高齢者の転倒予防体操まとめ【全18種】

機能訓練

下肢

更新日:2022/02/18

高齢者に向けた転倒予防体操としてどのような体操・運動を提案していますか?高齢者の転倒の原因は、筋力の低下やバランス機能の低下などさまざまな報告がされており、一概に筋力やバランスだけを鍛えても転倒の予防はできません。そこで今回では、高齢者の転倒予防として、ストレッチ体操、耐久性体操、筋力体操、ステップ・バランス体操のいくつかの要素を含んだ体操・運動方法をリハビリの専門家がご紹介します。

高齢者に効果的な転倒予防体操とは

高齢者の転倒予防体操|効果的な体操まとめ【全18種】

高齢者の転倒予防に効果的な体操は、集団や個別での「運動」とされています。その中でも高齢者に効果的な体操方法は「複合要素」を含む運動プログラムです!おそらく地域の健康教室やデイサービスで多く取り組まれているのではないでしょうか?

転倒予防のための複合要素の運動プログラムには、筋トレ、バランス、ストレッチ、持久力、ステップ、歩行、二重課題などがあります。高齢者の場合、特定の疾患などの影響により運動の効果に違いはありますが、この「複数の運動プログラム」を実施していくことが転倒予防に非常に重要です。

例えば、デイサービスで転倒予防体操に取り組む場合、日によって「ストレッチ」や「筋トレ」「バランス」など体操の種目を変更することで、より転倒予防に効果的な体操を行うことができます。高齢者の転倒の原因などの基礎知識を押さえておくこともおすすめです。

転倒予防体操の種類について

高齢者の転倒予防体操|効果的な体操まとめ【全18種】

高齢者向けの転倒予防体操には、筋トレ、バランス、ストレッチ、持久力、ステップ、歩行、二重課題などがあります。


【転倒予防体操の種類】

  1. 筋トレ体操
  2. バランス体操
  3. ストレッチ体操
  4. 持久力体操
  5. ステップ歩行
  6. 二重課題 

転倒予防体操を行う順番について

転倒予防体操を行う場合は、まずは椅子に座ってできる「ストレッチ体操」からしていきましょう。高齢者の中で歩行が安定している方や運動習慣がある方には立ってできる「持久力体操」→「筋トレ体操」→「ステップ体操」→「バランス体操」と段階的に取り組んで行くことをおすすめします。

転倒の原因は一人ひとりによって異なります。そのため、転倒予防に取り組む最初のステップとしては、利用者の転倒の危険性を判断するための転倒予防に必要なバランス評価を行い、転倒の要因を発見することをおすすめします。
 

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転倒予防の体操方法【ストレッチ編】

ではここからは、高齢者向けの転倒予防の体操方法をご紹介していきます。

転倒予防の体操を始める場合は、まず最初に準備運動として「ストレッチ」から始めましょう。

足首のストレッチ体操

高齢者の転倒予防体操|効果的な体操まとめ【全18種】


転倒予防体操として座ってできる足首のストレッチをご紹介します。足首や足の指は、歩行時の前方への推進力や安定性に関与します。特に、足の指の変形のあるご高齢者に対して足の指の柔軟性を高めることで床をしっかりと捉える足を作ることができます。転倒予防体操の中でも準備運動として取り組んでおきましょう!

【目標回数】
10回×3セットを目安に行いましょう。

股関節のストレッチ体操

高齢者の転倒予防体操|効果的な体操まとめ【全18種】


次に、椅子に座ってできる鼠径部(腸腰筋)のストレッチをご紹介します。腸腰筋は上半身と下半身を繋ぐ筋肉で、足の振り出しやつまずきなどと関与している筋肉の1つです。ご高齢者においては、椅子に座る時間が長くなるためこの腸腰筋の柔軟性が低下しやすくなります。高齢者の転倒予防体操として必ず取り組んでおきたいストレッチです。

【目標時間】
30秒×3セットを目安に行いましょう。

首のストレッチ体操

高齢者の転倒予防体操|効果的な体操まとめ【全18種】


こちらの首のストレッチは、実は転倒予防にも関与する部位です。人が立った姿勢でバランスを保つ場合、眼球の運動や頭の位置が重要になります。高齢者になると、肩こりや首こりの影響で首がスムーズに動かしにくくなります。そのため、転倒予防体操として首周囲のストレッチも取り組んでおくようにしましょう!

【目標回数】
左右回し10回×2セットを目安に取り組みましょう。

転倒予防の体操方法【筋トレ編】

ストレッチが終わったら、次に筋トレをしていきましょう。筋トレの体操方法として、持久力と各部位の筋力トレーニングの方法をご紹介していきます。

下半身の持久力体操

高齢者の転倒予防体操|効果的な体操まとめ【全18種】


こちらの体操は、持久力を鍛える足踏み体操です。体力が落ちるとつまずきなど転倒をしてしまう可能性が高くなります。そのため、持久力も転倒予防体操の中に盛り込んでおきましょう!

ところで、歩数と介護度の関係性の論文を調べてみると、1日に「7,000〜8,000歩以上」歩くことが望ましいとされています。また、厚生労働省健康日本21によると、「一万歩」を目標歩数として推奨されています。1日平均歩数の基準値は男性8,202歩、女性7,282歩(平成9年度国民栄養調査)ですので目安として+1,000歩、つまり1日にプラス10分(約1,000歩)を追加するように運動していきましょう!

【目標回数】
できれば約10分間、または1,000歩を目安に行いましょう。

参照:谷川 貴則 日本理学療法学術大会 抄録集 Vol.40 「健忘型の軽度認知機能障害を有する高齢者の記憶機能と身体活動量の関連」(平成29年7月6日アクセス)

足の指の筋トレ体操

足の指の体操


続いての転倒予防体操は、足の指の筋力を鍛えるタオルギャザーと呼ばれる体操です。足の指の体操は、指先の機能を高めることができるので転倒予防には効果的です。また、立った姿勢で足の指の体操を行うことで、さらに姿勢を安定させる効果が高まります。特に前後方向へバランスを崩しやす方にはおすすめです。ただし、バランスが不安定な方は椅子に座って行うようにしてください。

【目標回数】
左右ともに10回×2セットを目安に行いましょう。

ふくらはぎの筋トレ体操

つま先上げ 運動
カーフレイズ かかと上げ


こちらの体操は、ふくらはぎとスネを鍛える転倒予防体操です。スネの位置に付着する前脛骨筋は、歩行中のつまずきを予防する効果が期待できます。また、ふくらはぎに付着する下腿三頭筋は「片足立ち」や「歩行速度」などの運動機能の向上に効果が期待できます。高齢者の転倒予防体操として、またロコモ予防として取り組んでみてはいかがでしょうか。

65歳以上の筋トレでは2〜3回/週を3ヶ月以上継続すると良いとされています。ただし、要介護高齢者の筋力アップは、緩やかで6ヶ月以降に徐々に増加する傾向とされています。焦らず長期的に運動を続けるようにしていきましょう!

【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。
 

太ももの筋トレ体操

スクワット


こちらの転倒予防体操は、膝の角度を45〜60°程度曲げるハーフスクワットと呼ばれる体操です。ハーフスクワットは、筋トレの「BIG3」といわれ、全身の筋肉に効果が期待できる複合運動です。そのため、太ももなどの下半身だけでなく体幹筋にも効果が期待でき、転倒予防としても活用いただけます。ただし、膝や股関節の痛みが伴う方は運動を控えるようにしましょう。

【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。

お尻の筋トレ体操

中殿筋 運動


次の転倒予防体操は、お尻の筋トレです。片足で立つためバランス能力はもちろんのこと、お尻に位置する中臀筋や大腿筋膜張筋を鍛えることができます。お尻の筋肉(中臀筋)は転倒予防に重要な部位として注目されています。是非挑戦してみてください。ただし、バランスに不安がある方は、安定した椅子や壁を支持するようにしましょう。

【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。

転倒予防の体操方法【バランス・ステップ編】

ストレッチ・筋トレが終わったら、次に「ステップ・バランス」の体操をしていきましょう。バランス能力は、転倒予防に非常に重要な要素ですが、難易度も高い体操のため転倒には十分に注意しましょう。

前方へのステップ体操

前方ランジ


続いて、ここからの転倒予防体操は、ステップを行う体操です。

まずこちらは、前方ランジと呼ばれるステップ体操です。主に、太ももやお尻の筋肉を鍛えることができます。転倒予防では、最大筋力のアップとともに筋肉の発生速度を高める運動が有効であると示唆されています。つまり、ステップ運動のよう瞬発的な運動は、ご高齢者の前方方向への転倒を予防する体操として重要になるのです!

【目標回数】
10回×2〜3セットを目安に行いましょう。

参照:大屋友紀子, et al. “地域在住高齢者の易転倒性と膝伸展筋力に関する研究.” 日本老年医学会雑誌 45.3 (2008): 308-314.(平成29年7月6日アクセス)

側方へのステップ体操

サイドランジ


こちらの転倒予防体操は、サイドランジと呼ばれるステップ体操です。サイドランジはバランス能力だけでなく、転倒予防に重要なお尻の筋肉(中殿筋)を効果的に鍛えることができます。左右へバランスを保つためにオススメの体操方法です。

【目標回数】
10回×2〜3セットを目安に行いましょう。

クロスのステップ体操

転倒予防体操


こちらの体操は、クロスステップと呼ばれる転倒予防体操です。クロスステップの反復練習は、姿勢を安定性させる効果が期待できるので転倒予防としてもオススメです。足を交差させる動きは、日常生活の中でも振り向きなどの方向転換として重要です。応用編として取り組んでみてはいかがでしょうか。

【目標回数】
10歩×3セットを目安に行いましょう。

参照:萬井太規、 et al. “クロスステップ反復練習による片脚立位動作時の姿勢安定性への効果.” 理学療法科学 31.4 (2016): 601-607.(平成29年7月6日アクセス)

つま先上げのバランス体操

転倒予防 つま先上げ


続いてここからは、転倒予防体操としてもよく知られているバランス体操のご紹介です。

こちらの体操は、つま先上げを行うことでバランス能力を高めてくれる効果が期待できます。人間は、体がバランスを崩しそうになった場合に、主に股関節と足関節を中心に姿勢を保とうとする機能が働きます。これをリハビリテーションでは「股関節戦略」と「足関節戦略」と呼びます。足関節・股関節を中心にバランス能力を鍛えていきましょう! ただし、後方へバランスを崩しやすくなるので転倒に十分に注意しましょう。

【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。

かかと上げのバランス体操

転倒予防 かかと上げ


こちらの転倒予防体操は、ヒールレイズと呼ばれるかかと上げの体操です。かかと上げを行うことで、ふくらはぎの筋力アップだけでなく、バランス能力を高めてくれる効果が期待できるます。ただし、特に前方へバランスを崩しやすくなるので転倒に注意しましょう。

【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。

前方・側方リーチのバランス体操

バランス練習 リーチ運動
バランス練習 リーチ運動


こちらの体操は、前方または側方へ手を伸ばすバランス体操です。手は床と水平に保つように意識して、できる限り遠くまで手を伸ばします。リハビリテーションでは内乱運動と呼ばれ、バランス能力を高める効果が期待できるので転倒予防体操としても活用できます。ただし、バランスに不安がある方は、壁や手すりの近くで運動を行うようにしましょう。

【目標回数】
10回×2〜3セットを目安に行いましょう。

片足たちのバランス体操

片足立ち練習


こちらの体操は、バランス能力を鍛える片脚立ちです。片足立ち(片脚立位)は、60歳以上で70秒、80歳以上で10秒が平均値とされています。特に、開眼で片足立ちが20秒以下の方、閉眼で片足立ちが5秒以下の方は転倒の危険性が高くなると言われています。これらを目標に転倒予防体操として取り組んでいきましょう!

【目標時間】
20秒〜60秒を目指しましょう。
 

つな渡りのバランス体操

バランス体操 タンデム歩行


こちらの体操は、タンデム歩行と呼ばれるバランス体操です。タンデム歩行は、つま先とかかとを付けて、綱を渡るように10歩ほど歩く転倒予防体操です。また、以下の歩数でバランスを崩す方はバランス能力が低下していると判断されます。

  • 7~9歩:軽度のバランス障害
  • 4~7歩:中等度のバランス障害
  • 3歩以下:重度のバランス障害

タンデム歩行は、一般の方でもバランスを崩しやすいトレーニングです。転倒に十分注意しながら取り組みましょう。

【目標回数】
10歩×2〜3セットを目安に行いましょう。

まとめ

今回は、転倒予防に対する体操・運動方法についてリハビリの専門家が18種類をまとめてご紹介しました。

今回ご紹介した方法については、一部の方法となりますが転倒予防には非常に重要な運動方法になります。介護施設事業者のみなさんなどは参考になると思いますので、是非活用していただけたらと思います。

高齢者の介護予防に取り組んだり、生活を豊かにする活動は、デイサービスにおいては個別機能訓練加算として算定することが認められています。

個別機能訓練加算は、ご高齢者の身体や生活を応援する加算です。デイサービスでお勤めの方は、ただ体操するのではなく「高齢者に最適なリハビリ」の提供ができないか検討してみてはいかがでしょうか。

ICTの利活用でサービスの質と業務効率を同時に高める

2024年の医療介護同時改定では、団塊世代の高齢化を見据え、自立支援を中心とした科学的介護の実現、そしてアウトカムベースの報酬改定に向けて変化しようとしています。

このような時流だからこそ、より一層利用者さまの自立支援に向けた取り組みが重要になります。しかし、個別機能訓練加算をはじめとした自立支援系の加算やLIFE関連加算の算定は、売上アップも見込めるとはいえ、リハビリ専門職の不在や現場負担の問題で取り組みが難しいと考える事業所も多いのではないでしょうか?

その解決策の1つが「介護現場におけるICTの利用」です。業務効率化の意味合いが強い昨今ですが、厚生労働省の定義では「業務効率化」「サービスの質向上」「利用者の満足度向上」の達成が目的であるとされています。

業務効率化だけでなく、利用者一人ひとりの生活機能の課題を解決する『デイサービス向け「介護リハビリ支援ソフト」』を検討してみませんか?

この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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