FIMのセルフケア(食事・整容・清拭・更衣・トイレ動作)の採点・評価とは

現場ノウハウ

評価

更新日:2024/04/15

FIMは日常生活動作(ADL)の介護量を把握する評価方法で、運動項目と認知項目の計18項目で構成されています。本稿では、FIMの評価の中でもセルフケア(食事・整容・清拭・更衣上半身・更衣下半身・トイレ動作)に関する採点方法を解説していきます。

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FIMの評価方法(採点基準)とは

FIMの評価とは、患者様やご利用者様の日常生活動作(ADL)の介護量を把握することができる評価方法です。FIMの評価項目は、運動項目と認知項目の計18項目がありますが、その中でも運動項目の基本的な評価方法(採点基準)は以下の通りです。

【FIMの運動項目の採点基準】

それぞれの項目を1点~7点で評価していきます。
●7点(完全自立)
補助具または介助なしで「自立」して行える。
●6点(修正自立)
時間が掛かる。装具や自助具、服薬が必要。安全性の配慮が必要。
●5点(監視・準備)
監視・準備・指示・促しが必要。
●4点(最小介助)
手で触れる以上の介助は必要ない。「75%以上」は自分で行う。
●3点(中等度介助)
手で触れる以上の介助が必要。「50%〜75%未満」は自分で行う。
●2点(最大介助)
「25%〜50%未満」は自分で行う。
●1点(全介助)
「25%未満」しか自分で行わない。

▶︎FIMを初めて評価する方はこちらの記事がオススメです。

【関連記事】
FIMとは|評価に必要な基礎知識と実践方法(初心者でもわかるFIM総論)

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FIMの運動項目の評価・採点のポイント

ADLの能力を評価する「FIMの評価・採点」を行う場合は、3つのポイントを理解しておくことが重要になります。この3つのポイントを理解した上で、運動項目を採点していきましょう。

【FIMの採点ポイント】

  1. 介助者が必要かどうか
  2. 介助量(手助け)がどの程度必要か
  3. 運動項目の5点は「監視・助言」

FIM項目「食事」の採点方法について

では、FIMのセルフケア項目の中でも「食事」の採点方法について解説していきます。

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食事の評価範囲

 FIMにおける食事の評価は、食事が適切に用意された状態で①適切な食器・道具を使って、②食べ物を口に運ぶ動作から、③咀嚼し、嚥下するまでの3つの工程を評価していきます。
※ただし、配膳・下膳は評価の対象に含みません。

食事の採点ポイント

  1. FIMの項目の中で持ってきてもらう(準備)が対象外なのは、食事だけです!
  2. 4点〜1点を評価する場合は、①食器・道具の使用、②口に運ぶ、③飲み込むの3つの工程をそれぞれ「33%」と判断し、3項目中○項目が自分でできているかを介助量(○%)として評価しましょう!

食事の採点基準

●7点(完全自立)

  • 全ての食事形態の食べ物をお皿から口まで運び、咀嚼して嚥下できる。

●6点(修正自立)

  • 食事に時間が掛かる。
  • 自助食器や自助具を使用する。
  • 部分的に非経管栄養に頼るが、自分で準備、片付けができる。
  • きざみ食や嚥下食など食事形態で安全面の工夫をしている。

●5点(監視・準備)

  • 配膳後に肉を切る、ふたを開けるなど準備が必要。
  • 食べこぼしや誤嚥しないように監視が必要。
  • 万能カフなど自助具を装着してもらう必要がある。

●4点(最小介助)

  • 食事動作の「75%以上」を自分で行う。
  • 口の中に食べ物が詰まっていないか、手で軽く触れる程度の介助を行う。

●3点(中等度介助)

  • 食事動作の「50%〜75%未満」を自分で行う。
  • 自助具とつけ、スプーンに食べ物を乗せると後は自分で食べれる。

●2点(最大介助)

  • 食事動作の「25%〜50%未満」を自分で行う。
  • ・食べ物をスプーンで口元まで運ぶまで介助が必要だが、飲み込みは自分でできる。

●1点(全介助)

  • 食事介助の「25%未満」しか行えない。

食事の採点事例

▶︎事例1
スプーンで自立しているが、箸は使用していない。

  • 採点:7点
  • 解説:FIMは国際比較なので箸を使用していなくてもスプーンが使用できれば減点しません。

▶︎事例2
配膳前に食べ物をきざんでもらってある。後は誰もいなくでも自分で食べれる。

  • 採点:6点
  • 解説:配膳前の工夫なので「準備」には該当しない。飲み込みがしやすいように「安全面の工夫」をした状態と判断される。

▶︎事例3
咀嚼や嚥下はできるが、全くご飯を食べず、経管栄養である。

  • 採点:1点
  • 解説:FIMは「しているADL」を採点するため、できる能力があっても普段している食事が経管栄養であれば全介助となる。

FIM項目「整容」の採点方法について

次に、FIMのセルフケア項目の中でも「整容」の採点方法について解説していきます。

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整容の評価範囲

 FIMにおける整容の評価は、①口腔ケア、②整髪、③手洗い、④洗顔、⑤髭剃り、または化粧の5つの項目を評価していきます。

整容の採点ポイント

  1. FIMの整容は、あくまで上記の5つの項目で評価する。爪切りや着替え、清拭、入浴などの項目は整容に含めないように注意しましょう!
  2. 髭剃りと化粧が必要ない場合は、その他の4項目で評価します!

整容の採点基準

●7点(完全自立)

  • 5つの項目が全て自分でできる。

●6点(修正自立)

  • 食事に時間が掛かる。
  • 自助具を使用しているが準備や装着は自分でできる。

●5点(監視・準備)

  • 整容動作の準備や監視・助言を要す。
  • 歯磨き粉やタオルを準備してもらう。
  • 自助具を装着してもらう。
  • 後ろ髪の乱れの指摘が必要。

●4点(最小介助)

  • 整容動作の「75%以上」を自分で行う。
  • 整容の4/5項目は自分でできる。
  • 入れ歯を自分で磨けるが洗浄液につけてもらう必要がある。

●3点(中等度介助)

  • 整容動作の「50%〜75%未満」を自分で行う。
  • 整容の3/5項目は自分でできる。
  • 麻痺側の歯を磨いてもらう必要がある。

●2点(最大介助)

  • 整容動作の「25%〜50%未満」を自分で行う。
  • 整容の2/5項目は自分でできる。
  • 前歯のみ磨けるが、その他には介助が必要。

●1点(全介助)

  • 整容動作の「25%未満」しか行えない。
  • 整容の1〜0/5項目しかできない。
  • 全て介助が必要。

整容の採点事例

▶︎事例1
髭剃りはしない。介助でも髭剃りをしてもらうことはない。他の整容動作は、自助具なしで自分で行なっている。 

  • 採点:7点
  • 解説:髭剃りまたは化粧は、普段行わない場合はその項目を除いて評価して良い。

FIM項目「清拭(入浴)」の採点方法について

次に、FIMのセルフケア項目の中でも「清拭」の採点方法について解説していきます。

清拭(入浴)の評価範囲

 FIMにおける清拭の評価は、身体を①胸部、②右上肢、③左上肢、④腹部、⑤右大腿部、⑥左大腿部、⑦右下腿部、⑧左下腿部、⑨陰部、⑩お尻」の10箇所に別けて、身体を洗う、すすぐ、乾かす(拭く)で評価します。

清拭(入浴)採点ポイント

  1. FIMの清拭は、あくまで上記の10箇所を採点し、頭と背中は採点に含みません!
  2. 清拭はしている方法で評価するため、浴槽、シャワー、ベッド上、スポンジのいずれでも良いとすることを覚えておきましょう!
  3. 洗う、すすぐ、乾かす(拭く)では、洗うの採点の比重が重たいと理解しておきましょう!
  4. 足先を洗っていない場合でも介助をしていないのであれば減点はされません。

清拭(入浴)の採点基準

●7点(完全自立)

  • 身体の10箇所を洗う、すすぐ、乾かす(拭く)ことが自分でできる。


●6点(修正自立)

  • 通常の3倍以上の時間がかかる。
  • 柄付きブラシなどの自助具を使用すれば自立している。
  • 滑り止めマットなど安全性の配慮が必要。

●5点(監視・準備)

  • 清拭動作の準備や監視・助言を要す。
  • 温度の調整をしてもらう。
  • 洗剤をタオルにつけてもらう。
  • タオルを絞ってもらう。

●4点(最小介助)

  • 清拭動作の「75%以上」を自分で行う。
  • 10箇所のうち8/10項目以上は自分でできる。

●3点(中等度介助)

  • 清拭動作の「50%〜75%未満」を自分で行う。
  • 10箇所のうち5〜7/10項目は自分でできる。

●2点(最大介助)

  • 清拭動作の「25%〜50%未満」を自分で行う。
  • 10箇所のうち3〜4/10項目は自分でできる。

●1点(全介助)

  • 清拭動作の「25%未満」しか行えない。
  • 清拭の0〜2/10項目しかできない。
  • 全て介助が必要。

清拭(入浴)の採点事例

▶︎事例1
右下腿と臀部を洗ってもらうが、他は自分で洗っている。 

  • 採点:4点
  • 解説:8/10箇所は、自分で洗っているので80%自立と判断する。

FIM項目「更衣(上半身)」の採点方法について

次に、FIMのセルフケア項目の中でも「更衣」の評価項目は、「上半身」と「下半身」の2つに分けて評価します。

更衣(上半身・下半身)の評価範囲

 FIMにおける更衣の評価範囲は、衣類を「①脱ぐ」「②着る」を評価します。タンスから衣服を取り出す、片付ける行為は、準備に含まれます。

更衣(上半身)の採点ポイント

  1. 上半身の更衣は、衣服を「①かぶる」「②片袖を通す」「③もう一方の袖を通す」「④衣服を引きおろす」の4つの動作のうちどれくらい自分でできるか評価すると採点しやすい。
  2. 上肢装具の着脱も更衣の評価対象となる。
    例)ジッパー、ブラジャーの金具、弾性ストッキングも装具と同様です。
  3. 装具は、主な更衣動作ではないので介助で装着しても5点までしか下がらない。
    ※入浴前後の更衣は、特殊な状態なので評価対象外となることに注意しましょう!

更衣(上半身)の採点基準

●7点(完全自立)

  • 衣服をかぶる、両腕の袖を通す、衣服を引きおろすことが自立して可能。
  • ジッパーやボタンの着脱も自分でできる。

●6点(修正自立)

  • 通常の3倍以上の時間がかかる。
  • 自助具を使用して上半身の更衣が自立している。
    例)マジックハンド、ソックスエイド、ボタンエイド

●5点(監視・準備)

  • 背中の衣類がめくれていないか随時声かけ監視を要す。
  • タンスから衣類を取り出して貰えば、あとは自分で着替えができる。

●4点(最小介助)

  • 上半身の更衣の「75%以上」を自分で行う。
  • 4つの動作のうち3/4項目以上は自分でできる。

●3点(中等度介助)

  • 上半身の更衣の「50%〜75%未満」を自分で行う。
  • 4つの動作のうち2/4項目は自分でできる。

●2点(最大介助)

  • 上半身の更衣の「25%〜50%未満」を自分で行う。
  • 4つの動作のうち1/4項目は自分でできる。

●1点(全介助)

  • 上半身の更衣の全て介助が必要。

更衣(上半身)の採点事例

▶︎事例1
マジックテープなどの改良した衣類を活用すれば自分で着替えることができる

  • 採点:6点
  • 解説:改良した衣服は自助具と同様の評価となるため

▶︎事例2
ブラウスやシャツのボタンのみ介助が必要だが、あとは自分で着替えることができる

  • 採点:4点
  • 解説:わずかな介助のみで、75%以上は自分でできるため

▶︎事例3
上半身の着替えのうち両腕を通してもらうのに介助が必要となる

  • 採点:3点
  • 解説:4つの動作のうち2項目(50%)は自分でできるため

FIM項目「更衣(下半身)」の採点方法について

次に、下半身の更衣の評価範囲は、上半身と同様になります。

更衣(下半身)の採点ポイント

  1. 下半身の更衣は、衣類がズボン、下着、靴下(ストッキング)、靴に変わっただけで採点方法は上半身と同様になる。
  2. 下肢装具が必要な方は、装具の着脱も下半身の更衣の評価対象となる。
    弾性ストッキングも装具と同様です。
  3. 装具は、主な更衣動作ではないので介助で装着しても5点までしか下がらない。

更衣(下半身)の採点基準

※上半身と同様

更衣(下半身)の採点事例

▶︎事例1
ズボンをタンスから取り出して、貰えば自分で着替えることができる

  • 採点:5点
  • 解説:服を取り出す、しまうは準備となるため

▶︎事例2
ズボン、下着、靴下、靴のうち、靴下のみ介助してもらっているがあとは自分でできる

  • 採点:4点
  • 解説:4つの動作のうち3項目(75%)は自分で行なっているため

▶︎事例3
入浴での着替えは2点だが、朝夕の着替えは見守り5点でできている。

  • 採点:5点
  • 解説:入浴時の更衣は、評価対象外となるため

FIM項目「トイレ動作」の採点方法について

次に、FIM項目の中でも「トイレ動作」の評価について解説します。

トイレ動作の評価範囲

 FIMにおける更衣の評価範囲は、ズボン・下着の「①着脱」「②陰部を清潔にする」までを評価します。尿器を使用してベッド上でしている場合は、ベッド上での動作を評価します。

トイレ動作の採点ポイント

  1. トイレ動作は、「①服を下げる」「②服をあげる」「③お尻などを拭く」の3つの動作のうちどれくらい自分でできるか評価すると採点しやすい。
  2. 介助量が異なる場合は、低い方の点数を採用する。
    例)排尿時と排便時で異なる、日中と夜間で異なる
  3. 生理用品の取り扱いも評価対象となる。

トイレ動作の採点基準

●7点(完全自立)

  • 服を下げる、お尻を拭く、服をあげることが自立して可能。

●6点(修正自立)

  • 通常の3倍以上の時間がかかる。
  • 自助具を使用すればトイレ動作は自分でできている。
    例)手すり、トイレ用アームレストなど

●5点(監視・準備)

  • ズボンの着脱時に安全面の配慮のため見守りが必要となる。
  • トイレットパーパーを取って貰えばあとは自分でできる。

●4点(最小介助)

  • トイレ動作の「75%以上」を自分で行う。
  • ズボンの上げ下げの際に、お尻を支える程度の介助が必要となる。

●3点(中等度介助)

  • トイレ動作の「50%〜75%未満」を自分で行う。
  • 3つの動作のうち2/3項目は自分でできる。

●2点(最大介助)

  • トイレ動作の「25%〜50%未満」を自分で行う。
  • 3つの動作のうち1/3項目は自分でできる。

●1点(全介助)

  • トイレ動作の全て介助が必要。

トイレ動作の採点事例

▶︎事例1
L字手すりを設置すれば、自力でズボンの着脱、清拭ができる

  • 採点:6点
  • 解説:自助具(手すり)を使用しているため

▶︎事例2
ズボンを下げてお尻を拭くことはできるが、ズボンを上げるのに介助が必要となる

  • 採点:3点
  • 解説:2/3の動作「66%」は自分でできているため

▶︎事例3
日中はトイレで3点だが、夜間はオムツを使用し、交換も全て介助で行なっている

  • 採点:1点
  • 解説:低い方の点数を採用するため


▼FIMの評価では、立ち上がりや乗り移りは、「トイレ移乗」の評価対象となります。「トイレ動作」と「トイレ移乗」の評価を間違えないように十分注意しましょう。FIMのトイレ移乗の評価はこちらをご覧ください。

【関連記事】
FIMの点数付けで最低限知っておきたい移乗の採点方法

FIM評価のセルフケアは日常生活動作の基本

FIM評価のセルフケアの各種6項目の採点方法はご理解いただけましたか?

FIMの評価の中でもセルフケアは、日常生活のメインとなる動作です。そのためFIMの評価項目の中でも、まず基本として食事・整容・清拭・更衣・トイレ動作の正しい採点方法を理解しておきましょう!


▼FIMのセルフケアの採点方法を学んだ後は、排泄コントロールの採点方法について確認していきましょう。詳しくは下記の記事をご覧ください。

【関連記事】
FIMで知っておきたい排泄コントロール(排尿・排便)の採点方法【各論】

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→→ 【完全保存版】デイサービスで活用できる評価・測定に関する記事まとめ|随時更新

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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