高齢者のリハビリにおける、バランス感覚を鍛えるトレーニングをご紹介!

デイサービスなどを利用される高齢者さまのバランス感覚を鍛えるトレーニングは片足立ちが有名ですが、バランスボール、バランスディスクなどの器具を使用した方法もその1つです。今回は、転倒予防防止のためのバランストレーニングの効果や12種類のトレーニング方法についてご紹介して行きます。姿勢制御を構成する要素、運動神経を構成する要素などメカニズムを知り、能力や目的に合ったバランストレーニングを見つけてください。

簡単・安心の個別機能訓練加算ソフト「リハプラン」

バランストレーニングの基礎知識

バランストレーニングをする前にバランス感覚とはどういったものなのか基礎知識を学んで行きましょう。

リハビリテーションでは、バランス感覚(姿勢制御)を構成する要素として、こちらの9つがあるとされます。人はこの9つの要素を複雑に組み合わせてバランスを保っていることになります。

※姿勢制御とは、人がバランスを保つ能力のこと。この姿勢制御の機能がうまく働かない場合は座ったり、立っているだけでバランスを崩してしまいます。


姿勢制御を構成する要素とは

1)安定性限界
支持基底面内で重心を前後・左右に可能な限り動かせる能力

2)運動システム
筋肉や協調性の能力

3)静的安定性
立位が変化しても安定して支持基底面内に重心維持させる能力

4)垂直性
床面が傾いていても重力方向に適切に姿勢を修正する能力

5)反応的姿勢制御
外力に対して支持基底面内に重心を維持し、安定性を保つ能力

6)予測的姿勢制御
随意運動に先行して重心を移動させる能力

7)動的安定性
変化する支持基底面に重心を継続的にコントロールする能力

8)感覚統合
環境に合わせて感覚情報(視覚・前庭覚・体性感覚)の重み付けをする能力

9)認知的影響
認知が付加させても姿勢の安定性を維持する能力



また、スポーツ運動学の中では、バランス感覚は運動神経の構成要素の1つで、全身を空中などのさまざまな場面で保つことや崩れた体勢を素早く立て直す能力とされています。

運動神経とは、1970年代に旧東ドイツのスポーツ運動学者が考え出した理論で、その構成要素はこちらの7つとしています。スポーツ競技では、これらの7つの能力が複雑に組み合わさっているわけです。


運動神経を構成する要素とは
1)バランス能力
全身を空中などの様々な場面において保てる能力、崩れた体勢を素早く立て直す能力
2)リズム能力
目や耳からの情報をリズミカルな動きによって表現する能力(例:模倣運動などの動き) 
3)連結能力
関節や筋肉の動きをタイミングよく無駄のない動きをする能力(例:力の加減やスピードの調整によるスムーズな動き)
4)反応能力
聴覚や視覚、触覚からの合図に対して正確かつ素早く対応をする能力
5)定位能力
人やボールなどとの距離感を把握し、動きの変化を調節する「空間把握」の能力
6)変換能力
素早い切り替えや予測して先取りをする能力
7)識別能力
手や足、頭部を使ってボールや道具を操作する能力

Kathryn M. Sibley「Using the Systems Framework for Postural Control to Analyze the Components of Balance Evaluated in Standardized Balance Measures」(平成28年8月19日アクセス)

バランストレーニングの効果とは?

バランス感覚は、人が立っているだけで働きます。さらに、座る・走る・ジャンプするなどの動作にもバランス感覚が必要です。

バランス感覚を鍛えることでスポーツにおいてはボディバランスを高め、素早い反応などパフォーマンスをアップする効果が期待できます。また、ご高齢者においては転倒予防や老化の予防などのメリットがあります。


バランストレーニングの効果
1.素早く体の立ち直りができる
サッカーやバスケットなどのボディコンタクトが多いスポーツにおいて不安定な体勢になった場合にバランス能力が高ければ素早く体勢を立て直すことができます。

2.転倒予防に効果がある
バランス能力を鍛えることで、砂利道などの不整地歩行や段差でつまずきかけた時に素早す反応することができます。ご高齢者に向けたバランストレーニングでは転倒予防の知識が必要です。
※高齢者に向けた転倒予防に関しては下記の関連記事をご覧ください。

3.疲労感が軽減する
バランス感覚が衰えていると過剰に体の力が必要になり非効率な体の使い方をしてしまいます。バランストレーニングに取り組むことで動きやすい体作りにも効果が期待できます。

4.運動のパフォーマンスが向上する
スポーツなどの運動をスムーズに行うためにはバランストレーニングは重要です。それぞれの種目に合ったバランストレーニングに取り組むことをお勧めします。

【関連記事】

高齢者の転倒予防の基礎知識|転倒の原因から体操方法まで徹底解説
転倒の原因や転倒予防体操の方法までご紹介しています

バランス感覚を鍛えるポイント!

それでは、バランス感覚を鍛えるトレーニングのポイントについてご紹介します。人が立っている姿勢でバランスを保つ(姿勢制御)場合は、主に「足関節」「股関節」「ステッピング」の3つでバランスを取ろうとします。また、バランスを保つためには、体の軸となる「体幹」の力が重要になります!



バランスを鍛えるポイント
1.足関節
リハビリテーションでは、足関節戦略(ankle strategy)と呼ばれるバランス能力(姿勢制御)の1つ。足関節は、少し動揺刺激が加わった時に働く役割があります。高齢者の場合は足でバランスを保つことが難しいため、股関節を多く使用しています。そのため、腰や股関節に痛みが出る場合が多くあります。腰や股関節への負担を軽減する為にも足関節でバランスを保つトレーニングをしていくことが重要です。


2.股関節
リハビリテーションでは、股関節戦略(hip strategy)と呼ばれるバランス能力(姿勢制御)の1つ。股関節では、大きい動揺刺激が加わった時に働く役割があります。

3.ステップ
リハビリテーションでは、ステッピング戦略(stepping strategy)と呼ばれるバランス能力(姿勢制御)の1つ。ステッッピングは、人がバランスを崩した時に一歩足を踏み出しバランスを保つ役割があります。

4.体幹
体幹は、様々な姿勢で不安定な姿勢になった場合に体を中心に戻したり、ボディバランスの要となります。バランス感覚を鍛える時は必ず体幹筋もトレーニングしていきましょう。

下肢の運動戦略とFunctional Reach Test 足 · 股 · 踵上げ運動戦略の違いがFunctional Reach距離,重心の前後移動、重心動揺面積に及ぼす影響平成28年12月4日アクセス

バランストレーニングの種類には?

バランストレーニングの種類

バランス感覚には、さまざまな場合において身体を中心に保ったり崩れた体勢を素早く立て直す力があります。そのため、ご高齢者の転倒予防からスポーツ選手のパフォーマンス向上まで幅広く取り組めます。

バランス感覚を鍛えるトレーニングをする場合は、まずは道具を使用しない「片足立ち」などの運動から取り組みましょう。さらに難易度を高めたい場合は、不安定性を高くする「バランスボール」や「バランスディスク」、「ストレッチポール」と言った器具を使用することをお勧めします。


バランストレーニングの種類
1.自重
2.バランスボール
3.バランスディスク
4.ストレッチポール

今回は、これらのバランストレーニングについて12種類たっぷりご紹介して行きます。ご自分の能力に合ったトレーニングを選択してチャレンジして行きましょう!

 

手軽なバランストレーニング (1)片足立ち

[画像タップで詳細表示]

まずは手軽に取り組めるバランストレーニングからご紹介していきます。こちらの運動は、片脚立ちを行うバランストレーニングです。片脚立位は、バランス能力の評価としても使用されることが多い運動です。開眼で片足立ちが20秒以下の方、閉眼で片足立ちが5秒以下の方は転倒の危険性が高くなると言われています。以下のカットオフ値を目標に片足立ちのトレーニングに取り組んでいきましょう。


【目標時間】
基準値以下ではバランス能力が低下していると判断されます。また、15秒未満は運動器不安定症と診断される可能性があります。


・40歳以上:180秒 

・60歳代前半:70秒

・80歳代前半:10秒

▼片脚立位についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がオススメです。

【関連記事】

片脚立位のカットオフ値とは|評価初心者でも分かる測定方法
バランス評価の中でも簡便に検査できる片脚立位について測定方法から評価の指標となるカットオフ値まで紹介します。

手軽なバランストレーニング (2)つま先上げ

 
 

[画像タップで詳細表示]



続いて、こちらの運動はつま先上げのバランスのトレーニングです。意外にもバランスを崩してしまうのがつま先上げです。重心が後方に移動するため後方にバランスを崩しやすくなります。このバランスを崩しそうになった場合には、股関節と足関節を中心に姿勢を保とうとする機能が働くため、バランストレーニングの導入編としてはオススメです。

【目標回数】

10回×2セットを目安に行いましょう。

手軽なバランストレーニング (3)かかと上げ

[画像タップで詳細表示]



こちらの運動は、ヒールレイズと呼ばれるかかと上げのバランストレーニングです。かかと上げを行うことで、ふくらはぎの筋力アップだけでなく、バランス感覚を高めてくれる効果が期待できます。こちらのバランストレーニングでは、前方へバランスを崩しやすくなるので転倒に十分に注意して取り組みましょう。



【目標回数】

10回×2セットを目安に行いましょう。

手軽なバランストレーニング (4)腰回し

[画像タップで詳細表示]


こちらの運動では、腰を回すことで股関節でバランスを保つトレーニングをすることができます。腰や骨盤を動かす運動のため、不良姿勢の改善や便秘改善にも効果が期待できます。ご高齢者の転倒予防の導入編としてオススメです。

【運動のポイント】
① 腰を中心に、大きく回しましょう。
② 骨盤に手を当てることで骨盤の位置や動きを確認しながら行うことができます

【目標回数】
時計回り10回、反時計回り10回を目安に行いましょう

手軽なバランストレーニング (5)リーチ

[画像タップで詳細表示]



こちらの運動は、前方へ手を伸ばすバランストレーニングです。手は床と水平に保つように意識して、できる限り遠くまで手を伸ばします。リハビリテーションでは内乱運動と呼ばれ、バランス感覚を高める効果が期待できます。ご高齢者の転倒予防のためのバランストレーニングとしてもオススメです。


【目標回数】

10回×2〜3セットを目安に行いましょう。

 

【関連記事】

リハビリにおけるバランス評価の種類と測定方法の基礎知識

 

本格的なバランストレーニング (6)前方ステップ

[画像タップで詳細表示]



ここからは、様々なステップを活用した本格的なバランストレーニングをご紹介します。こちらの運動は、前方ステップと呼ばれるバランストレーニングです。足を踏み出す幅を広くするとことで太ももの裏に付着するハムストリングスや大殿筋を中心に鍛えることができ、幅を狭くすると太ももの前に付着する大腿四頭筋を優位に鍛えることができます。


バランストレーニングを行う場合は、最大筋力のアップと共に筋肉の発生速度を高める運動が有効であるとされています。そのためステップ運動などの瞬発的な運動もバランストレーニングとしてお勧めです。


【目標回数】

10回×2〜3セットを目安に行いましょう。

大屋友紀子, et al. "地域在住高齢者の易転倒性と膝伸展筋力に関する研究." 日本老年医学会雑誌 45.3 (2008): 308-314.
平成29年7月6日アクセス

本格的なバランストレーニング (7)側方ステップ

[画像タップで詳細表示]



こちらの運動は、側方ステップと呼ばれるバランストレーニングです。側方ステップは、転倒予防やバランスを保つために重要とされるお尻の筋肉(中臀筋)を効果的に鍛えることができます。特に左右へのバランスを高めたい方にはオススメのトレーニングです。

【目標回数】

10回×2〜3セットを目安に行いましょう。

本格的なバランストレーニング (8)クロスオーバーステップ

[画像タップで詳細表示]

こちらのバランストレーニングは、クロスオーバーステップと呼ばれる運動です。クロスオーバーステップの反復練習は、バランス感覚を鍛えたり、転倒予防にも効果が期待されています。ステップトレーニングの応用編として取り組んでみてはいかがでしょうか。

【目標回数】
10歩×3セットを目安に行いましょう。

竹内 弥彦 「クロスオーバーステップにおける足圧中心動揺と足関節周囲筋活動の関係」

平成28年8月19日アクセス

本格的なバランストレーニング (9)タンデム歩行

[画像タップで詳細表示]


こちらの運動は、タンデム歩行と呼ばれるバランストレーニングです。踵とつま先を合わせながら1本線の上を歩くことでバランス感覚を鍛えることができます。

こちらの運動では綱を渡るように10歩程度歩きます。7~9歩でバランスを崩す方は軽度のバランス障害、4~7歩でバランスを崩す方は中等度のバランス障害、3歩以下は重度のバランス障害と言われています。タンデム歩行は、一般の方でもバランスを崩しやすいトレーニングです。ぜひ挑戦してみてください。


【目標回数】

10歩×2〜3セットを目安に行いましょう。

道具を使用したバランストレーニング (10)バランスボール

[画像タップで詳細表示]


ここからは、バランスを鍛えるトレーニング器具を活用したバランストレーニングをご紹介します。まずはじめに、こちらの運動は、バランスボールを活用したバランストレーニングです。バランスボールは、不安定性を高めることでバランス感覚や体幹筋を鍛えることができます。ボール上で膝立ちになることで、両腕から体幹にかけてバランスを保とうとします。さらに太ももで支えるため、ボールを挟み込む筋肉である内転筋や恥骨筋、薄筋なども鍛えることができます。

こちらの運動は、バランス感覚と体幹保持筋力が必要です。スポーツマンなどのトレーニング上級者にオススメです!

【運動のポイント】
① 内ももでしっかりとバランスボールを挟みます。
② 両手を広げてバランスを保ちましょう。

▼バランスボールのトレーニング方法についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

【関連記事】

バランスボールのトレーニング 全16種|姿勢別の使い方とは
バランスボールは、体幹やバランスを鍛えるために有効ですが、使い方はただ座るだけではありません。本稿では、7つの姿勢別にバランスボールの使い方を21種類ご紹介しています。

道具を使用したバランストレーニング (11)バランスディスク

[画像タップで詳細表示]


続いては、バランス器具の中でもバランスディスクを使ったトレーニングです。バランスディスクの上で足踏みをすることで、バランス感覚と持久力を鍛えることができます。足を上げるとすぐに倒れそうになる方には、椅子や手すりを支持した状態で取り組みましょう。まずは、安全にバランス能力を鍛えていきましょう。

【運動のポイント】
① 足を上げる際に身体が左右に傾かないように意識しましょう。
② 左右の足を交互にリズムよく足踏みを行いましょう。

▼バランスディスクを活用したバランストレーニングについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がオススメです。

【関連記事】

バランスディスク活用法!下半身・体幹に効果的なトレーニング【全21種】
バランスディスクの効果や下半身・体幹に効果的なトレーニング方法をご紹介します。

道具を使用したバランストレーニング (12)ストレッチポール

[画像タップで詳細表示]


最後にこちらの運動は、バランス器具の中でもストレッチポールを使ったトレーニングです。ストレッチポールの上に仰向けになり、姿勢を一定に保ちながら足で円を描きます。足を動かすことにより体幹の左右のブレを修正するために必要な体幹筋力とバランス感覚を鍛えることができます。

【運動のポイント】
① 足の裏が床から離れないように意識します。
② タオルを使用することで動きがスムーズになります。

 

【終わりに】
いかがでしたか。今回は、バランストレーニングの基礎知識と様々な道具を使ったバランストレーニングをご紹介しました。

立位バランス評価の種類と測定方法の基礎知識」など参考にバランス機能を評価しながら効果的なバランストレーニングにしましょう!

ご自分に合ったバランストレーニングにチャレンジして見てください。

 

デイサービス・機能訓練指導員が活用できる「リハビリ体操・運動」関連の記事を一挙にまとめました。状況に合わせてうまく活用していただけたら嬉しく思います。記事が増えていけば随時更新していきます。

→→ 【完全保存版】デイサービス・機能訓練指導員が活用できる高齢者のためのリハビリ体操・運動まとめ|随時更新

 

簡単・安心の個別機能訓練加算ソフト「リハプラン」 簡単・安心の個別機能訓練加算ソフト「リハプラン」

著者プロフィール

author

リハビリ専門職(作業療法士)として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーションを技術を高めるため研修会を立ち上げ、これまでに100名規模の研修会も開催された。現在は、「職種を越えたリハビリ介護を実現する」をテーマに、リハプランの専属ブロガーとして活躍中。作業療法士の専門性を活かして、介護事業所で算定できる加算・減算の中でも「個別機能訓練加算」について算定要件や計画書の書き方、機能訓練プログラムについて執筆している。

〜筆者の想い〜
通所介護事業所(デイサービス)の約8割は、リハビリ専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)が不在のため、看護師や柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師が機能訓練を実施しているのが現状です。機能訓練指導員が、高齢者にあった最適な運動を提供するために必要なノウハウをわかりやすく解説します。

デイサービスメソッドを無料プレゼント!

デイサービスメソッドは、リハプランで扱っているデイサービスのノウハウを体系的にまとめたもので、ご利用者を元気にするためのメソッドです。 7章構成となっており、介護士やリハビリ担当者がすぐに現場で使えるハウツーに加えて、マニュアルやリスク管理、営業等、デイサービスの管理運営に役立つコンテンツも入っています。

リハプランについての資料請求、ご質問など
なんでもご相談ください。

必須会社名・所属団体名
必須お名前
必須電話番号
任意メールアドレス
任意自由記入欄