- 1. 長谷川式認知症スケール(HDS-R)とはどんな検査なのか?
- 1-1. 長谷川式認知症スケール(HDS-R)の検査の特徴
- 1-2. HDS-Rの所要時間
- 1-3. 類似するMMSE 認知症テスト
- 2. 【PDFあり】長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価項目にはどんなものがあるのか?
- 3. 長谷川式認知症スケール(HDS-R)のカットオフ値は何点なのか?
- 3-1. 一般的なカットオフ値
- 3-2. その他のカットオフ値
- 4. 長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価前に準備しておく検査用具とは?
- 5. 長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価の注意点とは?
- 6. 長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価のポイント
- 6-1. (1)年齢
- 6-2. (2)日付の見当識
- 6-3. (3)場所の見当識
- 6-4. (4)即時記憶
- 6-5. (5)計算
- 6-6. (6)逆唱
- 6-7. (7)遅延再生
- 6-8. (8)視覚記憶
- 6-9. (9)語想起・流暢性
- 7. 長谷川式認知症スケール(HDS-R)とMMSEの評価方法の違いとは?
- 7-1. 判定方法の違い
- 7-2. その他の違い
- 8. その他の認知症テストとは?
- 9. まとめ
長谷川式認知症スケール(HDS-R)とはどんな検査なのか?

HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)とは、認知症の疑いや認知機能の低下を早期に発見することができるスクリーニングテストです。
認知症テストであるHDS-Rの評価方法は、もともと1974年に長谷川氏が開発し、1991年に「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」として質問項目と採点基準等の改訂がされて現在の評価項目となりました。
従来、認知症のことを痴呆症と呼んでいましたが、認知症という言葉に統一したことに伴い、現在は「長谷川式認知症スケール」という名称となり、日本では「長谷川式」や「エイチディーエスアール(hds-r)」と呼ばれていることが多いようです。
文献等では現在も長谷川式簡易知能スケールという名称が使用されているため、記事上も混在しておりますがご了承ください。
HDS-Rの評価項目は、見当識や記憶など9項目で、30点満点中で20点以下の方を認知症の疑いが高いと判断されます。
長谷川式認知症スケール(HDS-R)の検査の特徴
・所要時間が約5〜10分と短時間でテストができる
・認知症のスクリーニングテストとして日本で主流となっている
・認知機能の中でも記憶力に関する項目で構成されている
・20点以下/30点満点で認知症の疑いがあるとされる
・テストの妥当性が高い
・物品は、日用物品だけ簡単に準備できる
HDS-Rの所要時間
HDS-Rの所要時間は、5分〜10分程度です。
そのため、医療現場で働く医師だけでなく、介護現場で働く看護師やリハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)、介護職員などが評価を行うなど幅広い領域で活用されています。
類似するMMSE 認知症テスト
HDS-R(長谷川式)とともに認知症のスクリーニング検査として知られている評価方法に「MMSE」があります。
MMSEとは、ミニメンタルステート検査(Mini Mental State Examination)の略称で、見当識・記憶力・計算力・言語能力・図形的能力を含めた認知機能をテスト形式で30満点で評価します。
日本ではHDS-R(長谷川式)とMMSEの2つの認知症テストが、医療・介護現場で活用されていますが、MMSEは世界標準のテストとして普及しています。
MMSEの評価は「11問」で、所要時間は「10〜15分」程度で認知症の疑いを判断することができます。
▼MMSEについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
【関連記事】 MMSEとは?MMSEの評価とカットオフ値、採点の基礎知識【総論】 認知症のテストとして世界的に活用されているMMSEの評価方法やカットオフ値、採点ポイントについてまとめてご紹介します |
【PDFあり】長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価項目にはどんなものがあるのか?
HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)は、9つの評価項目から構成されています。それぞれの項目に見当識や記憶、計算など認知機能を評価するために重要な要素が含まれています。
(1) 年齢 (2) 日付の見当識 (3) 場所の見当識 (4) 即時記憶 (5) 計算 (6) 逆唱 (7) 遅延再生 (8) 視覚記憶 (9) 語想起・流暢性 |
▼上図のHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)のひな形はこちらからダウンロードできます。ぜひご活用ください。 |

HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)は、全9項目の30点満点で採点します。
ここでは、HDS-R(長谷川式)のカットオフ値をご紹介します。
一般的なカットオフ値
20点以下/30点:認知症の疑いがあると判断される
※ただし、この点数だけで認知症と診断されるものではありません。あくまでも疑いがあるというスクリーニングテストとしての判断ができるだけです。もしも、認知症の疑いがあれば、医療機関できちんと診断してもらうことをお勧めします。
その他のカットオフ値
HDS-R(長谷川式)は、基本的には認知症のスクリーニングテストを目的に作成されたもので得点による重症度分類は行われません。しかしながら、様々な論文より重要度の研究も行われています。その一例をご紹介します。
--認知症の重症度別の平均得点(図解理学療法検査・測定ガイドより)--
・非認知症 :24.45±3.60点
・軽度認知症 :17.85±4.00点
・中等度認知症 :14.10±2.83点
・やや高度認知症:9.23±4.46点
・高度認知症 :4.75±2.95点
長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価前に準備しておく検査用具とは?

では、HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の評価をする前に準備・確認するものをご紹介します。事前に以下の物品を準備することですぐに検査を始めることができます。
●HDS-Rの評価用紙 ●筆記用具(鉛筆と消しゴム) ●本人の年齢の確認 ●5つの道具(ハサミ、時計、鉛筆、鍵、硬貨、くし、スプーンなど) |
長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価の注意点とは?

実際に、HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の評価を行う場合の注意点をお伝えしておきます。
1. 難聴の場合は、事前にどれくらいなら聞き取れるのか確認する。 2. 失語症の疑いがある場合、問8と問9を初めに実施して、評価が適応できるか確認する。 3. 質問後、10秒経過しても返答がない場合は次の検査に進む。 4. 訓練としてHDS-Rの評価内容を使用しない。 |
長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価のポイント

それでは、ここからはHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)評価の9項目に沿って具体的な評価方法を解説していきます。
(1)年齢

まず、「年齢」の検査を行います。
(1) 年齢
【問い】
「年齢はいくつですか?」と質問する
【点数】
1点 or 0点:本人の年齢が答えられたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
1. 2年までの誤差は正解とする。
※数え年や誕生日を迎えているかで誤差が生まれる可能性があるため
2. 生年月日を言うことができても、年齢が言えなければ不正解とする。
(2)日付の見当識

次に、HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の評価の中でも「日付の見当識」の検査を行います。
(2) 日付の見当識
【問い】
⑴今日は何年ですか
⑵何月ですか
⑶何日ですか
⑷何曜日ですか
【点数】
1点 or 0点:年が答えられたら正解
1点 or 0点:月が答えられたら正解
1点 or 0点:日にちが答えられたら正解
1点 or 0点:曜日が答えられたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
1.どの順番で質問しても良い。
2. カレンダーなどがない場所で質問すること。
(3)場所の見当識

続いて、「場所の見当識」を評価するHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の検査を行います。
(3) 場所の見当識
【問い】
「私たちが今いるところはどこですか?」と質問する
【点数】
2点:自発的に正解する
1点:家ですか?病院ですか?施設ですか?などのヒントより選択して正解する
0点:いずれも間違える
【HDS-Rの評価ポイント】
1. 病院名など正しい名称が言えなくでも場所がわかっていれば正解とする
2. ヒントは「家ですか?」「デイサービスですか?」などに変更しても良い。
(4)即時記憶

続いて、HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の課題として「即時記憶」の検査を実施します。
(4)即時記憶
【問い】
⑴「これから言う3つの言葉を言ってみてください」と指示し「桜・猫・電車」または「梅・犬・自動車」を提示する
⑵答え終わったら「後でまた聞きますのでよく覚えておいてください」と指示する
【点数】
1点 or 0点:「桜」と答えたら正解
1点 or 0点:「猫」と答えたら正解
1点 or 0点:「電車」と答えたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
1. 3つの言葉同士に関係性のないものを使用する。
2. 問い⑵である後で聞くことを必ず伝え、3つの言葉を覚えてもらう。
(5)計算

続いて、HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の課題として「計算」の検査を行います。
(5)計算
【問い】
⑴「100から7を順番に引いてください」と指示する
⑵計算ができたら「それからまた7を引くと」と指示する
【点数】
1点 or 0点:「93」と答えられたら正解
1点 or 0点:「86」と答えられたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
1. 最初の引き算を間違えたらそこで打ち切る。
2. 「93から7を引くと」などとヒントを与えてはいけません。
(6)逆唱

続いて、HDS-R(長谷川式認知症スケール)の6つ目の課題として「逆唱」の検査を行います。
(6) 逆唱
【問い】
「私がこれから言う数字を逆から行ってください」と指示します。
⑴「6-8-2」
⑵「3-5-2-9」
【点数】
1点 or 0点:「2-8-6」と答えられたら正解
1点 or 0点:「9-2-5-3」と答えられたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
1. 数字はゆっくりと1秒間隔くらいのスピードで提示する。
2. 3桁で失敗したら、そこで打ち切る。
3. 練習問題を入れても良い
※例えば、1-2-3を反対から言うと
(7)遅延再生

続いて、HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の7つ目の課題として「遅延再生」の評価を行います。
(7) 遅延再生
【問い】
「先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください」と問4で覚えてもらった「桜、猫、電車」または「梅、犬、自動車」を答えてもらう。
【点数|問い】
1点 or 0点:「桜」と答えられたら正解
1点 or 0点:「猫」と答えられたら正解
1点 or 0点:「電車」と答えられたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
1. それぞれに「植物」「動物」「乗り物」のヒントを与えても良い。
2. すぐに全ての項目のヒントは与えないこと。
(8)視覚記憶

続いて、HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の8つ目の課題として「視覚記憶」の評価を行います。
(8) 視覚記憶
【問い】
「これから5つの品物を見せます、それを隠しますので何があったか言ってください」と指示し、5つ物品を提示します。
【点数|問い】
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
1. 5つの物品は必ず相互に無関係なものを準備すること。
2. 物品は1つずつ名前を言いながら目の前に置くようにする。
3. 5つ並べ終ったときに1つずつ名前を理解しているか確認する。
4. 最後の1つが出てこないような場合であっても、すぐに終わりにするのではなく、なるべく本人に 思い出してもらうように少し待つようにする。
(9)語想起・流暢性

最後にHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の10つ目の課題である「語想起・流暢性」の評価を行います。
(9) 語想起・流暢性
【問い】
「知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください」と指示する。
【点数|問い】
0点:0〜5個以内しか答えられない場合
1点:6個を答えられた場合
2点:7個を答えられた場合
3点:8個を答えられた場合
4点:9個を答えられた場合
5点:10個を答えられた場合
【HDS-Rの評価ポイント】
1. 途中で回答に詰まった場合は、約10秒待っても返答がなければそこで打ち切る。
2. 同じ野菜の名前が重複しても否定せず、そのまま記録用紙に記載し、重複した物をあとで減点する。
長谷川式認知症スケール(HDS-R)とMMSEの評価方法の違いとは?

HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の他にも認知症のテストとして類似する検査に、MMSEがあります。
判定方法の違い
MMSE | HDS-R | |
---|---|---|
検査項目 |
11項目 | 9項目 |
検査内容 |
見当識 即時想起 注意と計算能力 遅延再生(短期記憶) 言語的能力 図形的能力(空間認知) |
見当識 即時記憶 計算力 遅延再生(記憶力) 視覚記憶 語想起・流暢性 |
判定方法 |
21点以下/30点満点が認知症の疑い 22〜26点/30点満点が軽度認知障害(MCI)の疑い |
20点以下/30点満点が認知症の疑い |
その他の違い
MMSEの場合、検査に図形模写などの動作性のテストを含むため、ペンを握ったり字が書けることが大前提となります。そういった面では、HDS-Rは口頭での質問事項で検査ができるので比較的容易にテストをすることができます。
さらに、評価項目の違いを見てみると、MMSEは「口頭指示」「書字」「図形模写」など、言語機能や空間認知機能を必要とする項目があります。これらの認知機能の低下は、主に脳血管性認知症などに現れやすい項目のため、MMSEの点数が極端に低い場合は、脳血管性認知症の疑いがあると考えることができます。
一方、HDS-Rは「記憶力」を中心とした質問形式で構成されています。そのため、HDS-Rの点数が低い場合は、アルツハイマー型認知症の可能性を疑うことができます。
その他の認知症テストとは?
HDS-RやMMSEの他に認知症テストには、どのようなものがあるのかご存知でしょうか?ここでは、その他のさまざまな認知症テストをご紹介します。
1)Mini-Cog Mini-Cogは、3語の即時再生と遅延再生と時計描画を組み合わせたスクリーニング検査で、所要時間は2分程度です。 カットオフ値は、2点以下で認知症疑いが判定されます。 |
2)MoCA(Montreal Cognitive Assessment) MoCAまたはMoCA-J(Japanese version of MoCA)は、視空間・遂行機能、命名、記憶、注意力、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識を組み合わせたスクリーニング検査で、所要時間は10分程度です。 カットオフ値は、25点以下がMCI(軽度認知症)と判定されます。MoCAはMMSEよりも糖尿病患者の認知機能障害を見出すことができるのが特徴です。 |
3)DASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート) |
※これらの認知症テストは、いずれもスクリーニング検査のため、検査の目的、所要時間などの施設の状況に応じて検査を選択してください。
▼認知症の判定基準に「認知症高齢者の日常生活自立度」があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【関連記事】 認知症高齢者の日常生活自立度とはなに?初心者でも分かる判定基準 認知症高齢者の日常生活自立度の判定基準に基づいて、各ランクがどのような基準になっているのかわかりやすくまとめてご紹介します。 |
まとめ

HDS-Rの評価方法やカットオフ値はご理解いただけましたか?
団塊の世代が75歳以上を迎える2025年には、日本の高齢化率はますます高くなります。それに伴い認知症の疑いを検査するHDS-RやMMSEの検査の頻度も増えてくることが予想されます。今のうちから正しい評価方法を理解して、現場で測定できる力をつけていきましょう!
デイサービス運営において必要な「評価・測定」について、一挙にまとめていますので、必要に応じて活用していただければと思います。
→→ 【完全保存版】デイサービスで活用できる評価・測定に関する記事まとめ|随時更新
【最後に筆者より】
平成30年度の介護報酬改定では、ご高齢者の「自立支援」が重要視されています。
リハプランでは、今回紹介したHDS-Rの評価方法以外にも、デイサービスや特養など介護現場で取り組める評価方法や機能訓練についてご紹介しています。「どんな機能訓練をしたらいいの?」「どんな計画を立てたらいいの?」などお悩みがありましたらリハビリの専門家に直接相談することもできます。ぜひ一度ご相談ください♬