よくわかる!ADL維持等加算(通所介護)まとめ【2021年介護報酬改定・算定要件】
介護保険法
2022/03/29
介護保険法
口腔機能向上加算
更新日:2022/02/21
口腔機能向上加算とは、デイサービスやデイケアの事業所において、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)、食事摂取などの口腔機能の低下が認められる、または口腔機能が低下する恐れがある方を対象に、個別で指導を行った場合に取得できる加算です。今回は、これから初めて口腔機能向上加算を算定しようと考えている方向けに、口腔機能向上加算の算定要件や口腔機能改善管理指導計画・実施記録(様式例)、訓練内容などについてわかりやすく紹介します。
この記事の目次
口腔機能向上加算とは、「口腔清潔」「唾液分泌」「咀嚼(そしゃく)」「嚥下(えんげ)」「食事摂取」などの口腔機能の低下が認められる状態、または口腔機能が低下する恐れがあるご利用者に対し、口腔機能改善管理指導計画を作成、個別での指導を行った場合に取得できる加算のことです。
口腔機能向上加算は、通所介護(デイサービス)・介護予防通所介護(総合事業)・通所リハビリテーション(デイケア)などで算定できます。
高齢者の口腔機能を保ち、誤嚥や肺炎などのリスクを減らすことが口腔機能向上加算の目的です。実際に、口腔機能向上加算の機能訓練として行う口腔ケアの目的や効果、口腔体操についても理解しておきましょう。
口腔機能向上加算を算定すると、1回あたり「150単位」となっています。この加算は、要支援・要介護の方の算定が可能です。
※ただし、要支援・要介護によって算定できる回数に制限がありますので、注意しましょう。
要支援者(要支援1・2)・事業対象者の場合 | 要介護者の場合(要介護1〜5) | |
単位数 | 150単位 | 150単位 |
加算回数 | 1回/月 | 2回/月 |
厚労省によると口腔機能向上加算のサービス提供をする場合は、以下の算定要件を満たすことが必要になるといわれています。
イ)利用者ごとの口腔機能を、利用開始時に把握すること。
ロ)利用開始時に、言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員が中心となって、利用者ごとの口腔衛生、摂食・嚥下機能に関する解決すべき課題の把握を行い、言語聴覚士、歯科衛生士、 看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種の者が共同して取り組むべき事項等を記載した口腔機能改善管理指導計画 を作成すること。作成した口腔機能改善管理指導計画については、口腔機能向上サービスの対象となる利用者又はその家族に説明し、その同意を得ること。なお、通所介護においては、口腔機能改善管理指導計画に相当する内容を通所介護計画の中に記載する場合は、その記載をもって口腔機能改善管理指導計画の作成に代えることができるものとすること。
ハ)口腔機能改善管理指導計画に基づき、言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員等が利用者ごとに口腔機能向上サービスを提供すること。その際、口腔機能改善管理指導計画に実施上の問題点があれば直ちに当該計画を修正すること。
ニ)利用者の口腔機能の状態に応じて、定期的に、利用者の生活機能の状況を検討し、概ね三月ごとに口腔機能の状態の評価を行い、その結果について、当該利用者を担当する介護支援専門員や主治の医師、主治の歯科医師に対して情報提供すること。
ホ)指定居宅サービス基準第百五条において準用する第十九条に規定するサービスの提供の記録において利用者ごとの口腔機能改善管理指導計画に従い言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員が利用者の口腔機能を定期的に記録する場合は、当該記録とは別に口腔機能向上加算の算定のために利用者の口腔機能を定期的に記録する必要はないものとすること。
■口腔機能向上加算の人員基準
「言語聴覚士」「歯科衛生士」または「看護職員(看護師・准看護師)」の有資格者を1名以上配置しておく必要があります。
ほとんどの場合、通所介護(デイサービス)では、看護師を配置することで口腔機能向上加算を算定しています。
■口腔機能向上加算の計画書
口腔機能向上加算を算定する場合、3ヶ月に1度以上、「口腔機能改善管理指導計画」または「通所介護計画書」にその目的やプログラム内容などの変更を記載する必要があります。さらに、概ね3ヶ月ごとの評価の結果、継続的にサービス提供を行うことにより、口腔機能の向上または機能維持の効果が期待できると認められるものについては、継続的に口腔機能向上サービスを提供することが可能となります。
口腔機能向上加算を算定する場合は、算定できる対象者(高齢者)を選定する必要があります。
デイサービスなどの事業所内で、評価・アセスメントすることは大切ですが、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャーのケアマネジメントを経て、ケアプラン上も必要性を明記して、利用者も納得した上で算定を開始できます。
1)認定調査票の「嚥下」「食事摂取」「口腔清潔」について見守りや介助が必要な方2)基本チェックリスト(13)(14)(15)の項目のうち、2項目以上に該当・固いものが食べにくくなりましたか?・お茶や汁物等でむせることがありますか?・口の渇きが気になりますか?3)口腔機能が低下または低下するおそれがある |
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口腔機能向上加算を算定する上では、言語聴覚士や歯科衛生士、看護職員らとデイサービスに勤務する職員が共同して利用者ごとに「課題把握・アセスメント・モニタリング・評価」を行い「口腔機能改善管理指導計画」を作成し、それに従って口腔機能向上サービスを行い、利用者の口腔機能を定期的に記録することが必要となります。
※ちなみにデイサービスの場合は、「口腔機能改善管理指導計画」に相当する内容を「通所介護計画書」の中に記載する場合は、その記載をもって口腔機能改善管理指導計画の作成に代えることが可能です。
口腔機能向上加算を算定していく場合、口腔機能向上サービスに関する手順(利用開始時における課題の把握、専門職種による解決すべき課題の確認・把握(アセスメント)、口腔機能改善管理指導計画、モニタリング等)をあらかじめ把握し、定める必要があります。
口腔機能向上サービスに関する課題把握・アセスメント・モニタリング・評価の様式には、厚生労働省が推奨している様式例を参考にしましょう。
参照:口腔機能向上加算等に関する事務処理手順例及び様式例の提示について (平成18年3月31日老老発第0331008号厚生労働省老健局老人保健課長 通知)(抄)
次に口腔機能改善管理指導計画と実施記録を記載について解説します。
具体的には、関連職種が利用開始時に把握した高齢者の課題の内容を確認し、利用者の口腔衛生に関して解決すべき課題(口腔内の清掃、有床義歯の清掃等)、摂食・嚥下機能に関して解決すべき課題及びその他の課題等、これらの課題に対して口腔機能向上加算として取り組むべき事項等を記載した口腔機能改善管理指導計画原案を作成していきます。
参照:口腔機能向上加算等に関する事務処理手順例及び様式例の提示について (平成18年3月31日老老発第0331008号厚生労働省老健局老人保健課長 通知)(抄)
※ちなみに、口腔機能改善管理指導計画の書式については、日本歯科衛生士会の計画も非常に参考になります。
参照:【公益社団法人日本歯科衛生士会による口腔機能改善管理指導計画】口腔機能改善管理指導計画の事例
口腔機能改善管理指導計画を作成したあとは、利用者またはその家族に説明して、口腔機能向上サービスの提供に関する説明と同意を得ます。
医師または歯科医師は、サービス担当者への指示・指導が必要な場合、口腔機能改善管理指導計画の実施に当たり、その計画内容、利用者またはその家族の同意等を確認します。(医行為や特別なリスクがないサービス提供に当たっては、医師の指示が必要な訳ではありません。ケアマネージャー・ケアプランを通して医師・歯科医師の意見を踏まえる必要はあります。)
口腔機能向上加算の注意点として、厚労省から指摘されている算定できない場合となる要件についてご紹介します。
利用者の口腔の状態によっては、医療における対応を要する場合も想定されることから、必要に応じて、介護支援専門員を通して主治医又は主治の歯科医師への情報提供、受診勧奨などの適切な措置を講じることとする。なお、歯科医療を受診している場合であって、次の(イ)又は(ロ)のいずれかに該当する場合にあっては、加算は算定できない。
イ)医療保険において歯科診療報酬点数表に掲げる摂食機能療法を算定している場合
ロ)医療保険において歯科診療報酬点数表に掲げる摂食機能療法を算定していない場合であって、介護保険の口腔機能向上サービスとして「摂食・嚥下機能に関する訓練の指導若しくは実施」を行っていない場合。
口腔機能向上加算について厚生労働省のQ&Aでは、医師の指示の必要性と、口腔機能向上サービスに関わる職員の雇用形態が派遣や業務委託でも算定可能かについて掲載されていました。
(問35)言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員が介護予防通所介護(通所介護)の口腔機能向上サービスを提供するに当たっては、医師又は歯科医師の指示は不要なのか。
(各資格者は、診療の補助行為を行う場合には医師又は歯科医師の指示の下に業務を行うこととされている。)
(答) 介護予防通所介護(通所介護)で提供する口腔機能向上サービスについては、ケアマネジメントにおける主治の医師又は主治の歯科医師からの意見も踏まえつつ、口腔清掃の指導や実施、摂食・嚥下機能の訓練の指導や実施を適切に実施する必要がある。
(問36)言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員の行う業務について、委託した場合についても加算を算定することは可能か。また、労働者派遣法に基づく派遣された職員ではどうか。
(答) 口腔機能向上サービスを適切に実施する観点から、介護予防通所介護・通所リハビリテーション事業者に雇用された言語聴覚士、歯科衛生士又は看護職員(労働者派遣法に基づく紹介予定派遣により派遣されたこれらの職種の者を含む。)が行うものであり、御指摘のこれらの職種の者の業務を委託することは認められない。(なお、居宅サービスの通所介護・通所リハビリテーションにおける口腔機能向上加算についても同様の取扱いである。)
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今回は、デイサービスやデイケアでこれから初めて口腔機能向上加算を算定しようと考えている方向けに、口腔機能向上加算の算定要件や口腔機能改善管理指導計画・実施記録(様式例)、訓練内容などについてご紹介しました。
口腔機能向上加算は、デイサービスに勤務する職員が口腔機能向上サービスを適切に実施することで算定できる加算となります。
平成30年度の介護報酬改定では、通所介護は全体的には微増改定とはなりましたが、実質的にはプラス改定とは言い難い内容となりました。そのような中で、安定した介護報酬を獲得するためには、今回ご紹介した「口腔機能向上加算」や「個別機能訓練加算」さらに、平成27年度に新たに新設された「認知症加算」と「中重度ケア体制加算」などを算定していくことが重要になります。
また、介護予防通所介護(日常生活総合事業通所型サービス)では、「運動器機能向上加算」や「栄養改善加算」と合わせて算定し、要件を満たすと「選択的サービス複数実施加算」が算定できます。
今回の記事を参考に、皆さまの事業所が選ばれるデイサービスになっていただければ幸いです。
2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。
このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?
その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。
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