機能訓練とリハビリの違いについて

コラム

介護スタッフの基礎知識

更新日:2022/02/25

機能訓練とリハビリの違いについて理解していますか? 介護現場のスタッフが間違った理解をしていると行政の実地指導や監査でご指摘を受けることになります。そこで今回は、機能訓練とリハビリの定義や基本方針の違い、実施者の違いについてを通所介護と通所リハの視点からご説明します。

機能訓練とリハビリの「定義」の違いについて

機能訓練とリハビリの大きな違いは、「医師の指示」に基づいて訓練を行なう必要があるかという点です。

リハビリテーションは、定められた専門職種が訓練を行うのに対して、機能訓練は、特にスタッフの決まりはなく介護職員であっても機能訓練を行うことができます。また法律的な違いはなく、医療現場や介護現場の使うシーンで言葉が分かれていると理解しておくと良いでしょう。

リハビリテーションの定義について

リハビリテーションとは、医師の指示に基づき理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ専門職種が「身体機能の維持・回復」を目的に提供する訓練のこと。

機能訓練の定義について

機能訓練とは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、 看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師などの機能訓練指導員が「減退防止」を目的に提供する訓練のこと。
 

参照:厚生労働省「リハビリテーションと機能訓練の機能分化と その在り方に関する調査研究」(2016年3月)

機能訓練とリハビリの「基本方針」の違いについて

続いて、機能訓練とリハビリの違いについては、「通所介護」と「通所リハビリ」の基本方針の違いをご紹介します。

基本方針による機能訓練とリハビリの違いを考えてみると、機能訓練の提供は「通所リハビリ>通所介護」となり、コミュニティ(社会的孤独感の解消)の提供は「通所リハビリ<通所介護」といったように若干の違いがあるのではないでしょうか。

通所リハビリにおける基本方針について

要介護状態になった場合において、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ、自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行うことにより、利用者の心身の機能の維持・回復を図るものでなければならない。(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第110条より)

通所介護における基本方針について

要介護状態になった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう生活機能の維持又は向上を目指し、必要な日常生活の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持並びに利用者家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければならない。
(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第92条より)

機能訓練とリハビリの「対象」の違いについて

機能訓練とリハビリの「対象」の違いを考えてみても、大きな違いは、通所リハビリでは「医師の指示」に基づいて訓練を行なう必要があるという点だと言えます。 

通所リハビリの対象者について

居宅要介護者
○主治の医師がその治療の必要の程度につき、厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。
(介護保険法第8条第8項より)
○病状が安定期にあり、施設において、心身の機能の維持回復及び日常生活上の自立を図るために、診療に基づき実施される計画的な医学的管理の下における理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを要することとする。
(厚生労働省令 施行規則第11条より)

通所介護の対象者について

居宅要介護者
(介護保険法第8条第7項より)

参照:厚生労働省「リハビリテーションと機能訓練の機能分化と その在り方に関する調査研究」(2016年3月)

機能訓練とリハビリの「実施者」の違いについて

実施者における通所介護と通所リハビリの違いは、通所リハビリでは、リハビリテーションの専門職種である理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がリハビリを提供します。一方、通所介護では、看護師や准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師など実施者の範囲が広くなっていることがわかります。

通所リハビリの実施者について

通所リハビリは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚療法士が実施します。

  • 理学療法とは、身体に障害のある者に対して、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう。(理学療法士・作業療法士法第2条より)
  • 作業療法とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行わせることをいう。(理学療法士・作業療法士法第2条より)
  • 言語聴覚療法とは、音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある者についてその機能の維持向上を図るため、言語訓練その他の訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行う。(言語聴覚士法より)

通所介護の実施者について

通所介護は、機能訓練指導員が実施します。

  • 機能訓練指導員とは日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者で理学療法士作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師の資格を有する者であれば機能訓練指導員として「機能訓練」を実施することが可能です。
    (指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準第93条第6項より)
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まとめ

機能訓練とリハビリの定義の違いはお分かりいただけましたか。

機能訓練とリハビリの違いをまとめると、どちらも患者様や高齢者一人ひとりの能力に合わせて運動や体操、生活機能訓練を提供しますが、機能訓練はおもにデイサービスなどの介護保険サービスの中で活用される用語で、医師の指示に基づくという前提条件はありません。定められた職種の人たちが中心となることで介護職員も機能訓練を実施することができます。

一方で、リハビリは、おもに医療保険サービスなど病院で活用される用語で、医師の指示を基盤として理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が訓練を提供します。

近年では、介護業界の中でも「生活リハビリ」という考え方が流行しており、機能訓練とリハビリの言葉の違いが曖昧になっているように思えます。行政指導として行われる実地指導で直接的にこの言葉の違いを問われることはありませんが、介護保険サービスを運営する上では、正しい知識をつけておきましょう!

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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