介護現場の事故防止!リスクマネジメントの重要性とは|これから始める4つのステップ

リスクマネジメントとは、介護事故のリスクを把握し、組織的に管理することで事故を未然に防ぐことを目的とした活動です。介護現場での事故や事件、ヒヤリハットやトラブルは一生懸命に働いていると必ず起こってしまい、事故を起こしたスタッフはご利用者様の安否を想い、心が苦しくなります。そこで今回は、介護現場で働く皆様向けのリスクマネジメント研修資料から重要な取り組み方を4つのステップに分けて解説します。

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介護現場におけるリスクマネジメントの考え方

介護現場におけるリスクマネジメントの考え方

介護分野におけるリスクマネジメントとは、介護事故のリスクを把握し、組織的に管理することで事故を未然に防ぐことを目的とした活動です。ご利用者様の「安心・安全」を守るためにも、介護事業所の信用を高めるためにも、運営上必須の課題です。そこで本稿では、介護現場向けのリスクマネジメト研修資料からの基本的な考え方からご紹介します。

介護現場では利用者様の「安心・安全」を確保することが前提にありますが、リスクマネジメントに取り組むことで職員を守ることにも繋がります。

そのため安心・安全を確保するリスクマネジメントでは「介護事故の報告」「介護事故の防止」「事故が発生してしまった際の対応方法」「委員会の設置」「職員教育」「設備投資」など各種の管理体制が必要になります。

職員や組織がリスクを意識した活動を行うことによって、介護事業所としてご利用者様により安全で質の高いサービスを提供することができるようになります。

介護現場でのリスクマネジメントの重要性とは

介護事業所でのリスクマネジメントは、なぜ重要なのでしょうか?

介護サービスの利用者様のほとんどはご高齢の方々です。高齢者は、年を重ねるごとにこのような心身の変化(機能の低下)が起こります。心身機能の低下が起こると免疫力が低下して病気をしやすくなったり、バランス機能が低下して転倒を引き起こしやすくなってしまいます。
まずは高齢者の心身の状態の変化について、整理して見てみましょう。

高齢者の身体の変化

  1. ・視力が低下してくる
  2. ・歯が弱くなる
  3. ・耳とおくなる
  4. ・骨が弱くなる、脆くなる
  5. ・関節がスムーズ動かせなくなる
  6. ・筋肉が細くなり、伸び縮みする力が弱くなる
  7. ・心臓、肺、血管が固くなる、弾性力が弱くなる


高齢者のこころの変化

  1. ・新しいことを覚える力が低下してくる
  2. ・環境の変化になじみにくくなる
  3. ・疲労を感じやすくなる 
  4. ・集中できる時間が短くなる 
  5. ・物事にあまり関心がなくなる


このように多くのご高齢者を対象とする介護施設においては、それだけ事故が発生する危険性が高くなるのです。実際の介護現場の事故発生状況としては、圧倒的に「転倒」が多くなっており、一度転倒すると「骨折」につながる可能性が高くなります。骨折は予後のADLを低下するだけでなく、QOL自体も下げてしまうこともありますので、介護職員は転倒予防に留意して接することが重要となります。

想定される事故を見つけ出し、どのような場面で起きやすいのかを理解し、対策方法をスタッフで共有するなどのリスクマネジメントの取り組みが非常に重要になるのです!


▼介護現場で懸念されるのがご高齢者の転倒。転倒の原因を理解して想定される事故を見つけ出すことで、介護現場でのリスクマネジメントに取り組んでいきましょう。転倒予防に関してもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をオススメします。

【関連記事】

高齢者の転倒予防の基礎知識

高齢者の転倒予防対策や基礎的知識を詳しく知りたい方はこちら。

介護現場におけるリスクマネジメントの4つのステップ

介護現場におけるリスクマネジメントの4つのステップ

では、実際に想定される介護事故を見つけ出し、対策方法の共有について4つのステップでご紹介していきます。

リスクマネジメントの4つのステップ

  1. 1.リスクの特定(発見・把握)
  2. 2.リスクアセスメント(分析・評価)
  3. 3.リスク対応(対応策)
  4. 4.リスクコントロール(運用)

リスク特定

施設・事業所内で利用者を被害を与えてしまう可能性があるものを発見・把握します。これは現場で挙げられたヒヤリハット報告書や事故事例報告書を参考にすると良いでしょう。

リスクアセスメント

リスクの具体的な要因やその大きさを分析・評価します。ここでは、事故が起こってはいないヒヤリハット事例も含めて分析することが重要です。この分析・評価は安全管理委員会などのスタッフが行うのが良いでしょう。

リスク対応

緊急時にどのような対応をするべきか具体的な対策を立てます。この活動も一般には安全管理委員会のスタッフの役割となります。

リスクコントロール

組織として運用できるようにシステム化していきます。具体的には、「リスク対応」で決定した手段を実行したり、業務マニュアルを整備したり、職員研修、家族との関係構築などを取り組みます。

では次章より、これらの4つのステップについて詳しく解説していきます。

【参考文献】

東京都福祉保健局 平成21年「社会福祉施設におけるリスクマネジメントガイドライン」平成29年6月23日アクセス

リスクの特定|介護現場のヒヤリハット事例を学ぼう!

リスクの特定|介護現場のヒヤリハット事例を学ぼう!

では、まずリスクマネジメントの1つ目として介護現場での事故防止のための「リスク特定」の進め方をご紹介します。

現場でよく使用されるものに「ヒヤリハット報告書」があります。ヒヤリハットとは、事故にまではならなかったものの、事故に直結してもおかしくない「ミス」や「冷やり」「ハッ」としたことを指します。


1件の大きな事故の裏には、29件の軽傷な事故、そして300件のヒヤリハットがあるとされています。これは「ハインリッヒの法則」といわれる労働災害における1つの考え方です。この法則に則ると、ヒヤリハット報告書を300事例出すことで、29件の軽傷な事故を未然に防ぎ、1件の大きな事故を防ぐことができることになります。

そのため、リスクマネジメントとして、まずヒヤリハット報告書を制度化して事業所内の事例を溜めていきましょう!

【参考記事】

ヒヤリハットとは?介護現場の事故を防ぐヒヤリハット事例 21選集

介護でのリスクマネジメントでは、他事業所でのヒヤリハット事例について学んでいくことも重要です。介護現場のヒヤリハット事例についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をお勧めします!

リスクアセスメント|ヒヤリハットを評価・分析しよう!

リスクアセスメント|ヒヤリハットを評価・分析しよう!

リスクマネジメントの2つ目に「リスクアセスメント」の仕方についてご紹介します。

まず、ヒアリハット報告書をもとに「総数」「事故のレベル」「場所」「時間帯」を集約します。この集約結果から事故が多く起こっている場所や時間帯を把握していきます。

次に、ヒヤリハットがなぜ発生したのか、その要因の分析を行います。この分析では1つのヒヤリハット事例に対して「人的要因」「設備的要因」「環境的要因」「管理的要因」の4つ分けて分析していきます。この分析で列挙した要因に対して、対策を立てていくことで職員研修なのか、設備の問題なのか、管理体制の問題なのかなどを把握でき、より具体的な解決策が立案できるようになります。

入浴中のヒヤリハット報告の事例と要因分析

(事例)入浴介助中に浴室内で滑って転倒してしまった
(要因)
・人的要因:スタッフが床面の確認をしていなかった
      介助位置が遠く、介助方法も不十分であった
      利用者は目が悪く足元が確認できなかった
・設備的要因:浴室の床面の水が流れにくかった
       シャワーが届かず流せない場所であった
・環境要因:スタッフの人数が不足していた
      一度に多くの利用者が使用していた
・管理的要因:介助する担当スタッフが決まっていなかった
       浴室を流すなどのルールが決まっていなかった

リスク対応|事故発生時の緊急対応を考えよう!

リスク対応|事故発生時の緊急対応を考えよう!

リスクマネジメントの3つ目として「リスク対応」の進め方についてご紹介します。



事故の早期発見、早期対応を行うことで被害を最小限に抑えることがリスク対応の考え方です。事故を発見した時や、事故を起こしてしまった時に、私達は落ち着いて迅速かつ的確な対応を行わなければなりません。リスク対応では、いざというときに備え、あらかじめリスクを想定した対応手順を「マニュアル」として整備し、「職員研修」によって職員全体に把握してもらいます

介護現場の事故は、転倒や転落だけでなく、感染症や食中毒、熱中症などの対策も視野にいれておきましょう。

リスク管理マニュアルを一から作成する場合は、厚生労働省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」が参考になります。ぜひ一度ご覧いただければと思います。

【参考文献】

厚生労働省 平成25年「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」
平成29年6月24日アクセス

リスクコントロール|安全管理委員会を設置しよう!

リスクコントロール|安全管理委員会を設置しよう!

最後に、リスクマネジメントの4つ目として「リスクコントロール」についてご紹介します。

リスクコントロールでは、リスク対応で決定したマニュアルに沿って、事業所全体で取り組んでいきます。事故は発生しないことが一番です。しかし、いつ起こるかわからないことですのでスタッフも周知するのに時間がかかります。

職員一人ひとりが理解を深め、安心・安全を継続するのためのには、運営として落とし込み、定期的に開催できるようシステム化することが重要です

システム化し継続的に運営するために「安全管理委員会」の設置があります。安全管理委員会を開催する場合に参考にしていただきたい「構成メンバー」や「実施内容」についてご紹介します。

安全管理委員会の構成メンバー

部門、職種、職位など多職種でメンバー構成とすることで偏りがなく現場に即した実効性のある対策の議論、活動へとつながることが期待できます。

  • ・施設長
  • ・介護士
  • ・相談員
  • ・リハビリ
  • ・看護師など

安全管理委員会の実施内容

  • ・ヒヤリ・ハットや事故事例などの収集・分析
  • ・事故の対策方法の検討・決定
  • ・定期的な評価
  • ・家族への報告
  • ・定期的な報告会

これらを参考に委員会として定期的リスクマネジメントに取り組める体制を整えていきましょう!

リスクマネジメントを継続的に取り組むためには

リスクマネジメントを継続的に取り組むためには

ここまでリスクマネジメントの4つのステップをご紹介しました。しかしながら、リスクマネジメントを取り組んだだけで満足してはダメです。

このリスクマネジメントを介護事業所の運営として継続的に進めて行くためには、組織全体としてPDCAサイクル(※1)を回していく必要があります。このサイクルを回していくことで介護施設全体としてサービスの質の向上を目指していきましょう!

現場のスタッフからの事故の報告、ご利用者様・ご家族からのクレーク、職員からの提案は、介護事業所がより安心・安全なサービスを提供するために重要なご意見です。

その大切な意見を無駄にしないためにも、このサイクルを定着させることがリスクマネジメントの最終的なゴールです!スタッフ一人ひとりが問題を発見し、報告しやすい風通しの良い職場の雰囲気を作り、その解決策を見つけ出すサイクルを定着化していきましょう!

皆様の介護事業所が、より安心で安全なサービスが提供できるよう応援しています!

(※1)PDCAとは、PLAN(目標設定)⇒ DO(実行)⇒ CHECK(検証)⇒ ACTION(目標の修正と実行)の手順を指します。

リスクマネジメントまとめ

リスクマネジメントは極めて重要な取り組み

高齢者施設や通所介護などの利用者様を守るためにも、スタッフが快適に働くためにも危険をマネジメントし、未然に防ぐ、最小化する。リスクマネジメントは極めて重要な取り組みです。

しかしながら、介護現場におけるリスクマネジメントの取り組みはいまだ十分に共有・蓄積されていない施設をお見かけします。


これまでご紹介したように介護現場でリスクマネジメントの取り組みを行うためには、介護サービスを提供する中で想定される事故やリスクを洗い出し、どのような場面で起きやすいのか、同様の事故がどれだけの起こっているのかなど完全管理委員会を通して正しく分析・評価することが必要となります。その上で、リスクの発生を最小限に食い止める業務マニュアルや緊急時対応マニュアルなどの運営体制を整えておくことが求められます。

簡単に言っているようですが、実際にそういった体制やしくみを構築していたとしても、運用上、現場ではなかなか機能していない問題点もあります。

介護でのリスクマネジメントは研修と報告しやすい雰囲気から

スタッフや施設の成熟度を考え、リスクマネジメントの研修では現場レベルでリアリティーが持てるように落とし込んでいきましょう。リスクマネジメントをする上では、リスクの特定が第一歩であり、そのためには事故やヒヤリハット・インシデントをひとりひとりが当事者意識を持って風通しよく報告しやすい雰囲気を作っていくことが必要です。リスクマネジメント研修でも、一方的な座学研修にならないように一人一人に感想を聞いてみることや、硬くない感じで事例や出来事を話してみるなど、その後もリスクが共有していける土台を作っていくことが大切です。

少しずつ次のステップへ向上できるように継続的に取り組んでいただければと思います。今回のリスクマネジメントの進め方と運営方法を通じて、皆さんの事業所でもリスクマネジメントの取組が進展し、利用者様へのサービスの質の向上とスタッフが安心して働ける環境づくりに繋がれば幸いです。

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著者プロフィール

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Rehab for JAPAN代表取締役社長。法政大学大学院(CSR専攻)卒業し、政策学修士を取得。作業療法士として、在宅介護(通所介護・訪問看護)や医療機関(救急)など現場経験をした後、株式会社Rehab for JAPANを創業した。主な書籍として『幸せな職場の作り方』ラグーナ出版、2014(共著)などがある。

~筆者の想い~
介護報酬マイナス改定や職員不足など介護経営は厳しい時代です。介護事業所を強くし、安定した介護経営をしていくためには業務効率化のためのIT導入や集客アップのための営業戦略、他社サービスとの差別化などが重要です。介護経営者様・管理者様向けに「介護経営のノウハウ」や「介護マネジメント」についてわかりやすく解説します。

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