧管理をベースに、認知機能訓練や食事指導なども行えていけるように取り組みたいです。

参照:A 2 year multidomain intervention of diet, exercise, cognitive training, and vascular risk monitoring versus control to prevent cognitive decline in at-risk elderly people (FINGER)

認知症のQ&A|軽度認知症の症状とは

通所介護施設やデイケア事業所では認知症予防に努めることは、介護度の重症化予防に非常に重要な要素となります。

では、軽度認知症の簡単なスクリーニング例をみていきましょう。

1)服装に気を使わなくなった洋服だけでなくお化粧をしているか、髭剃りはしているかなどもチェックしましょう。認知機能低下は周囲への注意が低下することもあります。
2)同じことを何回も繰り返し話すことが増えたポイントは以前と比較してどうかであり、話好きの方であっても前と比較してどうかがポイント
3)小銭の計算が面倒で、大きなお札ばかり使っている財布の中に大量の小銭が溜まっている、レシートをみるとお札しか使っていないなどの症状がある方は要注意です。
4)手の込んだ料理を作らなくなった料理活動はレシピ決めから買い物、調理と様々な複合要素の組み合わせ、手の込んだ料理にはそれなりの手順が必要であり、認知機能が低下するとできなくなってしまう方も多いのです。
5)料理の味付けが変わった軽度認知障害やアルツハイマー病患者において甘味、塩辛味、酸味、苦味を感じづらくなっていることが研究より数多くの論文で報告されています。
6)歩くスピードが遅くなっている歩行スピード低下と認知機能低下の関連性が高いことを早期に予測できる可能性が示唆されています。

参照:Motoric cognitive risk syndrome: multicountry prev

まとめ

今回は、認知症の症状や行動対応方法について基礎的な知識をご紹介しました。

超高齢化がますます増える日本において、必ずといっていいほど認知症の方の対応を行います。認知症を患う方の症状や心理状態を観察して、より良いコミュニケーションやレクリエーションを提供して頂ければ幸いです。

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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