個別機能訓練加算Ⅱの実践プログラム | 排泄動作編

個別機能訓練加算Ⅱの目標設定や機能訓練プログラムでお悩みはありませんか?今回は、デイサービスで行う個別機能訓練加算Ⅱの中でも「排泄動作」に着目して、目標設定の方法や訓練プログラムの立案の仕方について事例を通してご紹介していきます。

個別機能訓練加算Ⅱとは

個別機能訓練加算Ⅱ:56単位/日


個別機能訓練加算Ⅱとは、ご利用者様に食事、排泄、入浴などの日常生活活動(ADL)や調理、洗濯、掃除などの家事動作(IADL)への機能訓練や、趣味やコミュニティなどの社会参加といった働きかけをすることでご高齢者の充実した生活を支援します。

つまり、個別機能訓練加算Ⅱは、身体機能を良くするためのリハビリではなく、日常生活と関連のある生活リハビリや趣味活動、地域への参加を目標としたものとなります。

デイサービスで勤務する私たちスタッフは、日常生活上の世話をするだけでなく、ご利用者様の生活をハッピーに、そして元気にすることを目指しています。このようにご利用者様の「自立支援」を促すことが、個別機能訓練加算の本質です。


私たちスタッフはこのことを念頭に置きながら個別の機能訓練に取り組んでいきましょう!



【補足情報!】
介護保険法第8条)
通所介護とは、居宅要介護者等を老人デイサービスセンター等に通わせ、当該施設において入浴、食事の提供、生活等に関する相談及び助言、健康状態の確認、その他必要な日常生活上の世話及び機能訓練を提供するもの。

厚生労働省)
個別機能訓練加算Ⅱの目的は“専従の機能訓練指導員を配置し、利用者が居宅や住み慣れた地域において可能な限り自立して暮らし続けることができるよう、身体機能の向上を目的として実施するのではなく、①体の働きや精神の働きである「心身機能」、②ADL・家事・職業能力や屋外歩行といった生活行為全般である「活動」、 ③家庭や社会生活で役割を果たすことである「参加」といった生活機能の維持・向上を図るために、機能訓練指導員が訓練を利用者に対して直接実施するものである”とされています。つまり、個別機能訓練加算Ⅱの内容は、身体機能を良くするためのリハビリではなく、日常生活と関連のある生活リハビリや趣味活動、地域への参加を目的としたものとなります。


▼個別機能訓練加算について改めて学びたい方はこちらの記事がオススメです。

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個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱの算定要件から目標設定など加算に必要なノウハウをご紹介します♬

個別機能訓練加算Ⅱとして「排泄動作自立」を目指そう

個別機能訓練加算Ⅱは、ご利用者様を元気にする加算であり、本稿のテーマである「排泄動作」の自立に向けた個別機能訓練加算Ⅱの取り組みは、介護する側も介護される側にとって大きな意義があるのです。

とはいえ、「排泄」は両者にとって心理的に大きな抵抗感があるのは事実。例えば、デイサービスで働いているとこんな経験をされている方も多いのではないでしょうか。


【とある介護士の日常】
 私が仕事で苦手なのは午後3時30分から午後4時までの30分間。ご利用者様を自宅へ送る前の時間だ。あのトイレという特別な空間の中で、臭いと見ただけでえづくような感覚。でも私がここでトイレ介助をしなければ、ご家族さんに申し訳ないし。こう納得させて仕方なく過ごしているのです。また、送迎前ということもあり、次から次へとトイレ介助をしなければならず、腰も痛くなるのだ。「他の介護の仕事は好きなんだけど、これだけはどうしてもきつい。」こう思って毎日を過ごしている。

【とあるご高齢者の声】
 「遠慮なく声かけしてくださいね」いつもスタッフは明るく私に話しかけてくれる。でも、帰り間際の30分はトイレは混雑し、スタッフもバタバタ。私はトイレの時間が長く、すぐには出ない。足腰も弱く一人では立てない。周りのみんなも「私がトイレに入ったら、長いから」そのように言われているような気がして辛いのです。帰りの車では、40分かかるから、このタイミングで行かないともっと迷惑をかけてしまう。だから、私はバタバタしているスタッフに申し訳なく頼むのです。「ごめんな。」


みなさんの施設でもよくあるのではないでしょうか。どちらも当たり前の反応ですし、悪いことは一切ありません。しかし、ここで改めて考える必要があります。

どうして一人で立てないのか?
どうして足腰が弱いのか?
どうしてトイレに時間がかかってしまうのか?

これらの原因と解決方法を時間軸に沿って考える。これが個別機能訓練加算Ⅱであり、ご利用者様を元気にする加算であると言えるのです。

個別機能訓練加算Ⅱとして排泄動作について考える

個別機能訓練加算Ⅱとして「排泄動作訓練」を考える時は「排泄」そのものについて考える必要があります。排泄とは、不要になった老廃物を体外に排出する命を繋ぐための人間の生理的な行為です。排泄動作とは、この行為を遂行するための移動動作や上肢操作など全般を指すものです。排泄動作を大きく要素として分解してみると、以下のようになります。

【排泄動作の要素】
1)トイレまで行く
2)ドアを開けてトイレに入る
3)便座の上げ下げをする
4)ズボンを下ろす
5)便座に座る
6)用をたす
7)お尻拭く
8)水を流す
9)立ち上がる
10)スボンをあげる
11)ドアを開けてトイレから出て、ドアを閉める

これらの要素中で一人では困難な動作が「要介助」であり、全てにおいて自立して行える場合を「自立」と判断します。


「個別機能訓練加算Ⅱ」のプログラムを考える上では、上記の要素を分解して、要素の一つ一つの「どうしてできないんだろう?」を分析することが重要です。これを「評価」と呼び、それらを基に改善するための解決策が「個別機能訓練加算Ⅱ」のプログラム内容となります。


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排泄自体を行う前に重要なのが、「尿意や便意を感じることができる」か否かを確認する必要があります。困難な場合は、失禁するケースが多くみられますので、注意が必要です。

個別機能訓練加算Ⅱの事例紹介

個別機能訓練加算Ⅱのプログラムを事例を通して学んでいきましょう。


【事例】
Uさん(85)男性。要介護3。週に2回、デイサービスを利用しています。20XX年12月に多発性脳梗塞を発症、大きな麻痺はないのですが、退院後自宅でほとんど動くことがないため、足腰が弱くなり車椅子を使用し暮らしています。

家族構成は、妻(81歳)と二人暮らし。遠方(車で1時間)に娘さんが暮らしています。

自宅環境は、廊下が狭く、車椅子がなんとか通れる程度なので、夜間はポータブルトイレを使用しています。
※ポータブルトイレの移乗の時に、転倒のリスクが高く奥様が心配して起きているとのこと。


▼個別機能訓練加算Ⅱについて事例を通して学んで行きたい方はこちらの記事がオススメです。

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個別機能訓練加算Ⅱについて食事動作の獲得を目標とした事例を通して学んで行きましょう♬

個別機能訓練加算Ⅱの計画書の記載例

では早速、Uさんの排泄動作自立に向けた個別機能訓練加算Ⅱの計画書の作成方法をご紹介します。


まず個別機能訓練加算Ⅱの計画書に関しては、厚生労働省発行の「個別機能訓練計画書」を参考にすると良いでしょう。個別機能訓練計画書では、個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱに対してそれぞれの長期目標・短期目標・プログラム内容(留意点・頻度・時間)を立案することが求められています。また、目標設定は本人・ご家族の希望はもちろんですが、ケアプランに則り立案していきます。


【ケアプラン:デイサービスに期待されていること】
① 奥様のレスパイトケア|介護負担の軽減
② 自宅で一人でトイレに行けるように足腰を強くしてほしい


【Uさんの個別機能訓練計画書の記載例】
●本人の希望
 トイレに一人で行けるようになりたい

●長期目標
・移乗動作が安定することで、ポータブルトイレに一人で行けるようになる

●短期目標
・便座、車椅子からの立ち上がりを安定して行えるようになる(見守り)
・便座、車椅子への移乗が安定して行えるようになる(見守り)
・ズボンの着脱が自立して行えるようになる(見守り)

●個別機能訓練加算Ⅱプログラム
① 集団体操
② 立ち上がり訓練
③ 立位バランス訓練
④ ズボン着脱訓練
⑤ トイレ動作訓練
※短期目標に対してプログラムを立案します。


▼個別機能訓練計画書を初めて作成する方、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

【関連記事】個別機能訓練計画書の書き方|はじめて作成する人のための4つの指針!
個別機能訓練計画書の書き方についてもっと詳しく知りたい方はこちらをチェック♬

個別機能訓練加算Ⅱの目標設定の立て方

個別機能訓練加算Ⅱでは、日常生活動作や家事動作、趣味活動、社会参加などの多くの視点や活動の手順を理解して段階的に関わることが求められます。Uさんのトイレ動作を確認してみると以下の工程に介助を要していることがわかりました。


【Uさんのトイレの介助が必要な動作】
① 椅子からの立ち上がりが不安定
② 立位のバランスが不安定
③ ズボンの着脱ができない


短期目標の設定方法は、目標とする「排泄動作の自立」を達成するために必要な工程(現在、介助を要している動作)を目標として立案します。次に、この短期目標を獲得するために必要な工程を個別機能訓練加算Ⅱのプログラム(機能訓練や模倣訓練)として立案していきます。


【Uさんの短期目標とプログラム】
●短期目標:便座・車椅子からの立ち上がりを安定して行えるようになる(見守り)
→プログラム①|集団体操
→プログラム②|立ち上がり訓練

●短期目標:便座・車椅子への移乗が安定して行えるようになる(見守り)
→プログラム③|立位バランス訓練

●短期目標:ズボンの着脱が自立して行えるようになる(見守り)
→プログラム④|ズボン着脱訓練
→プログラム⑤|トイレ動作訓練


Uさんにおける「排泄動作の自立」には5つのプログラムが必要となり、このプログラムを実施することで短期目標の達成を目指していきます。


▼個別機能訓練加算の目標設定やプログラムを立案する上では居宅訪問での情報収集が役に立ちます。個別機能訓練加算を算定する上で必須となった居宅訪問についてはこちらの記事が詳しく解説しています。合わせてご覧ください。

【関連記事】個別機能訓練加算に役立つ!居宅訪問のチェックポイントとは
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個別機能訓練加算Ⅱプログラム|① 集団体操

それでは、ここからは立案したプログラムに沿ってUさんの個別機能訓練加算Ⅱのプログラムをご紹介していきます。

ポータブルトイレの自立を獲得したいUさんには、まず「集団体操」と提案します。Uさんは大きな麻痺はないのにも関わらず入院を機に車椅子生活になってしまいました。Uさんの場合は、これまでに運動習慣がなかったため、いきなり筋力トレーニングや立ち上がり訓練、トイレ動作訓練をすることは障壁が高くなります。

そこでまずは「他者との交流を持ちながら簡単な運動ができる」ように午前中に20分間開催している集団体操から促していくことにしました。


【訓練内容】
・集団体操

【期待する効果】

① 運動習慣を身につける

② トイレ動作の自立に向けた身体機能の維持・向上
③ 仲間と一緒に運動することで孤立感を解消する

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個別機能訓練加算Ⅱプログラム|② 立ち上がり訓練

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Uさんにおいては、排泄動作の中でも「立ち上がり」に課題がありました。立ち上がりを獲得するためには、太ももや体幹筋の筋力アップが必要と判断し、上図のような個別の機能訓練を実施することにしました。

こちらの運動は、椅子からの立ち上がりに必要なふくらはぎと太もも、体幹筋を鍛える運動メニューです。この3つの運動を定期的に取り組むことで立ち上がりに必要な筋力と反復的な動作学習を促すことができます。立ち上がりが不安定な間は、手すりを持ったりスタッフの介助を行うようにしましょう。


【訓練内容】
・太ももと体幹筋の筋力トレーニング
・椅子からの立ち上がり訓練

【期待する効果】
① 立ち上がりに必要なふくらはぎと太もも、体幹筋の筋力アップ
② 立ち上がり動作に必要な一連のスムーズな動きを獲得する

個別機能訓練加算Ⅱプログラム|③ 立位バランス訓練

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次にUさんは「立位のバランス」に課題があり、特に後ろに振り向いたり、その場で方向転換をする場合にふらつきが目立っていました。Uさんの場合、多発性脳梗塞の影響によるバランス障害はなかったので主に反復動作によってバランスが安定するように上図のような機能訓練を実施していくことにしました。

こちらの運動は、立位のバランスに必要な体幹の捻り動作と足踏み動作です。こちらもバランスが不安定な間は、手すりを持ったりスタッフが少し支えてあげるようにします。


【プログラム内容】
・立位バランス訓練

【期待する効果】
① 振り向きに必要なバランス能力の向上
② 方向転換に必要な片脚立位でのバランス能力の向上

個別機能訓練加算Ⅱプログラム|④ ズボン着脱訓練

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Uさんは、「ズボンの着脱」にも課題がありました。実際に話を聞いてみると病気をしてからはご自身ではズボンの着脱をしたことがなかったのです。「元気な時にどうやってズボンの着脱をしていたのかわからん」とおっしゃるので、上図のように改めてズボンの着脱の手順を一つ一つ確認しながら訓練を実施することにしました。

こちらの運動は、トイレでのズボンの着脱を想定した「座位」と「立位」でのズボンの着脱訓練です。ズボンの着脱は座ってもできる動作なので、まずは椅子に座ったまま着脱の練習をします。Uさんも実際にトイレのイメージが湧いたきたようでスタッフと一緒に試行錯誤しながらズボンの着脱動作の訓練に励んでいます。


【個別機能訓練プログラム】
・座位でのズボンの着脱訓練
・立位でのズボンの着脱訓練

【期待する効果】
① 座位、立位でのバランス能力の向上

個別機能訓練加算Ⅱプログラム|⑤ トイレ動作訓練

ここからは、排泄動作の実践的なプログラムになります。


今までの4つの機能訓練に取り組んでUさんは、たどたどしさはあるものの、次第に立ち上がりや方向転換、ズボンの着脱ができるようになったのです。そこで担当スタッフは、「実際にトイレに行って練習してみませんか?」と提案します。

Uさんは不安そうではあるものの「やってみようか」と返答してくれました。

担当スタッフと2人で実際のトイレに行ってみると「あれ?できるよ。」とUさん


今まで機能訓練に一生懸命取り組んだUさんの身体機能は格段にアップしており、実際のトイレでは見守りではあるもののスムーズに動作ができるようになっていたのです。

見守りであればご自身の力でトイレ動作ができると確信した担当スタッフは、デイサービスでの夕方の終礼で「Uさんのトイレ介助の時はできるだけ見守りでしてください」と他のスタッフも報告しました。


今までは個別の機能訓練の時間だけ行っていたトイレを日中の時間帯にもできるようにステップアップして取り組んで行きました。




【プログラム内容】

・トイレ動作訓練



【期待する効果】

① トイレ動作の一連の流れの獲得



ここに至るまでUさんは3ヶ月の月日が経過しましたがやっとたどり着きました。この後には、担当者会議で奥様にもデイサービスではトイレが見守りでできていることを報告します。少しずつで構わないので奥様も見守りでポータブルトイレを挑戦してほしいとUさんと一緒に頼みました。


その1ヶ月後、Uさんは満足そうな顔で「もうポータブルトイレは行けるぞ」と報告してくれました。今後は、「今度は夜も一人でポータブルトイレに挑戦する」と意気込んでいます!

いかがでしたか。今回はUさんという架空の人物を想定し、排泄動作の自立を目指した個別機能訓練加算Ⅱのプログラムを書かせていただきました。個別機能訓練加算は、ご高齢者の方々を元気にする加算です。その方の目標やこれまでの人生経験を考慮し、その人らしい生活を再構築ことができれば幸いです。

【最後に筆者より】
私たちRehab for JAPANは介護現場で働く皆様にお役に立てる「セルフボックス」を運営しております。個別の機能訓練を取り組む場合に「何を目標に、どの運動をしたら良いのか?」「この運動で本当にいいのか?」などお悩みがありましたら、気軽にご連絡ください♬

著者プロフィール

author

大屋 祐貴

リハビリ専門職(作業療法士)として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーションを技術を高めるため研修会を立ち上げ、これまでに100名規模の研修会も開催された。現在は、「職種を越えたリハビリ介護を実現する」をテーマに、リハプランの専属ブロガーとして活躍中。作業療法士の専門性を活かして、介護事業所で算定できる加算・減算の中でも「個別機能訓練加算」について算定要件や計画書の書き方、機能訓練プログラムについて執筆している。

〜筆者の想い〜
通所介護事業所(デイサービス)の約8割は、リハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が不在のため、看護師や柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師が機能訓練を実施しているのが現状です。機能訓練指導員が、高齢者にあった最適な運動を提供するために必要なノウハウをわかりやすく解説します。

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