抗重力筋とは?抗重力筋トレーニングの理論とトレーニング方法を学ぼう

抗重力筋とは、文字通り「重力」に「抗う」ことを指します。地球上の生物であれば立っているときも、座っているときも、寝ているときも体は重力の影響を受けます。重力は一定のため加齢に伴い、筋肉の弛みなどが出てくるのはこのためです。抗重力筋は、高齢者の姿勢保持にも重要な筋肉と言われており、高齢者トレーニングではこの抗重力筋をターゲットにすることも多くあります。今回は、そんな抗重力筋のトレーニングの理論とエクササイズ方法についてご紹介していきます。

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抗重力筋とは

抗重力筋とは、地球の重力に対して立位や座位などの姿勢を保持する筋肉のことを言います。

この抗重力筋は、運動など体を動かしているときに働く訳ではなく、無意識に姿勢を保持しているときに働いている筋肉です。つまり、重力と抗重力筋とが均等に釣り合っていることを意味します。

例えると、生まれたばかりの赤ちゃんは重力に対して抗重力筋がまだ発達していないので座ったり、立つ事ができません。成長と共に、まず抗重力筋が鍛えられていき座ったり、立つことができるようになります。

抗重力筋は、日常生活で常に働いている部位ですがこの筋肉が衰えてしまうと重力に対して正しく姿勢を保持することが難しくなります。そのため高齢者の姿勢保持に非常に重要な部位となります。

抗重力筋(こうじゅうりょくきん)平成29年4月15日アクセス

抗重力筋の部位とは

抗重力筋を大別すると5箇所が挙げられます。

⑴背中:脊柱起立筋、広背筋
⑵腹筋:腹直筋、腸腰筋
⑶お尻:大臀筋
⑷太もも:大腿四頭筋
⑸ふくらはぎ:下腿三頭筋

この背中・腹筋・お尻・太もも・ふくらはぎの抗重力筋が前後に働きながら重力に対してバランスを保っていることになります。

 

抗重力筋と立位保持の関係性とは

抗重力筋の働きは、基本的な立位姿勢からの重心線がズレるのを直ちに補正することにあります。(代償的姿勢戦略)

理想とされる基本的な立位姿勢には「ニュートラルポジション」という姿勢があります。ニュートラルポジションは、重力に対してもっとも効率的に身体を支えることができる姿勢です。図のランドマークを確認していきましょう。

【基本的な立位姿勢(ニュートラルポジション)】
矢状面で以下の5点が直線上の位置する姿勢

⑴耳孔(やや後方)
⑵肩峰(前方)
⑶大転子(やや後方)
⑷膝関節中心のやや前方(膝蓋骨後面)
⑸外果の前方(外果の5〜6cm前方)



通常の立位姿勢は、腹筋群や太ももの筋肉よりも背面部の背中やふくらはぎの筋肉が重要な働きをしています。

具体的には...
○足関節の場合は、重心線は外踝(外くるぶし)より前方を通るため身体は前に倒れやすくなります。それに対してふくらはぎの筋肉である「下腿三頭筋」が働くことで姿勢を保持します。

○股関節の場合は、重心線は大転子のやや後方を通るため上半身はやや後方に倒れやすくなります。これに対して「腸腰筋」が働くことで姿勢を保持します。実際には姿勢の前後の変化によって重心は前後に変動しやすいためお尻の筋肉「大臀筋」も相互に働いていることになります。

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○脊柱の場合は、重心線はやや前方を通過するため上半身は前方に倒れようと作用します。これに対して「脊柱起立筋」が働くことで姿勢を保持します。
 

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どの筋が活動するかは、重心線と各関節との位置関係により異なります。前後方向に重心位置がズレてしまうとそれを補助しようと他の筋肉が過剰に働います。

いつも同じ部位に疲労が溜まる場合は、長年の癖や身体の傾きの影響によってこの姿勢が崩れている場合がありますのでチェックしておきましょう。
 

参考文献:中村隆一 医歯薬出版株式会社「基礎運動学」

抗重力筋と座位保持の関係性とは

次に理想とされる安定した座位姿勢には、図のランドマークで示された姿勢があります。

【基本的な座位姿勢】
矢状面で3点が直線上の位置する姿勢

⑴耳孔
⑵肩峰
⑶大転子


【骨盤の基本的位置】
ASIS(上前腸骨棘)とPSIS(上前腸骨棘)を直線で結んで座面と水平を保っている姿勢

座位姿勢では、主に体幹の支持性が重要です。この体幹の支持性を高めるためには、腹直筋・腹横筋・腹斜筋の働きによって腹腔内圧を高める効果があります。

腹腔とは、上下を横隔膜と骨盤、前後を腹直筋、腹横筋、腹斜筋及び脊柱で囲まれた楕円状の空間です。

座位姿勢の安定性を高めるためにはこの腹腔内圧を高める、ランドマークに沿った姿勢の保持が重要です。

 

抗重力筋と高齢者の関係性とは

抗重力筋は、通常日常生活を送っているだけでも常に働いている筋肉です。

しかしながら、筋力は加齢と共に衰えていくものです。日常生活の中で立ち座りや立っていることが辛くなったと感じている高齢者はこの抗重力筋の低下が起こっている可能性があります。

特に、外出機会が減り、日中は椅子座りTVを見ている時間が増えている高齢者の方は下半身の抗重力筋が弱化してしまうため抗重力筋同士のバランスを崩して姿勢が崩れてしまいます。

そのため高齢者の介護予防には「抗重力筋」が低下しないようエクササイズしていくことが大切です。

抗重力筋の強化を行うことで「ロコモ」や「サルコペニア」の予防にも効果が期待できます。
 

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抗重力筋の鍛え方|立位編

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それでは、抗重力筋のエクササイズ方法をご紹介していきます。まずこちらは、立位姿勢でできる抗重力筋のエクササイズです。

抗重力筋を鍛えるには、正しい姿勢を意識することがBestな方法です。抗重力筋は、筋力トレーニングをすれば鍛える事もできますが、運動習慣がない人はなかなか長続きしません。そのためこちらの姿勢と呼吸の意識をしたエクササイズで抗重力筋を鍛えていきましょう。

【運動のやり方】
⑴息を3秒間吸って、7秒間吐きます
⑵息を吸う際は、お腹を膨らませます
⑶息を吐く際は、お腹を凹ませて尻の穴を閉めます

【回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。

 

抗重力筋の鍛え方|座位編

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次に座位姿勢でできる抗重力筋のエクササイズです。

座位姿勢の安定性を高めるためには腹腔内圧を高めることが重要です。そのため腹式呼吸を意識したエクササイズを実施していきましょう。

また骨盤の後傾姿勢(いわゆる仙骨座り)を改善するためにも骨盤の前後運動を促していきましょう。

【運動のポイント】
⑴息を3秒間吸って、7秒間吐きます
⑵息を吸う際は、お腹を膨らませて胸を張ります
⑶息を吐く際は、お腹を凹ませます

【回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。

 

抗重力筋の鍛え方|腹筋編

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次に、四つ這いでできる腹筋群のエクササイズをご紹介します。

一般的にプランクという体幹トレーニングの中でも比較的難易度の低いトレーニングです。プランク運動は、ゆっくりと時間をかけて行うと効果的です。

【運動のやり方】
⑴両肘、両膝を床につけて四つ這いになります
⑵息を吐きながらできるだけお尻を高くあげます
※背中を反ったり、曲げたりしないように一直線を意識して運動を行いましょう

【回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。

 

抗重力筋の鍛え方|背中編

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抗重力筋の中でも脊柱起立筋や多裂筋を効果的に鍛えることができるダイアゴナルエクササイズのご紹介です。

背中の抗重力筋は、上半身は前方に倒れようとすると主に脊柱起立筋が働くことで姿勢を保持します。背中に位置する脊柱起立筋は、立位や座位の姿勢ではなかなか鍛えていくことが難しい部位ですので四つ這い姿勢でのダイアゴナルエクササイズをお勧めします。

【運動のやり方】
⑴四つ這いの姿勢になります
⑵息を吐きながら対側の手足を上げます

【運動のポイント】
⑴手は、耳の高さまで挙げてキープすること
⑵上げている手足の高さが床と水平を意識すること
⑶目線は前を向かず、顎を上げないようにすること

【回数】
10秒×8回を目安に行いましょう。

 

抗重力筋の鍛え方|臀部編

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次に抗重力筋の中でも大臀筋を鍛えることができるお尻上げの運動のご紹介です。

お尻の抗重力筋は腸腰筋と大臀筋が相互に働くことによって姿勢を保持します。お尻上げ運動の際はかかとのみを設置することで太ももよりもお尻の筋肉を効果的に鍛えることができます。

【運動のやり方】
⑴両膝を立てて、踵のみを床につけること
⑵上半身が一直線上になるようにお尻をあげること
⑶お尻をあげた状態で10秒間姿勢を保つこと

【回数】
10秒×8回を目安に行いましょう。

 

抗重力筋の鍛え方|大腿四頭筋編

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次に抗重力筋の中でも大腿四頭筋を鍛えることができるハーフクスワットのご紹介です。

大腿四頭筋は、主に重心が後方に位置した際に働き姿勢を保持します。スクワットの際は上半身が前に倒れやすくなるためバランスボールを背中に置くことをお勧めします。

【運動のやり方】
⑴バランスボールを背中と壁の間に挟むこと
⑵約90度、膝を曲げること
⑶バランスボールを落とさないこと

【回数】
10回×3回を目安に行いましょう。

 

抗重力筋の鍛え方|下腿三頭筋編

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最後に、抗重力の中でも下腿三頭筋を鍛えることができるヒールレイズのご紹介です。

ふくらはぎの抗重力筋は、身体が前に倒れようとすると下腿三頭筋が働き姿勢を保持します。立った姿勢で下腿三頭筋をトレーニングする場合はバランスを崩しやすくなるので椅子などを支持するようにしましょう。

【運動のやり方】
⑴椅子を両手で支持すること
⑵できる限りかかとをあげること

【回数】
10回×3回を目安に行いましょう。

 

まとめ

今回は「抗重力筋トレーニングの理論と実際」をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

抗重力筋は、高齢者の正しい姿勢保持や介護予防などの高齢者トレーニングとしても重要な部位ですので参考にしていただけると幸いです。

 

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著者プロフィール

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リハビリ専門職(作業療法士)として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーションを技術を高めるため研修会を立ち上げ、これまでに100名規模の研修会も開催された。現在は、「職種を越えたリハビリ介護を実現する」をテーマに、リハプランの専属ブロガーとして活躍中。作業療法士の専門性を活かして、介護事業所で算定できる加算・減算の中でも「個別機能訓練加算」について算定要件や計画書の書き方、機能訓練プログラムについて執筆している。

〜筆者の想い〜
通所介護事業所(デイサービス)の約8割は、リハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が不在のため、看護師や柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師が機能訓練を実施しているのが現状です。機能訓練指導員が、高齢者にあった最適な運動を提供するために必要なノウハウをわかりやすく解説します。

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