長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは|MMSEとの違い・評価項目・診断基準

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更新日:2024/04/09

認知症テストで知られる長谷川式認知症スケール(HDS-R)評価方法、点数の付け方、カットオフなどを知っていますか?HDS-Rは、年齢、見当識、記憶、計算、逆唱、語想起などの評価項目を質問する認知症テストです。ここでは、日本の医療・介護現場で幅広く活用されている長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価方法、MMSEとの違いなどをご紹介します。  

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長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは

長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは

HDS-R((長谷川式簡易知能評価スケール)とは、認知症の疑いや認知機能の低下を早期に発見することができるスクリーニングテストです。

1974年に長谷川氏が開発し、1991年に「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」として質問項目と採点基準等を改訂、現在の評価項目となりました。

以前は認知症のことを痴呆症と呼んでいましたが、認知症という言葉に統一したことに伴い、現在は「長谷川式認知症スケール」という名称となり、日本では「長谷川式」や「エイチディーエスアール(hds-r)」と呼ばれていることが多いようです。

※文献等では現在も長谷川式簡易知能スケールという名称が使用されているため、記事上も混在しています。

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長谷川式認知症スケール(HDS-R)の検査の特徴

  • 所要時間が約5〜10分と短時間でテストができる
  • 認知症のスクリーニングテストとして日本で主流となっている
  • 認知機能の中でも記憶力に関する項目で構成されている
  • 20点以下/30点満点で認知症の疑いがあるとされる
  • テストの妥当性が高い
  • 検査に必要な物品は日用物品だけなので簡単に準備できる

HDS-Rの所要時間

HDS-Rの所要時間は、5分〜10分程度です。

医療現場で働く医師だけでなく、介護現場で働く看護師やリハビリスタッフ(理学療法士作業療法士、言語聴覚士)、介護職員などが評価を行うなどいろいろな領域で活用されています。比較的短時間で検査できるため、幅広い分野で採用されているのが特徴といえるでしょう。

類似するテスト「MMSE」とは?

HDS-R(長谷川式)とともに認知症のスクリーニング検査として知られている評価方法に「MMSE」があります。

MMSEとはミニメンタルステート検査(Mini Mental State Examination)の略称で、見当識・記憶力・計算力・言語能力・図形的能力を含めた認知機能をテスト形式で30満点で評価します。
「全11問」、所要時間は「10〜15分」程度で認知症の疑いを判断できるテストです。

MMSEは世界標準のテストとして普及しているのが大きな特徴です。日本ではHDS-R(長谷川式)とMMSEの2つの認知症テストが医療・介護現場で活用されています。

MMSEについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
▶︎MMSE(ミニメンタルステート検査)とは?認知症テストのやり方・評価項目・注意点

【PDFあり】長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価項目

長谷川式認知症スケール HDS-R
HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)は、9つの評価項目から構成されています。それぞれの項目に見当識や記憶、計算など認知機能を評価するために重要な要素が含まれています。

  1. 年齢
    ・年齢はいくつですか
  2. 日付の見当識
    ・今日は何年ですか
    ・何月ですか
    ・何日ですか
    ・何曜日ですか
  3. 場所の見当識
    ・私たちが今いるところはどこですか
  4. 即時記憶
    ・これから言う3つの言葉を言ってみてください
     ①桜、猫、電車
     または
     ②梅、犬、自動車
    ・後でまた聞きますのでよく覚えておいてください
  5. 計算
    ・100から7を順番に引いてください
    ・それからまた7を引くと
  6. 逆唱
    ・私がこれから言う数字を逆から行ってください
     「6-8-2」
     「3-5-2-9」
  7. 遅延再生
    ・先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください
    ※回答がない場合のヒント:植物、動物、乗り物
  8. 視覚記憶
    ・これから5つの品物を見せます、それを隠しますので何があったか言ってください
    ※時計、鍵、ペン、硬貨、くしなど必ず相互に無関係なもの
  9. 語想起・流暢性
    ・知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください

上図のHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)のひな形はこちらからダウンロードできます。ぜひご活用ください。
▶︎【HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)ひな形】はこちらからダウンロード

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長谷川式認知症スケール(HDS-R)のカットオフ値

長谷川式認知症スケール(HDS-R)のカットオフ値は何点なのか?

HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)は、全9項目の30点満点で採点します。

カットオフ値は以下の通りです。

一般的なカットオフ値

20点以下/30点:認知症の疑いがあると判断される

※ただし、この点数だけで認知症と診断されるものではありません。あくまでも疑いがあるというスクリーニングテストとしての判断ができるだけです。もしも、認知症の疑いがあれば、医療機関できちんと診断してもらうことをお勧めします。

その他のカットオフ値

HDS-R(長谷川式)は、基本的に認知症のスクリーニングテストを目的に作成されたものであり、得点による重症度分類は行われません。しかし、さまざまな論文より重要度の研究も行われています。その一例をご紹介します。

–認知症の重症度別の平均得点(図解理学療法検査・測定ガイドより)–

  • 非認知症   :24.45±3.60点
  • 軽度認知症  :17.85±4.00点
  • 中等度認知症 :14.10±2.83点
  • やや高度認知症:9.23±4.46点
  • 高度認知症  :4.75±2.95点

長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価前に準備しておく検査用具

長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価前に準備しておくものとは?

HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の評価は、事前に以下の物品を準備することですぐに検査を始めることができます。

  • HDS-Rの評価用紙
  • 筆記用具(鉛筆と消しゴム)
  • 本人の年齢の確認
  • 5つの道具(ハサミ、時計、鉛筆、鍵、硬貨、くし、スプーンなど)

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長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価の注意点

長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価の注意点とは?

実際にHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の評価を行う場合は、以下の点に注意して進めていきましょう。

  1. 難聴の場合は、事前にどれくらいなら聞き取れるのか確認する。
  2. 失語症の疑いがある場合、問8と問9を初めに実施して、評価が適応できるか確認する。
  3. 質問後、10秒経過しても返答がない場合は次の検査に進む。
  4. 訓練としてHDS-Rの評価内容を使用しない。

長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価方法

長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価検査方法

それでは、ここからはHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)評価の9項目に沿って具体的な評価方法を解説していきます。

(1)年齢

【問い】
「年齢はいくつですか?」と質問する(2年までの誤差は正解)

【点数】
1点 or 0点:本人の年齢が答えられたら正解

【HDS-Rの評価ポイント】

  1. 2年までの誤差は正解とする。
    ※数え年や誕生日を迎えているかで誤差が生まれる可能性があるため
  2. 生年月日を言うことができても、年齢が言えなければ不正解とする。

(2)日付の見当識

【問い】
⑴今日は何年ですか
⑵何月ですか
⑶何日ですか
⑷何曜日ですか

【点数】
1点 or 0点:年が答えられたら正解
1点 or 0点:月が答えられたら正解
1点 or 0点:日にちが答えられたら正解
1点 or 0点:曜日が答えられたら正解

【HDS-Rの評価ポイント】

  1. どの順番で質問しても良い。
  2. カレンダーなどがない場所で質問すること。

(3)場所の見当識

【問い】
「私たちが今いるところはどこですか?」と質問する

【点数】
2点:自発的に正解する
1点:家ですか?病院ですか?施設ですか?などのヒントより選択して正解する
0点:いずれも間違える

【HDS-Rの評価ポイント】

  1. 病院名など正しい名称が言えなくでも場所がわかっていれば正解とする
  2. ヒントは「家ですか?」「デイサービスですか?」などに変更しても良い。

(4)即時記憶

【問い】
⑴「これから言う3つの言葉を言ってみてください」と指示し「桜・猫・電車」または「梅・犬・自動車」を提示する
⑵答え終わったら「後でまた聞きますのでよく覚えておいてください」と指示する

【点数】
1点 or 0点:「桜」と答えたら正解
1点 or 0点:「猫」と答えたら正解
1点 or 0点:「電車」と答えたら正解

【HDS-Rの評価ポイント】

  1. 3つの言葉同士に関係性のないものを使用する。
  2. 問い⑵である後で聞くことを必ず伝え、3つの言葉を覚えてもらう。

(5)計算

【問い】
⑴「100から7を順番に引いてください」と指示する
⑵計算ができたら「それからまた7を引くと」と指示する

【点数】
1点 or 0点:「93」と答えられたら正解
1点 or 0点:「86」と答えられたら正解

【HDS-Rの評価ポイント】

  1. 最初の引き算を間違えたらそこで打ち切る。
  2. 「93から7を引くと」などとヒントを与えてはいけません。

(6)逆唱

【問い】
「私がこれから言う数字を逆から行ってください」と指示します。
⑴「6-8-2」
⑵「3-5-2-9」

【点数】
1点 or 0点:「2-8-6」と答えられたら正解
1点 or 0点:「9-2-5-3」と答えられたら正解

【HDS-Rの評価ポイント】

  1. 数字はゆっくりと1秒間隔くらいのスピードで提示する。
  2. 3桁で失敗したら、そこで打ち切る。
  3. 練習問題を入れても良い
    ※例えば、1-2-3を反対から言うと

(7)遅延再生

【問い】
「先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください」と問4で覚えてもらった「桜、猫、電車」または「梅、犬、自動車」を答えてもらう。

【点数|問い】
1点 or 0点:「桜」と答えられたら正解
1点 or 0点:「猫」と答えられたら正解
1点 or 0点:「電車」と答えられたら正解

【HDS-Rの評価ポイント】

  1. それぞれに「植物」「動物」「乗り物」のヒントを与えても良い。
  2. すぐに全ての項目のヒントは与えないこと。

(8)視覚記憶

【問い】
「これから5つの品物を見せます、それを隠しますので何があったか言ってください」と指示し、5つ物品を提示します。

【点数|問い】
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解

【HDS-Rの評価ポイント】

  1. 5つの物品は必ず相互に無関係なものを準備すること。
  2. 物品は1つずつ名前を言いながら目の前に置くようにする。
  3. 5つ並べ終ったときに1つずつ名前を理解しているか確認する。
  4. 最後の1つが出てこないような場合であっても、すぐに終わりにするのではなく、なるべく本人に 思い出してもらうように少し待つようにする。

(9)語想起・流暢性

【問い】
「知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください」と指示する。

【点数|問い】
0点:0〜5個以内しか答えられない場合
1点:6個を答えられた場合
2点:7個を答えられた場合
3点:8個を答えられた場合
4点:9個を答えられた場合
5点:10個を答えられた場合

【HDS-Rの評価ポイント】

  1. 途中で回答に詰まった場合は、約10秒待っても返答がなければそこで打ち切る。
  2. 同じ野菜の名前が重複しても否定せず、そのまま記録用紙に記載し、重複した物をあとで減点する。

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長谷川式認知症スケール(HDS-R)とMMSEの評価方法の違いとは?

長谷川式認知症スケール(HDS-R)とMMSEの違いとは?

HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の他にも認知症のテストとして類似する検査に、MMSEがあります。
主な違いは以下の通りです。

判定方法の違い

 MMSEHDS-R
検査項目11項目9項目
検査内容見当識即時想起注意と計算能力遅延再生(短期記憶)言語的能力図形的能力(空間認知)見当識即時記憶計算力遅延再生(記憶力)視覚記憶語想起・流暢性
判定方法21点以下/30点満点が認知症の疑い22〜26点/30点満点が軽度認知障害(MCI)の疑い20点以下/30点満点が認知症の疑い

その他の違い

MMSEの場合、検査に図形模写などの動作性のテストを含むため、ペンを握ったり字が書けることが前提となります。そういった面では、HDS-Rは口頭での質問事項で検査ができるので比較的容易にテストをすることができます。

さらに、評価項目の違いを見てみると、MMSEは「口頭指示」「書字」「図形模写」など、言語機能や空間認知機能を必要とする項目があります。これらの認知機能の低下は、主に脳血管性認知症などに現れやすい項目のため、MMSEの点数が極端に低い場合は、脳血管性認知症の疑いがあると考えることができます。

一方、HDS-Rは「記憶力」を中心とした質問形式で構成されています。そのため、HDS-Rの点数が低い場合は、アルツハイマー型認知症の可能性を疑うことができます。

HDS-R は認知症に特化した検査、MMSEは脳血管性認知症の疑いも現れる検査、と位置付けることができるでしょう。

MMSEの詳しい検査方法や評価項目は、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
MMSE(ミニメンタルステート検査)とは?認知症テストのやり方・評価項目・注意点

その他の認知症テストとは?

その他の認知症テストとは?

HDS-RやMMSEの他にも認知症テストがあります。ここでは、その他のさまざまな認知症テストをご紹介します。

1)Mini-Cog

Mini-Cogは、3語の即時再生と遅延再生と時計描画を組み合わせたスクリーニング検査で、所要時間は2分程度です。カットオフ値は、2点以下で認知症疑いが判定されます。

2)MoCA

MoCA(Montreal Cognitive Assessment)またはMoCA-J(Japanese version of MoCA)は、視空間・遂行機能、命名、記憶、注意力、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識を組み合わせたスクリーニング検査で、所要時間は10分程度です。カットオフ値は、25点以下がMCI(軽度認知症)と判定されます。MoCAはMMSEよりも糖尿病患者の認知機能障害を見出すことができるのが特徴です。

3)DASC-21

DASC-21 ( 地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート ) は、認知機能障害と生活機能障害(社会生活の障害)に関連する行動の変化を評価する尺度で、21項目・所要時間は5〜10分程度です。

※これらの認知症テストは、いずれもスクリーニング検査のため、検査の目的、所要時間などの施設の状況に応じて検査を選択してください。

認知症の判定基準に「認知症高齢者の日常生活自立度」があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

▶︎認知症高齢者の日常生活自立度とはなに?初心者でも分かる判定基準

高齢化にともない重要度を増す認知症検査

認知症テスト(HDS-R・MMSE)まとめ

HDS-Rの評価方法MMSEとの違いはご理解いただけましたか?

団塊の世代が75歳以上を迎える2025年には、日本の高齢化率はますます高くなります。それに伴い認知症の疑いを検査するHDS-RやMMSEの検査の頻度も増えてくることが予想されます。今のうちから正しい評価方法を理解して、現場で測定できる力をつけていきましょう。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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