誤嚥性肺炎を予防する個別機能訓練プログラムとは

今回は、デイサービスでの個別機能訓練プログラムとして取り組んでいただきたい誤嚥性肺炎を予防する体操のご紹介です。高齢者の肺炎で、最も多い「誤嚥性肺炎」は、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)などの機能低下が原因の1つとされています。ご紹介する体操は、舌や唇、頬などを動かすことで機能低下を防ぎ、誤嚥を予防するプログラムです。誤嚥に対する不安感を少しでも解消し、毎日の食事を楽しんでいただけるように私たちスタッフが誤嚥性肺炎を予防する方法について学んでいきましょう。

なぜ誤嚥性肺炎の予防は「重要」なのか!?

なぜ、個別機能訓練として誤嚥性肺炎の予防をオススメするのでしょうか?

厚生労働省によると、日本における全人口の死亡原因の順位は、1位は悪性新生物、2位は心疾患、3位は肺炎と報告しています。高齢者においては65歳以上の4位、80歳以上の3位が「肺炎」となります。

この肺炎が原因で亡くなる高齢者のうち、最も多いのが「誤嚥性肺炎」です。そのため、高齢者の健康維持や介護予防を担うデイサービスでは、個別機能訓練として誤嚥性肺炎を予防していくことが非常に重要となります。


誤嚥性肺炎の原因の1つに摂食・嚥下障害があります。摂食・嚥下障害とは、食べる・飲み込むことが円滑に出来ない障害を言います。ここに何らかの機能低下を起こすと、誤嚥を引き起こします。

この誤嚥性肺炎の原因でもある摂食・嚥下障害の予防を行うのが、今回ご紹介する個別機能訓練プログラムです!


個別機能訓練として誤嚥性肺炎の予防に積極的に取り組んでいきましょう!

長寿科学振興財団 健康長寿ネット「高齢者の死亡原因」
2016年3月7日アクセス

誤嚥予防体操の「効果」とは

高齢者においては、加齢によって舌や唇、頬の筋力が衰え、飲み込む力も弱くなっていきます。そのため、誤嚥性肺炎を予防する取り組みを行う必要があります。



誤嚥性肺炎を予防する体操とは、口腔内外の舌や唇、頬などの筋肉を鍛えることで機能低下を防ぎ、誤嚥を予防する口腔体操があります。この口腔体操を行うことで、高齢者が食べ物を咀嚼(そしゃく)して飲み込むといった一連の動きがスムーズになる効果が期待できます。


また、食べ物や飲み物が誤って気管へと入り込んでしまった(誤嚥)場合でも、日頃から腹筋や肺活量など「咳き込む力」を鍛えておけば誤嚥を予防する効果も期待できます。

大岡らの論文を見てみると、”加齢による摂食・嚥下機能および構音機能の減退、低下を伴う要支援高齢者に対し、高齢者自身が行える簡便な口腔機能向上プログラムを実施することにより、口腔機能の向上が得られる可能性が示唆された”と報告しています。


ご高齢者が誤嚥性肺炎を起こす前に、日頃から予防に取り組んでいきましょう!

大岡貴史 "日常的に行う口腔機能訓練による高齢者の口腔機能向上への効果." 口腔衛生会誌 58.2 (2008): 88-94.
平成29年8月20日アクセス

誤嚥性肺炎の予防が必要な方とは!?

ここでは、誤嚥性肺炎の原因となる誤嚥や摂食・嚥下障害を起こしやすい対象疾患をご紹介します。

誤嚥性肺炎を予防する体操を行う場合は、これらの既往歴をお持ちの方を中心に取り組んでいきましょう!




【誤嚥性肺炎を予防する必要がある対象疾患】

・脳血管障害,頭部外傷,脳腫瘍

・脳膿瘍,脳炎,髄膜炎

・錐体外路疾患(パーキンソン病,線条体黒質変性症,進行性核上性麻痺など)

・脊髄小脳変性症

・運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症,進行性球脊髄性筋萎縮症)

・多発性硬化症

・末梢神経疾患(ギラン・バレー症候群,糖尿病性末梢神経炎など)

・筋疾患(筋ジストロフィー,多発性筋炎など)

・神経筋接合部の異常(重症筋無力症)

誤嚥性肺炎の予防として日常生活で注意することとは

誤嚥性肺炎の原因となる誤嚥や摂食・嚥下障害を防ぐためには、日常生活の中で食事や衛生面などでも気を付けることがあります。

口の中に細菌が繁殖すると歯周病を併発したり、誤嚥によって細菌が肺に入り重症の肺炎を起こしやすくなります。以下に「食事での注意点」と「衛生面の注意点」について解説します。


【食事で注意すること】
・食事の内容や色、匂いを確認する
・両足を床につける
・椅子に深く腰掛け、正しい姿勢で食べる
・しっかりとよく噛んで、ゆっくりと食べる
・固く噛みきれない食べ物は細かく切ってから食べる
・スプーン1杯程度の少量ずつ口に入れる
・口の中の食べ物を飲み込んでから次の食べ物を入れる
・食事中にむせがある方にはとろみを付ける
・汁気の多いものは少量ずつにする
※食事形態については、事前に医師や看護師、管理栄養士から指導をもらいましょう。


【口の中の衛生面で注意すること】
・口の中の食べかすを綺麗にする
・適宜うがいをする
・毎食後に必ず口腔ケアを行う
・自分で口腔ケアができない方は介助者が行う
・入れ歯を洗う
・必要であれば歯の消毒液につけていく

誤嚥性肺炎の予防方法⑴首のストレッチ

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ここからは誤嚥性肺炎を予防する口腔体操をご紹介していきます。まずこちらの運動は、「首回り」のストレッチです。



咀嚼には首に付着する筋肉が多くあります。まずは首をストレッチして食べる準備をしていきましょう。



口腔体操を実施する一番よいタイミングは、食事の「前」です。嚥下体操により、お口や頬などを動かすことで、だ液が分泌されます。また、飲み込み易くなりますので、誤嚥を防ぐことにもつながります。



【注意点】

首はとても繊細な部位となりますので十分注意し、ゆっくりと運動を行いましょう。また頚椎疾患などの有無の確認を行いましょう。

誤嚥性肺炎の予防方法⑵頬の運動

 
 

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次にこちらの運動は、口腔内に空気をためたり、すぼめたりする「頬の筋肉」のトレーニングです。



食べ物を咀嚼する際は、舌と頬は協調して動きます。

この舌と頬は食べ物を臼歯の上にのせたまま保持することができるため、食べこぼしを防ぐことができます。

また、口を閉じる時に働く口輪筋を鍛えることで食べこぼしを防ぐことができます。


▼誤嚥性肺炎を予防する口腔体操をもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がオススメです。

【関連記事】高齢者向け|口腔体操をしてリハビリの効果を最大化させよう!
ご高齢者の誤嚥を予防する口腔体操のノウハウをご紹介していきます。

誤嚥性肺炎の予防方法⑶舌の運動

 

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こちらの運動は、舌のトレーニングです。

舌は、顎舌骨筋(がくぜっこつきん)という顎の下の筋肉と繋がりがあり、あご周りの筋肉を動かすことで若干ながら唾液の分泌を促していきます。また、舌は食物を食べる際の咀嚼と食べ物を左右の臼歯に移す働きをしたり、発声をするために非常にも重要になります。

誤嚥性肺炎の予防として積極的に舌を動かしていきましょう。

誤嚥性肺炎の予防方法⑷アイウエオ運動

 

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こちらの運動は「あ・い・う・え・お」と大きく口や顎、唇、舌を動かすトレーニングです。



同時に「パ・タ・カ・ラ」や「パ・ピ・プ・ペ・ポ」も行っていきましょう。

リハビリテーションでは、このパタカラ体操を行うことで、発声や誤嚥性肺炎を予防する効果が期待されています。

顔の表情が乏しい方や発声が困難な方、摂食・嚥下機能が低下している方にオススメです。

誤嚥性肺炎の予防方法⑸唾液腺マッサージ「耳下腺」

 

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次に、誤嚥性肺炎の予防としてご紹介するのは、唾液腺マッサージです。



こちらの運動は、3ヶ所ある唾液腺の中でも「耳下腺」を刺激するエクササイズです。奥歯と耳の間に耳下腺はあります。ここに人差し指で軽く圧迫するように、やさしく円を描くようにマッサージします。こちらを刺激することで、だ液が分泌され食べ物を飲み込み易くなる効果が期待できます。



高齢になると、薬剤の影響や加齢により、噛むの低下などが原因で唾液の分泌量が減少します。この唾液は、食べ物をまとめるために重要です。誤嚥性肺炎を予防するためには、唾液分泌を促すマッサージも取り入れていきましょう!


▼高齢者の誤嚥性肺炎を予防する唾液腺マッサージについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がオススメです。

【関連記事】ご高齢者の唾液腺マッサージに役立つ!唾液の効果と運動方法とは
ご高齢者の誤嚥を防ぐために重要な唾液の効果やマッサージ方法をご紹介します。

誤嚥性肺炎の予防方法⑹唾液腺マッサージ「舌下腺」

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続いては、唾液腺マッサージの中でも舌下腺です。

舌下腺は、舌の付け根の辺り、下あごのくぼみ部分にあります。このくぼみを両方の親指の腹で、軽く圧迫するように押し上げます。


ここを押すと、痛みを感じたり苦しくなりやすいのでやさしく、ゆっくり行いましょう。

誤嚥性肺炎の予防方法⑺唾液腺マッサージ「顎下腺」

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続いての唾液分泌を促すマッサージは顎下腺です。

顎下腺は、あごの骨の内側の左右のやわらかい部分にあります。ここに両手の指をあて、耳の下からあごの先まで順番にマッサージします。



指の腹で軽く圧迫するように、やさしく行いましょう。

早期に発見!誤嚥のチェックポイント【嚥下障害を疑う徴候】

最後に、誤嚥を疑う簡易なチェックポイントをご紹介しておきます。

ご利用者様に以下のような変化があった場合は要注意です。看護師すぐに医療従事者に報告し、検査・評価してもらいましょう!


【誤嚥を疑う徴候】
1)声が変化している
2)唾液が飲み込めず出している
3)のどがゴロゴロしている
4)痰が多い、または汚い
5)発熱を繰り返す
6)食事中にムセる、咳が出る
7)食事に時間がかかる

エルメッドエーザイ株式会社「摂食嚥下障害の症状」
2017年3月7日アクセス

【終わりに】
今回は「口腔体操の仕方」についてご紹介しました。咀嚼・嚥下機能は、首や頬、下の筋肉がスムーズに連動して動くことが重要です。ご利用者様が安心して毎日の食事を楽しむことができるように私たちスタッフが支援していきましょう。

著者プロフィール

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大屋 祐貴

リハビリ専門職(作業療法士)として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーションを技術を高めるため研修会を立ち上げ、これまでに100名規模の研修会も開催された。現在は、「職種を越えたリハビリ介護を実現する」をテーマに、リハプランの専属ブロガーとして活躍中。作業療法士の専門性を活かして、介護事業所で算定できる加算・減算の中でも「個別機能訓練加算」について算定要件や計画書の書き方、機能訓練プログラムについて執筆している。

〜筆者の想い〜
通所介護事業所(デイサービス)の約8割は、リハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が不在のため、看護師や柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師が機能訓練を実施しているのが現状です。機能訓練指導員が、高齢者にあった最適な運動を提供するために必要なノウハウをわかりやすく解説します。

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