栄養改善加算とは
栄養改善加算とは、低栄養状態またはそのおそれがあるご高齢者に対して、栄養状態の改善を図る相談や管理といったサービスを提供した場合に算定できる加算です。
この加算では、利用者の心身状態の維持または向上を含め、栄養改善の対するサービスを提供します。
栄養改善加算を算定できる事業所とは
栄養改善加算を算定できる介護サービスは、こちらです。
◯デイサービス(通所介護) 通所介護・介護予防通所介護・日常生活支援総合事業通所型サービス ◯デイケア(通所リハビリテーション) |
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栄養改善加算の単位数(点数)について
栄養改善加算の単位数は、要介護、要支援ともに1回につき「150単位」を算定することができます。
※ただし、原則3カ月以内であり、要介護者は月2回、要支援者は月1回までを上限とします。
類似する栄養加算について
栄養改善加算と類似する加算に「栄養スクリーニング加算」があります。栄養スクリーニング加算については、こちらの記事がオススメです!
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栄養改善加算の算定要件について
栄養改善加算を算定するためには、都道府県や指定都市などの指定官庁へ届け出が必須であり、「事業所の算定要件」と「対象者の算定要件」が定められています。
事業所の算定要件
栄養改善加算を取得するための事業所の算定要件は以下の通りです。
◯ 管理栄養士を1名以上配置すること。または、外部(他の介護事業所・医療機関・栄養ケア・ステーション)との連携により管理栄養士を1名以上配置していること。 ※常勤に限らず非常勤でも配置できるが、その場合サービス提供が遂行できる勤務体制を整えること。 ◯ ご利用者ごとの摂食・嚥下機能および食形態にも配慮した栄養ケア計画を作成し、状態を定期的に記録すること。 ◯ 栄養改善サービス提供の手順を実施すること。 ◯ 計画の進歩状況を定期的に評価すること。 ◯ 厚生労働大臣の定める基準を満たした指定通所介護事業所であること。 |
【引用】
対象者の算定要件
栄養改善加算を取得するためには、以下のいずれかに該当するご利用者がいる必要があります。
◯ 過去6か月の間に3%以上、もしくは2、3kg以上の体重の減少が認められる者 ◯ 食事摂取量が不良(75%以下)の者 ◯ 血清アルブミン値が3.5g/dl以下の者 ◯ BMIが18.5未満の者 ◯ そのほか低栄養状態にある、またはそのおそれがあると認められた者 |
また、以下の問題が認められた者に対して、対象者に該当するか確認が必要となります。
◯ 口腔および摂食・嚥下機能 ◯ 生活機能の低下 ◯ 褥瘡に関する事柄 ◯ 食欲の低下 ◯ 閉じこもり ◯ 認知症 ◯ うつ |
▼低栄養状態のご高齢者を「サルコペニア」といいます。サルコペニアについて詳しく知りたい方はこちらの記事がおすすめです。
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栄養改善加算算定に必要な栄養ケア計画書の書式(厚生労働省)
引用:厚生労働省が事務処理手順例・様式例を示している加算等について(引用日 2018.12.11)
栄養改善加算は、算定要件に示したように栄養ケア計画書が必要で、厚生労働省が事務処理手順例・書式様式例を示しています。
栄養改善加算算定にあたり、必ず厚生労働省の提示した書式で栄養ケア計画書を作成することは求めていませんが、栄養改善加算の算定にあたっては手順としてこの様式の項目を満たす必要があります。
栄養改善加算の栄養ケア計画書の項目
栄養ケア計画書の項目としては、利用者の家族の意向、解決すべき課題(ニーズ)、長期目標(ゴール)と期間、短期目標と期間、栄養ケアの具体的内容、担当者、頻度、期間、栄養ケア提供経過記録などが含まれています。
栄養ケア計画書の項目は、次で紹介する栄養改善加算の意義や目的に繋がります。
栄養改善加算の意義・目的について
ご高齢者にとって栄養改善加算はどのような意義・目的があるのでしょうか?
1)楽しみ、生きがいと社会参加の支援 要介護のご高齢者にとって食べることは、日常生活での「楽しみ」を担っています。また、要支援者のご高齢者にとっては、友人や家族との外食、買い物や料理などの「社会参加」への意欲が向上する重要な活動です。 2)生活の質(QOL)の向上 食べることは、ご高齢者とそのご家族や友人との「コミュ ニケーション」が楽しめる活動です。また、睡眠と食事は密接な関係性があり、食事のリズムを整えることによって規則的な生体リズムを形成し、体内の消化酵素やホルモンの分泌、神経調節、臓器組織の活性のバランスを保を保つ重要な活動です。 3)低栄養状態の予防 ご高齢者の低栄養状態の改善は、介護予防の観点からは糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病に対する食事療法も重要な活動とされています。 |
栄養マネジメント加算と栄養改善加算の違いについて
栄養マネジメント加算と栄養改善加算の違いについて見ていきましょう。
栄養マネジメント加算 |
栄養改善加算 |
|
---|---|---|
対象事業所 |
○介護老人福祉施設 ○介護老人保健施設 ○介護療養型医療施設 ○地域密着型介護老人福祉施設 |
○デイサービス(通所介護) ○総合事業通所型サービス ○デイケア(通所リハ) |
単位数 |
1日あたり14単位 |
要介護、要支援ともに1回につき 「150単位」を算定 |
栄養改善加算の算定状況について
栄養改善加算の算定している事業所は、どれくらいあるか知っていますか?
独立行政法人 国立健康・栄養研究所(平成25年に実施)の調査によると、栄養改善加算を算定している事業所は必要に少ないことがわかります。
◯ 算定は「9.3%」 ◯ 未算定は「86.0%」 |
◯ 栄養改善サービスが必要と思われる利用者がないためは、「32.6%」 ◯ 必要な専門職が人材不足で配置できないためは、「32.1%」 ◯ ご利用者が希望しないためは、「21.8%」 |
【画像出典】
独立行政法人 国立健康・栄養研究所「通所系介護サービス施設における口腔機能向上サービス及び 栄養改善サービス提供のあり方に関する調査研究事業」平成26(2014)年 3 月
栄養改善加算の見直し(平成30年度の介護報酬改定)
これまでの栄養改善加算の算定状況から、平成30年度(2018年)の介護報酬改定にて栄養改善加算の算定要件の見直しが行われました。
新しい算定要件では、「管理栄養士が1名以上の配置が必要となる要件」から「外部の管理栄養士」でも算定ができるようになりました。
【画像出典】
【参考記事】 平成30年度の介護報酬改定の論点|通所介護の機能訓練に着目して 平成30年度(2018年)の介護報酬改定では、改定率0.54%と若干の引き上げ改定になります。その中でも通所介護では、インセンティブ制度や生活機能向上連携加算、栄養改善加算の見直しなどが行われています。こちらの記事では、平成30年度の介護報酬改定についてポイントを絞ってご紹介します。 |
栄養改善加算のQ&Aについて
ここでは、栄養改善加算について厚生労働省より提示されている「平成30年度介護報酬改定に関するQ&A」からご紹介します。
(問34) 通所サ―ビスにおいて栄養改善加算を算定している者に対して管理栄養士による居宅療養管理指導を行うことは可能か。 |
(答) 管理栄養士による居宅療養管理指導は通院又は通所が困難な者が対象となるため、 栄養改善加算の算定者等、通所サービス利用者に対して当該指導を行うことは想定されない。 ※ 平成18年度報酬改定Q&A(vol.2)(平成18年5月2日) 通所介護・通所リハビリテ ーションの問2は削除する。 |
【引用】
まとめ
今回は、栄養改善加算の算定要件と平成30年度の介護報酬改定で見直しされた要件についてまとめてご紹介しました。
栄養改善加算は、ご高齢者の低栄養状況を早期に発見し、「要支援者が重度の状態になることを防止すること」「要介護者の楽しみや社会参加の促しすること」を目的とした重要な加算です。つまり、低栄養状態の改善および重度化予防を図ることは、ご高齢者の自立支援につながる取り組みとなるのです。
ご高齢者の低栄養状態等の改善に必要なことは多岐にわたります。そのため、栄養の指導だけではなく、多職種に相談できる場を提供する、関連するサービスや社会資源の活用の提案なども取り組んでいただければ幸いです。
【加算・減算・報酬の関連リンク集】
栄養改善加算は、「介護予防通所介護(総合事業における通所介護相当サービス)」の基本報酬に上乗せできる加算になっています。
介護サービスには、栄養改善加算以外にもさまざまな加算・減算があります。最後に関連加算・減算についてご紹介します。(介護予防の対象加算以外も含んでいます)
加算
● 栄養改善加算とは ● 入浴介助加算とは ● 延長加算とは |
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